ハンマー少女はバズらない! 固有スキル【隠遁】で自由に探索してたら伝説になってました 作:chikuwabu
「茉莉子ちゃん、紅子ちゃん、安全なところで待っててね! すぐにやっつけちゃう!」
「も、桃子ちゃん……」
「が、頑張れー! 頑張ってー!」
桃子は、巨大化させたハンマーを構えて、悪い奴らの群れを睨みつける。
「桃子。つむじ風の魔法いくぞ。まとめて薙ぎ払うぞ」
「分かった! モチャゴンが頑張ってくれてるうちに、やろう!」
「桃子。火の玉たち。いくぞ」
視界の向こうでは、巨大なモチャゴンが悪くて大きくてこわいやつを羽交い絞めにしている。
今のうちにと、燃え盛る大勢の火の玉たちを率いた桃子が、集団で相撲を取ろうとする悪い河童の群れへと駆け出して行った。
――少しだけ、時間を遡る。
カレーをたらふく食べた一行は、次なる七不思議を探すために再び旧校舎を歩き回っていた。
すると、今までとは違った大きな扉を見つけたのでさっそく開けてみた所、そこは旧校舎の中庭と思わしき場所に繋がっていた。
桃子の知る現実の七守小旧校舎にある中庭は、大した広さもなく、児童が育てる芋の畑を幾つか作れるか否かという程度の場所だった。
しかし七不思議の異世界はボリューム感がひと味違った。中庭は中庭でも、芋畑どころか陸上競技場が丸ごと入りそうな程の広大な中庭が扉の先に広がっていたのである。
桃子たちはさっそくその中庭へと足を踏み込むのだが、異変はその中庭で起きた。
「ねえ……あれ、なあに?」
桃子たちが中庭を進んで行き、ちょうど中央に差し掛かった頃だろうか。最初にそれに気づいたのは、モチャゴンの背の上から周囲を見回していた紅子だった。
紅子の言葉に他の面々も立ち止まり、辺りに視線を向けてみると、中庭の外周から怪しげな影がゆらりと現れるのに気づく。
「桃子。あれ。あんまりよくないやつだぞ。魔物とは違うみたいだけど。悪い影だぞ」
「嘘……私が【創造】で作ったの……? あれも?」
それは、真っ黒い影。顔も何もない、ただの暗闇に紛れてしまうシルエットでしかないのだが、しかし不思議とその姿はしっかりと視認できた。
ぺちゃ、ぺちゃ、と。水気のある音をたてて、悪い影は四方から桃子たちに迫ってくる。
「とにかく、悪い奴らなら戦うモチャよ!! 紅子ちゃんは降りて、茉莉子ちゃんと一緒に隠れていて欲しいモチャよ」
「だ、駄目だよおモチャゴン! 行っちゃ嫌だ、行かないでよお!」
紅子を地面に下ろしたモチャゴンに、紅子がしがみつく。行かないで、と、縋りつく。
桃子のように良くも悪くも危険なダンジョンに慣れてしまった探索者とは違い、紅子はまだ何も知らない子供なのだ。言うまでもなく、このような悪い影に襲われるなどという経験は初めてのことなのだろう。紅子はモチャゴンにしがみついて、不安そうに、その丸い怪獣を引き留めようとする。
そんな紅子に、少しだけ困ったような笑顔を見せて。モチャゴンはその恐竜の手で、優しく紅子の頭を撫でる。
「大丈夫。モチャゴンは、紅子ちゃんを守るために生まれたモチャよ。ちゃあんと、紅子ちゃんのそばに戻ってくるって、約束するモチャよ。だから、信じて待ってて欲しいモチャ」
「……絶対……絶対だよ」
彼女に作られた紙粘土であるモチャゴンにとって、紅子とは母であり、守るべき主なのだ。紅子と約束をするその姿は、まるで物語の姫様と忠実な騎士のように、桃子の瞳には映っていた。
大きな体をゆすり、ハグでもするように紅子に一度寄り添ってから、モチャゴンはすくっと向き直り、颯爽と黒い影へと駆け出していった。
