第一音♯
「それにしても変わった子たちでしたね~」
「さっきの二人か? さっき見るだけ見たが、まあ……」
粗方の準備を終え、余裕の出てきた二人はふとひとりと歩のことを話し始める。
「いかにも自信がない人付き合いの苦手そうな女の子と目の死んだ男の子。接点がわからない感じで面白いじゃないですか~」
「普通ああいうのは他者との交流を断つからな」
端的に言えばコミュ障。
誰の目から見てもそう映る二人の姿に対する認識。
「仲良くできますかね~?」
「それは本人たち次第だろうな。ただ女の子の方はヘタなことはしないだろ、できるほど強くは見えなかったし」
「あ~、わかります。多分奇行に走りはするけど周囲を気にするから自己完結型の奇行に限定されるタイプですよね~」
喜んだり怖がったりと百面相するひとりは紛うことなき奇人。
ただ前評のコミュ障、自分に自信を持てず周囲を気にするタイプという認識が周囲に大きな迷惑はかけないだろうという妙な信頼を生んでいた。
「男の子の方はわからんが、まあバンドメンバーじゃないならあまり気にしなくて良いだろ。それに世話役って感じに見えたからな」
ひとりを気にかけ、ひとりは歩の背に隠れることが多い。
多少の観察だけで曖昧ながら関係性は把握できた。
「ホント、どういう繋がりなんですかね?」
「さあ、類友か偶然じゃないのか?」
「でも店長としては少し不安じゃないですか?」
「どういうことだよ」
接点のわからない二人。
その未知性に面白がったPAが揶揄うようにくすりと笑う。
「虹夏ちゃんにわる~い虫が付くかもしれなくて」
「あ゙?」
悪い虫。
光景を想像に、殺気が漏れる星歌。
「ふふっ、冗談ですよ。多分男女の認識が薄い子ですし」
「……?」
「さっき軽く接してわかったんですけど、相手の全身を特に隠すことなく観察するんですよね彼」
「それは……デリカシーの問題じゃないのか?」
通常、相手をジロジロと見るのは失礼とされる。
見るとしても遠目に見る。
けれど歩は真正面からジッと、観察していることを隠さず、見た。
単純なマナー、デリカシーの問題ではないかと首を傾げる星歌に対してPAは首を横に振る。
「確かに私も初めはちょっと不快だな~って思ったんですけど、どの部位に対しても基本的に向けてくる秒数が一定なんですよ。髪色とかピアスとかで多少時間が増えることはあっても胸とかに眼が向くことはない、意図的に避けてる感じでもないんですよ」
「変わってるな。見た目もスタイルも良いお前相手ならあのくらいの歳の奴はそういう目を向けるだろうに」
容姿が整っていて。
胸も特別大きいワケではないがゆったりとした服の上からでもわかる程度にはある。
思春期真っ盛りの男子高校生には通常であれば避けられない感覚。
けれど歩にはそれがなかった。
「どうやら初恋もまだらしいですよ」
「感受性の問題だったか」
感受性。
女という認識はあっても、異性という認識はない。
あくまでも一個体。一個人。
ただの特徴の一つとして重要視していない。
「男女の区別があまりなさそうというか。性差による区別的部分はあっても普段の対応として男女を意識しないと思いますよ」
「まあ、そういう年頃だしな」
思春期ゆえの自分に対する特別視。
他とは異なる。
今回でいえば、女だからと対応を変えるようなありふれた感覚ではない。
という思い込み。
キャラ付け。
「ん~、多分違いますね~。私も良くはわかりませんけど思春期だから、というのとはまた別だとは思います」
「勘じゃないのか?」
深く接していない、それどころか会話の一つもしていない。
見て、会釈し、観察され、観察し返し。
ただそれだけ。
「勘です。ただ、不安なら次にでも軽く様子でも見ましょうか? 話をするだけですし」
「……頼んだ」
「は~い」
第二音との整合性部分
星歌は第二音において「ん? 誰だ?」と言っていて、第一音と第二音の間である今話においては遠目ながら歩のことを認識していることが判明しました
これは矛盾ではなく、あくまでも直接やりとりをするのは初めてだから前提知識はないモノとして振舞っている、ということです
初対面なのに相手だけ認知してきている、という状況にならないための配慮
こっちは知らないのに相手は名前も特徴も知ってるって恐怖よね(学生時代の実体験)
マジでなんなの、アレ? 未だにわからん
しかも少人数じゃなくて結構な数に……
同級生もだし、後輩も。しかも接点ナシ
流石にこえーよ