ぼっちとぼっちと   作:レイジー

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 言うの忘れてましたが、主人公は歩なので原作のストーリーをなぞりつつもその内容を全て描写ということはありません
 他キャラの視点での描写は入れるかもですが、あくまでも歩という人間が入ることによって起こる変化を楽しむという感じで


第三音 その一音に籠った心

「へ~、ちゃんとバイト行けたんだ。良かったじゃん。てか氷風呂入ったからあの日休んだのか、バカだな」

「ぅっ……ゴミ人間です、すみません」

「でもまあ、高校入ってから一気に成長できてるんじゃないかな? 偉い偉い」

「ぅへへへへっ、も、もっとください」

「よーしよしよしよし」

「それはいらないです」

「そっかぁ……」

 

 流石に子ども扱いし過ぎたか。

 頭を撫でるのはお気に召さない、と。

 

「でもあんまりアホなことするなよ? ひとりのお母さんとお父さんが心配するだろ。ふたりちゃんは……うん、ふたりちゃんも心配するだろうし」

「はい……」

「お説教は終わりっ。頑張ったひとりにコレをあげよう」

「お茶……せめてそっちが……」

「んぉ? ミルクティー? 飲みかけだけど? 良いの?」

「はい……」

「しゃーないな、俺の生活費を切り詰めて買った細やかな楽しみをあげようじゃないか」

「ありがとうございます」

 

 ……冗談に対してなんの反応もない?

 何か悩んでることでもあるのかな?

 てかひとりって案外図太いところあるんだよなぁ。

 

「見えます、見えますよ。ひとり……貴方は今大きな悩みを抱えていますね?」

「え?! ちょ、超能力!?」

「話してみるのです。悩みを外へ出すことによって貴方の悩みは一歩好転するでしょう」

「はっ、はい!」

 

 ホント、やり易くて助かるよ。

 俺ぁ、ひとりのそういうトコ大好きよ?

 ……ほう、ボーカルギターとな?

 …………コイツぁ不味いな。俺には打つ手なしじゃないかぁ?

 

「よく、話してくれました」

「そ、それで私はどっ、どどどっ、どうすれば?」

「むぅッ、来てます来てます。天からの声がバリサンで来てますよぉぉぉぉ!!」

 

 かっ、考えるんだ俺ぇッ!?

 どうすれば良い!?

 どうすればひとりに助言が出来るんだ?!

 俺が探す? それは駄目だ。ひとりより多少話せる程度の俺じゃあのガールズバンドのメンバーはッ。

 それに仮に俺の知り合い誰かしらに声を掛けたとしてもそれじゃひとりの成長には繋がらない。

 こなせる成長イベントは積極的に通るべき!

 

「ひ、昼休みです。昼休みにどこでも良いのでギターを弾きなさい。ただし一ヶ所ではダメです、いくつかの地点を巡って弾くのです。貴方の心を解き放つのです」

「は、はい!!」

 

 

 

(こ、これで本当にどうにかなるのかな? で、でもせっかく歩くんが言ってくれたんだから……)

 

 ギターケースを背負ったまま猫背で歩くひとりは歩のことを信じようと僅かな勇気を振り絞って姿勢を正し、胸を張る。

 揺れるギターケースの姿は教室窓に移り込み、一人の少女の瞳に飛び込んだ。

 

(アレは、ギター? それに今のって2組の後藤さんよね?)

 

 ひとりの姿を目で追う喜多郁代。

 だが勇気を出して前を向くひとりとその視線が交わることはない。

 ひとりはすれ違う生徒に少し怯えながら薄暗く静かな場所でギターケースを開く。

 

(……いつも歩くんは私なんかのために良くしてくれて。それに引き換え私はいつも全然で……。けどっ、今度こそは私だって! ダメ人間な私だけど、歩くんが言うならきっと何か意味があるはずなんだから、それを信じて私なりに頑張るんだ!!)

 

 ゴミ袋の集まった空間から音が弾ける。

 

(何この音…って、後藤さん! ギター弾く子だったのね! それにしてもこの演奏すごく心惹かれる…)

 

 そうして二人の少女は邂逅を果たす。

 少年のいない世界の(そうであったであろう)音とは少し違う。僅かな光と熱を帯びた演奏を介して。

 

 

 

「元のギターも戻って来て良かったじゃん。で、次のライブいつ?」

「えっ、あっ……」

「うん。はい……なんかごめんな」

 

 決まってない……いや、反応的に知らされてないか話し合ってないか、って感じかな?

 実際こういう活動したてのバンドって活動頻度どれくらいなんだろう。

 てかそもそもライブハウスの使用料金は――へ~。

 現状のひとりのバイト頻度だと危ういかもしれないけど頻度次第じゃ大丈夫そう。

 ライブするにも練習が必要だし。それに喜多……だっけ? さんの初心者脱却も目標としてあるし。

 

「ちなみに歩くんはどうして今日付いて来てくれたんですか? いつもはアルバイトで忙しいって……あまり一緒に歩けないのに」

「今日は休みにした。行く理由は愛しのPAさんと星歌さんに会うためッ」

「え゙ッ゙!?」

「冗談だよ。俺が好きなのはひとり、お前だ」

「すみません、流石にちょっと……」

「冗談だよ。初恋もまだな人間が今更マトモに恋心自覚できるわけないじゃん」

 

