ハンマー少女はバズらない! 固有スキル【隠遁】で自由に探索してたら伝説になってました   作:chikuwabu

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後方応援系アイドル

【チームインディ配信 コメント抜粋】

 

 

:転がってきたw 逃げろ逃げろww

 

:まって

 

:なんですかこの岩

 

:なんでみんな楽しんでるんですか

 

:ネタバレすると、この岩は見た目が派手なだけで、今までこの転がる岩で怪我をした探索者はいないんだ。

 

:殺傷目的ではなく、どちらかというと探索者を後退させないための罠っていう説が濃厚

 

:まあなw それでも、あれに追いかけられたら怖いし万が一を考えちゃうから、みんな滅茶苦茶走るんだけどねw

 

:そうこう話してる間にもうすぐ着くぞ

 

:到着

 

:え

 

:何か映った

 

:白布が二人の間を抜けてったぞ

 

:おいおい

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

:さっきから二人の会話の合間合間で変なノイズが入るんだが。

 

:偶然じゃないよな。明らかに、インディたちの会話と呼吸が合ってる。

 

:メジェド様が会話に参加してるの? してない?

 

:インディたちが本当に鍵を持ってることも初耳だけど、情報が多すぎて困惑するしかない

 

:何にしても、こいつら本当に下層に向かう気だ。ギルドに報告しろ 二人で下層に行くとか頭いかれてんのか

 

:鳥取ギルド職員です。既にギルドも把握済みで、テントと連携して万が一の救助隊派遣準備中です。

 

:待って、メジェド様をつれて扉を開けるってこと?

 

:中にはスフィンクスがいるんだろ?

 

:会わせて大丈夫なのか?

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

:画面に何も映らなくなったぞ。

 

:あー これは魔力溜まりに入ったな 地上で言うなら異常磁場で電子機器が駄目になるみたいなもん

 

:下層が魔力溜まりになってるのはよくあることって言うけど

 

:あ、配信切れた。通信が魔力溜まりで駄目になったか。

 

:結局何もわからないままじゃないかよ

 

:今は誰かピラミッドに向かってる奴いるのか? 最悪、あいつらを誰かが救助しないといけない。

 

:さっきギルド職員が既に対応済って書き込んでた

 

:大丈夫なんですかね

 

 

 

 

 

 

 

 熱気の立ち込める砂丘ダンジョン第二層『熱砂砂漠』の砂の大地を、三人の少女たちが歩いていた。

 少女と言っても、ギルドで販売されている日差し避けのフード付き外套を羽織っている為、その容姿は傍目には他の探索者と区別はつかない。三人のうちの、一人を除いては。

 

「カリンさん、その外套わざわざ準備してきたんですね……」

 

「本当、その気合をさー、もう少し勉強とか、勉強とか、勉強に使えないのかしら」

 

「は、配信中に勉強の話はやめてよ~……もう、暑くて文句もでないけど」

 

 三人のうち二人が、ギルドで販売されているオーソドックスな亜麻色の外套を被っているのに対し、うち一人は、かなり特殊な衣装を着用していた。

 パステルライトな水色のフードつきマントに、ひらひらとした布地を縫い合わせ、更には所々にピンクや黄色のリボンが縫い付けられた代物だ。もはや、魔法少女アニメのコスプレと言われても違和感のないような、オリジナルの外套を羽織っていた。

 彼女はカリン。自称、次世代のトップアイドル配信者だ。

 

「配信といえば、そもそもカリンさんがカメラ持ってるんだから、その衣装て画面に写ってなくないですか?」

 

「ならクルミちゃんかリンゴちゃんがカメラ装着してよー……」

 

「嫌ですよ、邪魔ですもん。タチバナさんみたいにドローンカメラ使いましょうよ」

 

「あんな高いもの買えるわけないでしょ! 自動車買えるお値段なんだからね~!」

 

「二人とも、あんまり喋ってると喉が乾燥するわよー?」

 

