オーガポンで愉悦したかった(できない)転生モモワロウ   作:アザミマーン

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今年度中には話が終わるといいなぁ。
その前に今年のポケモンデーか。新作発表か、SVの完結編か…


モ モ ワ ロ ウ

 

 

 キタカミの里に辿り着いたオーガポンは心が壊れてましたとさ。

 

 いや何でだよ。

 理由は聞いた。てか隣にいた男が勝手に話してくれた。どうも二人は元いた場所では迫害されていたっぽい。肌の色が違うからとか、ポケモンと仲良くしてるからとか…いつの時代も人間は変わらないってことだ。愚か愚か。

 

 それはともかく、オーガポンが心を閉ざしたままだと俺が愉悦できなくて困る。

 このオーガポンに愉悦を感じないのかって? 感じるわけねーだろ。なんせ今の状態のオーガポンはお人形状態だ。何の反応も示さず生きてるだけ、感情も希薄だ。そんな奴でどう愉悦しろと? 何をどうやったところで俺の一人遊び状態になるだけだわ。

 クソが、一旦俺の村人絶望計画は中断だ。ここまで進めてきたってのに…。最優先事項が出来てしまった。

 

 オーガポンの笑顔を取り戻さなければならない。

 

 てかもう絶対原作とか崩壊してるだろ、流石にオーガポンがこの状態で村に来たならそういう描写があったはずだし。

 百歩譲って描写がないだけだったとしても、原作で遠巻きにされていたオーガポンが、なんの介在もなく感情を取り戻すとは思えん。

 

 ああもう、どうしてこんなことになっちまったんだ。俺はただ、全ての黒幕であるモモワロウに対して全力でブチ切れるオーガポンを見て愉悦したかっただけなのに…おかしい、おかしいよ…これが運命だとでもいうのか? 

 俺が愉悦できないのも、ポケモンに生まれ変わったのも、オーガポンの心が壊れてるのも。

 全部運命だってのか? 

 いや…

 

 

認めない。

 そんな理不尽は、認めない。

 

 

 俺は絶対に諦めないぞ。運命なんて覆す。

 村人たちも、オーガポンも、絶対に絶望させて愉悦してやる。

 

「モゲゲ、モゲ(お前ら落ち着け、そして食え)」

 

 未だざわつく村人にきび団子を射出し、オーガポンには直接手渡す。村人たちに食わせたのは微量の思考誘導の毒が含まれた団子だ。不自然じゃない程度にオーガポン達を受け入れやすくする。

 オーガポンに渡したのは、僅かに精神が高揚する(くすり)が含まれたもの。強く作用するものは使えない、心なんていうよく分からん上にヤワなものを治すからな。強引に直そうとしても必ずどこかに綻びが出てしまうし、そのオーガポンが俺の満足する愉悦を見せてくれるとも思えない。時間がかかっても確実にいかなきゃならねぇ。

 

 さて、全面的な計画の練り直しだ。こうなったのは仕方ない、ここから完璧を目指そう。

 …そうだ! 村人たちと感情を取り戻したオーガポンが、同時に絶望するような最高の愉悦を見たい。そう思わんか? 俺は思う。

 

 よし、テンション上がってきた。

 まずオーガポンのツレの男が何が得意か聞いて、村の仕事に組み込んで…

 オーガポンは感情を取り戻せるように、一人にしないことを重視して…ウザがられたらそれはそれで進歩だし…俺かともっこの誰かが必ずそばにいるように、俺らの仕事のシフトも組み直して…

 ああやることが多い! 既に計画時点で、俺の休日が数年間無いことが確定している。でも悪巧みしてる時間は楽しいんだよな。人間だった頃のことを思い出す、あの一家を絶望させるために頑張ってたときはキツかったけど楽しかった。

 

 この計画が実現できればその時の比じゃないほど楽しいはずだ! 

