ハンマー少女はバズらない! 固有スキル【隠遁】で自由に探索してたら伝説になってました   作:chikuwabu

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ヘノ推理

「――っていうわけで、なんか今ね、深援隊のサカモトさんたちが房総ダンジョンでドワーフを探してるんだって」

 

 平日、仕事を終えた後で、ヘノと話をするために電車で房総ダンジョンへと訪れた。

 柚花から聞いた話では、サカモトたち深援隊のメンバー数名が、この房総ダンジョンへとドワーフに会いに訪れているらしい。おそらく工房へやってきたのは、千葉へ来たついでに親方に挨拶をしに来ただけだったのだろう。

 その割に、親方そっちのけで色々あったけれど。

 

 とにかく、【隠遁】で見つかりようがない桃子はさておき、日ごろダンジョンの中をふらふら飛び回っているヘノが見つかったらちょっと面倒くさいことになりそうなので、一応ヘノに伝えに来たのだった。

 桃子の訪れに気付いてやってきたヘノと合流し、そんな話をしながら森の中を歩く。今日は長居をするつもりもなかったので、いつもの丘の上へと向かっている。

 

「なるほどな。今日も。覚えのある気配が。すると思ったぞ」

 

「わ、もうサカモトさんたちダンジョンに入ってきてたんだ? やっぱり本職はすごいねえ」

 

「明らかに。他の探索者よりも。強い感じがするから。とても分かりやすかったぞ」

 

 桃子の中では、妖精の国で居眠りをしてしまった姿や、和歌の前でガチガチに固まってしまった姿の方が印象的である深援隊メンバーだが、実は彼らは国内でも上位に位置する高レベル探索者グループだ。

 土日だけ探索をしている桃子のような趣味の探索者と違って、彼らはダンジョンでの活動で生計を立てている。単純な素材採集はもちろんのこと、モンスターの特殊素材を集めたり、討伐や護衛の依頼を受けたりで生計を立てている、いわば本当の意味でプロの探索者だ。

 

 本来ならば、難易度の高さで知られる新宿ダンジョンや、それこそ難攻不落の琵琶湖ダンジョンのような場所にアタックするべきパーティであって、日常的にピザ屋が訪れるような房総ダンジョンにやってくるべき人たちではない。

 むしろ、この房総ダンジョンに入り浸ったとしても、彼らに釣り合う収入は得られないのではないだろうかとすら思う。もちろん、房総ダンジョンにも難易度の高い下層はあるのだが、他ダンジョンと比べればやはり効率は悪そうだ。

 まあ誰が頼んだわけでもなく、彼らが自主的にやってきたのだから、桃子がどうこう言うことではないだろうが。

 

「それにしても、どうやってドワーフなんて探すんだろう」

 

「探すもなにも。桃子は昼間は。工房で働いてたんだから。すでに会ってるんだけどな」

 

――小人の鉱夫の下で、かのモノと邂逅せよ。

 

 柚花に教えられて見に行った配信動画内で語られていた【天啓】の言葉を思い出す。

 ヘノの言う通りで、桃子がドワーフの正体だとするならば、深援隊メンバーはすでに件の予言の『小人の鉱夫』には出会っているはずだ。桃子にも会っているし、なんなら桃子以上にドワーフ然とした親方とも話している。

 ドワーフとその孫に接触しているのだから、それ以上誰に出会えというのだろう。

 

「例の予言だと、ドワーフの下で『かのモノ』と会うみたいなんだよね。仮に私がドワーフだったとしたら、『桃子の下で、かのモノと会え』ってことになるんだけど……」

 

 桃子は考える。自分のもとで出会える存在とはだれか? 桃子の傍らにいつもいる存在とは?

 桃子は目の前を漂っている緑の妖精を見つめる。もしかして、深援隊が会わなければいけないのは自分ではなくて――。

 

「それなんだけど。なんだか。変な噂話をしてる探索者がいたぞ」

 

「変って?」

 

 しかし、桃子に見つめられていたヘノは我関せずで、更に何か別な噂話の話を始めた。

 人間観察はしていても、探索者たちの間で交わされる会話にヘノが興味を持つとは珍しいなと思い、桃子はその先を促す。

 

「何故だか。最近また。ドワーフの目撃例が。あるみたいだぞ」

 

「そうなの? 最近私、房総ダンジョンで何かした覚えはないけどなあ。柚花とピザ食べてたくらい?」

 

「ピザを食べているところを。誰かに見られたのか?」

 

 さすがにそれはないだろうと桃子は考える。

 いや、ピザを食べているところを目撃されたとしても、傍から見れば柚花が一人でピザを食べているだけに見えたはずだ。

 噂になるとしても、一人で大量のピザを食べる少女とか、あるいは妖精とピザを食べる少女とか、そういうものになるはずだ。少なくとも、柚花はそんな噂については一言も言っていなかったので、そんな噂は出回っていないのだろう。

