オーガポンで愉悦したかった(できない)転生モモワロウ   作:アザミマーン

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オーガポンの「…がお゛ぼう゛つ!!」が好きなだけ。



オーガポンの『…がお゛ぼう゛つ!!』を目の前で見て愉悦したいだけの話

 

 

 ともっこプラザ。

 かつて村を守ったともっこと呼ばれる3匹のポケモンを奉るために作られた石像が置かれていた公園だ。

 とある出来事で石像こそ壊れてしまったが、それでもスイリョクタウンの村民たちの憩いの場としての機能は保っていた。

 

 先程までは、だ。

 

 今は見る影もなく、あちこちが抉れ、破壊され、何かで地面が溶けている所もある。

 そこでは2体のポケモンが争っていた。しかし、そのうちの一体はボロボロに傷ついて倒れている。頑丈そうな2つの外殻は、片方は大きな亀裂が入り、もう片方は既に砕け散って地面にばら撒かれていた。

 

 それを成したポケモンは嘲笑うような、勝ち誇るような甲高い鳴き声を上げ、悠々と空中に浮いている。

 そのポケモンは不気味な、ポケモンかどうかすら分からないような異形だったが、強大な力を持っていることは疑いようがなかった。その証拠に戦いは一方的で、倒れているポケモンとは対照的にその体に傷は殆ど見られない。

 浮かぶポケモンはそのまま、倒れているポケモンへトドメを刺すために膨大なエネルギーを溜め始めた。

 

 倒れたポケモンはそれを憎々しげに睨みつけながらも、もはや避ける力は残っていない。

 当たれば塵すら残らず消し飛ぶであろう光線の予兆を見つめる。

 

 もう間も無く発射される必殺のわざを前にして、力及ばなかったことを悔やみながら、倒れた桃色(・・)のポケモンは小さくモゲ、と鳴いた。

 

 そしてエネルギーが溜まりきり、一際大きく輝いたその瞬間だった。

 

 

 

ドゴォ

 

 

 

 衝撃と共に凄まじい音がして、悠然と浮かんでいたポケモンが大きく横に吹き飛ぶ。何らかの棒状の物体が衝突し、浮かんでいたポケモンは大ダメージを受け、ピクピクと痙攣しながら離れた地面にめり込んでいる。

 棒は溜まっていた光の塊を打ち砕きながら飛んでいったため、わざは威力を発揮することなく霧散してしまった。

 

 衝突したものがクルクルと空中を回転している。そこに小さな影が飛びつき、棒状のもの、ツタの巻きついたこん棒をキャッチした。

 緑と青の装束を身に纏った小柄なポケモン、オーガポンは、横たわる桃色のポケモンのそばに駆け寄る。

 そしてその惨状に動きを止めた。

 桃のような形だったはずの外殻は、その元の形が分からないほどに破壊され、それに包まれていた中身の本体も傷つき、血塗れで転がっている。

 

 オーガポンがゆっくりと振り返った。その時、哀の仮面に付けられた涙の装飾が光ったのは、果たして光の加減のせいか、否か。

 向き直った視線の先には、ダメージから立ち直った白いポケモンが、ゆらりと起き上がる姿があった。

 

 オーガポンは桃色のポケモンを守るように前に立ち、ブルブルと身を震わせながら叫ぶ。

 

 

 

『…がお゛ぼう゛つ!! 

 

 

 

 そこには、怒り、悲しみ、憎しみといった、普段のオーガポンからは想像もつかない感情が多分に含まれていた。

 ツタこん棒を折れんばかりに握りしめ、水の力を纏ったオーガポンは白いポケモン、ウツロイドへと全力で駆けて行くのだった。

 

 

 

 

 

 そしてそんな激情に駆られたオーガポンを見つめながら、倒れたポケモン、モモワロウは薄れ行く意識の中でこう思っていた。

 

俺が考えてた展開と違う…

 

 それは知らんがな。

 

 

 

 

 

 

 

 よう、初めまして。

 

 俺は転生者だ。まぁ今時珍しくもないわな。前世の自分自身のことはあんま詳しくは覚えてなくて、でもサブカルに関することはよく覚えてるってパターンのありがちな転生者だ。前世は男だったってことと桃太郎の子孫なんじゃね? って言い伝えが実家にあったことしか覚えてないけど、漫画のセリフやゲームのシナリオは何の欠けもなく覚えてる。転生して生きていくにはありがたいからこれが転生チートってことなんだろう多分。

 

