憧憬の連鎖、その渦中   作:阿呆鳥

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 試験編のPVとキャラPVでのヴィアベル隊長でめちゃくちゃブチ上がってたところに次回予告での声で抑えきれなくなったので初投稿です。(ガチ)
 アニメ範囲外の部分も描写するのでアニメのみを見ている方はブラウザバック推奨です。
 
 多分これから本編であるであろう掘り下げがきたら絶対に矛盾しますが、その時は笑ってください。


起源(オリジン)

 人が人に憧れたとき、抱く感情とはどんなものがあるのだろうか。尊敬、恋慕、執着等々。憧れは正の感情ではあるが、時に相手を見る目を曇らせる。

 

 けど、それでも私にとってはそれが、それだけが全てだったのだ。

 

 

 

 

 ◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 勇者ヒンメルの死から5年後。北側諸国。

 小さな村のとある民家で一人の赤子が産声を上げた。ケッテと名付けられたその少女は少しやんちゃだが健やかに育ち、そのまま多くの人間に愛される人生を謳歌することになる……はずだった。

 

 それはなんてことない、よく晴れた日の出来事だった。魔王軍の残党と思しき野良魔族数匹が村を襲撃し、逃げ惑う村人たちが、ケッテの目の前で虐殺されていった。悲惨だが、北側諸国ではままある不運である。

 どこか現実味の無い風景を見るような感覚の中、立てこもっていたケッテの家の中に魔族が侵入し、両親をあっけなく殺害した後、一体の魔族の持つ剣が自分に向けられ、僅かに首筋を撫でた。その時、「ああ、自分はここで死ぬんだな。」と思った瞬間、

 

 

人を殺す魔法(ゾルトラーク)ッ!」

 

 

 魔族が飛び退り、元いた地点に光線が突き刺さる。魔族は声の方へ向き直り、そして不自然に動かなくなった。

 

人を殺す魔法(ゾルトラーク)…死ね。」

 

 再び光線が放たれ、魔族は塵となって消えた。頭を抑えながらケッテが発生源の方を見ると、灰色の髪をした男が杖を構えて立っていた。息を切らし、傷だらけであったが、その姿は戦士として非常に様になっている。どこかボーっとするような感覚の中、うわごとのように「かっこいい…」と呟いた。

 その声でケッテの存在に気づくと彼は外に向け「生存者だ!」と叫んだ後駆け寄ってくる。

 

「悪い、遅れちまった…本当に、すまなかった…」

 

 周りを見てこの子どもの親が既に死んでいることを理解したのか、薄皮が切れ、血の流れる首筋に応急処置をしながら男はそう言った。

 

 しばらくして外からヴィアベルというおそらく目の前の男を指す名前を呼ぶ声とともに数人の人間が現れ、僧侶によって軽い治療が施され、その後ケッテのことを保護するという流れになった。

 この村の生き残りはケッテだけであり、多くの大人たちがこちらを哀れんだり心配したりする目で見てきて、中には直接声を掛けてくる者もいた。彼らはとても優しいのだろう。

 しかし、ケッテにとって、その日で最も強く残ったものは、首にあたる布の感触とこちらを慮る男の姿であった。

 

 

 こんな人になりたいな、とケッテは思った。

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ…なんだ、俺に聞きたいことって言うのは。」

 

「……どうしたら、あなたみたいに魔族を殺せるようになりますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 ◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 私と隊長の馴れ初めはこんなものでいいか。

 

 

 勇者ヒンメルの死から29年後。私は隊長と二人でオイサーストへの向かう道中の船の船室で、回顧録を書いていた。隊長は船酔いが酷いから横になるという理由で早々に船室に戻ってしまったため、背中をさすってあげることもできず暇を持て余し、座学の息抜きに後世に私と隊長の愛物語(デマ)を伝えるための叩き台を作っている。うん、三人称体だからあくまで客観的に見えるしいい感じだ。

 

 今振り返って当時に思いを馳せると、この後再会するまで中々大変だったな、という部分が大きい。身寄りが無くなったため孤児院に入ることになった私はあの時の光景が頭の中で焼き付き離れなくなったため、私を助けてくれたのが北部魔法隊であるという情報から死に物狂いで魔法の特訓をした。周りは故郷が魔族に滅ぼされたから復讐に憑りつかれていると考えていたそうで、孤児院の仲間たちと昔話をしたときはめちゃくちゃ驚かれたっけな……