 

「うーん。それともだけど、もしかしたら本物のドワーフが私のほかにもいるのかな?」

 

「意外と。そういうのがいるのかも。しれないな。ダンジョンの中は。ヘノも知らないこと。沢山あるからな」

 

「そうだねえ。ダンジョンって、不思議なことがいっぱい」

 

 ここまでくると、ドワーフや座敷童子、それに人魚や雪ん子だって本当にいるかもしれない。

 ドワーフは一般的なイメージ通り、ずんぐりむっくりした体形で、筋肉質の髭の戦士なのだろう。

 座敷童子は、萌々子ちゃんのイラストそのものな女の子だろう。

 人魚や雪ん子はどういう姿なのだろうか。人魚は綺麗なお姉さんで、雪ん子は小梅ちゃんと同じくらいの少女だろうか。本物の雪ちゃんは昔に行方不明になった少女らしいが、戦後の時代だろうか。どのような少女だったのだろう。

 

 時折、桃子は頭のなかでその姿を想像してみたりもする。

 

 都市伝説そのものと言える妖精たちと知り合い、都市伝説すら歯牙にかけない本物の魔女とも出会った今では、以前にもまして、ダンジョンにはなんでもありなのだなと思うようになった。

 りりたんなら、本物のドワーフの居場所くらい、すぐに見つけられるのだろうか。深海のような瞳の少女が、ふと脳裏に浮かんできた。すると、まるで彼女もいま、桃子を覗いているような気もしてくる。

 

 そんな風に思考に耽る桃子を、ヘノが不思議なものを見る目で見上げていた。

 

「桃子。なんか。変な魔力が拡散していってるぞ」

 

「え? なになに? 変なことしちゃってたかな、こわっ」

 

 桃子は自分の魔力を感じとることが出来ない。【隠遁】の魔力がどういう仕組みなのかもわからないし、武器に魔力を送るときも感覚的になんとなくでやっているだけで、きちんと魔力が流れているのかどうかもよく分からない。

 なので、魔力の話はヘノの言うことを全面的に信じることにしている。

 

「すーはー、すーはー……。どう? 私の魔力、落ち着いてる?」

 

「大丈夫だぞ。さっきの。なんだったんだ?」

 

「いや、私が聞きたいくらいなんだけど……」

 

 なんとなく、いまどこかで、深海色の瞳がにこにこと微笑んでいる気がした。

 

 

 

 そして森の中を歩いてたどり着いたのは、いつもの丘。

 この第一層の日差しは外の時間とリンクしていて、実際の時刻と同様に既に日も傾いてきた。ハイキングというには遅すぎる時間だけれど、ダンジョン前のスーパーで買ってきたサンドイッチをヘノと一緒に味わう。

 ちなみに、今日はちゃんとランタンを持ってきているので、日が落ちたとしても大丈夫だ。帰り道も怖くない。

 

「そういえばさ、ヘノちゃん。桃の窪地なんだけど、あそこってやっぱりそのうちダンジョンが広まっていっちゃうのかな」

 

「多分。そうなるだろうな。それがいつになるかは。わからないけどな。あの窪地はなんか。特殊すぎて。よくわからないぞ」

 

「そっか……」

 

 和歌に聞いた新宿ダンジョンの話を思い出して、ヘノにも聞いてみたが、やはり結論は同じ。

 時間の問題。

 

 あの場所がダンジョンとなって広がれば、うかつに一般人が近づいたら危険な場所と化す。

 

「あのあとクルラを見つけたんだが。クルラが。あの年寄りに。ダンジョンに近づかないように。伝えるそうだぞ」

 

「あ、よかった。私、それが一番心配だったんだよ。お婆ちゃんと小梅ちゃんが巻き込まれたらって思うと、ちょっと気が気じゃなくて」

 

 ダンジョンが穴を広げるのが時間の問題というのならば、それはもはや諦めるしかないだろう。幸い、立地的にはビルの倒壊などのパニックはありはしない。

 ただ、一番の心配事はお婆さんたちだった。将来的に小梅とお婆さんが巻き込まれてしまう可能性だけは、目を瞑れなかった。

 しかし、彼女らが神様として崇めているウワバミ様からの言葉ならば、きちんと聞いてくれることだろうと安心できる。

 

「でも。あそこがダンジョンになって。探索者が増えたら。桃がとりにくくなるから。困るな」

 

「そういえば桃を探しに行ったんだったっけ。忘れちゃってた」

 

 小梅と遊び、お婆さんにシチューを食べさせてもらった記憶の方が濃すぎて、そもそもの桃カレーの材料集めという目的はすっかり忘れていた。

 

