ハンマー少女はバズらない! 固有スキル【隠遁】で自由に探索してたら伝説になってました   作:chikuwabu

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首都防衛戦

【ダンジョン防衛報告スレ 雑談禁止】

 

:前スレまでまとめ

 ・房総 女王蜂&女王蟻討伐完了 なお森林火災で現在大規模バケツリレー中(ライブ配信URL)

 ・琵琶湖 魔物が減ってきたから、恐らく深潭宮で人魚姫が勝利した。

 ・上高地 第一層の魔獣多発ながら小規模なため現地探索者の防衛ラインで問題なし。

 ・沖縄 シーサーたちが探索者たちに力を貸してくれているとの証言あり。防衛戦順調。(ライブ配信URL)

 ・尾道 勝利後、あやかしにトドメをさした弓使いの女性がセイレーンと抱き合って逃避行中。

 ・札幌 防衛ライン安定。吹雪の奥でキムンカムイが巨大魔物と戦っている目撃例あり。

 

:なお、魔物たちのボスを討伐したとしても、魔物の異常発生自体は継続しているため注意されたし。

 

:一部おかしいのもあるがまとめ乙。

 

:勝った! やった! 倒した!

 

:おめでとう、でもどこのダンジョンか言え

 

:吉野ダンジョン、サクラモリからあふれ出たゴブリンの大軍からの防衛成功! ヨシ!

 

:報告 深援隊が鵺を撃破して、竹林が光って、女の子が、着物の女の子がそこにいて、ありがとうしてて

 

:落ち着け

 

:報告詳細 遠野ダンジョン、深援隊の手により鵺の討伐完了。事後、その場に座敷童子が現れて、深援隊リーダーに抱っこされた状態で竹林の暗闇を祓ってまわっている。

 

:抱っこ?

 

:香川ダンジョン、牛鬼討伐成功。

 まだ魔物の群れは襲ってきていますが、職人たちがうどん生地を捏ね始めたので大丈夫だと思います。

 

:なんでそうなるの

 

:報告! 筑波ダンジョン防衛戦ライブ配信開始(URL)

 

:見てた。ライチちゃんが単独で竜と戦ってるのかと思っちゃった。

 

:単独で戦ってんだよ!

 

:なにあれ、白衣の幼女の動きが速すぎて目で追えないんだがどういうこと? 世の幼女ってあんな強いものなの?

 

:そうだぞ

 

:報告っす

 房総ダンジョンは森林火災の延焼を防ぐために、今はみんなで木を倒す作戦に移行しましたっす

 

:あそこは相変わらず楽しそうで何よりじゃねえの。

 

:こっちも報告

 長崎に大怪獣が出現して暴れている

 

:もう流れが速すぎてついていけないし意味がわからない

 

:流れの速さとか関係なく意味わかんないんだよ

 

:長崎より報告。巨大モチャゴンが現れてアンデッドの大群を蹂躙中。

 また、口から炎を放射して、その炎がブレイクダンスをしながら魔物を焼き尽くした。

 何を言ってるかわからないと思うが、俺も何を見ているのかわからない。

 

:日本語で頼む

 

:すまない、もう文章じゃ説明できない。配信してる探索者がいたからそっちを確認してくれ。(URL)

 

:説明通りだった件

 

:長崎ダンジョンだけ何か違うことしてて怖い・・・。

 

:(香川や房総も違うことしてますから大丈夫)

 

:摩周ダンジョン、吹雪で視認性悪いけど巨人が討伐された模様(URL)

 

:追記 コロポックルたちが力を貸してくれたという報告あり。

 

:親父がコロポックルに会いに行くってジャガイモ10kgもって家を飛び出した

 

:もう親父さんの好きにさせてやれ

 

:続報 鎌倉ダンジョンに『バリスタ』到着。生配信中継あり。(URL)

 

:がしゃどくろでっか! あと探索者だけじゃなくて魔物も一緒にがしゃどくろに挑みかかってて意味が分からない!