 自称アイドルであるカリンの提案に対し、短めに揃えた髪で中性的な雰囲気を持つ少女――クルミが、バッサリと切り捨てる。

 そしてその二人を先導して歩くのは、彼女たちのリーダー役の長身の少女、リンゴだ。彼女が後ろの二人にヒートアップしすぎないよう、声をかける。

 

 彼女たちは名もなき三人組パーティだ。

 ちょうどケーキの材料のような名前が揃っているのをいいことに、カリンが勝手に『フルーツ☆タルト』と命名しているが、実はカリンが一人でそう名乗っているだけである。

 尤も、普通に美少女であり喋ればポンコツ丸出しのカリンの配信はそれなりに人気が高く、それに比例して『フルーツ☆タルト』というパーティ名も認知されてきている。クルミとリンゴの二人は、それに対しては呆れ半分、諦め半分といった感じで、どうやらパーティ名に関しては外堀を埋めるのに成功したカリンの勝利のようだ。

 このように、かなりの温度差を持つメンバー同士だが、しかしプライベートでは互いのバースデーにはプレゼントも贈り合うし、クリスマスは当然のように一緒に過ごすし、互いの部屋にお泊りに行ったりするくらいには相性が良い。

 そんな、実に不思議な関係性のパーティだった。

 

 そんな三人はいま、第二層のオアシスを目指して歩いている所なのだが、第二層の入り口から歩き始めておよそ1キロほどだろうか。

 砂漠に慣れない三人はすでに足取りが重く、更には500メートルを越えたあたりから、砂漠の暑さで口数も少なくなっていた。

 

「よし、カリン。クルミ。ここでちょっと、決めちゃいましょう。これより先に向かうか、Uターンして第一層に戻るか」

 

「うー……悔しいけど、カリンはもう戻りたいなー。あの車、カートだっけ? レンタルしてからまた来ようよ~。パティシエさんたちもそう言ってるよ?」

 

「そうですね、正直言って、砂漠を甘く見て……」

 

 クルミが額の汗をぬぐいながら、周囲に広がる砂漠を見つめる。

 しかし、その言葉が途中で途切れて。

 

「クルミ?」

 

「あー、Uターンどころじゃなさそうですよ。そこの砂、動いてますよ。これって……」

 

 クルミが言い終わるのを待たずに、三人から30メートルほど離れた地点で砂が弾け飛び、そこから巨大な影が身を躍らせる。

 それは、この砂漠の代名詞。砂を泳ぐ、巨大な砂ミミズ。

 

 サンドワームがあらわれた。

 

「あーもう! 分かった、分かったよ~! 戦えばいいんでしょ、カリンの活躍が見たいんでしょ! パティシエさんたち、応援よろ~♪」

 

「カリンさん、あまり前に出ないで。魔法の援護はお願いしますね!」

 

「ふう、まだ体力あるうちで良かったわー。ま、いっちょやってみますか」

 

 うら若き女子高生たちとはいえ、彼女たちもまたそれなりに実力に恵まれた探索者たちだ。

 慣れない砂漠と、体力を奪う熱の中での戦いは初めてだが、サンドワームは待ってくれない。

 配信を見ているパティシエ――視聴者たちが慌てふためく中で、戦いの火蓋が切られるのだった。

 

 

 

 

 

 一方、少女たちから数百メートルほど離れた砂漠の地に、一台のカートが走っていた。

 カートに乗っていた半ばぼんやりとした二人組の男たちが、砂漠の先に現れたサンドワームの姿を目撃する。

 

 そこに、男たちは違和感を覚える。

 

「……おい、インディ。あっちのサンドワーム、動きが妙じゃねーか?」

 

「ん? ……本当だ、誰かが戦っているみたいだが。俺たちも行ってみるか?」

 

 遥か先に見えるのは、砂から飛び出て暴れているサンドワーム。

 どうやら誰かしら別な探索者と戦っているようだが、しかしなんだか見慣れたはずのサンドワームの動きがおかしいのだ。

 妙に、そう。ゆっくりなのだ。気のせいでなければ、いつものサンドワームと比べても大分動きが鈍いように思えた。

 