不安そうにモチャゴンの背を見つめる紅子の手を、茉莉子がそっと、握り寄せた。
「よし。ヘノちゃん、私たちも行こう。ちゃんと戦えるってところ、この子たちに見せてあげないとね」
「わかったぞ。相手を全滅させれば。いいんだな」
はじめは、自分の【創造】があのような不気味なものまで生み出してしまったことに狼狽えていた桃子だけれど、モチャゴンの勇姿に触発され、今は悪い影と戦う探索者としての意識にスイッチ切り替え済みだ。
視線の向こうでは、既にモチャゴンが黒い影に挑んでいた。
身長としては桃子よりも多少小さいモチャゴンだが、体積としては圧倒的にモチャゴンのほうが重量級だ。彼が近づいて来た悪い影に体当たりをすると、パシュっという気の抜けるような音と共に、その悪い影は霧散していく。
数は多いけれど、どうやら耐久力としては大したことは無いようだ。それを見て、桃子も懐から愛用のハンマーを持ち出し、魔力を込めて【拡縮】を発動させる。
いきなり桃子の手に現れた大きなハンマーに茉莉子と紅子の二人が唖然としているが、桃子は二人に指示を出してモチャゴンとは反対側に駆け出していく。
「茉莉子ちゃんたちは、そこら辺に隠れててね!」
「う、うん……も、桃子ちゃん、気を付けてねっ」
「だ、大丈夫かな……」
隠れててと言われても、ここは中庭の中央だ。松の木がいくつか生えている程度で、隠れられる場所などなにもない。
茉莉子は仕方なく、比較的幹が太い松の木を選び、その根元で紅子を抱くようにして縮こまるが、正直言って心もとない。
茉莉子たちが見渡す中庭では、モチャゴンと桃子、くいしんぼ妖精のペコが悪い影を相手に奮闘している。茉莉子の目から見ても、影たちは決して強くはないように見えた。しかし、単純に中庭が広く、その外周から現れる悪い影は数が多かった。
不安を押し殺すように、茉莉子はぎゅっと、紅子を強く抱きしめていた。
「ヘノちゃん、気づいてる? この悪い影、河童だよ!」
ハンマーを振りまわすと、周囲にいた悪い影はまるで乾いた砂の塊を殴ったかのようにまとめて簡単に砕け散っていく。
それを繰り返しているうちに、その影の形状からその正体が見えて来た。
「確かに。河童だな。あと。あっちのは井戸から出て来るお化けの魔物だ。たまにいる大きいのは。桃の窪地で桃子が苦戦してた奴だな。なんで。こんな連中がいるんだ」
「……多分だけど、私が無意識に『こわいもの』を想像しちゃったんだと思う。ここにいるの、私にとっての『こわいもの』ばっかり」
悪い影である河童は、桃子を見つけたら四股を踏み、まるで相撲を挑むかのように突進してくる。いや、実際に彼らは相撲を挑んでいるのかもしれない。桃子には、相撲を得意とする河童に掴まれて、危うく尻子玉を奪われかけたという苦々しい記憶が存在するのだ。
また、井戸から出て来たお化けにパニックになった揚げ句にパンツを洗う羽目になったという心の傷もあるが、それは出来るだけ思い出さないようにしている。
窪地で戦った大きな魔獣にはハンマーの打撃が効かず、危うく柚花を失うところだった。あれも間違いなく、桃子のトラウマたりえることだろう。
「こいつら。たいして強くもないけど。ばらけてて。面倒くさいな。このままだと。数で。押し負けそうだぞ」
「ヘノちゃん、こうなったら、ハンマーの紅珠使っていいから広範囲に風を――」
ヘノが適度に風の魔法を飛ばして茉莉子たちに近づこうとする影たちを遠距離から撃退しているが、なにぶん中庭が広く、全ての敵に手が回らない。
このままだと茉莉子たちが危ないなと、ハンマーを振り回しながらヘノと話していると、それを遮るように。
