ぼっちとぼっちと   作:レイジー

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第二音 歩曰く

「じゃあ俺はしばらく外で待ってるわ」

「え~? 中にいなよ~」

「邪魔じゃないですかね?」

「大丈夫だよ!」

「そっすか」

 

 ……居心地悪いんだよなぁ。

 演奏練習してる中で何もせずに突っ立ってるのを考えるとどうすれば良いのかわからなさすぎるし。

 

「一緒にいてください……」

「ひとり……いるだけだからね? 俺いてもすることないんだから」

 

 流石にスマホ弄るのはダメ、だよねぇ……。

 どっちかっていうと本番で聞いて楽しみたかったんだけど。

 

「――じゃあ、練習はじめよっか!」

「あっ、はい」

 

 

 

「――ド下手だ(君は最高のギタリストだ!)」

「逆逆」

 

 ……音、ブレブレだったねぇ。

 

「ひとり、落ち着け。突っ走りすぎ」

「はぃ……」

「初めての合わせでやり方わからないのは当然だろうけど、最低限周りを知るべきだと思うぞ」

「ま、周りを知る、ですか?」

「多分こういう時、本当は周りの音を聞けとか言うべきなんだろうけど普段と違う環境で弾いてるから感覚の違いでミスするだろうからね。だから、眼を合わせられないなら合わせられないで良い。最低限手元を見とけ。そこでタイミング取っとけ」

「は、はいっ」

 

 と、言ったはいいけど実際このやり方で良いのかな?

 素人の思い付きの助言で――ヨシッ、虹夏曰く『〇』だ。

 

「んまあ、一回目の練習が終わったところで。俺ちょっとトイレー」

「あっ、はい」

 

 一度目聞いてわかった。

 やっぱ居心地悪い!

 もう練習に入ったしひとりも大丈夫でしょ。

 ひとりは始めるきっかけのための勇気が必要なだけで実際始めたら大丈夫だ、うん。

 

「あ、さっきの……」

「あ~、PAさん、ですっけ?」

「はい。アナタは店長の妹さんが連れてきた――」

「歩です、平沢歩。友人が虹夏にサポートギターを頼まれたんでついでに付いて着ました。――んですけど、何もせずに練習してる空間にいるのが居心地悪くて抜けてきちゃいました」

「ふふっ、自分のバンドじゃないですからね」

 

 なんか……ピアスしてるから一見怖そうな感じの人かと思ったけど……結構上品そうな人だな。

 笑う時に口元隠したりして。

 

「ところで何か飲みますか?」

「あっ、いえ、お気になさらず」

「歩くんこそお気になさらず」

「……ならアイスコーヒーを」

 

 やったぁ、飲み物だ。

 とりあえず体裁的に一度断るけど貰えるモンは、まあ貰いますわな。

 

「はい、どうぞ。……歩くんは高校三年生ですか?」

「ありがとうございます。自分は高校一年です。なんか年齢制限とかですか? あっ、夜まで続いたりして未成年の一人歩きはダメってことですか?」

「いえ、高校生でアイスコーヒーは珍しいと思いまして」

 

 あ~、そういうことか、ちょっとビックリした。

 

「元々は苦手だったんですけどね~。サポートギターの――後藤ひとりって言うんですけど――その子が結構挙動不審な奴でして、よくカッコつけようとして凹んだりするんですよ。で、その一環としてアイスコーヒーを飲んで大人ぶろうとして苦くて飲めずに僕が飲むことになるっていうのが多々ありましてね」

「ふふっ、優しいんですね」

「仕方なくですよ、仕方なく。本当に優しかったら向こうの部屋でまだ付き添ってますよ」

「近くにいるだけが優しさじゃないですよ」

 

 そういうものかね?

 でもやっぱり薄情じゃないかなぁ?