 半ば夢を見ているようにぼんやりとした頭でカートを漕いでいたインディたちだが、新たな『謎』によって意識が急速に覚醒していく。

 彼らの次なる目的として、『動きが鈍いサンドワームの謎解明』が設定された。

 

 

 

 

 

「がんばれ~♪ クルミちゃんにリンゴちゃん、ふぁいと~♪」

 

「おーい! さっきのアイドルちゃんか! 凄い格好だけど、そんな格好で熱砂砂漠なんか降りてきて大丈夫なのか?」

 

「あ、視聴者泥棒!! 何でこんなところにいるの?!」

 

 砂漠の中をカートで駆け抜け、妙な動きのサンドワームの元へとたどり着くと、そこには見覚えのある顔があった。

 やたらとパステルカラーのヒラヒラしたフードで顔以外は隠れているが、しかしその声を聞けばやはり間違いない。第一層のテントで出会った、ぴょこぴょこと動くツインテールが特徴的な、自称アイドルの少女である。

 テントで見た際もリボンやフリルが目を引く衣装だったのだが、今はパステルカラーの外套が、この色の少ない砂漠では非常に目立っている。しかも、その外套にもリボンやフリルがこれでもかと縫い付けられていた。

 どう考えても動きづらそうなのだが、それが分かったうえで尚、己のアイデンティティの為にこの華やかな外套を用意してきたのだとしたら、なかなか気合が入った少女ではないか。

 

「おいジョーンズ、やっぱりサンドワームの様子がおかしくないか?」

 

「あ? そうだ、なんかこのサンドワーム妙に動きがぎこちないような……」

 

 インディとジョーンズがカートから降りてサンドワームの方を確認すると、それは見た目だけならば、いつもと同じ見慣れたサンドワームである。

 それに立ち向かっているのは、このアイドル少女の仲間であろう二人の年若い少女たち。ショートカットで中性的な雰囲気の少女はオーソドックスな剣を使い、もう一人の長身の少女はリーチのある槍で敵を牽制している。

 だがしかし、インディたちがどうにも気になってしまうのは少女たちではなく、サンドワーム側だ。明らかに、挙動がいつものサンドワームとは違っていた。動き自体は隙だらけで弱そうなのだが、実に異質だった。

 これは一体どういうことかとサンドワームを見ていると、しかしその男二人に向かって、なんとすぐ横合いから魔法が放たれる。

 

「っていうか、おじさんたちも見てないで戦ってよ! え~い! トゥインクル☆フラッシュ!!」

 

「おおっ?! ……なんだこれ?! どうなってんだ? なんだかすげえよく見えるぞ?!」

 

「これは……補助魔法の使い手か、珍しいな。よし、ジョーンズ、ここは俺たちがサンドワームの倒し方を教えてやろう」

 

 トゥインクル☆フラッシュ。

 

 インディの知識の中には、そのようなファンシーな名前の魔法は存在しないので、あくまでこのアイドル少女オリジナルの名称なのだろう。

 服装と同じく妙にファンシーな杖を持った姿は、アイドルというよりは魔法少女然としたものだが、それはこの際どうでも良いことだとインディはその思考を頭から振り払う。

 彼女が使ったこれは身体強化の補助魔法。特に、視覚強化か、それとも反射神経強化か。スポーツでは超集中状態をゾーンと呼ぶことがあるが、この魔法は対象をそのゾーンに入り込ませる効果のようだ。

 

 また、これは後から聞くことになるのだが、サンドワームの動きが遅いのもカリンの魔法による妨害であった。

 カリンの魔法適性は、補助魔法特化タイプ。

 いざ戦闘になると最初に敵味方に魔法をかけて、あとは離れて応援だけ行うという、なかなかに特殊な見せ場のアイドル配信者である。

 なお余談であるが、当初は弓で援護射撃を行っていたのだが、カリンのへっぽこ射撃では前線で戦うクルミとリンゴの身が危険なため、カリンは援護射撃の禁止を言い渡されているのだった。