中庭の逆方向から、モチャゴンの大声が響き渡った。
「モチャ! こうなったら、助けを呼ぶモチャよ! ヘルプモチャー!」
それは、助けを呼ぶモチャゴンの声。
しかし、こんな場所で助けなど呼んでどうするのか――と、桃子が振り返ったとき。
中庭を囲う旧校舎の廊下から、四方の窓から、校舎の屋根の上から、彼らはやってきた。
橙色に燃え盛る火の玉。
軽く数十、いや、下手すれば百を超えるであろう火の玉たち。それが旧校舎中の廊下から、教室から、至る所から。中庭目掛けて一斉に飛んできたのだ。
あたかもオレンジ色の流星群のような光景に、桃子は唖然として手を止めてしまう。
「す、凄い数の火の玉……」
「なんだこいつら。火の玉が集まってきたぞ。これも桃子が言ってた。七不思議なのか?」
「おどる……火の玉、かな」
中庭を駆け巡る火の玉たち。桃子は陽気にダンスを『踊る』火の玉を想像していたが、本来は自由に宙を駆け、旧校舎という世界に『躍る』火の玉だったのかもしれない。
校舎からやってきた数多の火の玉たちは、モチャゴンのヘルプを聞き届けてくれた仲間のようで、拡散した火の玉たちが悪い影たちをどんどん退治していく。
桃子やモチャゴンが各個撃破するよりも効率的に、凄い勢いで悪い影たちを減少させていく。これならば――と、桃子が思ったときに。
「火の玉さんたちありがとうモチャ! あとは端っこに残った悪い影たちを薙ぎ払うだけ……モ、モチャー?!」
それは、現れた。
ずるりと、中庭の地面から、這い出るように。
「あれが。桃子の一番『こわいもの』か。そうだな。あれは。こわかったものな」
「ど、どうしよう……や、やだ……やだぁ……」
「桃子。大丈夫か。桃子」
その影を目にしたとき、桃子は純粋に、怖気づいた。足が、動かなくなった。自然と涙が出てくる。
河童や井戸のお化けならば、今では笑い話にも出来るし、再び相対すれば簡単にハンマーで撃退できるだろう。窪地の巨獣も、再び相まみえるときは以前のような失態を犯すつもりはない。
でも、この影は駄目だ。ヘノが声をかけてくるが、耳に入ってこない。
あの瞳が恐ろしい。二度と出会いたくはない。『鏡』を持たない今、対抗する手立てがない。あの時は運が良かっただけだ。
その巨大な影は、桃子の記憶の中に存在する、本当の意味で『こわいもの』なのだ。
桃子の脳裏には、仲間を次々と失い、最後に残ったヘノと二人きりで震えて蹲った、あの暗い地下遺跡の景色が蘇る。
けれど、桃子の恐怖など知ったことかと、その黒く巨大な影は。漆黒の身体に、赤く光る呪いの双眼を持つ巨大な蛇――バジリスクの影は。
ゆっくりと、その頭をもたげていく。
だが。
桃子が恐怖で怖気づいている一方で、巨大な蛇にも勇敢に立ち向かう者がいた。
それは、饅頭のような身体に恐竜のような四肢を持つ、子供たちの永遠の友達であり、今は紅子の騎士たる存在。
そう、紙粘土像のモチャゴンだ。
「でっかい蛇モチャねー! でも、モチャゴンのほうがでっかくなるモチャ! さあ茉莉子ちゃん! パワーをくれモチャ!」
「えっ、私なの……? えと、が、がんばれっ、がんばれっ」
モチャゴンは巨大な蛇の影の前に仁王立ちになるが、サイズの差は歴然だった。いくらモチャゴンが桃子より体積があるとはいえ、所詮は1メートルちょっとの動く紙粘土である。鎌首を擡げたバジリスクの影の足元にも及ばない。
しかし、茉莉子の応援の声が響くと同時に、その変化は起きた。
「モモモチャーっ! でっかくなるモチャー!!」
「なんだあいつ。凄いな。でっかくなったぞ」