 で、実際の転生先がどこか。生まれてから数年は分からなかったんだが、成長して自由に動けるようになったら嫌でも分かった。

 

 

 ここポケモン世界だわ。

 

 

 だってその辺にオタチとかポチエナみたいなのいるし、百歩譲ってそいつらが普通の動物だったとしても1m超えるでかいトンボは流石にありえんやろ。お前のことだよヤンヤンマ。

 しかもレジェンドアルセウスみたいな感じで、野生のポケモンが容赦無く襲ってくる現代ポケモンではない昔のポケモン世界だった。野生の気性の荒いポケモンは子供だった俺を問答無用で襲ってきたし、モンスターボールも無いし。

 

 そう、モンスターボールがなかったのである。原型であるボングリすらない。

 つまりここはヒスイ地方ではないか、ギンガ団誕生以前の話ということになる。いや、どこ地方かは問題ではない。いや、問題だけど、それより気にしなければいけない問題がある。

 この世界、野生のポケモンへの対抗手段が少なすぎるのだ。

 俺が知る限りでは対抗手段は2つ。モンスターボールを使わずに温厚なポケモンを手懐けて戦うか、ポケモンに鍛えた体で打ち勝つかである。

 

 アホか。特に後者。生身の人間がポケモンに勝てるわけねーだろ。

 

 しかし、そんな俺を打ちのめしたのは、この時代におけるポケモンへのメインの対抗手段が自力で戦うことだったという事実である。ええ…

 

 ポケモンを手懐けるのは容易ではない。それこそ、できる人は代々研究し続けているその道の専門家くらいだ。実際、手懐ける専門の人たちも暮らしている村には居た。その人たちは比較的温厚なポケモンを飼育し、外敵と戦わせていた。

 

 だが、普通の村人はそんなことできない。専門家の村人も一子相伝的な感じで周囲に方法を明かそうとはしなかったしな。だから、村ではポケモンとのガチ戦闘が頻繁に起きていたし、年に何人かそれが原因で死んでいた。俺の両親も、俺が7歳の時に2人で山にきのみ集めにいっている最中にポケモンに殺されてしまった。

 ただ、俺はそれほど悲しくは無かった。残念だとか、こんな息子で申し訳ないとは思ったが、そこまでだ。俺が転生者で精神的に成熟していたとか、人が死にやすい世界だったからというのもあるが、もう一つ。

 

 俺は、愉悦部だったのだ…

 皮肉にも俺はそれを両親が死んだことで理解した。

 

 愉悦部の部訓として「他人の不幸は蜜の味」というのがあるが、転生したことで俺は俺自身のことを自分のように思えなくなってしまっていた。だからこそ、自分の不幸すらも蜜の味という人格破綻者になってしまっていた。どちらかというと絶望大好きな某超高校級の絶望みたいな感じか? 

 

 そんなわけで、個人的にはこの村での生活は気に入っていた。他人の不幸はそこらじゅうに転がっているから愉悦できるし。外面を整えておけば愉悦していることなんてそうそうバレないし、普段の素行が良ければ多少の疑いくらいすぐに晴らせる。ただ、俺もやはり人の子。生活に文句がなくなれば贅沢をしたくなるように、段々と質の良い愉悦を求めるようになってきた。

 

 そんなある日、いつものようにきのみ集めのための準備をしていると、ポケモン飼育の専門一家がその発言力に物を言わせて村で好き勝手している場面に出くわした。

 最近生身でポケモンと戦っている人たちがポケモン大発生の対応で怪我をして動けなくなってしまったので、村の守りを言い分にして割とやりたい放題していた。まぁ手塩にかけたポケモン戦わせてんだしそんくらいの役得があってもいいじゃん? ってことで俺的にはどうでも良かったのだが、専門一家の長男のデブが村娘にセクハラしながらニヤケ面しているのを見て、ピンときてしまったのだ。

 

 

こいつらで愉悦してぇ…

 

 

 と。

 圧倒的優位な立場にあぐらをかいている奴らに一泡吹かせてぇ〜〜〜。

 その顔が絶望に染まったところが見てぇよ〜〜〜。

 あびゃー。

 そう考えた俺は、早速行動に移ることにした。どうすれば奴らの顔を絶望に染めることができるか? 

