ハンマー少女はバズらない! 固有スキル【隠遁】で自由に探索してたら伝説になってました 作:chikuwabu
「これはこれは、すごい量の食料ですね」
ここは妖精の国の、女王の間。
桃子たちが運び込んできた大量のチキンとケーキに目を丸くしているのは、虹色の蝶の羽根を持つ、妖精たちの女王、ティタニアである。
ティタニアは珍しそうに桃子たちが持ってきた荷物の周囲をぐるりとまわってそれを確認してから、ふわりと花弁の玉座まで舞い戻る。
「ええと、今日は12月24日でクリスマスイヴなので、ご馳走を沢山準備しちゃいました。あ、でもクリスマスって妖精の国じゃ伝わらないですかね?」
「クリスマス、ですか。私は一応知識としては存じておりますが、人間の宗教とはあまり縁がありませんでしたから、詳しいことまでは……」
「あ、いえ、確かにクリスマスは聖誕祭なんですけど、この場合はそういうわけでもなくて。ええと、なんと説明したものやら」
ティタニアは、元々は海外に住んでいた妖精である。
また、先代の女王が絵本などをよく読み聞かせしていたようなので、その題材としてもよく名称の出ていたクリスマスというものには多少なりとも理解を示している。
が、今回の桃子たちの言うクリスマスとは日本のイベント行事としてのクリスマスであって、言ってしまえば宗教的な意味合いなどほぼ持ち合わせてはいない。サンタクロースも日本では聖人ではなく、不思議なプレゼントお爺さんだ。
「聖誕祭で、皆で祈りを捧げる日なのですよね?」
「本当はそうなんですけどね。ただ、殆どの日本人はそういうの関係なく楽しんでるというか、なんというか。日本人には昔から、八百万の神というのがいまして……」
宗教の聖誕祭にかこつけて、宗教に全く関係ない楽しみ方をするという日本の文化を、どう説明したものかと桃子は頭を悩ませる。
そのためにはまず日本人の宗教観を説明しようと、おそらく長い話をはじめようとした桃子を手で制して、助け舟を出したのが柚花だ。
「先輩。いいじゃないですか、とりあえず今日は美味しいものを食べて、プレゼントを交換する夜ってことで。おいおい知って貰えればいいんじゃないですかね」
「ん、それもそうだね。ええと、じゃあ物凄くざっくり説明しますと――」
「ふふふ。だから房総ダンジョンの第一層が、本日は非常に賑わっているのですね。人間にとっては楽しいイベントごと、ということですね?」
「はい、そうなんです。それで、今日はご馳走を持ってきたんです」
桃子による簡単な説明だけで、ティタニアはきちんと伝えたいことを理解してくれた。
家族や友人、恋人たちとケーキやチキンのようなご馳走を食べて、もみの木を飾り付けて、夜は子供にサンタクロースからプレゼントを渡す。簡潔に言ってしまえば、これだけのことである。
ティタニアが下手に宗教的な意味のクリスマスを知っていたために余計に説明が難しくなってしまったが、とりあえず本日の趣旨は理解をしてくれたようだ。
「それで、これを妖精の皆だけじゃなくて、他のダンジョンのお世話になった人たちとか、頑張ってる人たちにも配っていきたいなって思ってるんです」
「なるほど。つまり、サンタクロースとして、チキンとケーキを入れて配り歩くのですね? サンタクロースは昔、お母さまがお話を聞かせてくださいました」
「先輩、サンタクロースになるんですか?」
「う、うーん……まあ、ニュアンス的には間違ってはいない、かな?」
どうやら、ティタニアはサンタクロースのことは知っていたようである。
サンタクロースの元になった聖ニコラウスのクリスマスのお話自体はすでに200年前から出版されていた筈なので、先代女王が読み聞かせていた中に、サンタクロースに関わる物語もあったのかもしれない。
別に桃子はサンタクロースになるつもりはないし、そんな発想すらそもそもなかったものの、しかしクリスマスに袋に入れたプレゼントを配るという行為だけ見ると、なるほど確かにサンタクロースである。
「ふふふ。桃子さんらしいですね、応援しておりますよ。その間に、妖精たちにはクリスマスのことは私が説明しておきますね」
「助かります、ティタニア様」
「では先輩、そろそろヘノ先輩たちも来る頃合いですし、さっそくケーキとチキンを持って行きましょうか。まずはどちらに?」
「うーん、やっぱりまずは、あそこかな?」