モチャゴンが、みるみると巨大化していったのだ。それはまさに、丸い風船が膨らむように。あるいは正義の宇宙人が、光の巨人へ変身するように。
そして見る間に、モチャゴンは校舎の三階にも届く巨大な姿に膨れ上がる。
「ふんがー! モチャゴンがこいつを抑えている間に、ペコちゃんと花子ちゃんは周りの影たちをどうにかして欲しいモチャー!!」
「おい。でかいモチャゴン。そいつの目に気をつけろ。見られたら石化するかもしれないぞ」
「えっ!? このでっかい身体で敵に見られないようにするのは無茶モチャよ!?」
モチャゴンががっしりと、その巨大な饅頭胴体で悪いバジリスクの頭を地面に押さえつける。その周囲を無数の火の玉が飛び回り、漆黒のバジリスクに炎の軌跡が幾度も突進していく。その度に、黒い影が少しずつ霧散していく。
バジリスクは動けない。モチャゴンの四肢でどうやって巨大な蛇を押さえこんでいるのか桃子の角度からは見えないし、どういう状況なのか全く想像もつかないのだが、しかしどうにかして超巨大饅頭の怪獣はバジリスクを羽交い絞めにしているようだ。
「モチャゴン……すごい、バジリスクにも立ち向かって……」
あの邪眼で睨まれても尚、モチャゴンは構わず戦い続ける。もともとこの悪い影のバジリスクには石化の力など備わっていないのか、それともモチャゴンに効いていないだけなのかは分からないが、とにかくモチャゴンは紅子たちを守るための戦いをやめない。
モチャゴンの勇姿を目に焼き付けた桃子の瞳にも、いつしか光が戻って来る。
「さては。あの気弱な方。石像を操るスキルでも。持ってるな」
「え、あれ茉莉子ちゃんの力なの?! ……っと、今はそれより!」
ヘノが、モチャゴンの変身についての分析をしているけれど、しかし今はモチャゴンについてゆっくり考えている場合ではない。
桃子も、モチャゴンの奮闘に刺激され、ようやく正常な判断力が戻って来た。あの蛇は偽物だ。遺跡に住まう邪悪な蛇などではなく、桃子の想像で生まれて来たただの幻影なのだ。
だから、怖くない。怖くない。自分にそう言い聞かせて、勇気を出す。
「茉莉子ちゃん、紅子ちゃん、安全なところで待っててね! すぐにやっつけちゃう!」
「も、桃子ちゃん……」
「が、頑張れー! 頑張ってー!」
中庭のど真ん中には安全なところなど無いのだが、茉莉子と紅子は引き続き中央の松の幹に隠れるように身を寄せ合わせ、モチャゴンを、火の玉たちを、そして桃子たちを応援する。
桃子は子供たちの声援を受けて、キッと顔をあげ、ハンマーを力強く握り直し。強い瞳で、周囲に群がる残りの悪い河童たちを睨みつける。
「桃子。つむじ風の魔法いくぞ。まとめて薙ぎ払うぞ」
「分かった! モチャゴンが頑張ってくれてるうちに、やろう!」
「桃子。火の玉たち。いくぞ」
視界の向こうでは、巨大なモチャゴンがバジリスクを押さえている。
今のうちにと、燃え盛る大勢の火の玉を率いた桃子が、集団で相撲を取ろうとする悪い河童の群れへと駆け出して行った。
勝負は、さほど時間もかからず決着がついた。
大量の火の玉と、本気を出した桃子たちの力で、悪い河童たちはあっという間に殲滅される。この悪い影たちは、桃子の恐怖心が生み出したものだ。桃子が恐怖を払いのけた今では、ただ数が多いだけの、相撲もろくに取れない烏合の衆と成り果てた。
そしてその勢いのままに桃子はバジリスクへ向かい高く飛翔し、そのままの勢いでいつかのようにバジリスクの頭部にハンマーを振り下ろす。
「偽物なんて、怖くないんだからあああ!!」
ズン、と。