 

:鎌倉ダンジョンはそういう場所だから……。

 

:砂丘ダンジョン、マジックミラー号続報。砂漠にスフィンクスが降臨して探索者と何か話してたけど、おっぱいがでかすぎて画像も動画も検閲されて貼れない。

 

:追記、硬くなっちゃった探索者も無事に回収された様子。

 

:マジックミラー号? おっぱいがでかすぎ? 硬くなっちゃった?

 

:砂丘ダンジョンは一体何と戦っているんだ?

 

  ・

 

  ・

 

  ・

 

:しかし夜になって続々と勝利報告が舞い込んできたな。テレビも各地のダンジョンの緊急報道一色。残業してる場合じゃない。

 

:どこのギルド周辺も、近隣住民による炊き出しとか探索者の増援用車両、それと救急車両の出動ですごいことになってる。

 

:でもさ、例の配信にあった妖精たちの国は、これで本当に救われてるんだろうか。

 

:あの動画にあったハンマーなんだけどさ。あれを持った女の子に助けられた記憶があるんだよ。忘れてたけど。

 

:他のスレでも同じこと書き込んでる人が何人かいた。ハンマーで誰かが助けてくれただの、ハンマー持った子供が遊んでただの、ハンマーを脇において小学生がカレーを食べてただの。んで、時間とともにその報告が一気に増えてってる。

 

:スレ違いなので移動推奨。実は同じ怪現象が多発してて、今はスレが立てられて考察されてるよ→(スレッド『ハンマー少女について』URL)

 

:ありがとう、そっち行ってくる。

 

  ・

 

  ・

 

  ・

 

:報告 新宿ダンジョン、スタンピードの規模が更に拡大。緊急で各地から高ランク探索者の招集継続。

 

:oh...

 

:他のダンジョンと比べると、新宿は劣勢。

 圧倒的に戦力が足りなくて、今は高ランク探索者だけじゃなくて、ある程度経験ある探索者パーティがどんどん投入されてる。

 ただその分怪我人とかが莫大な数になってるって……。

 

:新宿はもうサイレンの音でいっぱいで、警察だかギルドだかが広範囲の立ち入り規制中

 週末の夜だってのにこの世の終わりみたいな騒ぎ

 

:ゴブリン大隊とかワイバーンどころか、下層からドラゴンが湧き出てきたっていう報告がある。新宿はマジでやばい。

 

:テレビで生報道してる

 新宿はいま自衛隊ヘリと避難勧告と探索者増援で、大変な状況になってる

 世界中から高ランク探索者を呼び寄せてるっていうけど、海外からの援軍なんかどれだけ時間がかかるんだよ

 

:どうすんだ、新宿は敗北は許されない立地だろ……。

 

:自衛隊はダンジョンに入らないのか?

 

:救助目的のチームが入ってるみたいだが、戦力としてはダンジョンじゃ自衛隊の武装なんて意味ないんだよ

 

:そんな地獄みたいな新宿ダンジョン内でライブ配信してる猛者がいる

 意味がわからないけど、なんか女の子が前線で歌ってて、みんながその子を必死で守ってる(URL)

 

:なにこれ? 妖精?

 

:いや、天使じゃないか?

 

:ちげえよ! カリンちゃんだよ!! お前らも応援しろよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 新宿ダンジョン。

 ここは、元々他のダンジョンと比べても圧倒的に魔物たちの練度が高く、下層に降りれば明らかに格の違う魔物が出没するダンジョンだ。

 そこで勃発した今回の大規模スタンピードは、探索者たちにとっては過酷という他にない状況だった。

 

 群れをなし、統率のとられた武装ゴブリンの軍勢。

 目にも留まらぬ速度と膂力で、瞬時にして探索者を狩っていく魔獣たち。

 上空から襲い来る、人間など容易く連れ去りそうな大きさの鳥型魔物たち。

 

 そして今は、本来は上層に存在しないはずのワイバーンやドラゴンといった、そもそもただの探索者では太刀打ちすらできないであろう魔物が次々と現れ、第一層の出口――すなわち、地上へと向けて進軍してきているのだ。

 