女王ティタニアの理解を得られたので、次はさっそくケーキとチキン配りである。
そして最初の行き先。まず何はともあれ、最近仲良くなったものたちに挨拶がてらケーキを渡しに行こう、というのが桃子の提案だった。
「柚花。おぬしは出入り禁止だと伝えたはずじゃがのう?」
のどかな森の中に建てられた東屋にて、恰幅のいい白髪の老人が、どっしりと胡坐をかいて葉巻を吸っている。
その横に、まるで孫の様に座っているのは柚花だ。柚花の肩には、蒼く光る水の妖精、ニムも腰を下ろしている。
「お爺ちゃん、そんなこと言わないでくださいよ。私とお爺ちゃんの仲じゃないですか♪」
「うぅ……柚花さん、狸の長さんと、そんなに深い関係だったんですねぇ……」
「そういう人聞きの悪い言い方はやめい。また若い衆が変な勘違いをして、困るのはわしらじゃぞ」
ここは香川ダンジョン第三層に隠れて存在する、化け狸の隠れ里だ。
桃子が最初にチキンとケーキを運ぶ先として選んだのは、つい先日色々とあったこの土地であった。
あのうどん大会フェス祭りにて、クヌギは最終的には妖精女王ティタニアの手によって救われた。それをきっかけに、化け狸の長はまず、妖精女王ティタニアとの友誼を結ぶことを選択したのである。
その結果として、光の膜を通じて妖精たちは自由にこのダンジョンを訪れることが出来るようになったし、逆にポンコのように、化け狸が妖精の国へ訪れることも可能になった。とはいえ、現状堂々と妖精の国へと入り浸るのはポンコくらいだが。
よって。今のこのダンジョンは、化け狸の治める土地であり、そしてそれと同時にティタニアの力の及ぶ範囲にもなっていた。
「そうだお爺ちゃん、ルイさんから新作の薬草煙草を貰ってきましたよ。また感想が欲しいみたいです」
「やれやれ、話を聞こうともせん。人間の娘というのはこういう所が苦手じゃわい……」
なお、化け狸の長は、柚花に対して出入り禁止を通達していたのだが、普通に柚花は里へと入ってきた。通達などガン無視であった。
とはいえ、実際に長としても軽口交じりの通達ではあったし、柚花が化け狸に対して何か敵対行為をしでかしたとかいうことでもない。
単に、大狸の姿をした長の毛皮に柚花が身体を埋めて恍惚としていたところを、里の若い雄たちに目撃されていただけである。そして気づけば、長が人間の若い娘を侍らしている、などといった、頭の痛くなりそうな噂が広まってしまったのだった。
当然ながら長は否定したのだが、どうやら化け狸の里においても噂というのは否定すると余計に延焼することがあるようだ。
すでに里の若い雄たちの中では、柚花は長のお気に入りの雌、という認識になってしまっている。なんなら今日の柚花の来訪も、その噂に一役買っていることだろう。
さすがにこの程度の噂で怒るほど懐が狭いわけではない。だがそれはそれとして、噂を鎮火するどころか燃料を加えるのは勘弁してくれ、というのが長の本音であった。
一方、長たちがいる東屋の、その外では。
「桃子師匠、すごい、すごい! これ、ケーキじゃないっすか!」
「あ、ポンコちゃんはケーキは知ってるんだね。まあ、飾りも少ないシンプルなケーキだけど、狸の里の子供たちで食べて欲しいなって」
ホールケーキの箱を2つ持ち込んだ桃子が、ポンコにケーキを箱ごと手渡していた。
以前ここに来たときは、狸の子供たちが人間のお菓子を大絶賛していた。つまりは、化け狸も子供たちは甘味を好む、ということである。
なら、クリスマスのケーキも食べて喜んで欲しい、というのが今回の桃子の思惑であった。
なお、ケーキやチキンも量が量なので安い金額ではなかったが、各地のダンジョンで拾った素材がかなりの金額になったために、桃子としては各地のダンジョンへのお礼も兼ねていた。
「たぬき。知ってるか。今日は。クリスマスイブなんだぞ」
「もちろん、ポンもそれくらい知ってるっすよ。クリスマスには、男女二人組の探索者さんたちがダンジョンのうどんを食べにくる日っす」
「それは初耳だな。桃子。知ってたか?」
「ごめん、私も初耳だったよ」
桃子にとってのクリスマスは、家族や友人と過ごす日のことだが、しかし世の中ではクリスマスは恋人の日と考える人が多いのも当然理解している。
だがしかし、クリスマスのデート先としてダンジョン内のうどん店を選ぶという発想までは、流石に理解していなかった。