 というか普通に即答で拒絶したね、キミ。

 受け入れられても困るけどそれはそれで傷つくなぁ。

 俺に対しての図太さが最近やけに強化されてる気もするし。

 

「あれ? 歩くん、でしたっけ? 今日は結束バンドのライブはありませんよ?」

「PAさんこんにちはっ。別に結束バンドのライブに来たワケじゃないですよ~。ひとりのバイトの様子を見に来たのと、あと興味本位で他の方の演奏を聞きに来ましたっ。あ、今回はちゃんとお金払いますよ」

「はい、こんにちは。そうなんですね。では是非楽しんでください。チケット販売は……17:00には少し早いですけど特別に良いですよ」

「そんな……ありがとうございます。今度からはちゃんと時間に買うんで気にしないでください」

「ふふっ。前回も似たようなやりとりをしましたね。――はい、ドリンク込みで二千円です」

「えっと――はい、二千円です」

「はい、ちょうどですね」

 

 ……なんでこの人はこんなに親切なんだろう。

 いや、接客だからな。気にしないでいよう。

 

「少し、お話をしませんか?」

「え、仕事は良いんですか?」

「お気になさらず」

「じゃあ、せっかくなんで、是非」

「では……歩くんはどうしてひとりちゃんと一緒に?」

「出会ったキッカケですか? それは――」

「違います。出会っただけなら親しくなるとは限らないでしょう? それにその場で親しくなってもそれが長続きするとは限りませんからね。私が聞きたいのはその関係性を続ける、その理由ですよ」

 

 あ~……あ~? あ~。

 友人として居続ける理由ね、はいはい。

 気になった理由は、なんだろう。ひとりがバンドメンバーとの会話で時間かけて通学してることを話して、その時PAさんがライブハウスにいて~って感じかな?

 まあ、別に隠すこともないし、いっか。

 

「俺、見ての通り根暗な人間なんで友達が少ないんですよ。ひとりと出会った頃に至ってはゼロですよ、ゼロ。だからですかね……ひとりに頼られて応じたって言いますか。…………いえ、正直に言うと依存に近いと思います」

「驚きました。大人である私たちからすればその感情は一目瞭然でしたけど、自覚していたとは……」

「流石にひとりと同じ高校に通うために独り暮らし始めるのがおかしいことくらい自覚出来ますよ」

「独り暮らしなんですか?!」

「ええ。物心つく前に両親が死んで、それ以来伯母夫婦の家に住ませて貰ってたんですけど居心地が悪くて……ははは」

「ああ、だからですか……」

「はい?」

「いえ、お気になさらず」

 

 ま、気にしなくて良いってならいっか。

 ……で、なんの話だっけ?

 親の死、独り暮らし、異常自覚……ああ、依存だ。

 

「話を戻しますと。今でこそ多少友人が増えましたけど、それでも初めての友人であるひとりとの別れは惜しい……いや、違いますね。これは、そうですね。やっぱり依存に近いじゃなくて依存です。自分の友人になってくれた、もっといえば同族との傷の舐め合い……浅ましく思えるでしょうし、実際我ながら浅ましいとは思います。これは、孤独を紛らわせたいだけなんでしょうね……」

「ふふっ、無自覚なんですね」

「はい?」 

「それは孤独を埋めたいというモノではないですよ」

「……まさか恋だの愛だのなんで言いませんよね?」

 

 流石にそれは恋愛脳が過ぎるというか。

 

「まさか。……それは依存ではあります。ただ、それは他者に対する恐怖心が歪に変形しているだけですよ」

「それってどういう――」

「おっと、そろそろ仕事に戻らなくては店長に怒られてしまいますね~。それでは失礼します。お話楽しかったですよ」

 

 ……感情を変にかき乱された感じがする。

 誰だ天使とか言ったのは? 俺だ。

 俺のバカ! 悪魔じゃん! 小悪魔じゃん!

 なんで最後に耳元でささやいて行くのさ!

 色々モヤモヤしてた感情がアレのせいで一瞬ムラムラに変わりそうだったよ!

 そのあと感情全部吹き飛んで頭空っぽになっちゃったけど。

 

「歩……どうかした?」

「リョウ、だっけか。いやぁ、大人って怖いなぁ、って……」

「? よくわからないけど、ドンマイ?」

「おう、わかんないなら言わないでくれたまえ。思春期男子の心は繊細なんだ。てか仕事は?」

「新人が来たから惰眠を貪れる」

「店長さ~ん!」

 

 ……うん、ざまあみろ。

 せっかく空っぽの心のままライブを楽しもうと思ったのに――まだワリと空っぽだ。わぁい。

 

「ジンジャーエールで」

「は、はい――歩くん……」

「客。店員」

「はい……ジンジャーエールです」

 

 うん。勇気が切れかけてお客さんと目が合わせにくくなってたけどこの一旦のクッションで元に戻せたかな? 

 ……ん~、効果はいまいちかな?

 あ~、でも、まあ、笑顔を心掛けるって考えは戻ったかね。

 表情硬くなってたし。




如月慶人さん 氷英さん 完全無欠のボトル野郎さん
評価ありがとうございます
完全無欠のボトル野郎さんは感想もありがとうございます

正直今回は評価が割れる気がしています
前からそうですけどひとりの出番が少ないですし、歩を軸に据えた物語と言っていなかったので…
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