 

 それはさておき、インディたちはサンドワームを見上げる。

 

 彼らの腕前ならば強化などなくともサンドワームに後れはとらないのだが、せっかく強化をして貰ったのだ。

 ここはひとつ、大人としていいところを見せねばと、インディとジョーンズの二人は前線で戦う少女たちをカバーする様に横からサンドワームの注意を引き付けて、少女たちへと大ミミズ討伐のレクチャーを始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「ってなわけで、こいつは動きにさえ気を付ければ大したことはねーのさ」

 

「そして弱点は、この首の付け根に当たる部分だな。胴体へ攻撃してもいいが、こいつは二つに分断されてもすぐには死なないくらい生命力が強い魔物だから、あまりお勧めはしない」

 

 巨大なミミズが端の方から煤へと変貌していくが、流石にサイズが巨大なだけはあり、その身体が全て消えるまではまだしばらくかかりそうだった。

 その間に、インディたちは愛用の曲刀でサンドワームの身体の箇所を示し、倒し方や素材の入手の仕方などをレクチャーしていく。

 ついでに、煤になる前に牙などの素材を曲刀ではぎ取ることも忘れない。

 魔物の素材の入手方法は様々だが、煤になる前に身体からはぎ取っておくだけで採れるタイプの素材は、はぎ取っておくに越したことはないのだ。

 

「んでもって、牙やら皮やらは素材として持って帰るといい小遣いになる。ほらよ、これはお嬢ちゃんたちの戦利品だ」

 

「ありがとうございます、助かりました。高速バス代の足しになります」

 

「バスで来てるのか。若い子はタフだな……」

 

「ほらカリン、アンタもお礼言いなさいね。助けて貰ったんだからさ」

 

「この二人って視聴者泥棒なんだけどな~。まあ、ありがと」

 

 前線に立っていた少女たちは実力的には問題なかったのだが、慣れない砂の足場と灼熱の太陽、そして弱点が分からないタフな魔物という三重苦により、苦しい戦いを強いられていた。

 補助魔法特化のアイドル少女は戦闘中は後ろで応援しているだけ。苦戦する前線二人にとっては、この熱砂砂漠の魔物を知り尽くしているインディたちの参戦は渡りに船であった。

 少女たち、クルミとリンゴがインディたちに向けて頭を下げると、渋々アイドル少女――カリンも頭を下げて礼を言う。が、しかしそれはそれ、これはこれ。

 カリンの配信の最中に自分たちの配信をアピールするという悪行を行ったおじさん二人に対して、ジト目を向けるのも忘れない。

 

「いや、視聴者泥棒は事実だ。申し訳ない。今思えば他人の配信で自分の配信開始をアピールするとかマナー違反だったな」

 

「すまん! あんときは俺たちもちょっと、テンションがおかしかったんだ! 悪ぃ!」

 

「違反も違反、超違反だよ! まあ、おじさんたちの配信終わったらパティシエさんたち戻ってきたからいいけどさ~」

 

「そっか、それなら良かった!」

 

「いや、良くないだろジョーンズ。彼女には、後日ちゃんとお詫びの品をだな」

 

 言い訳のしようもない。

 インディはその時を思い返して、自分のことながら実に苦々しい顔を浮かべる。大人として後から考えてもあれはマナー違反であったし、ただの記録配信を主としている自分たちと違って、配信者の少女にとってはそれこそダメージもあったことだろう。

 調子にのりがちなジョーンズに代わって、インディは更に詫びを入れることを約束する。

 

「べ、別にそこまでしなくてもいいんだけど……。あっ、そんなことより、おじさんたち何でここにいるの?」

 

「そうですよ。お二人とも、上層のキャンプで、お二人を救助に行くパーティが結成されていたようですが、どうしてここに?」

 

「ん? 俺たちを? なんでだ?」

 

「なんで、と言われましても……」

 