 しかし、北部のなんてことない孤児院には魔法のちゃんとした教練書も無く、「サルでも分かる魔法の使い方」みたいなやつしかなかった。当然魔法学校に通えるようなお金もなく、学費が免除されるほどの才能もなかった。だから基礎の基礎以降はあの日の光景を何度も何度も何度も反芻してイメージを培ったのだ。もう親の顔も思い出せないのに、あの時の隊長の姿は色褪せることなく思い出せる。おかげで隊長の魔法と相性のいい魔法を開発することもできたし、本当に隊長様様である。

 

 

 そんなこんなでまぁそこそこあった才能と努力の甲斐あって私も魔法使いとなり、北部魔法隊にめでたく入隊することができ、隊長(当時はまだ隊長ではなかったが)とも再会することができた。それからはずっと彼の補佐をしながら幸福を謳歌していたのだが…

 

 

 少し前の魔族との戦闘がかなり激しいものとなり、辛勝したはいいもののこちらの犠牲者も相当な数に上ることになった。それを受け、隊長はより強い力を求め、一級魔法使い試験に挑むと言い出したのだ。私は離れ離れになるのが嫌だったから隊長が離れたら北側がより不安定になるとか何のかんの言って反対していたが、数日してとんでもない事実を閃いてしまった。私も三級魔法使いだし、一緒に試験を受けに行けば実質ふたりきりでランデブーじゃん!と。

 

 そうして正直名誉も魔法も興味ないが、一級魔法使い試験を受けるために今は海路を使いオイサースト近くの港町まで移動しているというわけだ。船酔いが酷いというから看病で好意の荒稼ぎチャンスだと思ったのに当てが外れてしまい非常に残念である。

 

「港が見えてきたぞ!」

 

 船乗りの大きな声が外から聞こえてきた。やることも無いので隊長に会ういい機会だと思い、あちらの船室に向かい声を掛ける。

 

「隊長、港が見えてきたそうですよ。見るついでに外の空気を少しでも吸った方がお体にいいですし甲板に出ませんか?」

 

「ん…おぉ…」

 

 中から苦し気な声(かわいい)がして、少し後に顔色の悪い隊長が出てきた。背中をさすりながら甲板に出る。

 

「よし…ここまでくればあと少しだな、長かったぜ…」

 

 どこか安堵したような表情をしながらそう言う。北部魔法隊を率いるトップなのに船酔いには負けるところも素敵だ。この顔が見れるのが私だけでよかった。

 隊長の意識を少しでも私に向けさせたいので会話をしていた方が腐弥生しづらいという理由でこれから行う試験に関する雑談をする。

 

「隊長は一級魔法使い試験を魔族をより多く殺すための魔法を特権によって得るために受けるんですよね。」

 

「あ?お前もだろ」

 

 しまった。私は下心満載なのだがそういうことに表向きはなっているんだった。

 

「あー…そういえば隊長はなんで魔族を殺すことにそこまで固執しているんですか?北側諸国で暮らす人間は大抵魔族へ強い敵意を抱いていますけどそれにしたって隊長のそれは過剰に見えます。…言いたくないなら言わなくてもいいですよ。」

 

「おい今話そらしただろ…まぁいいや。…別に話してもいいが、そう何度も話すようなことじゃねぇんだよな。ケッテ、お前には話したことなかったか?29年前の俺の故郷でうんたらかんたらみたいな話だ。お前はたまに俺に関することに俺より詳しいだろ。」

 

「うーん……いや…知りませんね。話してくださいますか?」

 

 

 隊長に私の知らない過去があるということは心苦しい事実だが、また新たな一面を知っていけるのだと考えればそう悪いことではない。しかも今回は隊長の根幹だ。少し興奮する。

 

「露骨にワクワクすんな。…なんてことねぇ馬鹿なガキのカッコつけだよ。好きだったやつがいてな、そいつが魔族の動きが活発化した北側諸国から一家で中央へ逃げるときに格好付けて約束しちまったんだ。『クソったれな魔族共は俺が全員ぶっ殺してやる。だから、そん時はこの村に帰ってこい。』ってな。くだらねぇ下心だろ。もう顔も名前も覚えてないしな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 「なぁ、俺に会いたがってる新入りのケッテっていうのはお前か?」

 

 

 勇者ヒンメルの死から25年後。北側諸国、北部魔法隊本部。

 俺は暴れていた魔族の討伐を終え、拠点に帰還した。すると同僚からやたら俺の名前を出し、俺に憧れている様子のやつが入ってきたということを伝えてきた。そいつは魔族を殺すために魔法を愚直に極めてきたという経歴で、おとなしく口数が少ないタイプであるらしい。なのに俺の名前が出た途端食いつきがえげつなかったため、印象に残っているのだという。ついに春が来たか?なんてからかってくるそいつを適当にあしらいながら考える。俺は使う魔法も戦い方も品性が欠片もなく、それ以前にそもそも名もあまり上げていない。そんな俺に憧れるなんて奇特な人間もいたものだ。