腹に響く程の振動と共に、漆黒のバジリスクは霧散していく。
中庭の戦いは、桃子たち七不思議連合の勝利で幕を閉じた。
しかし、その代償が無かったわけではない。
「モ……チャゴン……?」
「桃子ちゃん、大変だよ! モチャゴンが……モチャゴンの身体が……!!」
モチャゴンはバジリスク相手に力を使いすぎたのか、最初と同様に1メートルサイズまで縮んでしまうが、その様子がおかしいのだ。
茉莉子と紅子が真っ先に彼の元へと駆け出し、その身体に手を当て。そして、慌てふためいていた。
モチャゴンの身体はもう、変わり果てていたのだ。紅子を守るために、強大な影へと挑んだ代償として。彼の身体はすでに冷たく、そして硬くなっていた。
「モチャー! モチャゴンの紙粘土の身体が、カチカチの石になっちゃったモチャよー?!」
「紅子が作った紙粘土が、石になってるよー?!」
モチャゴンが、硬質化していた。
いや、先ほどまでも固まった紙粘土だったので硬質と言えば硬質だったのだが、それでも硬度としてはやはり紙粘土レベルだったし、触った感じもどことなく温かみがあったのだ。
しかし今は、どこかで見たような石の身体になっていた。
「バジリスクの石化。一応。効果はあったんだな。でも。強そうだし。良くないか?」
「そーれもそうモチャね。どうモチャ? 石のモチャゴン、強そうモチャ?」
「うん」
「紅子の紙粘土だったんだけど……でも、強そうだよモチャゴン」
「うふふー、石になってもモチャゴンは紅子ちゃんのモチャゴンだモチャよー」
ヘノがツンツンとツヨマージでモチャゴンの石の身体を突き、硬さを確認している。茉莉子と紅子も、モチャゴンが強そうだという言葉にはうんうんと頷いている。
いつの間にか集まってきた火の玉も、茉莉子たちとともに揺れているので、きっと肯定の意味で頷いているのだろう。
「うふふー、石像モチャゴン、イカしてるモチャー」
自分の【創造】のせいで皆を恐ろしい目に遭わせてしまった桃子は、和気藹々としている仲間たちをなんとも言えない表情でみつめていた。
七不思議だけでなく、このような悪い影が現れてしまったのは、己が『なんかこわいもの』を七不思議と共に想像してしまったからなのだ。結果的にどうにかなったとはいえ、桃子の心に苦々しい思いが広がる。
そしてやはり桃子が想像した悪いバジリスクは、その代名詞たる石化の邪眼を所有していたのだ。相対したのが紙粘土のモチャゴンだったから大した影響がなかっただけで、あれがもし茉莉子たちに向けられていたらと考えると、それはとても恐ろしく、桃子の肝が冷えていく。
しかし、結果としてはモチャゴンが強そうになっただけで、本人はなんだか喜んでいる。先ほどまで涙目だった紅子も、今は喜んでモチャゴンの背に抱き着いていた。
「なんか、喜んでるし、いいのかな……」
「そうだぞ。さっきのは。紙粘土を。石にする程度の力しかない。偽物のバジリスクだったんだ。ヘノから見ても。人間を石にするほど。強そうじゃなかったしな」
桃子の周囲にはいくつかの火の玉が漂っており、彼らもヘノの言葉に賛同するようにゆらゆらと揺れている。気にするな、とでも言っているのだろうか。
揺れ動くだけの火の玉なのだけれど、どうやら彼らは思いのほか人情に溢れているようだ。
「火の玉さんたちもありがとうね。そうだ、私は桃……じゃなくて、トイレの花子さん、よろしくね」
「ヘノは。くいしんぼ妖精のペコらしいぞ。よろしくな。火の玉」
こうして、一行は悪い影たちの相撲に巻き込まれることを回避しつつ。
なんやかんやで『踊る火の玉』も、無事パーティメンバーに加入するのだった。