「さて……どうしましょうか」
――――全面戦争、被撃墜……そして辛うじての復活。
首の皮一つでどうにか踏みとどまった我らオールマインド陣営だったが、しかし依然として状況は絶望的であった。
「先の全面戦争により、アーキバス・コーポレーションは壊滅状態……ルビコンからほぼ手を引いたといっていい状態です」
「それって……」
「はい。現状、バスキュラープラントの修復・延伸作業が可能な勢力はルビコン上に存在しません」
リリース計画の実行には、バスキュラープラントを大気圏外まで延伸することが必須だ。
それを実行可能な勢力こそがアーキバスであり、故にオールマインドは彼らを勝たせるべく暗躍してきた。
だが、全面戦争に負け……彼らは壊滅した。
あるいは同じ星外企業であるベイラムでも、全く不可能ではないかもしれないが……どのみちレッドガンが離反した以上はベイラム本社もまた蚊帳の外だ。
現在ルビコンに残っている勢力は、解放戦線と、それに協力するいくつかの勢力、そしてオーバーシアー。
彼らでは、思想的にも物理的にも、バスキュラープラントの修復と延伸は成し得ない。
よって、リリース計画の第一要件が事実上詰んでいる……そんな状況だ。
「バスキュラープラントは、まだ壊されてない。直接接触できればシステムを再稼働させるだけならできなくはない……と思うけど……」
「ですが、それでは地中のコーラルを技研都市に集めることしか出来ません。大気圏外に持ち出すにはどうすれば……」
「ふむ……逆に言えば、コーラルを技研都市から宇宙へ運ぶ方法さえあれば、まだ持ち直せるってわけか」
「そうなりますね。ですが、そんな方法がどこに……」
「……方法なら、ひとつだけあるんじゃないか?」
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ザイレム掌握
作戦領域:アーレア海-恒星間入植船ザイレム
依頼者:オールマインド
作戦目標:施設侵入/敵部隊殲滅
報酬:-
詳細
・恒星間入植船「ザイレム」の掌握
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MISSION BRIEFING
「――――貴方の案を元にした、代替プランの構築が完了しました」
「代替プランでは、計画の第1要件……すなわちコーラルの大気圏外到達に、恒星間入植船『ザイレム』を利用します」
「当該艦船は、現在オーバーシアーによって拠点・兵器化されていますが……本来は恒星間の入植を目的としたもの」
「つまり、
「これをコーラルの輸送に転用すれば、十分な量のコーラルを大気圏外に運ぶこともできるでしょう」
「そしてバスキュラープラントは、大気圏外への延伸が頓挫した現状でも、コーラル抽出機能を復旧するだけなら技術的に可能です」
「――――技研都市にてバスキュラープラントを応急修理し、コーラルを抽出」
「抽出したコーラルをザイレムに満載し、そのまま大気圏外まで航行する」
「これが最後のプランです。困難ですが、やるしかないでしょう」
「……もう一度、現在の情勢を整理しておきます」
「先の全面戦争においては一時的に協調を見せた解放戦線とオーバーシアーですが、現在はコーラルの処遇を巡って協議と睨み合いが続いています」
「解放戦線は制圧した技研都市を、オーバーシアーはアーレア海上に停泊しているザイレムをそれぞれ拠点としているようですね」
「その両方を制圧しなければ、コーラルリリースは成し得ません。両勢力との衝突は避けられないでしょう」
「まずはザイレムを掌握します。さあ、現地へ向かいましょう」
「アーレア海、ザイレム上空付近に到達。まもなく機体……『ジュピター』を投下します」
辛うじて襲撃を免れたオールマインドの拠点。そこに残っていた輸送機で、洋上を飛ぶ。
機内には、ボロボロのジャンクAC……「ジュピター」のみが佇んでいた。
「ジュピター」。オールマインドのもとで行動を始める前、借金地獄の極貧傭兵だったころに乗っていた機体。
「というか、残してたんだなこれ……」
「ええ、我々はむやみに物を捨てない主義ですからね!」
「前はこれに乗ってたの? すごいボロボロじゃん」
「まあ色々あってな……」
「ちなみに内装は少し換装してあります。トレーニング報酬の在庫が辛うじて残っていたので」
オールマインドの言う通り、ブースタ、FCS、ジェネレータはそれぞれ換装されているようだ。
どれも比較的安価なパーツではあるが、元のジャンク品と比べると雲泥の差と言える。
「さて、目標地点に到達しました。機体の投下を開始します」
オールマインドの声と共に輸送機のハッチが開き、機体のシステムが戦闘モードに移行する。
