ハンマー少女はバズらない! 固有スキル【隠遁】で自由に探索してたら伝説になってました   作:chikuwabu

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ピラフと新情報

「ヘ、ヘノが……もぐ……か、風がべたつくから好きじゃないって言ってた、あの……もぐ……ダンジョンですよぉ……?」

 

 玄米カレーピラフを頬張りながら、ニムが『塩が採れるダンジョン』について語る。

 ニムは、味の沁み込んだ玄米の粒を、ゆっくりと、少量ずつ口に頬張り。その味をじっくりと堪能しているようだ。

 

「そうなのか。むぐむぐ。どんな場所だか。あまり覚えてないけど。むぐむぐ。そんなダンジョンも。あった気がするな」

 

 玄米カレーピラフを頬張りながら、ヘノが『塩が採れるダンジョン』について聞く。

 もりっと妖精サイズの小型スプーンですくいあげ、物理的にどうやってその小さな口に入れているのかと桃子が疑問に思う勢いで、モリモリとピラフを口に運んでいく。

 

「お二人とも、ピラフを食べるかお喋りするかどちらかにしません?」

 

「玄米カレーピラフ、思いのほか美味しく出来たねえ」

 

 そして、マイペースで玄米カレーピラフを味わいながら、柚花と桃子の人間二人は妖精たちのやりとりを微笑ましく眺めていた。

 

 と、いうわけで。

 

 玄米と具材を炒めて、カレー粉で味付けをしてから炊いた桃子特製の玄米カレーピラフは、きちんと美味しく完成した。

 

 ピラフの完成は呆気ないものだった。

 ヘノとともに下拵えをして、玄米と他の具材を炒め終え。水を注いでいよいよ玄米を炊こうという段階に移ったその時、鍋がいつものように光り始めたのである。そう、桃子のスキル【カレー製作】が発動した際の、いつもの妙に派手な光が湧き上がったのだ。

 光が止んでから桃子とヘノが鍋を覗き込むと、既に鍋の中には玄米カレーピラフがほくほくの状態で炊きあがっていた。程よくパラパラで、一粒一粒にしっかりと旨味が染み、芳醇な香りを漂わせていた。

 

 いつもならば玄米は時間をかけて炊いているのだけれど、どうやら今回のカレーピラフはそれ単独で立派なカレー料理として判別されたらしく、【カレー製作】はその炊きこみ時間を省略してくれたようだ。

 相変わらず判定基準が不明瞭な部分はあるものの。なんにせよ、カレーに類するものを作る際には【カレー製作】は実に頼りになる能力であった。

 

 

 

 

 

 

 

 時間を少し遡って。

 ピラフが完成した丁度その直後のこと。

 

 タイミングよく、柚花とニムが探索から帰ってきた。帰ってきて早々、出来立てのピラフが鍋の中から香りを放っており、思いがけないご馳走に柚花とニムは大喜びだ。

 ピラフを盛りつけながら二人に話を聞いてみた所、どうやら新しく武器に装着した魔石の使い心地を試してきたらしい。

 柚花は、先日の誕生日に女王ティタニアから二つの魔石を貰っていた。柚花の使う電撃の魔法に対して相性の良さげな魔石を、女王自らが見繕った代物だ。

 それに加え、柚花はニライカナイにて雷の妖精エレクから、雷属性の魔力についての教えを直接受けている。なので今日はとにかく魔物と戦い、新しい力の使い方を色々と試していたのだそうだ。

 

 なお、いつの間にティタニアに貰った魔石を武器に装着していたのか、という疑問について。

 なんと、柚花は龍宮礁を訪れた際に、ちゃっかり桃子の師匠である親方に魔石の装着加工を施して貰っていた。

 普段ならばいかに知人の頼みとは言え安請け合いはせず、きちんと正式な仕事としてしか依頼は受けつけない親方だ。しかし、こと大切な仲間である桃子と和歌を沖縄くんだりまで助けに来てくれた桃子の後輩の頼みでは、親方も恩を返さずにはいられない。

 沖縄の社員旅行最終日の午前中、全てが解決した次の朝。桃子が起きるより前の時間には既に、柚花の双剣には親方による武器の調整と加工が施されていたのだった。

 

 なお、柚花の感想としては、伝説の職人たる親方の仕事は「とにかくすごい」の一言だそうだ。切れ味はもちろん、グリップ、重量バランス、魔力の馴染み方、他にもあらゆる面が最適化されており、柚花ですら語彙力が死んでしまう程に武器の使用感が向上していたのだという。

 桃子も武具の調整などは独自で行っているものの、親方の域に達するにはまだまだ先は長そうだ。

 

 

 