 

 一番早いのは物理的に危害を加える方法だ。それができれば簡単に絶望顔を見ることができるだろう。ただ、俺の体はまだ子供。鍛えたとしても大した結果にはならないだろうし、奴らには従えているポケモンがいる。物理的に手を出すのは返り討ちの可能性が高い。それに、奴らはこの村を守っている立場であり、それに危害を加えれば止められるのは俺の方であり、この世界でそんなことしたら俺の未来がない。その先で見られるであろう愉悦も味わえなくなってしまうだろう。却下。

 

 それならばと思いついたのが、奴らの立ち位置に成り代わることだ。奴らを失業させてやれば、立場を失い、それはそれは美しい歪んだ顔を見ることができるだろう! 

 この方法の問題点は、その難易度だ。腐っても専門一家の技術は本物で、数十年の研究の成果だ。奴らの家に忍び込んで方法を盗み見しても、同じ方法を使っていればバレるだろうしそもそもうまく行くとも限らない。普通ならまた別の方法を考えるところだが、俺にはその手がかりが一つだけあった。

 

 それはきのみだ。

 この世界で俺の両親はきのみの販売を生業としていて、その知識も豊富だった。子供の頃の俺はやることがなさすぎてその知識を全て吸収していたのだが、俺はそれを勉強しているときに思ったことがあった。

 

 なんか、きのみの効果おかしくね? と。

 

 この世界というか時代というかのきのみは、俺がやっていた現代ポケモン世界のものと比べて効果が極端なものがある。

 例えば、オレンのみは少し傷を和らげる程度の効果しかないが、フィラのみなんかは目に見えて傷が治っていくほど効果がある。ただ、混乱効果も強化されているようで、ゲームでは嫌いな味だと混乱だったのが、この世界では好きな味以外は混乱してしまうようなのだ。だからなのか、ポケモンたちは傷が治ると分かっていてもフィラ系のきのみには近づかないことが多い。他にも、ラムのみは色々な状態異常を和らげるが完治させるほどの効果がなかったり、なつき度をあげるきのみは効果が高すぎて洗脳みたいな状態になって、食べたポケモンは最終的にきのみの生る木を守るためだけに生きるようになってしまったりと、色々違いが多い。

 

 だからこそ、俺はこのきのみを利用して、サファリゾーンのえさのようなもの、ひいてはモンスターボールの代わりになるようなものを作ってポケモンを手懐けようと考えた。

 

 それから俺は頑張った。超頑張った。色々省略するけど、何度も修羅場を潜ったし、命に関わるような大怪我をしたこともあった。

 だが、全ては極上の愉悦のため。そして、専門一家の代わりにポケモンを手懐けられるようになれば、俺のこの村での社会的地位は向上し、愉悦を得られる機会も多くなる。それらを獲得するため、俺は休む間もなく働き、研究した。

 

 そして数年が経ち、思春期が終わる頃にそれはついに完成した。

 名付けて「きび団子」。これを食べたポケモンは、食べさせた人間へ非常に好感情を持ちやすくなるという、洗脳一歩手前の非人道的な道具だ。名前の由来はもちろん桃太郎から。だって食べただけで家来にできる団子とか絶対危険物やん? モモンのみを多く使用しているせいでピンク色になっているが、効果は抜群だ。

 

 俺は早速このきび団子を利用し、それまで手懐けることが難しいとされていた危険なポケモンを次々と仲間にしていった。

 すれ違いざまに首を刎ねるというメガヤンマ、人をも丸呑みにしてしまうアーボック、戦いに生きるジャランゴ、相手を催眠状態にした上で体の空洞へと吸い込んでしまうサマヨール…。

 俺は村の人たちから尊敬を一身に集めるようになった。ここ数年で堕落するようになった専門一家よりも強力なポケモンを従え、村の守りに貢献していたのだから当然だ。専門一家はそれにより落ちぶれ、怒り、憎み、絶望に歪んだ顔を俺に見せてくれた。

 

 

 

あ あ^ そ の 顔 が 見 た か っ た ん だ よ な ぁ〜!! 

 

 

 

 それからの一家も最高だった。

 家長と妻はより強力なポケモンを無理に従えようとして失敗し、殺された。俺は木の影からこっそり様子を見ていたが、最期の顔は傑作だった。特に、隠れている俺に気づいていたのが一番良かった。正直絶頂しそうだった。

 一家の長男は村を襲ってきたポケモンに襲われて死んだ。相棒のはずだったオオタチに逃げられていたのもポイント高かった。次男は家で首を吊って死んでいた。長女はいつの間にか行方不明になっていた。

 次男と長女は絶望する様を見られなかったので少し残念だったが、俺は概ね満足した。質の良い愉悦が見られたしな。数年かけて準備した甲斐があったというものだ。

 

 

