ハンマー少女はバズらない! 固有スキル【隠遁】で自由に探索してたら伝説になってました   作:chikuwabu

223 / 624
閑話/緑葉の妖精

「リフィ。お前。アイドルのところに行って。食べ物とか。作ってやって貰えないか」

 

「えー、嫌だヨ。リフィは桃子を手伝うとは言ったけど、知らない人間の相手をするなんて聞いてないヨ。話が違うヨ」

 

「だ、大丈夫ですよぉ……? あ、アイドルの、カリンさん、そんなに怖い、人間じゃ……ないですよぉ?」

 

「お前たちは、いつも人間と一緒にいるからそう思うんだヨ。人間なんて、葉っぱの敵ばかりだヨ」

 

「お前が。嫌だっていうなら。女王から頼んでもらうしか。ないな」

 

「そ、そうですねぇ……。リフィも、女王様の言葉なら、聞くでしょうし……」

 

「ず、ズルいヨ?! お母さまを使うのは、卑怯なのヨ!?」

 

 ある日、ヘノとニムが加護を与えてる人間たち、桃子と柚花が四角い機械を持って大騒ぎをしていたヨ。

 なんでも、知り合いのアイドルとかいうのが、どこかのダンジョンで迷子になってるらしくて、それを助けに行くって言う話だったヨ。

 桃子は変な人間。柚花は普通の人間だけど、妖精のことを分かってる。だから仲良くするのは嫌じゃないし、手助けくらい、するつもりだったヨ。

 

 でも、知らない人間のところで何日も食べ物を用意してあげる役目なんていうのは、嫌。やりたくないヨ。

 その人間が暴れたり、葉っぱを滅茶苦茶にしたり、悪いことを考えたりするかもしれないのヨ。リフィが捕まるかもしれないのヨ。

 

 お母さまは、パートナーの人間の絵を飾るくらいには人間の味方。だから、リフィが嫌だって言ったら悲しそうな顔をするのが目に見えてるのヨ。

 ヘノたちは、ズルいヨ。卑怯だヨ。

 リフィが人間に捕まって怖い目にあったら、ヘノたちをずっと恨むヨ。

 

 

 

 

 

 

 

「リフィ! 人間が、寝てるぞ! 意外と大人しいな!」

 

「寝てるときは、大体の人間が大人しくしてるものなのヨ」

 

「そうか! でも、前に妖精の国でずっと寝てたイビキ男は、イビキが滅茶苦茶うるさかったぞ!」

 

「あの人間が、異常だったのヨ」

 

 結局ヘノの頼みを聞いて、アイドルとかいう人間の所に行くことになっちゃったヨ。

 恐る恐る覗いてみたら、ノンが作った穴の中で、桃子よりも大きい人間がうなされて寝てたヨ。

 ニムの言った通り、パッと見では弱そうだし、暴れん坊でもなさそうだけど、リフィは騙されないヨ。油断したらリフィたちを閉じ込めて、食べるつもりかもしれないヨ。

 リフィは、ヘノたちみたいに簡単に人間に心を許す甘っちょろい妖精じゃないのヨ!

 

「リフィ、この人間、なんだか苦しそうだぞ! なあリフィ! よく見たら泣きながら寝てるぞ!」

 

「あーもう、フラムはうるさいのヨ。ダンジョンで迷子になって、気持ちが弱ってるだけだヨ」

 

 フラムがうるさいから、寝てる間に魔法をかけておいてあげたヨ。

 葉っぱの力は、人間の心の傷を保護して、心の痛みを穏やかにする力があるけど、こんな魔法使う機会なんて滅多にないのヨ。

 フラムがうるさいから、今回だけだヨ。

 

 

 

 

 

 

 

「カリン、こんな果物初めて食べました。ダンジョンって、こんな果物あるんだ」

 

「人間は、ダンジョンの葉っぱをもっとよくみるといいヨ。探せば。もっと色々な葉っぱが、あるヨ」

 

「葉っぱ……確かに、カリン、いつも配信とか、自分の活躍見せたがるばっかりで、葉っぱまでちゃんとみたことないや……」

 

 この人間の食べ物を作るのが、リフィの頼まれたこと。だから、種を植えればすぐに作れる木の実を幾つか植えておいたヨ。あとスーッとする葉っぱも沢山。

 人間はこの木の実を初めて見たなんて言ってるけど、この実はダンジョンの中だったら探せばそんなに珍しくはないのヨ。人間なんて結局、人間にとって価値の高いものばかり探したり、魔物と戦うことばかり考えてたりで、単に木の実を全然みてないだけヨ。

 この人間もやっぱり、葉っぱのことなんて全然見てないのヨ。

 

「知ってるヨ。地上では人間たち、葉っぱをどんどん伐採してるの。人の住むところには葉っぱがないの。悲しいヨ」

 

「あ……う……ご、ごめんなさい」

 