 そんな柚花たちも交えて、今日はカレーピラフと、インスタントではあるけれどスープの付け合わせである。

 サラダが無いのはやはり物足りない。せめて付け合わせにフルーツのひとつでも捥いでくれば良かっただろうか。

 

「ねえ先輩。カレーピラフがこれだけ美味しいんですから、今度エビピラフ作りませんか? ピラフっていえば、やっぱりエビだと思うんですよね。冷凍食品も大体エビピラフですし」

 

「エビかあ。妖精の湖にいるエビでいいなら、ここでも作れそうかな。エビカレーピラフでいいの?」

 

「先輩。エビピラフです、エビカレーピラフじゃないですよ。たまにはカレーの入ってない料理もいいじゃないですか」

 

 カレーピラフを食べながら、柚花から珍しく食事のリクエストが飛び出てくる。それは、カレーの入らないプレーンなエビピラフ。

 例えば「ピラフといえばなにピラフ?」と。街を歩く人々に問いかければ、恐らく一番多く出てくる品目はエビピラフだろう。エビのピラフはそれだけメジャーな品目だ。

 

 桃子としては、それがエビのピラフだとしてもほぼ無意識にカレーを入れてしまうのだが、なるほど柚花はカレーの入っていないシンプルなエビピラフが食べたかったようだ。

 調味料や野菜は地上からの持ち込み。エビはダンジョンのエビ。玄米はマヨイガの玄米を使えば、確かに問題なくこの調理部屋でも作れそうではある。

 

「ごめんごめん。私ってば【カレー製作】があんまり便利すぎるから、ダンジョン内でご飯作るときはついついカレーにしちゃうんだよね」

 

「先輩。まるでダンジョンだからカレーばっかり作ってるみたいに言いますけど、先輩が地上でもカレーばっかり作ってるって私は知ってますからね?」

 

 もちろん、桃子はカレー以外の料理も普通に調理できるし、カレーしか食べられない呪いにかかっているわけでもない。

 ならば何故カレーばかりなのか。それは言うまでもなく、カレーがとっても大好きだからである。桃子とて、自分のカレーに対する執着が人並み外れていることに関しては自覚がある。

 なので、柚花の言う通りで地上でもカレーばかり作っているのは間違いないし、それが柚花の呆れからくる言葉だと言うことも理解している。

 

 けれど。

 

「えへへ、なんか嬉しいね。照れちゃう」

 

「褒めてはいないですってば」

 

 桃子が地上でどのような食生活を送っているのかを柚花が知ってくれているというのは、やはりなんだか嬉しいのだった。

 

 

 

 

 

「柚花はそのダンジョンって行ったことあるの?」

 

 カレーピラフと付け合わせのスープの夕食を食べながら、話は進む。

 付け合わせは、地上のスーパーで買ってきたわかめのスープだ。

 話題は、ヘノとニムが話していた『塩が採れるダンジョン』について。ニムが行ったことがあるダンジョンだというのなら、もしかしたら相棒である柚花も一緒に行ったことがあるのかもしれないと思い、聞いてみたのだ。

 問われた柚花は、スープを飲んで一息ついてから、数秒程考え込み。そして、思い当たるダンジョンの名を口にする。

 

「……そうですね。ヘノ先輩が嫌がってた場所かどうかはわかりませんけど、それって多分尾道ダンジョンのことかと思いますよ」

 

「うぅ……あ、あそこ、オノミチって言うんですねぇ……」

 

「後輩。そこは。どういう場所なんだ?」

 

「ええと、広島の、瀬戸内海っていう、島が沢山ある海に面した土地です。で、そこの陸地に近い島のひとつに尾道ダンジョンはあるんですけど」

 

「み、水が多い……ダンジョンなんですよねぇ……」

 

 尾道ダンジョン。それは、本州、四国、九州に囲まれた内湾である、瀬戸内海の中央に位置するダンジョンである。

 

 そのダンジョンの名にもなっているのは、広島県尾道市。瀬戸内海に面した市で、その南部には瀬戸内海に浮かぶ多くの島々が広がり、市街地と島々が共存する特徴的な景観を持つ地域である。

 そのうち、瀬戸内海に属する一つの島におよそ30年前に出現したのが、尾道ダンジョンだ。

 桃子が今まで訪れたダンジョンの中でいえば、琵琶湖ダンジョンが一番近いだろう。瀬戸内海という特殊な地形に存在する影響か、そのダンジョンは他ダンジョンと比べても水が多いのが特徴である。

 

 先に食事を終えた柚花が、尾道ダンジョンについて語り始める。

 

