ハンマー少女はバズらない! 固有スキル【隠遁】で自由に探索してたら伝説になってました   作:chikuwabu

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吹雪の防衛戦

「あの、今のうちに小梅ちゃんとお婆さんは安全な場所へ移動できないでしょうか」

 

 柚花たちが来た段階ですでに窪地で暴れていたモンスターのグループは、ひとまずは撃退することが出来た。

 穴が小さいうちに出てきた小型の魔獣たちは数こそ多かったものの、ランクとしては第一層の尖兵程度のもの。

 妖精たちの力を得た柚花ならば、一人でもどうにか対処することは可能な範疇だった。

 無論、数が数だったので、ティタニアからの魔力付与がなければ途中で魔力・体力が尽きていただろうが。

 

「うぅ……ごめんなさい、今は難しいです……」

 

「せめて、身体にまわっている毒を排出できていれば……動かせたんだけどねぇ……ククク」

 

「お婆ちゃん……お婆ちゃん……」

 

 敵が居なくなった今のうちに怪我人と子供を安全な場所へ、と考えた柚花であるが、ニムたちはふるふると首を横にふる。

 柚花の【看破】でも、妖精たちが非常に繊細な魔力操作でお婆さんの身体に解毒治療を施しているのが窺えるため、さすがにそこで無理強いはできない。

 お婆さんにすがり付く少女、小梅は、柚花の言葉も耳に入っていないのだろう、非常に憔悴しきった様子で、どうにか魔力を絞り出している。

 魔力の出力も覚束ないのに延々と治癒を途切れさせないその少女の魔力量には柚花も驚きを禁じ得ないが、しかしこのままではこの少女も危険である。

 お婆さんはもとより、まだ10にも満たないであろう少女の痛々しい姿に、どうにかならないかと歯噛みする柚花であったが……。

 

「ククク……ここよりも、桃子くんの方に加勢した方が良さそうだねぇ……」

 

「ゆ、柚花さん。きっと……まだ、これから更に……大きな魔物が……」

 

 妖精たちは解毒の治療を施しながらも、こちらではない、壁の穴のほうを指し示す。そこでは、桃子がハンマーに付与された魔法で、壁の穴を凍らせ続けていた。

 先程の魔物たちが第一層の魔物たちだとするのならば、時間差で第二層、第三層の魔物が登ってくる可能性が高い。そうなると確かに、桃子一人では荷が重い。

 

「わかりました! 小梅ちゃん、絶対大丈夫だからね。お婆ちゃんも、小梅ちゃんも、お姉ちゃんたちが守ってあげますからね」

 

「うん……お姉ちゃん、お願いします」

 

 小梅の頭を撫でるように手をぽふ、と当てると、ようやく少女は柚花の姿を視界にとらえて、涙も枯れ果てた瞳で柚花を見つめる。

 柚花は、小梅に希望を与えるようににっこり笑いかけてから、双剣を構えなおして、颯爽と次の戦いへとかけていった。

 

 

 

 

 

 

「とは言ったものの先輩、もうこれ、氷じゃどうにもなりませんね。5分も持ちませんよ」

 

 桃子はひたすらに壁の裂け目に【氷結】を叩きつけており、すでに桃子の前には2メートル四方を超える氷の壁が出来ている。

 しかし、その氷は桃子が凍らせると同時にピキピキと音を立て割れ始めている。

 柚花はその横に立ち、不慮の事態に備えて双剣を構えるが、しかし壁の裂け目を一目みた柚花は氷で封じる作戦の限界を感じとった。

 

「うん……いま、ヘノちゃんが房総ダンジョンまで助けを呼びに行ってくれてるから、どうにかそれまで持たせよう!」

 

「あぁ、そういう。例の【天啓】ですか。『広がる深淵』って、まさにこの状況ですもんね」

 

 桃子の言葉に、柚花もすぐに理解を示す。頭の回転の速い後輩だ。

 ひたすらひび割れを叩いて更に凍らせる。氷が割れそうになったら更にそこを叩いて凍らせる。

 もぐら叩きのような様相になってきた桃子の作業だが、今はそれでどうにか魔物の進行は抑えられている。

 が、裂け目自体がじわじわと広がっていっている上に、穴の向こうから氷を砕く魔物の存在を感じる。

 桃子には分からなくとも、【看破】を持つ柚花がすぐ横で緊張状態になっているのをみる限り、氷のバリケードが破られるのは時間の問題だろう。

 