 暴れたりはしないし、なんだか落ち込んでるから、一応リフィがそばで見ててやるけどヨ。

 やっぱり人間なんて、葉っぱの敵なのヨ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、葉っぱ妖精さん。カリン、この島を探検しようと思うんだけど、大丈夫かな?」

 

「特に問題は無いと思うヨ。心配なら、付き添うくらいはするヨ」

 

「昨日さ、葉っぱ妖精さんが言ってたでしょ? 人はもっと、葉っぱを見た方がいいって。言われてみたら、カリン、ダンジョンのそういう所まで今までちゃんと見てなくて……」

 

 この人間の身を守るのが、リフィの頼まれたこと。だから、人間が島を見てまわりたいって言うのなら、その手伝いくらいはするヨ。

 こいつは今までは葉っぱのことなんて全然気にしてなかった人間だけど、リフィの話を聞いて反省したみたいなのヨ。

 そこまで言うなら、まあ。リフィだって、葉っぱのお話くらい、してやらないこともないヨ。

 

「ところで、葉っぱ妖精さんさ、なんだか面白い話し方するね」

 

「人間も、だいぶリフィたちに遠慮がなくなってきたヨ」

 

 なんか、最初に顔を合わせたときは不安でいっぱいだったくせに、今日はリフィに安心の気持ちで接してきてるヨ。

 寝てる間に、心が落ち着く魔法をかけてやってる効果が出たのかもしれないけど、なんだか馴れ馴れしいヨ。リフィは別に、人間と友達になったわけじゃないヨ。

 まあ、リフィが一緒だと落ち着くっていうのなら、一緒にいてやってもいいけどヨ。

 でもね、リフィはそう簡単には人間なんかに気を許さないのヨ!

 

 

 

 

 

 

 

「う、うぅ……カ、カリンさん、受け取ってくださいぃ……こ、このままだと、ス、スカイフィッシュに、食べられちゃいますよぉ」

 

「ええっ?! お水妖精さん、どうしたのそれ、何かの布袋?! わ、うわー!」

 

「これ、知ってるヨ。人間が夜にこの中に入って眠るやつだヨ」

 

 上の階層にやってきた人間たちと会ってきたニムが、『寝袋』っていうものを持ってきたヨ。

 力もちなわけじゃないニムにこんな荷物を持たせるなんて、やっぱり探索者っていうのは非道なのヨ。近付くのは危険ヨ。

 

「え!? みんな、みんなは大丈夫なの?! 無事なの?! 心配だったんだよ」

 

「大丈夫じゃない状態なのも、皆から心配されてるのも、お前のほうだと思うヨ」

 

 こいつは馬鹿かもしれないのヨ。一人で高いところから落ちて迷子になってる側が、なんで無事な人間たちを心配してるのヨ。

 その上、このあと寝袋を抱っこしてずっと泣いてるのヨ。この人間、弱虫で放っておけないヨ。

 寝袋っていうのは、案外寝心地悪くなかったヨ。

 

 

 

 

 

 

 

「けほっ……けほっ」

 

「ククク……ちょっとばかり、喉が腫れているねぇ……」

 

「人間。お前やっぱり、疲れがたまってたんだヨ。今日は島の探索はやめて、寝て過ごせヨ」

 

 人間が、なんだかずっとけほけほ言ってると思ったら、病気になってたヨ。

 リフィもある程度は薬草とか分かるけど、こういうのはルイのほうが詳しいから、ルイを呼んで貰ったヨ。

 ルイは人間を嫌ってるから、人間にちょっと意地悪言ってたヨ。

 リフィもルイの気持ちは分かるけど、こいつはそんな乱暴な人間じゃないから、あまりいじめないであげて欲しいのヨ。

 

 と思ったら、夜中にまた人間のこといじめてたヨ。まったく、しょうがない毒の妖精だヨ。

 

「人間、あいつもさっきまでお酒を飲んで酔ってるだけだから、あまり気にしちゃ駄目だヨ。ほら、寝袋で添い寝してやるから、もう一度寝るヨ」

 

「……うん、ありがとうね。葉っぱ妖精さん」

 

 こいつは、リフィがついてないと心配だヨ。

 リフィが毎晩魔法をかけてあげてるのに、弱いし、すぐに泣くし。早く、地上の仲間の所に帰してあげたいヨ。

 そうすればきっと、こいつは安全なのヨ。

 

 

 

 

 

 

 

「人間。空から何か、変な布が降ってきてるヨ」

 

「え、ダンジョンって空から布が降ってくるものなの?」

 

 ダンジョンだからって何でもかんでも降ってくるわけないヨ。

 お前の仲間が降らしてるんだヨ。全く、こいつは馬鹿だヨ。

 

「荷物が多いと妖精だけじゃ持てないヨ。仕方ないのヨ。魔物がきたら守ってやるから、人間も一緒に取りに行くヨ」

 

「守ってやるって……でも、葉っぱ妖精さん、そんな小さい身体なのに魔物と戦えるの?」

 