 そんな中、第一層に敷かれた人間側の防衛ラインの中央で、今。

 一人の若い女性探索者が、地面に設置した端末から流れるBGMに合わせて、高らかに歌い続けていた。

 その姿は探索者というには異色な、ヒラヒラの布地にリボンやアクセサリがついており、さながら『アイドル』のような印象を振りまいている。

 

「さあぁーっ♪ 希望の未来が、あなたを支えるよーっ♪ だから、だからぁー、負けないでぇーっ!! 負けないでええぇっ!!」

 

 そのがむしゃらな歌声は所々音程をはずれており、不要なところで力も入りすぎている。けれど、その歌声には凛とした魔力が宿っていた。

 そんな彼女の周囲では、幾人もの探索者が剣や盾、弓を構え。歌い続ける彼女を魔物たちの影から守っている。

 

「駄目ですカリンさん、シャウトの必要はありませんから! 喉を痛めますって!」

 

「ほら、薬草蜂蜜湯が届いたわよ! 喉を労って! あんたの喉が、この戦いの要なんだから!」

 

「うん、うんっ!」

 

 歌の切れ目に、すぐ近くで待機していた仲間たちが、彼女のマネージャーのようにその身を労っていた。

 彼女らは探索者パーティ『フルーツ☆タルト』。中心で歌い続けていたのは、アイドル配信者としても知られているカリンだ。

 彼女は、この新宿ダンジョン防衛戦の勝敗を左右するほどの、最重要人物となっていた。

 

 勝利の要となる、その歌声。

 それは、世界魔法協会が戦う探索者たちに託したスクロールにて、カリンが新たにマスターした魔法だ。

 それは、行使するための条件が余りに厳しく、ある意味ではカリンが運命的に適合したとも言える【特殊魔法】である。

 

 

 

 

「伝令! ゴブリン大隊はチームCが担当し、チームA、Bは後方から来る巨大魔物に注力せよ! 脅威度はそちらのほうが圧倒的に上だ!」

 

 カリンが歌う地点から、およそ200メートル先。ここが、迫り来る魔物たちと戦う防衛ラインの最前線だった。

 ここに立つメンバーは、全員がギルドに認められた高ランク探索者だ。それぞれが一騎当千の猛者であり、深援隊の風間や、剣聖と称されたヒカリと比べても勝るとも劣らない、それだけの実力者揃いである。

 だが、それでも。新宿ダンジョンの下層から進撃してくる魔獣や飛竜、そして新たに現れた巨大なドラゴンなど、その全てが準特殊個体――あるいは、すでに特殊個体に比肩する魔物の群れが相手では、圧倒的に戦力が足りていない状態だった。

 彼らはこの新宿の地を守るために、死と隣り合わせの戦いを繰り広げていた。

 

「あの子から離れすぎるな! 加護が切れたら死ぬぞ!」

 

「くっ、すまん!」

 

 巨大な魔獣と戦っていた剣士が、サポートについていた仲間から叱咤をうける。

 カリンからおよそ200メートル。これが、彼女の歌の加護を受けられる範囲とされている。

 カリンはもともと、己や仲間に強化を施す補助魔法の適正を持つ探索者だった。その彼女が新たに得たこの魔法は、『歌声の響く範囲の人間の能力をブーストさせる』という、今回のような集団戦においては破格の性能の魔法である。

 元から一騎当千の彼らが、カリンの歌声のブーストを受けることで――。

 

 ザシュ

 

 飢えた熊のような魔物を速度で上回り、なおかつその鋼鉄のような毛皮をものともせず、その首を一閃の元に斬り飛ばした。

 いくら高ランク探索者とはいえ、常ならばこうはいかない。このとてつもない強さは、歌声によるブーストありきのものだ。

 

「アイドルに応援されるってのも、悪くねえな」

 

「ああ」

 

 戦っていた二人は、軽く口笛を鳴らして互いの拳を軽くぶつけ、新たな魔物へと向かっていく。

 新たに聞こえてきたアイドルの歌声に、その魔力を高揚させながら。

 