 そろそろ目の前のサンドワームの全身が煤へと変貌し、空気中に溶けるように消えていく。

 最後に砂の上に残ったいくつかの魔物素材や魔石を拾い集めながら少女たちとおじさん二人は話し続けていたのだが、しかしどうやら少女によれば、インディたちは救助対象だったらしい。

 そんなことを露程も知らなかったインディたちは、逆に少女たちに聞き返してしまうが、少女たちだって質問に質問で返されても困る。

 

 だがしかし、それについてはカリンには頼れる味方がいた。

 

 カリンは自分の配信用子機を取り出しその画面を見せる。

 配信用の子機は、端末を取り出さなくても受け取ったコメントをすぐに確認できる優れものな小型アイテムだ。

 そこには、実は今も絶賛生配信中だったカリンの配信につけられたコメントが、止まることなく流れていく。

 

「ほら見てこれ! 浮気してたパティシエさんたちがコメントくれてるよ。おじさんたち、第三層の一番奥の部屋に入ったところで配信が途中で途切れて……えと、あんぴ不明? になっちゃったってさ」

 

「マジか?! 俺たち自分の配信見てないんだよ、詳しく聞かせてくれないか!」

 

「えー? 教えてあげてもいいけど、じゃあそのカートに乗せてよ~。もう無理、この砂漠で死んじゃう」

 

「カリンさんに乗っかるようで申し訳ないですが、カリンさんへのお詫びというのなら確かに、カートに乗せて頂くのが一番助かります」

 

「そうね……。歩いて上層まで帰るくらいの体力はあるけど、正直汗だくで……今からオアシスに行く選択肢は、ないわねー」

 

 インディたちの参戦もありサンドワームを危なげなく倒せた少女たちではあるが、実は彼女たちは既にクタクタだった。

 この熱砂の砂漠で、慣れない大型魔物と戦っていたのだ。カリンは戦闘中も応援だけだったが、フリルのついた外套で大きな声で応援をするのはそれはそれで大変なのだ。結果として、三人とも汗ダクだ。

 カリンへのお詫びの品を後で見繕うくらいならば、いまそのカートに乗せて欲しい。楽して上層まで帰りたい。それがこの少女たち三人の、共通見解である。

 

「構わねえが、このカート四人乗りなんだ。俺の膝の上にでも座るか?」

 

「もしもしギルドですか? セクハラおじさんを通報したいんですけど」

 

「わ~冗談だって! ギュウギュウに詰めれば乗れるから、乗ってけ乗ってけ! 通報は勘弁な!」

 

「ジョーンズ、お前本当にそのうち通報されて、教授に顔見せできなくなるぞ……」

 

 女子高生相手にすぐに調子にのる己の相方の姿に、頭が痛くなってきたインディである。

 

 ちなみにその後。

 

 救助対象として扱われていたインディとジョーンズが、まさかの女子高生たちと共にキャッキャウフフと楽しくおしゃべりしながら第一層の中継キャンプへと戻ってきたことで、彼らは色々な人から超ハチャメチャ大目玉を食らうのだが、それはまた別な話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【一方その頃、スフィンクスの間】

 

 

「じゃあ、火からいったん下ろしますね。よいしょ、と」

 

「桃子。カレールーは。準備しておいたぞ」

 

「さすがヘノちゃん! 大好き!」

 

『して、次はどうするのだ? 我にもその秘技と言うものを、見せてみよ』

 

「信じて混ぜる! 信じて混ぜる!」

 

 

 

 

「やれやれ。キミたち、ボクがいない時間に、とうとうカレーを作り始めてしまったのでは、ないかね?」

 

「あ、リドルちゃんお帰りー」

 

「お前。どこまで行ってたんだ。遅いぞ」

 

「思うのだが。ボクはいつでもここに入れるのだから、試練に失敗したからと言って遠くへ飛ばさずとも良いのでは、ないかな?」

 

『すまんの。だが、それが我の役目よ。役目は果たさねばならんのだ』

 

「なるほど。それなら仕方ないのでは、ないかな?」

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