だから、まぁ。

あいつらに見捨てられて死んだ親父とお袋も、これで安心して成仏してくれるだろ。多分。

 

 

 俺はきび団子の作り方を公表しなかった。

 表向きの理由は、単純に危ないからだ。必要なきのみは気性の荒いポケモンの住処の近くだったり、木に洗脳されたポケモンがいたり、素人が取って来れる場所にはない。取りに行くだけでも命懸けになってしまう。

 そして本当の理由は、当然希少性がなくなってしまうからだ。誰でも使えるようになったら俺のありがたみが薄くなるし、きび団子を使って俺を攻撃しようとするような奴も出かねんし。それは愉悦というより単純に不愉快だ。

 ただ、一部には公表しても良かったかな〜と後になって思った。公表すれば製法を知るために争いが起こるかもしれないし、そこで新しい愉悦が生まれたかもしれなかったのに、と今更思っていた。ただ、その機会は無くなってしまった。

 

 俺が死んだからだ。

 

 ポケモンの襲撃から村を守っていた時だった。手持ちのポケモンたちは村の防衛に回していて、俺は危なそうなところに出向いてポケモンに指示を出していたのだが。後ろから、専門一家の生き残りである長女に包丁で刺された。

 そいつは文字通り飛んできたメガヤンマに一撃で首と胴体を泣き別れにされていたが、最期は嬉しそうに笑っていた。

 

 包丁は内臓を傷つけていて、直感で俺はもうダメだなと分かった。回復系のきのみがあれば助かったかもしれないが、持っていたものは戦闘中にポケモンに使ってしまったし、あっても何も考えず人間に使ったら過剰回復で結局死ぬ。どう足掻いても助からなかった。

 

 薄れ行く意識の中、駆け寄ってきた村人たちの顔が見える。

 専門一家の長男にセクハラされてた村娘。あれから結婚して幸せな家庭を築いていると聞いたが、セクハラの要因を潰した俺にお礼を言ってくれたっけか。

 生身でポケモンと戦う自警団のおっちゃん。俺のおかげで傷つく村人が減ったとか喜んでたな。

 他にも色んな人が集まってきて、色々言っているみたいだけどもう何も聞こえんな。

 

 ただ、なんだ。

最期にみんなの絶望顔が見られて、俺は、満足だよ…

 

 そして俺は二度目の死を果たした。

 

 

 

 

 

 目が覚めたら、俺はモモワロウになっていた。

 何でだよ。

 

 川の水面に映る性悪そうな顔を見て、自分が今度はモモワロウに生まれ変わったことに気づいた。

 人間の次はポケモンすか…まぁいいけど。生まれ変わってるだけマシか。

 周囲にある集落は、それなりに発展したようだった。ただ周囲の自然の風景がそれほど変わっていなかったので、別地域に生まれたというわけでもなさそうだ。

 

 てか俺キタカミの里(予定地)に転生してたんか〜全然気づかんかったなー。

 確かによく考えてみれば生息してるポケモンとかまんまそれだったもんな。チャデスとかいなかったから分からんかったけど、そういやアイツそもそも茶器のポケモンじゃん。茶器がない時代にいるわけないわな。

 

 しかし…モモワロウか。

 モモワロウといえば尊厳破壊マン、全ての元凶。キビキビパニックとかいうふざけたシナリオ名だったけど、やってることはかなり邪悪で中々のワルだなとか思ってたわ。

 いやー悪行起こす側になっちゃったかー、これは沢山の愉悦が見られそうですねぇ(ニチャ

 しかもポケモン世界って何が原因で滅ぶかわからんほど危険だしなー、俺が悪いことしなかったら回り回って世界滅ぶかもしれんからなー(棒

 これは積極的に悪いことしなきゃでしょ! 

 

 あ…そういえば。

 モモワロウといえば、最後の戦闘でオーガポンを出した時に特殊演出があったな。

 あの温厚なオーガポンがマジ切れした、あのシーン。

 

 

…目の前で見たいですねぇ!!! 

 

 

 よし、未来の楽しみもできちゃったなぁ。

 まぁそれは大分先の話だろうし、今は積極的に悪いことして愉悦していきますか! 

 

 

 

 

 そんな転生モモワロウだったが、悪行が全然上手くいかなかったり、危害を加えるはずだったオーガポンに懐かれたり、結果的に村を守ったりするハメになってしまうことなど彼は想像もしていないのであった…




ウツロイド好きな人ごめんなさい。適当な悪そうで相性悪いポケモンが思いつかなかった。

続きません。
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