 

「左手側の空からも来たぞ! 遠隔部隊、頼む!!」

 

「E隊、F隊、展開してください!」

 

「無理だ! 手薄になった箇所から侵入される! 戦力が足りない!」

 

「高速ヘリが房総まで炎魔法のエキスパートを迎えに出ている! 遠隔部隊はそれまでどうにか持たせろ!」

 

 戦場では怒号や叫びが止むことはない。作戦の指示、戦士たちの雄叫び、医療班を呼ぶ叫び声――。

 その中で。彼らの中心として。カリンは力の続く限り、その声を上げ、歌い続けていた。

 

「はぁ、はぁ……次の曲! 歌うよ! 準備お願い!」

 

「カ、カリンさん、もっとペース配分しましょう! 応援効果はまだ切れてません!」

 

「お願いだから、もっと落ち着きなさい、カリン。あなたがここで身を削っても、誰かが救われるわけじゃないのよ……!」

 

 この数時間で、スキル効果の検証は終わっている。カリンの歌は常に歌い続ける必要はなく、曲が終わったとしてもおよそ5分間はその効果が持続する。

 横で時間を計り、カリン本人に代わりその力をセーブさせているのは、彼女の仲間であるクルミとリンゴだ。

 けれど、カリンはそれでも、仲間の説得を受けてもなお、その気が逸るのを止められない。

 

「だって、だって、クルミちゃん、リンゴちゃん。私たちが頑張らないと、妖精のみんなが……!」

 

 その表情は、普段のカリンが絶対に見せることはないような、鬼気迫るものだった。

 彼女はこの戦いの前に、筑波ダンジョンから送られてきた配信を見てしまったのだ。

 そこに映されていたのは、あの日、はるか空の上に落ちてしまったカリンを最初に発見してくれた、風の妖精の姿だった。

 その妖精がぼろぼろ泣きながら、助けを求めている姿を見てしまったのだ。仲間を救ってくれと、人間たちに懇願していたのだ。

 

「妖精のみんなを……リフィさんを、リフィさんを! カリンは絶対に助けたいんだよ……っ!!」

 

 カリンの、絶叫のような慟哭が響きわたる。

 

 カリンの記憶には、緑葉の妖精リフィとの思い出が積み重なっていた。

 あの日以降、リフィは何度もカリンを助けにきてくれた。

 甘いシロップを届けてくれたこともあった。木の実をもらったこともあった。なぜだかわからないけれど、密閉容器に入ったカレーを届けてくれたことは何度もある。

 それらを食べる度に、カリンは妖精の加護を受け、自らの魔力が増していくような気すらしていた。

 カリンはだから、大好きなリフィに恩返しをしたかった。リフィをなんとしても助けたかった。なんとしてでも。それこそ、自分の喉を歌い潰してでも。

 

「……分かってるわよ! でもね、リフィさんはあなたがそんな無茶をすることを望んでるわけないでしょう!!」

 

「うう……で、でも……リフィさん……リフィさん……」

 

 インターバルはまだ残っている。

 だから、今はカリンは休まなければいけない。それが正しいことで、それが最善なのだ。

 ただでさえ人間たちの防衛ラインはぎりぎりで、カリンの歌があってなお、血なまぐさい戦場には絶望の空気が蔓延している。ここでカリンが歌えなくなれば、その時点で敗北が確定する。

 けれど。リンゴの涙ながらの叱咤を受けても、それが正しいとわかっていても。カリンは涙が押さえきれず、嗚咽を漏らす。

 

 そんな時のことだ。

 

『Don't cry, lass.』

 

「ひゃうっ!」

 

 唐突に、見知らぬ大柄な男性が、カリンに話しかけてきた。突然のことで、カリンは変な声をあげて固まってしまう。

 つい先ほどまで、そこにはそんな人物はいなかったはずなのだ。だというのに、見知らぬ外国人男性が現れ、泣きじゃくるカリンの頭に手をあてて無造作に撫でていた。

 カリンはおろか、クルミやリンゴも突然のことに言葉を失っている。

 