 

 よぅし、キタカミの里絶望Xデーのために、頑張るぞ、俺!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから十年経った。

 

 俺は頑張った。超頑張った。

 村のガキどもを巻き込んでオーガポンと遊んだり、キタカミを案内したり。森や山の探索に行ったり、俺のきのみ集めを手伝わせたり。

 正直この十年、俺の時間の八割がたはオーガポンのために使われていたと言っても過言ではない。

 

 その間は殆ど愉悦を得ることはできなかった。クソが。

 せいぜいこの村に攻めてくるガチグマの一党をボコして愉悦してたことぐらいだろうか。

 オーガポンが戦いたがったことがあったので攻めてきたポケモンどもの相手をさせたことがあったが、思った以上に戦闘の才能がある。種族値的なものだけじゃなく、センスがあると言えばいいのか。ガチグマ以外のポケモンはもうオーガポンだけに任せてもいいんじゃないか? というほどの戦闘力だ。おかげで村人に認められるのも早かった。

 

 そういえば、一度オーガポンがガチグマに襲われかかったことがあったが、ギリギリで俺が庇ったのでことなきを得た。防御種族値160を早々簡単に抜けると思うなよ? そんな物理の爪程度じゃ俺の外殻を傷つけることすらできねえんだよ。お返しにしこたまじゃどくのくさりをぶち込んでやった。ざまぁねえぜ! 

 

 

 そんな諸々の苦労の甲斐あってか、オーガポンは無事、感情を表に出せるようになった。

 うんうん、オーガポンはやっぱ笑顔がデフォルトじゃなくちゃな。まぁその笑顔を曇らせたいわけですが笑

 

 で、オーガポンにほぼかかりきりになっていた俺だが、愉悦のための準備を怠っていたわけじゃない。みんなが寝静まった後、俺は寝ずに頑張ってた。

 その結果…もう、いつでも実行できる程度には、場が整った。

 

 村の周囲には、俺がXデーのために遠くから呼び寄せた強力なポケモン達を待機させてある。もちろん、村を襲わせるためだ。

 そして村人達には、俺が普段から食わせているきび団子の毒が染み込んでいる。今は何の影響も無いが、俺の気分ひとつで、いつでもその邪悪な効果を発揮するようになっている。普通なら村人にこれほど簡単に毒を食わせるなんてできないが、長年積み重ねた信用のおかげで、俺はこの村では神に等しい存在だ。誰も疑うことなく食ってくれるよ! ハハハ!! 

 

 そしてこの二つが合わさるとどうなるか? 

 まず、俺の合図で支配された強力なポケモン達が村を襲う。全方位からだ。そのタイミングで普段から村を守らせている配下にも村を襲わせる。これで村人は疑心暗鬼だ。当然俺やともっこは助けない。助けさせない。

 で、村長の思考を誘導して、村人全員を俺の社に来させる。そこでマシマシラからネタばらしだ! 全ての黒幕はこの俺で、俺を倒さなきゃポケモンの暴走は止まらないと伝えるんだ!! 当然村人は激昂するだろう、だが俺の毒で支配された村人は俺を攻撃することはできない。

 

 村人は絶望した顔で俺を見つめることしかできないって寸法だ。完璧だな!!! 

 これが俺の考えた、キタカミの里絶望計画だ。

 

 ただこの計画、村をポケモン達が襲う時点でオーガポンがいると、あの化け物じみた戦闘力で全てを無に帰されかねない。あいつおかしいよホント…

 なのでオーガポンには、遠くのきのみを取ってきてもらう。十年間世話をしてやったこともあってオーガポンは俺を信用しきってるからな。そのくらいのお願いは聞いてくれるって訳よ。

 

 最終的には帰ってきたオーガポンにともっこたちがぶち殺されて終了って感じかな。俺? 俺は逃げるよ。当たり前じゃん笑

 一応、ともっこたちの鎖には、体を仮死状態にして回復させる特別な毒を仕込んである。これで将来復活するフラグまで万全よ。

 オーガポンの目の前で村人にツレの男を殺させでもすれば完璧かな? あははは!! 

 

 それで、肝心の実行日だが、キタカミの里の祭りに合わせる。ちなみに、祭りは今日の夜だ。

 

 …ようやく、ようやく俺の悲願が叶う。十数年かけた俺の計画が!! 