「柚花っ、【看破】で見える? 敵はもう来てる?」

 

「すみません先輩、見えるって言うか、目の前です! 離れてください、でかいの来ますよ」

 

 瞬間、柚花が桃子の身体を引っ張るように飛び退くと、氷のバリケードが爆発するように弾け飛んだ。

 氷の反対では穴がかなり広がっていたようで、すでに最初のひび割れなどとは比較にならない巨大な洞穴が口を開く。

 

 

「グォォオオオオオオオ!!!!」

 

 

 そしてそこから巨体を揺らして現れたのは、巨大な獣。今回のスタンピードに乗じて、恐らくは下層からあがってきたものだろう。

 巨大な狼のような相貌のそれは、のそりと穴を潜って窪地へと這い出ると、まるで熊のように二本足で立ち上がり、山中に響くであろう巨大な雄叫びを上げる。

 

「熊なのか狼なのか、はっきりしてください!!」

 

「このっ!! 【氷結】っ!!」

 

 立ち上がった姿はゆうに5メートルはあるだろうか。

 その巨大な四肢だけでも丸太以上の太さを持ち、ひと薙ぎでもされれば桃子や柚花では簡単に吹き飛ばされてしまうだろう。いや、吹き飛ぶ程度で済めば上等だ。

 

 柚花が巨獣へ向けて得意の【チェイン・ライトニング】を撃ち出し、桃子がその巨大な足を【氷結】のハンマーで打ち据えるが、しかし大したダメージにならない。

 打撃を与えれば、巨獣の毛皮は表面的には凍りつきはするものの、しかし内部までは効いていないようで、魔獣が力めばすぐに氷は砕かれてしまう。ダメージもあまり期待できそうにない。

 

「こいつ、とんでもなく強いヨ!」

 

「でかいのと戦ってる間に、奥からまだ小さいのも出てくるよぉ! 小さいのが崖を登っちゃうよぉ!」

 

 巨獣の足元を抜けるように、再び小型の魔獣が溢れだした。小型と言っても、恐ろしい魔獣であることにはかわりない。戦う力のない一般人が襲われれば、重傷では済まないかもしれない。

 そしてその魔獣たちは、あろうことかまっすぐに駆け出し、そのまま四方にある自然の階段を登り始めた。

 

「このままじゃ集落が……柚花っ!」

 

「無理ですよっ、私がこのデカブツおびき寄せなきゃ先輩が死んじゃいますよ!」

 

 階段を駆け上がる魔物をどうにかしようにも、いま柚花が巨獣の注意を引き寄せるのをやめれば、その標的は足元を凍らせてくる存在へと移行するだろう。

 残念ながら、桃子ではこの巨獣の爪牙を掻い潜るような機敏な動きは出来まい。

 

 しかし一方、桃子と柚花の壁を抜け出した小型魔獣もすんなりと地上へはあがらせてはもらえない。

 

「ボクたちが、あちらは阻止すると良いのではないかな?」

 

「桃子! コーハイ! 小さいのは任せろ!」

 

 桃子たちが巨獣を相手取るならばと、妖精たちが一斉に魔獣の群れに魔法を放つ。妖精たちで倒しきることは難しくとも、妨害することは出来る。

 本来、彼女たちが人間の集落を守るために戦う義理はない。だが彼女たちはわかっていた、ここの人間たちの無事が、大切な仲間であるクルラの願いなのだと。

 

 妖精たちが窪地の四方へ散らばり、魔獣が人里へ登らないよう、最後の防衛線となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘向きではない妖精でも、小型の魔獣程度なら相手取ることは可能だ。

 しかし、それも相手が際限なく涌き出る魔獣でなければ、の話である。

 

「ヘノ! ヘノはまだか! このままじゃクルラが!」

 

 ツヨマージを持つヘノ、妖精としての力が非常に強いクルラ。この二人を欠いた今、次いで戦闘をこなせる火の妖精が中心となって魔獣を撃退していくが、しかし彼女らだけでは数の暴力はどうしようもない。

