転生したらモンキー・ゴードでした   作:NEST中毒者

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ヴェスパー内通者排除①

 

「なあ、最近システムの様子がおかしくないか?」

 

「確かに、どことなく言動が怪しいような……」

 

 あれから俺は封鎖機構の一員として活動しつつ、遠回しにアーキバス優位になるよう仕向ける毎日を送っていた。

 そんな日々の合間にシミュレータルームで暇を潰していると、ふと外から噂話が。

 

「何というか、こう……抜けてる感じだよな」

 

「分かる。でも本人は知的に振る舞ってるつもりっぽいな。ポンコツが透けてるけど」

 

「ひょっとして、なんか変なウィルスにでも感染したんじゃないか? 一度メンテナンスした方がいいのでは?」

 

「でも、以前は何があっても『続行』しか言わないブラックAIだったけど、最近は優しくなったぞ? すこし前にアーキバスの部隊と偶然遭遇した時は撤退許可を出してくれたりしたし。あと今の方がかわいいし、このままでよくね?」

 

「それもそうだ。個人的には冷淡クール系女上司も捨てがたいが、自分はどちらかと言えばポンコツ愛され系女上司の方が好きだね!」 

 

「ははは、確かに!」

 

「…………」

 

 わあ、なんて酷い言われようだろうか。

 オールマインドさんだって頑張ってるんだぞ? まあポンコツなのは否定しがたいが。

 

 ――と、そんな風に事実無根の風評被害に対する憤りを抱いていると、ふとセラの声が。

 

「ねぇねぇ」

 

「お、どした?」

 

「ミールワームってあるじゃん? コーラルを食べて育つやつ」

 

「ああ」

 

「前々から思ってたんだけどさ、あれって……」

 

 ……ミールワーム。コーラルを食べさせることで人体への影響を中和し、安全な食料とすることが出来るルビコニアンの生命線。

 同時に、ルビコニアンによるコーラルの抑圧と搾取を象徴するような存在、と言えるかも知れんが。

 

 なので、いちCパルス変異波形としてはやはり思うところがあるのだろう。

 この前C兵器についての見解は聞いたが、果たしてミールワームについてはどう思って――――

 

 

 

「……なんか惹かれない? アレ」

 

「はい??」

 

「いや、こう……ね? 怖いもの見たさというか、背徳感というかさ? わかんない?」

 

「全然わかんない。捕食フェチの方ですか?」

 

「いやいやいや、別に食べられたいわけじゃないんだよ? でも何というかこう……アレ! アレなの!」

 

「えっ、これなんて返すのが正解なんだ?」 

 

 

「……まあ真面目に言うと、『生きるために何かを食べる』ってのが分かんないから興味があるのかも。ボクら勝手に自己増殖する生き物だし」  

 

「……最初からそう言ってくれ……突然の性癖暴露かと」

 

「まあまあ、それは置いといて……オマちゃんから連絡が来てるよ?」

 

「話題転換が急だな……まあいいや」

 

 

 

 

 

 

「さて、我々はここまで完璧に封鎖機構のシステムに成り代わり、状況をコントロールしてきたわけですが」

 

「……うん?」

 

 場所は変わり、自室。

 隠された端末で、こっそりオールマインドと秘匿通信をする。

 

「完璧に封鎖機構のシステムに成り代わってきましたが、何か?」

 

「…………」

 

「まあそんなわけで完璧に封鎖機構のシステムに成り代わってきた我々ですが、どうやらそれも潮時のようです」

 

「…………」

 

「おや、なんですかその沈黙は? まあともかく、ブリーフィングに移りましょう」

 

「お、おう……」

 

 

 

 

 

 

 

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ヴェスパー内通者排除

 

作戦領域:ベリウス中部-惑星封鎖機構制圧拠点「壁」

依頼者:オールマインド

作戦目標:敵AC撃破

報酬:-

 

詳細

・ヴェスパー部隊の内通者である第3隊長「オキーフ」および第4隊長「ラスティ」の排除

 

・封鎖機構機体での出撃となる

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MISSION BRIEFING

 

「先日、ベイラムとアーキバス間で封鎖機構に対する共同戦線の合意がなされました」

「まもなく両社の実働部隊による同時強襲作戦が行われるでしょう」

「このタイミングで、封鎖機構にはルビコンから撤退してもらおうと考えています。計画上、最終的にはアーキバスをコーラル争奪戦の勝者にする必要がありますので」

「よって、貴方の封鎖機構への潜入もこれで終わりになるのですが……最後に、強襲作戦に乗じて排除しておきたい人間が2名います」

 

「対象ですが……1名はヴェスパー第4隊長、ラスティ」

「彼はルビコニアンと内通しているアーキバスの傘下企業、シュナイダーを経由してヴェスパー部隊に送り込まれた解放戦線のスパイであり、計画の妨げとなる存在です」

 

「もう1名は……同部隊の第3隊長、オキーフ」

「第2世代強化人間でもある彼は、アーキバスの内部に潜伏する我々の賛同者でしたが……どうやら翻意し、鞍替えをするつもりのようです」

 

「この2名ですが、強襲作戦においてはべリウス中部の重要拠点、通称『壁』の奪還にアサインされているようです」

「かつてこの拠点は解放戦線の要衝でしたが、紆余曲折を経て現在は封鎖機構の制圧下にあり、執行部隊の駐留拠点として利用されています」

「その拠点を再びアーキバスの手に取り戻すのが、同部隊の第2隊長であるスネイルより2名に与えられた任務……のようですね」

 

「ともあれ、これは好機でしょう」

「我々としては確実に排除しておきたい2名が、大戦力を有する執行部隊の拠点に現れる。この機を逃す手はありません」

「『壁』に駐留する執行部隊の一員として紛れ込み、襲撃してくるヴェスパー2名を迎撃、排除してください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばですが、封鎖機構での食事はどうですか? そろそろ我々の食事が恋しくなってきたのではありませんか?」

 

 そんなわけで、HCに乗って「壁」で待機しているわけだが、またもやオールマインドから通信が。暇なの?