『We'll help.』

 

「え? だ、誰? が、外国人さんたち」

 

 見れば、現れた外国人は一人ではない。

 見知らぬ装備に身を包んだ探索者と思われる外国人の集団が、カリンの周りだけでなく、気づけばこの戦場の至る所に姿を現していた。

 いや、それどころか、よく見ると見覚えのない日本人探索者までもがあちこちに増えているように見えた。

 

「ど、どーゆーこと?!」

 

 前線で戦うメンバーを庇うように、新たに増えた探索者たちが不思議な光を放つ剣を振るっている。

 不思議な光をまとった弓が、空から襲い来る魔物たちをことごとく撃ち落としていく。

 治癒の力を持つ探索者の集団が、救援を待っていた探索者たちの元に駆け寄り、その命を救っている。

 

 外国人も、日本人も、共通して透き通るような肌の色――いや、もしかしたら本当に彼らは透き通っているようにも見える、そんな不思議な探索者たちが。

 突如として新宿ダンジョンの戦場に、姿を現した。

 

『Right, everyone?』

 

「えっ、えっ、えーっ?!」

 

『Now then, let's hear you sing!』

 

「ひ、ひえええ?! 英語わかんないよーっ!」

 

 周囲にいた探索者たちも、突然現れた見覚えのない探索者たちの姿に混乱を隠せない。魔物でない以上は恐らく味方なのだと信じたいところだが、英語がわからないカリンなどは涙も忘れて混乱するだけである。

 そう、新宿ダンジョンで戦っていたものたちは、知らないのだ。

 過去に死した探索者たちが、今ひとたび、戦いに身を投じてくれていることなど。

 彼らが、死者の国からやってきてくれた、奇跡のような援軍であることなど。

 

 ただ、それでも。

 

『Let's bring down the Jabberwock.』

 

 過去。ジャバウォックの起こした大規模な異変によって命を落とした彼らの魂は。

 日本のダンジョンで、過去に命を落としていった数多の先人たちの魂は。

 その瞳に、優しさと、熱意と、少しの羨望を秘めた彼らの戦いは。

 

 この新宿ダンジョンを――いや、日本という国を守るための、大きな力となるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩、見てください。新宿ダンジョンで、ニライカナイから来てくれた探索者の方々が戦ってますよ。もしかして、今の新宿ダンジョンって生きてる人より死者のほうが多いんじゃないですか?」

 

 妖精の国の、桃の木の麓で。

 柚花が端末でライブ配信を確認しながら、桃子に語りかけていた。

 

「あと、ほら。カリンが防衛ラインの中心になってるみたいです。あの子、無理しなきゃいいですけど……」

 

 画面には、新宿ダンジョンの様子が映し出されている。

 多くの魔物の軍勢を前にして、大勢の探索者たちが戦い続けている。その戦場には、いつか桃子が大空の上で救助したアイドル配信者の歌声が響きわたっている。

 

「ねえ、先輩。他のダンジョンもみんなの活躍で、どんどん勝利を積み重ねていってるんですよ」

 

 柚花の横では、ヘノとニムが、ともに配信画面をのぞき込んでいた。

 妖精たちが戦っている間、人間たちもまた絶望的な戦いに身を投じていたのだと知り、ヘノもニムも、神妙な目でそれを見ている。

 

「先輩が生み出した萌々子ちゃんも、ドワーフさんも、ヒメさんも、みんな大活躍してるようですよ」

 

 柚花は、桃子の頬を優しく撫でる。

 

「ですから、先輩――」

 

 この場所では今、数多の妖精たちが邪竜と戦い続けていた。

 強大な瘴気の砲撃と、空を覆うような魔法陣の数々がぶつかり合っていた。

 次々と生み出される瘴気の魔物たちと、何人もの妖精たちの放つ魔法が激突していた。

 

 そんな死地のまっただ中でも、彼女は。橘柚花は。

 

 

「――そろそろ、起きませんか? 先輩」

 

 

 ただ、ただ。

 愛しい人の目覚めを、待ち続けていた。

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