 本来は、妖精は自らが力を振るうものではないのだ。彼女らの力は、誰かに付与することで、真価を発揮するものだ。

 たった数人の妖精では、魔物を抑えきれなくなるのも時間の問題だった。

 

「小さい魔物が多すぎるねぇ! あっ……!?」

 

 そして、とうとう狼の魔獣が妖精の包囲網をすり抜け、地上へと躍り出てしまった。

 

 

 

 が、狼はすぐに、振り下ろされた鍬で叩き潰され、煤へと戻る。

 

 

 

「こん化け物どもが! 俺たちの山を荒らすんじゃねえ!」

 

 

 

 吹雪く雪の中から出てきたのは、鍬を持った村の男だった。

 

 そして、それに続くのは角材を持った若者、伐採用の斧を構えた老人、そして他にも何人もの村の男たちが、各々手に武器を持ち、崖の上へと登ろうとする魔獣を力任せに叩き落としていく。

 各々、ランタンや山岳ライトといった明かりを手にして、吹雪の中を窪地まで歩いてきたのだ。

 そして、その男たちの横には、わら帽子の少女が一人、佇んでいた。

 わら帽子にもんぺ姿のその少女は、窪地へとたどり着いた男たちににこりと微笑みかけると、スゥと雪の中に溶けるように消えていく。

 

「おメェら、雪ん子の気持ち無駄にすんでねえぞ!」

 

「小梅! 風間の婆! 無事け!!」

 

「うぉっ、ウワバミ様が沢山いるでねえか!? ごりゃ力強ぇの!」

 

「雪ん子が下にもおるで! 集落にきた雪ん子一人じゃながったんだのぉ!」

 

 村の男たちは、事前に状況を何者かに伝えられていたのだろう。各々で桃の窪地までくると、魔獣が昇る自然階段へと散開し、それぞれの武器で魔獣を叩き落としていく。

 妖精たちはその人間たちの登場に一時は警戒心を露わにして距離をとったが、しかし人間たちの目的が魔獣の撃退とわかるや否や、人間たちの下へと舞い降りる。

 

「なるほど! つまり彼らは、ボクたちの味方ということだね!」

 

「今だけは人間たちに、力、貸すよぉ! クルラに感謝するんだよぉ!」

 

「人間たち! 絶対にこの魔物! 上に上げるなよ!」

 

「おうよ! 任せでけろ!」

 

 村の男たちの得物が、妖精たちの魔法を付与されて輝きだす。

 これならば、魔獣が外へと逃げ出すことはない。

 桃の窪地の包囲網は、人間と妖精の協力を経て、いま完全なものとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「村の人たち……?!」

 

 巨獣の足元でハンマーを振るい続ける桃子は、視界の端で見えた階段の様子に一瞬だけ手が止まる。

 気のせいでなければ、村の人たちの姿が見えた。彼らが光る武器を持ち、魔獣と格闘していた。

 しかし、桃子にはそれを確認するような余裕も与えられない。

 

「先輩、このでかいのが増えます! ほらでかいの、こっちきなさいよっ!」

 

 桃子と柚花が巨獣の相手をしている間にも、穴からは更に魔物たちが這い出てくる。

 

 そしてとうとう、2匹目の巨大な影、いま桃子たちが相手をしている巨獣と同様の魔物が外へと向けて唐突に躍り出てきた。

 そして不運なことに、位置取りが悪かった。2匹目の巨獣は桃子の存在に気付かないままそのわら帽子に体当たりをする形になり、巨獣の突撃に巻き込まれた桃子が1匹目の巨獣の視野に姿を晒してしまった。

 巨獣はすぐ目の前のわら帽子を視認し、その腕を振り上げようとする。

 

「先輩ダメッ?! この犬ゴリラ! こっち見なさいよっ!!」

 

 しかしその巨獣の眼前に幾つもの電撃が走り、すぐに巨獣の標的は眼前へと姿を曝け出した、先ほどから鬱陶しく電撃を放ってくる獲物へと戻される。

 そしてその標的に向かい、大きな腕を振り上げて。

 

「柚花ッ!!」

 

 一撃。

 

 ドゴン、という低い衝撃音とともに巨獣の腕は振り下ろされ、しかし。

 

「遅れてごめんな……でももう大丈夫だ、俺たちがきた!」

 