探索者というのはどれだけ楽しそうに見えても、その実、探索中は常に危機と隣り合わせである。そんな中で、共に助け合った男女の間に友愛以上の感情が芽生えるという話は、珍しいことではない。
柚花に言わせれば下心を持つ出会い目的の探索者として嫌悪の対象なのかもしれないが、それをどう捉えるかはともかくとしても、探索者のカップルというのは少なくはない。
しかし、だからと言って。
「クリスマスデートにダンジョンに潜ってうどんを食べるのかあ。恋人同士って、それでいいの?」
それでいいの? と訝しんだところで、実際にこの日はカップルの探索者が多いのだから仕方がない。
残念ながら、大人の恋愛を理解するのは、そして大人のうどんクリスマスを知るのは、まだ桃子には早すぎたようである。
「たぬき。ところで。新しい師匠は。どうしたんだ。今日は修行はないのか?」
「はい、実は二郎師匠は年末の1週間くらいは多忙の極みらしいので、修行は年明けからっすよ。なのでポンは今夜は妖精の国に立ち寄ってから、父ちゃんのところに遊びに行こうかと思うっす」
「たぬき。ちゃんと。妖精の国を通るときは。女王に挨拶していくんだぞ。あと。細いうどん。まだか」
「すっかり忘れてたっす! こんど二郎師匠にも相談してみるっすよ」
ポンコはあのあと、改めてうどん四天王と話す機会を設けてもらい、母親の話を色々と聞くことが出来たらしい。
そしてそれと同時に、彼らからうどんを学び直すことにしたのだそうだ。
とはいえ、炎城寺マグマ、フリーレン氷河の作るうどんは辛さと冷たさに特化しているので、初心者であるポンコが学ぶには適さない。風祭えあろのうどんも彼女の魔法ありきなのでやはり適さず、結果的に地道な地属性の田中二郎の弟子という話に落ち着いている。
田中は年末は何かしらのイベントで忙しい為、ポンコの本格的な修行は年明けからになるようだが、一応既に基礎的なことは色々と教わっているらしく、ポンコは毎日楽しそうにうどんを作っている。
化け狸の彼女には【うどん製作】などという便利なスキルは発生しないのだろうから、ポンコのうどんは1から全てを手作業で行わねばならない。しかしポンコに言わせればその苦労すら楽しいのだそうだ。
この分なら、彼女のうどんが本当の意味で多くの人を笑顔にする日もそう遠くはないかもなと、桃子は思う。
なお、ポンコの父親であるクヌギは一命を取り留めたが、長期的な療養のために遠く東北の山村にある『桃の窪地』に居候中である。
ポンコが父親のクヌギに会おうとすると妖精の国を経由することになるので、ヘノが言うには最近なにかと用件もないのにポンコが妖精の国を訪れるらしい。
女王ティタニアはにこやかに迎えているようだが、化け狸の長としてはポンコが妖精に不興を買わないかと内心ちょっと心配をしているようである。
でも、きっとその点は大丈夫だろう。
ポンコはあっという間に妖精たちに打ち解けて、なんなら一緒に畑を耕していた。
愛すべき隣人として、妖精と化け狸は、これからもやっていけるに違いない。
【遠野萌々子ちゃん貼り付けスレ6】
:またきてね萌々子ちゃん(イラスト)
:声のイメージ本当にぴったしだった
:守る会の連中、ちゃんと萌々子ちゃんに心が通じてたんだなって思って泣けてきちゃった
:配信カメラに興味深々の萌々子ちゃん(イラスト)
:やっぱり配信者が霊媒体質だと萌々子ちゃんも力が増したりするんだろうか
:あの切り抜き動画の子、霊媒体質なのか?
:タチバナの配信はちょくちょく謎の女の声が入るから。ガチで。
:何それ怖い
:唐突だけど冬の新刊 萌々子ちゃん本つくります(イラスト)
:このスレの古参絵描きT氏
:更に予定になかったけど追加のペーパー本、萌々子ちゃんとポンポコ狸ちゃん(イラスト)
:急な新キャラに困惑
:合体して萌々ポコちゃんですね
:せめて萌々ポンちゃんにしてさしあげろ
:可愛いけどなんでいきなり狸 化け狸?
:最近、インスピレーションが沸く出来事がありました あと弟子が出来た
:なんの弟子だよw
:それはもちろん、萌々子絵師の弟子だろう
:クリスマス萌々子ちゃん(イラスト)
:イイ
:サンタルック可愛い
:サンタになってクリスマスプレゼントを持ってきたけど、屋根の煙突につっかかってしまった鎧萌々子ちゃん(イラスト)
:スパイがいるぞ!
:房総半島へ送り返せ!
:ハンバーグ投げつけんぞ!
:もう半ばテンプレで草