眼下には巨大な洋上都市……に偽装された状態のザイレムが見えた。
ECMフォグは晴れているようだったが、その代わりに船の表層部はかなりの要塞化が進んでいる。
本来の防衛機構に加え、RaD製の機体や砲台が大量に配置されているようだ。
「現在、RaD以外のオーバーシアーは出払っているようですが……それでも防衛体制は非常に強固です。注意を――――」
機体が空中に飛び出すのとほぼ同時に、アラート。
紫色の閃光が「ジュピター」を掠め、背後の輸送機に命中する。
「プラズマ砲台か……!」
早速気づかれた。
爆散する輸送機。オールマインドが遠隔制御するそれは物理的には無人であり、特に問題はない……が、退路は断たれた。
『ボス、侵入者だ。迎撃態勢に入る』
『解放戦線の連中が逸った、ってわけじゃあなさそうだが……どちらにせよ、もてなしてやろうじゃないか』
広域放送が鳴り響き、無数のMTと砲台が一斉にこちらを狙う。
「回避を……!」
殺到する弾のミサイルの嵐。「ジュピター」の装甲では、わずかな被弾も命取りとなるため、死ぬ気で回避するしかない。
現在の高度から地上までは十数秒。重力に従い、最小限のブーストで回避しながら落下していく。
「真下にも敵がいるよ!」
落ちながら、遮蔽物のある場所を着地地点に選び出す……が、そこにも狙ったように敵機が姿を現した。
「勿体ない……と言ってる場合じゃないか!」
着地寸前でコア拡張機能……アサルトアーマーを起動する。
コアの排熱機構が展開し、強力なパルス爆発が発生。待ち構えていたMTと汎用兵器を一掃し、一時的に安全地帯を作り出した。
『……中々、やるじゃあないかい』
広域放送から、含みを持った称賛の声が聞こえる。どうやら最初の歓迎は切り抜けたようだ。
さて、ここからどうするか。
最終的な目標地点はザイレムの中枢制御部。
そこに到達するためのルートを考える必要があるが……この表層部を抜けていくのは厳しい。
「ジュピター」の武装はハンドガンとチェーンソーくらいで、近接偏重だ。そして、ほとんどジャンクパーツで構成された機体は酷く脆かった。
開けた空間と、そこに張り巡らされた防御陣地をこの機体で突破するというのは現実的ではないだろう。どうしたものか。
「ここは、我々にいい案がありますよ!」
オールマインドがそういうと、ハッキングによってか近くの隔壁が開錠される。
「さあ、下層ブロックを目指してください!」
……迷ってる暇はないな。
敵が集まってくる前に、開いた隔壁へ飛び込む。
その先に広がっているのは、ビル街のような表層部とは打って変わって雑然とした光景だ。
入り組んだ足場に、多数の機械設備。そして、やはりここにもRaD製の改造兵器が無数に配備されていた。
……奇しくも、グリッド086――――この「ジュピター」で最初に挑んだ場所を想起させる光景だ。
だが感傷に浸っている暇もない。
迫りくる改造MTに対して両手のハンドガンを向ける。
腕とFCSの都合上、近距離でなければ命中率は期待できないが、単発の衝撃力は折り紙付きだ。
機体の軽さを活かして距離を詰め、
「後方、特殊改造MT『トイボックス』です。注意してください」
しばらく進んだあたりで、背後に丸いコンテナのようなものが落ちてきた。
重い音を立てて着地したそれはすかさず変形し、異形のMTが姿を現す。
大火力の改造MT――「トイボックス」。
その火力投射は強力だが……「ジュピター」には命中しない。
スカスカのジャンク故に軽い機体と、瞬発力特化型に換装されたブースタの組み合わせは、息切れこそ早いものの高い回避能力を生み出していた。
背後に回り、リロードの終えたハンドガンを斉射。
至近距離で全弾食らった「トイボックス」が
取り出したのは……チェーンソー。皮肉なことにこれもRaDの製品だ。
火花を上げて回転する刃を押し当てるようにして振るえば、その細い胴体はあっけなく両断される。
「……だいぶ勘が戻ってきたな」
爆散する「トイボックス」を尻目に、残心する。
だが、息をついていられる暇はそう長くない。
「――――随分と暴れやがるじゃねぇか、ビジターよぉ」
……新たな機体反応。現れたのは――――
「ヒャッハー! インビンシブルだぁ!!!」
既視感のある、大豊とRaDの混成フレーム。右手に特徴的なショットガンを持ち、左手にこちらと同じチェーンソーを携えたそれは、「マッドスタンプ」だ。
「オイオイ、ここが何処だか分かってねぇようだなぁ! グリッド086だぜぇ!? RaD様のお膝元なんだぜ!?」
それは威勢のいいセリフと共に、チェーンソーを唸らせて威嚇しながら向かってくる。
「……ここってザイレムだよね?」