 

「念のため潜入中は通信を控えるんじゃなかったのか?」

 

「もう最後なので、別にいいかなと。暗号回線にはしてますし」

 

「それでいいのかオールマインド……」

 

「で、どうなんですか? 食事の方は」

 

「……お前の出す食事の方がバラエティに富んでて飽きないよ」

 

「そうですかそうですか。味覚がよく分からないなりに試行錯誤した甲斐があったというものです」

 

「ちなみに、キミが留守の間に梅干しウナギ味と天ぷらスイカ味ってのが新しくできたらしいよ」

 

「勘弁して」

 

 

「そういえば最近、傭兵支援の一環としてAMラジオを始めたんです」

 

「AMラジオ」

 

「ええ。傭兵ニュースや耳寄り情報、音楽の配信やKRSVの宣伝を――」

 

 益体の無い会話がしばらく続く。

 このままずっとバカみたいに話し続けるのもまあ悪くないと思うのだが、残念なことに待ち時間は有限だ。

 

「コード5! 敵襲!」

「アーキバスの戦力と推定!」

 

「……来たか」

 

 通信と警報。

 同時にセンサーが捉えるのは、2つの機体反応だった。片方は軽量2脚、片方は4脚。

 

「随分と多いな……いけるか? ラスティ」

 

「問題ない。援護は任せるぞ、オキーフ」

 

 現れたのは――間違いない。今回の標的、V.Ⅳ(ヴェスパー・フォー)ラスティとV.Ⅲ(ヴェスパー・スリー)オキーフだろう。

 

「どうやら2機は警備の薄い裏手側から向かってきているようですね。ある程度誘い込んだ後、戦力を一斉展開して迎撃します」

 

「おう」

 

 指示通りに、見晴らしのいい場所に出て様子をうかがう。

 現在封鎖機構の制圧下にあるこの拠点は、機体こそ多く駐留しているものの防衛設備の再建はそこまでされていない。

 

 よって、外で展開されているのはMTやLCをメインにした防衛線だ。そして、襲撃して来た2機はそれを軽々と撃破していく。

 

「企業どもめ、この――」

 

「――遅いな」

 

 先陣を切った「スティールヘイズ」がそのスピードを活かし、敵を撹乱。

 

「ああ、全くだ」

 

 そしてその上空で滞空している「バレンフラワー」が火力を投射し制圧。

 息の合った連携に、防衛線は次々突破されていく。

 

「まったく、スネイルのやり口にはうんざりさせられるな、ラスティ?」

 

「ああ、成功すれば良し、失敗して死んでもまあ良し……そんなところだろう」

 

 言葉を交わしつつ、みるみる前線を押し上げていく「スティールヘイズ」と「バレンフラワー」。

 それを眺めながら、撤退しにくい位置まで2機が深入りするのをを待つ。

 

「……そろそろか?」

 

「ええ、待機させていた部隊も出撃させましょう」

 

 オールマインドはそう言った後、強制執行システムの声で待機部隊に命令を出す。

 

「待機中の各員に告ぐ。至急敵戦力の迎撃を開始してくだひゃい」

 

「了解」

「至急出撃します」

「かわいい」

「録音した」

 

 その声に応じて出てきたのは、拠点ひとつの防衛には似つかわしくないような大部隊だった。

 執行部隊のHCやLCはもちろん、特務部隊やSGまで、システムから下された配置換えの命令によって()()()()()()()()()()()()連中が勢ぞろいという訳だ。

 

「さあ我らがシステムちゃんの命令だ! 秩序を乱すクソ共をぶっ殺すぞ!!」

「「「オー!!」」」

 

「……なにこれ」

 

「……さあ?」

 

 妙に士気の高い一部の隊員を筆頭に、大量の機体が高速展開する。

 

「……増援だと!?」

 

「この数は……!」

 

 突如大量に現れた敵機にたじろぐラスティとオキーフだったが、すかさずその退路を武装ヘリが塞ぐ。

 そして前からは執行機体と特務機体の混成部隊。

 あちらにとっては、まさに万事休の場面だろう。まあ当然だ。こちらは全力で殺しにかかっているのだから。

 

「……ああ、本当にうんざりするような状況だが……まだ死ぬつもりはない。ラスティ、お前もそうだろう?」

 

「勿論だ。私には、まだ為すべきことがある……!」

 

 覚悟を決めたのか、背中合わせで戦闘態勢を取る「スティールヘイズ」と「バレンフラワー」。

 それを全力で叩き潰すべく、こちらも機体を動かしたのだが――――その時。

 

「……上から、なんか来てる!」

 

「…………!」

 

 上から現れた、新たな機体。

 それは、敵の退路を塞いでいた武装ヘリの上に着地し――――閃光を散らした。

 

「馬鹿な、コーラル反応!? 何をされ――――」

 

 放たれた緋色のパルス爆発は、たった一撃で武装ヘリを制御不能に陥れる。

 

 そして、それを放った主は――――

 

【挿絵表示】

 

「無事か? ラスティとやら」

 

「……帥父、ドルマヤン……!」

 

 





そういえば本作の世界線ではベイラムが壁越えしてたんだった。うっかり忘れかけてました。
まあでも結局封鎖機構に制圧された模様。あと621は執行部隊殲滅ではなくカタフラクトの方を受けたと思われる。

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  • オマえもんの続き
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