 既にオーガポンはお使いに出した。かなり遠くのきのみを取りに行かせたので、オーガポンの素早さを考えても、帰ってくるのは夕方から夜にかけてだろう。

 

 …もういいか? もういいよな? 

 こんだけ待ったんだ。俺に、最高の愉悦を見せてくれよぉ!!! 

 

 

 来い、ポケモンたち!! キタカミの里を襲え!!!! 

 

 

 その瞬間、空が昏く染まった。

 

 

 

 

 …ゑ? そんな演出してませんけど? 

 そう思っていたら、暗くなった空に数え切れないほどの穴が開いた。あれはなんだ? バチバチしてて、なんかちょっと幾何学的で…

 いや、まさか違うよな、違うと言ってくれ。

 

 俺の希望を裏切るかのように。

 その穴、ウルトラホールから無数のウルトラビースト達が吹き出した。

 

 

 

 

 

 …おい。

 おい。

 

 ほんといい加減にしてくれよ。

 

 俺がどんだけ我慢して、この村を育ててきたと思ってんだよ。

 やりたくもない作業やって、オーガポンの世話をして、襲ってくる奴らから守って。十数年、全ては至高の愉悦のために。

 

 それが、ここまで来て、急に出てきたウルトラビーストが村を襲いはじめましただぁ? 

 

 そんなの、何も楽しくない。足りない。美しくない。

 俺の考えた最高の愉悦が、壊される。雑な不幸で上書きされようとしている。

 ふざけんなよ。

 

 

 ぽっと出のお前らに、俺の計画を邪魔させてたまるかよ! 

 

 

 

 コラ、聞け、こっちだクソUBども! 

 テメェらが台無しにしようとしてるもんは、全部この俺のもんなんだよ!! 

 

 全ての元凶、黒幕、ポケモン界でただ一匹の、明確な悪役!! 

 

 この俺様、そう!!! 

 

 

「モ モ ワ ロ ウ」

 

 

 しはいポケモン、モモワロウ様のな。

 

 

 ────────────────────────

 

 オーガポンはその日、桃のポケモンに頼まれて希少なきのみを取りに遠出していた。

 取りに行くのに結構な距離を徒歩で移動することになるが、否は無かった。

 否定なんて考えもしなかった。その理由は? 

 世話になったから。友達だから。好きだから。

 

 それは間違っていない。しかし、正しくもない。

 

 

 

 桃のポケモンが、オーガポンの全てだから。

 理由としてはそれが適当だった。

 

 

 

 

 

 キタカミの里に来るまでのオーガポンは抜け殻だった。

 男に拾われ、男の相棒となり、色々な場所を巡った。

 しかし、オーガポンと男を受け入れてくれる所は無かった。否定され、軽蔑され、詰られ。オーガポンは徐々に感情を摩耗させていった。

 安住の地を求めた終わりのない旅。山を越え、海を越え、そうして辿り着いたのがキタカミだった。

 

 キタカミに着いて最初に村人に囲まれたとき、オーガポンは既に何も感じなかった。

 

 ただ、「ああまたか」と思っただけだった。

 結局自分たちはここでも受け入れられず、いつか誰もいない所で静かに野垂れ死ぬのだろうと、本気でそう考えていた。

 

『モモゲ? (何をしている?)』

 

 ふわり、と。

 甘い香りが漂ってきたのは、オーガポンが男の裾を引いて踵をかえそうとしたときだった。

 

『モゲゲ、モゲ(落ち着け、そして食え)』

 

 そこからはあっという間だった。

 

 オーガポン達を取り囲んでいた村人は桃のポケモンの指示に従い、オーガポン達を受け入れた。

 男には仕事が与えられ、食うには困らなくなった。最初は訝しんでいた村人も、桃のポケモンの取りなし、そして男の人柄に触れるうちに考えを変えた。

 

 感情を失ったオーガポンには、桃のポケモンとそのお供の三匹がつきっきりになった。

 何が嬉しいか、腹が立つか、悲しいか、楽しいか。

 それらが分からなくなってしまったオーガポンを連れ回し、遊び倒し、時には働かせた。

 