 

「あっ、そうだ。ライブって見るのいくら掛かるんですか?」

「別に良いですよ。虹夏ちゃんのお友達ということで~」

「流石にそこまでしていただくワケには……そもそも誘われて来たんじゃなくて自分から付いてきたんで」

「気にしないでください。さっきも言ったように虹夏ちゃんのお友達ということ、あとは初めてのライブでしょうしこれを機にウチを気に入ってもらえればっていう初期投資ですよ」

「ははは、そういうことなら有難く存分にタダ見させて貰います」

「はい。では楽しんでください」

 

 良い人ぉ。

 天使?

 

「ん? 誰だ?」

「はい? ――虹夏が急成長?!」

「……」

「はい、すみません、ふざけました。えっと、僕は伊地知虹夏さんに誘われたサポートギターの子の友人です。今は彼女たちが練習中ということで部屋から抜けてきた感じです、はい。……すみません」

「なんで謝った? ……なるほどな。まあ邪魔しないなら良いよ、いらっしゃい、楽しんでいってくれ」

「はい、ありがとうございます」

 

 大人虹夏さんカッケー。

 ていうかこの店って美人美少女縛りでもあるのかな?

 ……ひとりが誘われてるからそれはないか! ワリと結構デブだし。

 

「表情コロコロ変えてどうかしたのか?」

「いやー、このお店は顔が良くないとダメな縛りがあるのかと一瞬思ったんですけど自分の友人が誘われてるからそれはないなーって思いまして」

「……酷いな、お前」

「猫背だからとはいえ二重顎になる奴をスタイル良いとは言えないですし……顔は、まあ、良い方……なんですかね?」

「会ったことないのに聞かれても……」

「前髪長くて目元見えないんですよねぇ……」

 

 絶対アレ前髪上げたらオデコにニキビできてるよ。

 風通し悪いから蒸れて雑菌繁殖してバッチィよ。

 

「とりあえずあまりそういうこと言ってやるなよ?」

「ははは、流石に本人には言えませんよ。悪口を面と向かって言う勇気がないからとかじゃなくて、本人に言ったら本人のメンタルが死にますから」

「一体どんな奴なんだ……」

「根暗で被害妄想癖の強い女ですね。ビビりだから何するにも行動が始められなくて……半ば介護みたいなことになってますよ」

「嫌じゃないのか?」

「友人ですし。特に苦ではないですね。それに助けられるなら助けたいじゃないですか」

 

 俺は……。

 俺は助けられる側よりも、助ける側の方が良い。

 

「そうか」

「ええ。……すみませんね、お仕事の邪魔しちゃって」

「気にしなくていい。それと、楽しんで行ってくれ」

「はい!」

 

 

 

「初めまして! 結束バンドでーす!」

 

 ……完熟マンゴー?

 あれはひとりなんだろうけど……お店の空きダンボールだよね、アレ。

 お店で箱単位の完熟マンゴー? ライブハウスで完熟マンゴー? ……店長さんの趣味?

 にしてもMC……。

 

「やっぱ音が噛み合ってないなぁ。まあ、練習あるのみって感じなのかなぁ……」

 

 案外相性悪くなさそうだし、しばらく放置でも大丈夫かな。

 ずっと面倒見るのも無理だろうし。ひとり自身一生俺と一緒ってのは嫌だろうからなぁ。

 

「でも、ずっとやりたがってたバンドが出来るんだし、良いか」

「あっ、あのっ、歩くん……明日またここに来ることになったんです。だからあの……明日も一緒にお願いできませんか?」

「バイトがあるから無理」

「ほぇん……」

 

 あ、顔溶けた。




どうも、感想と評価によって第二話目が生まれました
作者のテンションによって内容の状況が大きく変わるため面白いかはわからないですが、面白いと思っていただければ幸いです

そして
bookman17さん ドリアスピスさん 京安藤しーぷさん gonbeiさん 評価ありがとうございます
gonbeiさんに関しては感想もありがとうございます
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