 桃の実がなるのはいつ頃だろう。

 窪地に生えた桃の木はこの前、うっすらと白い光を放っていた。いや、白というには黄色がかっていて、いわば金色の光といったところか。実に神々しいものを感じた。

 あの樹にはもしかしたら不思議な力があるのかもしれない。桃子にも見えるほどの魔力の籠った桃の木ということは、その実もかなりの期待が出来るものなのだろうなと、桃子は期待に胸を膨らませる。

 一方ヘノは口いっぱいに頬張ったサンドイッチで、頬を膨らませていた。

 

「むぐむぐ。そういえば桃子。さっきの話だけれど。【天啓】っていうのは。他には何か言ってたのか?」

 

「天啓? ああ、オウカお嬢様の配信だよね。ええと、なんだったかな……?」

 

 そういえば、【天啓】の話をヘノには軽くしかしていなかった。

 あれもまた不思議なスキルで、言ってしまえば予知、予言の類。超自然的なオカルトの領域だ。もしかしたらヘノに見て貰ったら、何かわかるかもしれない。

 桃子は端末を取り出して、ブックマークしていた該当の配信動画をヘノにも見えるように持って再生してみせた。

 

 

『小人の鉱夫の下で、かのモノと邂逅せよ。

 広がるシンエンが巫女を飲み込む前に――』

 

「ヘノちゃん、何かわかる?」

 

「シンエンっていうのは。深援隊のことか? あいつら。広がるのか?」

 

「うーん、多分だけど、この場合のシンエンは、深淵……闇とか、穴の底とか、それこそダンジョンの奥深く、みたいなものじゃないかな?」

 

 言われてみれば、深援と深淵、口に出したら同じ響きだ。この予言は、そのどちらの意味を言っているのかの判断は難しい。

 とはいえ、深援隊が広がって巫女を飲み込むなんていうことはないと思うけれど。

 

「じゃあ。ミコっていうのは。飲み物か? 美味しいものなのか?」

 

「違う違う。ええと、ミコ……多分巫女さんとかのことかな。神様に仕える、女の子のことだと思うよ」

 

「そうか。少なくとも。ヘノが知る限りは。神様がいるダンジョンも。それに仕える人間も。見たことないと思うぞ」

 

「やっぱり、何かの比喩なのかなあ」

 

 広がる深淵。神様。巫女。何かが喉に引っかかるのだが、出てこない。

 そうこう話している間に日は落ちて、空には星が瞬いている。

 持ってきたランタンに明かりをつけて、サンドイッチのごみをポケットに押し込む。

 

「まあ、難しいことは後にして、今日はそろそろ帰ろうか」

 

「そうだな。そもそも。サカモトたちの話だから。ヘノにはあんまり。関係なかったな」

 

「そうだヘノちゃん、今週末は柚花がうちにくるんだけど、ヘノちゃんも来る?」

 

 週末には、桃子の誕生日を祝うという名目で柚花が桃子の家へと遊びにくるらしい。

 せっかくなのでヘノも連れていって、自宅女子会というのも楽しいかもしれないなと思う。

 

「なんだ。お泊りなら。ヘノも行きたいぞ。カレー食べるのか?」

 

「ううん、ケーキ食べるの」

 

「さては。新手のカレーだな?」

 

 そんな風に、喉に引っかかる違和感を飲み込んで、週末に食べるケーキのことを相談しながらヘノと二人で丘をあとにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【遠野萌々子ちゃん貼り付けスレ5】

 

 

:護る会のメンバーの布団を定期的に外に干してくれてる萌々子ちゃん(イラスト)

 

:守護られてるんだよなあ

 

:萌々子ちゃんとコロボックル(イラスト)

 

:ご当地コラボシリーズ好き

 

:コロボックルって釧路ダンジョンだっけ

 

:フキの葉を持ってる小人だな 萌々子ちゃんと同じタイプの都市伝説的な子

 

:前にうpられてた萌々子ちゃんとたぬきの絵を保存し忘れたンゴ

 

:萌々子ちゃんと化けたぬき再掲(イラスト)

 

:化けたぬきが出るのはうどんダンジョンだっけ

 

:もう誰も正式名称で呼ばない、うどんに支配されしダンジョン

 

:マヨイガでうどん作ったら萌々子ちゃんとこにタヌキが遊びにこないかな

 

:うどんは万能アイテムか何かか

 

:萌々子ちゃんと人魚姫(イラスト)

 

:なんでマヨイガの壁に大穴が開いてるんですかねえ

 

:お姫様、ちょっとやりすぎちゃうところあるから・・・

 

:萌々子ちゃんがビビってるの解像度高くて草

 

:今日は絵師多いな

 

:ということはアイツがそろそろ来るぞ

 

:ちょっとやりすぎちゃうところがある鎧萌々子ちゃん(イラスト)

 

:ドワーフが来たぞ!

 

:房総半島へ帰れ!

 

:ハンバーグ投げつけろ!

 

:息が合ってて草

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