 だが褒められること自体は悪い気はしないし、本物に相対させて理想と現実のギャップをはっきりさせてやったほうがこれからの付き合いもうまくいくだろう。少し興味が湧いたためそいつの所属を聞き、こちらから会いに行くことにした。

 

 

「あっ、えっ、は、はっはい!わ、私がケッテです!あっヴィ、ヴィアベルさんどのようなご用件ですか!?名前を出したのがご迷惑でしたか!?そ、そっそれともまさか直属にスカウトとかですか!?え、えっとえっと」

 

「あ、いや…そんな大層なことじゃねえ、少し話をしに来ただけだ。」

 

「あっ申し訳ありませっ」

 

 

 思ってたんと違った。やたら挙動不審なのは俺の前だからなのか普段からそうなのかは知らないがこれをおとなしい人間だと称した奴は目と耳が節穴だったのだろうか。いや、というかこの容姿…

 

「落ち着け、取って食いやしねぇよ。…お前、もしかして昔俺が魔族と戦った時に保護したやつか。」

 

 

 …あの村のことは昨日のことのように思い出せる。当時新米だった俺が所属する部隊が着いた時にはもうそこは地獄絵図と化していた。あと数分早く到着していれば惨劇は防げたかもしれない。とても、とても苦い記憶である。もしかして、こいつはあれからずっと魔族を憎んでいるのだろうか。

 

 

 

 

 

「えっ……覚えていてくださったんですか!!!!!?」 「うるさっ。」

 

「いやっあっすみません!も、ものすごく光栄で、…あっ、すごい…こんなことあるんだ…」

 

「なんだブツブツ言って。俺なんぞに覚えられててそんな嬉しいもんか?たしかに直接的に助けたのは俺だったが、関わったのはあの瞬間だけだ。…それにあの時のお前はそれどころじゃなかっただろ。」

 

「いや、ヴィアベルさんの姿を見たら忘れませんよ!じ…じつはあの…私、あなたに会うために、あなたの力になるためにこの北部魔法隊に入ったんです!今はまだ力が及ばないかもしれませんけど…絶対にあなたの支えになります!!」

 

「いきなり重ぇな…」

 

 

 

 

 これが今の俺の片腕、ケッテとの出会いだ。この後こいつが他のやつと話してるときの落ち着きようを見て同一人物か疑わしくなったことは思い出深い。

 かなり間の抜けた出会いではあるが、それくらいが俺達にはちょうどよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

「おい、どうした急に黙って。そんな噛みしめるような話じゃねぇだろ」

 

「…ご心配ありがとうございます。すいません、荷造りをするために船室に戻ります。」

 

「あ?今日着くことは分かってたんだから慌てないよう昨日までに荷造りしとけって言ったろ。俺の言葉を忘れるなんて珍しいな。」

 

「う…一級魔法使い試験が近づいてきて緊張してるんですかね、あはははは。」

 

「まあ、分かったよ。俺はちょっと楽になってきたし、もう少しここにいることにするぜ。」

 

「はい、分かりました。私より強い隊長に言うのもなんですが、なにかあったらいつもの手段ですぐ伝えてください。」

 

「あいよ。」

 

 

 …なんだ、なんだ、なんだそれは!

 ショックで少し放心してしまい心配されてしまった(優しい)が、とにかく今は一人になりたい。嘘をつくという不誠実を犯してしまったことを心の中で強く悔いながら急いで隊長の前を離れる。

 自分の船室に戻って鍵をかけ、私と隊長のツーショットが中に入ったロケットを握りしめながらベッドにうずくまる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それはズルじゃんよぉぉぉぉ~~~~帰ってこられたら勝てないじゃんかあぁぁぁ~~~~!!!!再会したら名前も顔もおもいだすやつじゃん!うらやましいよぉぉ~~~~!うぅぅぅぅぐぅぅう……」

 

 

 

 

 隣の船室にいる人からうるさいとクレームをつけられるまで、しばらくわめき続けていた。

 

 

 

 いやだって…ずるいじゃん…




Kette

[ケッテ] [女] (―/―n) ([小]Kettchen)

❶ ([英] chain)鎖, チェーン; 束縛.

❷ 連鎖, 連続, 列.

❸ 〘商〙連鎖店制, (商店などの)チェーン組織, 系列.

❹ 〘狩〙(カモなどの)群れ; 〘空〙(数機の)小編隊.

an die ~ legen
(…を)鎖につなぐ; (…の)〔行動の〕自由を束縛する.

コトバンク(https://kotobank.jp/dejaword/Kette )より引用。
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