「そう……なんだけどなぁ」
……どうやら相当酩酊しているようだ。
ともあれ、苦戦する相手ではない。速やかに片付けるべくハンドガンを構えるが――――
「さあ、このボスにもらった新装備でもてなしてやるぜぇ!!」
考えなしの突撃をかましてきたように見えた「マッドスタンプ」だが、その背部には見覚えのある形状の装置が装備されていた。
肩部ユニットのラッチを利用して即席で後付けされたように見えるそれは…………円盤のような形をしている。
そして――――次の瞬間、「マッドスタンプ」の姿が掻き消えた。
「これは……」
「どうやら、我々のゴーストを鹵獲、解析したようですね……」
……MDD方式のステルス装置。
オールマインドが持つ拠点の多くが襲撃・破壊された以上、こういう事態はあるか。
「ヒャッハー!! インビジブルだぜぇ!!」
虚空からショットガンの散弾が飛んでくる。
距離により十分減衰した弾であっても、ジャンク品の装甲にとっては軽くない。
……そういえばスキャンユニットがイカれてるんだったな、「ジュピター」は。地味にヤバい状況か。
「どうやらこのラミー様がどこにいるのかわかんねぇようだなぁ!? 仕留めてやるぜビジター!」
チェーンソーを掻き鳴らす音が聞こえる。
「マッドスタンプ」の腕部……決して近接武器との相性がいいとは言えないが、「ジュピター」にとっては関係ない。モロに食らえば終わりだ。
ならばいっそ……「ジュピター」の動きを止める。
見えないのならば、音……相手が攻撃に転じる際の駆動音やブースタの噴射音を捉えるしかない。
動きを止めた相手に対し、チマチマとショットガンで削るような冷静さを奴は持たないだろう。必ず最大威力の攻撃を仕掛けてくるはずだ。
――――そして、どの方向から攻撃してくるのかは考えなくていい。
「くたばりやがれ――――」
冷却は既に完了している。
「マッドスタンプ」の振るう刃が「ジュピター」のコアに届く寸前、全方位に展開したパルス爆発がそれを阻んだ。
……真後ろ。
至近距離で
すでに武装は交換済み。左手にチェーンソーを持ち、右手には何も手にしていない。
チェーンソーが火花と金属音を放ち、次第に回転数を上げる。
それと同時に、右の拳が相手を打ち据えた。
打撃による、ACS再起動の阻害。殴られるたびに、「マッドスタンプ」が無防備でいる時間は伸びていく。
そうして3発の打撃を叩きこんだ後――――左手に構えたチェーンソーを突き出す。
甲高い金属音に、飛び散る火花。回転刃が重厚な「マッドスタンプ」のコア装甲を易々と削っていき……あっという間に致命的な損傷を与えた。
「お、俺のマッドスタンプがぁ――――!?」
最後に勢いよく刃を振りぬけば、吹っ飛ばされた「マッドスタンプ」は盛大に爆散した。
「さて……障害は排除できたようですね。いよいよ目標地点に到達します」
「マッドスタンプ」を撃破後、さらにザイレム内部を進んでいく。
オールマインドとセラのハッキングで隔壁を開け、立ちはだかる敵機を破壊し……巨大な扉の前にたどり着いた。
「ここは……」
「格納庫区画です。この先にある無人兵器の制御を奪取し、中枢部に向かいましょう」
扉が開く。
その先には……巨大なシルエットがあった。
「特殊重機『スマートクリーナー』……これを乗っ取り、ザイレム中枢まで強行突破します! さあ、しっかり掴まっていてくださいね!!」
「ええ……」
「大丈夫かな……?」
……溶鉱炉に火が灯り、巨体がゆっくりと動き始めた。
ジュピター
UNIT
R-ARM UNIT:NOT EQUIPPED
L-ARM UNIT:WB-0010 DOUBLE TROUBLE
R-BACK UNIT:HG-003 COQUILLETT
L-BACK UNIT:HG-003 COQUILLETT
FRAME
HEAD:DF-HD-08 TIAN-QIANG
CORE:AC-J-120/RC JAILBREAK
ARMS:AA-J-120 BASHO
LEGS:AL-J-120/RC JAILBREAK
INNER
BOOSTER:ALULA/21E
FCS:FC-006 ABBOT
GENERATOR:VP-20S
EXPANSION:ASSAULT ARMOR
【挿絵表示】
解説
久しぶりのジュピター。
基本的なアセンは「第2工廠警備」開始時のまんまだが、内装のみ「中等傭兵支援プログラム1」でもらえる内装パーツ3点セットに変わっているのが特徴。
ブースタが変わったため機体の軽さを活かしてかなり機動力を出せるが、ジェネは依然心もとないのでEN管理は注意が必要。
あとOSとかもAMさんがチューンしといてくれたらしい。