「カリンくん……私たち妖精は、人間よりは断然強いのさぁ……ククク」

 

「うふふ♪ わたしたち、植物の妖精だもの♪ 森の中なら、負けないわ♪ ほら、行きましょ♪」

 

 この後、リフィたちと一緒に空から降ってきた荷物を拾って回ったけど、意外と色んな所に落ちてて大変だったヨ。

 岩の隙間に落ちてたり、木の上に落ちてたり。探して回るのはそれなりに楽しかったから、いいけどヨ。

 荷物の中には食べ物が沢山入ってたヨ。やっぱり人間には人間の食べ物のほうが似合ってたヨ。美味しそうに食べてたヨ。

 これで、リフィがわざわざ木の実を作らなくても大丈夫になったのヨ。でも、なんだかちょっとだけ、ムカムカした気持ちになっちゃったヨ。不思議だヨ。

 

 

 

 

 

 

「守られてるだけじゃないって……カリンだって……戦えるよ! 私だって、リフィさんを守るんだからぁ!!」

 

「馬鹿、来ちゃ駄目……ヨ」

 

「カリンにも! リフィさんを! 守らせてよぉっ!! 馬鹿ぁ!! このっ! このっ!!」

 

 全く。カリンは、本当に。

 お前を守るためにリフィが頑張ってるのに、なんでお前が出て来ちゃうのヨ。

 

 でも、嬉しかったヨ。

 危ないところだったけどね。カリンと一緒に戦えるのは、楽しかったヨ。

 

 ずっとこうしていたい、なんて、思っちゃうところだったヨ。

 

 ヘノとニムの気持ちが、ちょっとだけ。わかっちゃったヨ。

 

 全く。

 

 本当に。

 

 リフィもきっと、どうかしちゃってるんだヨ。

 

 

 

 

 

 

 

「もう、会えないのかな……わ、私色んなこと、リフィさんに伝えたいのに……なんて言えばいいのか、わかんなくて」

 

「……カリンは、本当にお馬鹿な子なのヨ」

 

 言葉で言わなくとも分かるヨ。魔力を視れば、カリンが言いたいことくらい、伝わるのヨ。

 リフィなんて、たった数日、一緒に過ごしてただけなのに。それなのに、大好きになっちゃって、どうするのヨ。悪い人間に簡単に騙されないかどうか心配だヨ。

 本当に、単純で、素直で、馬鹿で、愛らしい子なのヨ。

 

「リフィは、色んなダンジョンで葉っぱを見てるヨ。カリンが、葉っぱを大事にしてたら、いつかまた会えるヨ」

 

「うん、うん……葉っぱ、大事にするよ! たくさん、おうちでも葉っぱ育てるよ!」

 

「それがいいヨ。きっといつかまた、会えるヨ」

 

 リフィは、ヘノたちみたいには出来ないけど。

 カリンのことは、ダンジョンで見かけたら、たまには見守ってあげることにしてやるヨ。

 仲間を大切にするんだヨ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タチバナぁ、このドローンカメラの設定教えてよーっ」

 

「カリンさん、散々ライバル宣言して煽っておいて最終的にタチバナさんに泣きつくのは流石に恥知らずすぎません?」

 

「タチバナさん、ごめんね。うちのカリンがお馬鹿で」

 

「いえ、この子がお馬鹿なのは承知してますから。ほらカリン、端末貸してください。その間、向こうの木陰で葉っぱでも見ててくださいね」

 

「わーい、タチバナってやっぱり優しいじゃん♪ 葉っぱ見てるね!」

 

 ニムに引っ張られて来てみたら、コラボ、とかいうのをやってるみたいだヨ。

 なんか、カリンは未知のダンジョンの入り方を見つけた報酬だかなにかで、新しいカメラを購入できたんだってヨ。

 人間の「配信」っていうのは今一つよく分からないけど、あのカメラが不思議な魔法みたいに、遠く離れた場所にこの景色を映してるらしいヨ。それに何の意味があるのヨ。不思議だヨ。

 でも。カリンはちゃんと、葉っぱも見てくれてるようで、嬉しいヨ。

 

 あっ、ニム。そんなに手を引っ張るなヨ。

 

 人間に見つかっちゃうヨ……!

 

 

 

「あっ……!」

 

「……元気そうで、なによりだヨ、カリン」

 

「……リフィさん……リフィさんっ……!」

 

「ぐえー! 死ぬヨー!」

 

 相変わらず、カリンのやつ、馬鹿だったヨ。

 あんなに強く抱きしめて、リフィを殺す気かヨ。圧迫されて、苦しくて死ぬかと思ったヨ。

 それに、相変わらず泣き虫だヨ。

 

 まあ。

 

 リフィも、嬉しかったから。許すけどヨ。

 

 カリン、これからも見守ってやるからヨ。

 

 沢山お日様を浴びて。沢山お水を飲んで。しっかり、真っ直ぐ。元気に育つのヨ。

 

 

 

 

 

 

   七章 空の妖精たち 了

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。