「第一層『尾道洞窟』は、比較的シンプルな地下洞窟タイプの階層です。湧き水とか地下水が多いですけど、比較的道幅も広くて平坦なので、探索はしやすい部類の洞窟だと思いますよ。所々鉱石とかとれるみたいです」

 

 第一層の説明。続いて、第二層。

 

「第二層『尾道渓流洞』は所々空がひらけた自然タイプの階層です。第一層よりも水と植物が多くて、階層の半分くらいは自然の渓流みたいになってます。薬草が豊富に取れるみたいですね。渓流で濡れたくなければうまく迂回する必要があります」

 

 柚花が記憶を辿り、尾道ダンジョンについて説明をしていく。

 桃子はそのダンジョンを訪れたことは無いけれど、話を聞く限りでは水が多くて濡れる以外は、それなりに探索しやすいタイプのダンジョンのようだ。

 そして、柚花は指折り階層を数えていくが、その三つ目。どうやらそこが本題のようだが。

 

「ここの面白いのは、第三層ですね。塩が採れるとしたら、この階層だと思うんですけど……まあ、これは話を聞くよりも、その目で直接見た方が感動しちゃうんじゃないですかね」

 

「えー、なんか引っ張るじゃん。気になるなあ」

 

「なんだ。そんなに。変なダンジョンなのか?」

 

 なんと、情報が伏せられてしまった。

 柚花はにんまりした目を桃子に向けて、説明を聞くのではなく、直接その目で見た方が良いと言う。

 

「先輩方。明日の日曜日はどこか行く予定とかありますか? 予定がなければ、尾道ダンジョンまで一緒に行ってみません?」

 

「ヘノは。構わないぞ」

 

「うん、行きたい行きたい。お塩もそうだけど、そんな説明を聞かされたら普通に気になっちゃうし」

 

 ピラフを食べて満足したヘノも、頬っぺたに粒を付けたまま参加の意思を示す。

 もちろん、ヘノの顔をティッシュで拭いてあげている桃子も同じく賛成だ。柚花たちが案内してくれるというのならば、万々歳だ。

 ニムはもとから柚花とどこかに遊びに行く予定だったのだろう。特に反対の意思は示さず、こくこくこくと、ピラフを頬張ったまま頷いて見せていた。

 

「では、決定です。明日はみんなで尾道ダンジョンに行きましょうね。まあ、ニムさんとヘノ先輩がいるなら、魔物とかも心配はしなくていいでしょうし」

 

「じゃあ、途中で何があるかわからないし、忘れずに調理器具も持っていこうね。お鍋とか」

 

「桃子。カレールーだぞ。カレールーは。忘れちゃダメだぞ」

 

「先輩方、やっぱりカレー作るのは決定事項なんですね」

 

「も、桃子さんとヘノですからねぇ……」

 

 新たなダンジョン。

 新たなカレー。

 桃子は、未知の尾道ダンジョンへの期待を胸に、うきうき気分でカレーピラフの最後の一口を頬張るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【尾道ダンジョン専用 雑談スレ】

 

:第二層 釣り竿目掛けて 魔物くる

 

:あるあるすぎるw あいつら魔物の癖に、普通の魚のエサにも食いついてくるのやめてほしい

 

:怪魚も食えればいいのにな。捌くと煤になるしほんと邪魔よ。

 

:煤になる前に噛り付いたらワンチャンいけないか? 魔物だし逆に寄生虫とかもいないだろう。

 

:口の中で煤になるからやめた方がええで

 

:やったのか・・・

 

:三層で 釣り竿目掛けて 魔物くる

 

:いい句だね。まさに6レスに1度あるかないかの名句だ。

 

:三層でそう言えば、日が暮れてからも帰ってきてないパーティがいるみたいな話だけど

 

:マジか? 遭難?

 

:でも昨日はそんな、荒れたりしてないでしょ? 事故とかがあったら端末で緊急信号くらい送るんじゃないのか?

 

:信号も届いてないなら、普通にどっかの島でキャンプでもしてるんじゃないか? 別に珍しくはないだろう。

 

:ここで騒いでも仕方ない。続報次第か。

 

:新種の魔物の目撃談もあるし、不安になっちゃうのは仕方ないね。

 

:じゃあ、ここで俺が一句w 美少女が いたと思ったら いなかったw

 

:は?

 

:えw いや、三層で美少女が居たと思ったらいなかったんだよ、本当にw マジでビックリして武器を構えちゃったw

 

:意味不明すぎて怖い

 

:ちゃんと寝た方がいいよ、人は寝ないと意味不明な言動が増えるんだ

 

:ダンジョンで幻覚見てたら命に関わるからしばらく控えた方がいい

 

:お前ら優しいな

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