 一年、三年、五年と経ち、初めはお面ですら表せなかった感情も、段々と顔に出るようになっていった。

 お供のポケモン達とも仲良くなり、仕事を通じて村人にも声をかけてもらえるようになった。

 

 感情を取り戻しかけていた頃、オーガポンはお礼にと村の周囲のポケモンの定期的な間引きを買って出た。

 それまでの仕事でオーガポンの戦闘能力は村人全員に知れ渡っており、村長は笑顔で許可を出した。

 

 

 その最初の仕事で、傷を回復させた森の主がオーガポンを襲ったのは不幸だった。

 森の主の不意打ちをオーガポンは気づけなかった。殺気を感じて振り向いたときには、既に鋭い爪が振り下ろされる所だった。

 

 死を予感し、視界に映るもの全てがスローになる。

 防御も回避も間に合わない。

 

 

 

 オーガポンの頭に剛腕が振り下ろされ。

 

 オーガポンをおしのけた桃のポケモンにぶち当たり。

 

 生物同士がぶつかったとは思えない音を立てて桃のポケモンが吹き飛んでいった。

 

 

 

 遅れて全てを理解したオーガポンは、頭が真っ白になった。

 

 桃のポケモンが平然と起き上がってキチキギスと共に森の主をボコボコにしているのも目に入ってこなかった。

 オーガポンの思考が現実世界に復帰したのは、森の主を撃退した桃のポケモンがオーガポンの口にきび団子を詰め込んでからだ。

 

 その後は桃のポケモンと間引きを続け、帰りは桃のポケモンと一緒にキチキギスの背に乗せてもらった。

 乗っている間、オーガポンはずっと桃のポケモンを抱きしめていた。

 

 

 オーガポンは、白かった思考に激流のような感情が流れてくるのを感じていた。

 

 

 嬉しかった。

 桃のポケモンが、身を挺して自分を守ってくれたことが嬉しかった。

 

 腹が立った。

 守ってもらうことしか出来なかった自分の弱さに腹が立った。

 

 哀しかった。

 助けが間に合ったのは、桃のポケモンが付いて来ていたから。仕事を任せられると判断されていなかったことが哀しかった。

 

 楽しかった。

 一緒に仕事ができたことが、一緒に帰れることが楽しかった。

 

 そして何より、恐ろしかった。

 森の主に襲われたとき、思考が止まるほどに動揺し、恐怖した。

 自身が死ぬことではない。これまで死んだように生きていたオーガポンは、自分の死を恐れていなかった。

 

 桃のポケモンがいなくなってしまったらと考えたら。

 震えが止まらなかった。

 

 

 この日、オーガポンは失っていた感情を全て取り戻した。

 

 

 そして、新たな感情も得た。

 

 それは────

 

 

 

 

 

 目的のきのみを収穫し、だいぶ日も傾き始めている。

 オーガポンは鼻歌を歌いながら帰り道を歩いていた。この仕事が終われば夜は祭りであり、桃のポケモンやそのお供達と一緒に回ることを約束していた。

 

「♪」

 

 この森を抜ければもう村が見えてくる。邪魔をするものはいない。森の主ならついこの前に叩きのめしたばかりだった。

 

「…ぽに?」

 

 そこで違和感を感じる。

 

 あまりに森が静かすぎる。この森に住むポケモン達にもオーガポンの強さは知れ渡っているので、そうそう喧嘩を売ってくるものなどいないが、それを加味しても気配がなさすぎた。

 知らず、移動速度が上がる。結局違和感の原因は分からぬまま、森を抜けた。

 

 山へと消えていく西日が目を差す。

 そしてそれとは無関係に、村の方が明るい。今日は祭りで、いつもより多くの灯りが点いているのは何もおかしくない。

 

 おかしくないはずだった。

 しかし、灯りにしてはあまりにも焦げ臭く。

 

 

 

 

 村が燃えていた。

 

 

 

 

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