「サ、サカモトさん……」

 

 鎧姿の男が両手で盾の様に構えた大剣が、巨獣の爪を食い止めていた。

 そのすぐ背後で尻餅をつく形でへたり込んでいた柚花は、無事だ。

 

「少女のピンチは俺のピンチ! さあ来いデカブツ、勝負と行こうか!」

 

 

 

 

 

 

 

 そして、桃の木の下では。

 

「貴女、その年齢で治癒魔法の使い手ですのね。でもまだ、使い方がなっておりませんわ、ヒヨコ未満のひび割れ受精卵でしてよ!」

 

「だ、誰……?」

 

 憔悴した顔のまま、倒れる老婆に力を注ぎ続ける小梅の下に現れたのは、深援隊に所属する女性探索者、オウカだ。

 彼女は小梅の横に座ると、小梅の小さな手の上に己の手を重ねて、その魔力の流れを感じ取る。

 

「風間さんのお友達ですわ。さて、小さな治癒魔法師さん。今から治癒魔法の真髄をお見せしますわよ。その手で感じとりなさい、スパルタ実践教育ですわ!」

 

 オウカはそう言うと、小梅の手の上から更に、己の魔力を放出する。

 小梅のものと同じ白い光だが、その魔力の流れは繊細だ。眠る老婆の体内を検査するように魔力を流し、そして的確にその傷ついた体内を繋ぎ、補強し、癒していく。

 

「ククク……ヘノが、間に合ったようだねぇ」

 

「こ、これならもう……大丈夫です……うぅ、嬉しくて涙が……めそめそ」

 

 同じ人間の体内に魔力を放出していたルイとニムには、この女性の技量が手に取るように伝わった。この人間は、レベルが違う。

 オウカの力を感じた小梅も、漠然とお婆ちゃんがこれで助かるという実感を得て、ようやく、その瞳に光が戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう。君が、俺たちの村を守ってくれたんだな」

 

 柚花の目の前に立つ一匹目の巨獣とサカモトが格闘しているとき、更に奥では深援隊のリーダー、風間が二匹目の巨獣と対峙していた。わら帽子の子供を庇うように。

 彼のサーベルは、白く……そして薄らと黄色がかったオーラを放っている。

 そのオーラに照らされ、そのサーベルは金色の刃のように桃子の瞳に映った。

 

「あなたは……風間さん」

 

「だが、俺たちが来たからには、大丈夫だ。安心してくれ」

 

 風間には、実はこの少女の姿はよく見えていない。だが、そこに居ると意識さえしすれば、確かにわら帽子の子供の立ち姿を認識出来た。

 気を抜けば視界から掻き消えるその子供は、おそらくは妖精や幽霊の類なのだろう。

 だが、そのわら帽子の正体が何であれ、この窪地で自分たちより先に魔物の進行を食い止めてくれていたのは間違いない。

 風間はその少女のわら帽子ごしに、ポンポンと手をあてる。もう大丈夫だというように。

 

 そして、新たな人間を警戒する二匹目の巨獣をひと睨みしてから。

 

 サーベルを一閃させる。

 

 それは光の軌跡を描き、まるでそこには何もなかったのではないかというくらいあっさりと、巨獣の身体を光の刃が通り抜ける。

 そして更に二撃、三撃と刃を振るい、気づけばそれまで猛威を振るっていた巨獣は腕を失い、胴を切断され、そして最後に首を落とされると同時に、煤となって吹雪の中に四散していった。

 

 

「つ、強い……」

 

「あいつ。魔物が纏ってた瘴気を。剣で直接切り裂いてるぞ。あれじゃ。瘴気頼りの魔物なんか。敵じゃないな」

 

「ヘノちゃん! 間に合ったんだね!」

 

 風間の強さに唖然としていると、桃子の耳にいつもの聞きなれた声が響く。緑色の光を放つ少女。ツヨマージに選ばれた風の妖精、ヘノだ。

 わら帽子の中の桃子を覗き込むように、ヘノは笑いかけて。桃子の目元の涙をその小さな手で拭う。

 

「桃子。まだ敵は出てくるぞ。もう一息だぞ」

 

「うん、頑張ろう!」

 

 いくら風間とサカモトが強くても、今はスタンピードの真っ最中。多勢に無勢なことには変わりない。

 桃子もまだ、呆けている場合ではないと、ハンマーを改めて握りなおす。

 

 と、そんなときに桃子の脳裏に、聞きなれた声が響いてきた。

 

 

 

 

 

『桃子。お願いを聞いてほしいのよ♪』

 

 

 

「え? クルラちゃん?!」

 

 クルラの声。

 柚花とともに窪地へと入ってきてから、まだ一度もその姿を見ていなかった、この土地で信仰されている神、ウワバミ様の名を与えられた妖精。

 彼女の声が、桃子のもとに届く。

 しかし慌てて見回しても、そこにはクルラの姿はない。

 降りしきる雪の向こうでも、今や見慣れた白い光を見逃すことはないはずなのに。

 

『桃子。知ってる? ウワバミって、大きな蛇なのよ♪ 大きくて、どんな魔物も、ひと呑みにしちゃうの♪』

 

「クルラちゃん、どこにいるの?! ウワバミって……」

 

「……桃子。クルラは、あそこだ」

 

 ヘノは、桃子の前に出て、静かに一方を指さした。

 

 そこにあるのは、焼け焦げた桃の木。

 それは魔物に蹂躙され、すでに幹も半ばで折られ、そこに大きく葉を広げていた大樹の面影もない。

 木の下にはお婆ちゃんと小梅がいる。まるで、その木が二人を庇っているように見えた。

 

『お爺ちゃんはね、わたしを生み出してくれたのよ♪ ウワバミの名を付けてくれたのよ♪ だから、同じ力のある桃子に、お願いしたいのよ♪』

 

「あいつ。酒の妖精じゃなくて。桃の木の妖精。だったんだ」

 

 折れて、黒く焦げた桃の木は、それでもまだ生きていた。白と黄色の混じった、金色の光を放っていた。

 

 

 

 

 

『桃子、ソウゾウして。大きなウワバミになった、わたしの姿を。わたしはウワバミ様。最後は、わたしが皆を護るわ♪』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【りりたんの朗読チャンネル】

 

 

 おはようございます、こんばんは、りりたんです。

 今日も静かなダンジョン内で、朗読をしていきます。

 モンスターとは戦いません。探索もしません。朗読をしていきます。

 

 え、朗読ではなくこの前のお話の続きを聞きたいですか?

 ……そうですね。ではたまには、朗読でなく、りりたんが知っているお話でもしましょうか。

 

 とある山に住むお爺さんが、ひとつの桃の木を見つけました。

 その木は冬でも枯れない不思議な木で、お爺さんはその木を神様の木として祀ったのですよ。

 そして毎日、村の人々とともにその木に御神酒を供えていると、その木には本当に、小さな神格を持った妖精が宿ったんです。

 

 その木は元から力を宿していましたが、神格が宿るほどではなかったのですよ。

 そこに力を与えたのは、お爺さん本人も知らなかった【創造】というスキルでした。

 創造と言っても、ゼロからものを創造できるわけではありません。でも、信仰心という力と、不思議な桃の木の力を材料にして、新たな神格を持つ妖精を【創造】することが出来ました。

 それはとても珍しい、すごいスキルなのですよ。

 

 残念ながら、お爺さん一人の力ではそれ以上の【創造】は出来ませんでした。妖精も、人々を照らすほどの、大きな力はありませんでした。

 【創造】の限界ですね。

 

 でも、もしかしたら、他にも同じスキルを持つ人間がいて、その信仰に再び力を注いだら。

 小さな妖精は、大きな神様へと成るかもしれませんね。

 

 

 ふふふ。これは、私がそのお爺さんから直接伺ったお話なのですよ。本当か、作り話かは、わかりません。

 そのお爺さんは、とても珍しい、すごい『本』を持っていらしたので、りりたんはそれを写させていただいたのですよ。

 先日、りりたんのお友だちにもその写しをプレゼントしたのですが、喜んでくれているでしょうか。

 

 

 お爺さんは、とても優しいお爺さんでしたね。

 

 ふふふ。そうですね。お爺さんへのお礼はしないといけませんね。りりたんも、重い腰を上げましょうか。

 りりたん、物語はハッピーエンド派なのですよ。

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