白い部屋から出たとして   作:九頭竜 胆平

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すごい今さらなんですけど感想ありがとうございます。モチベーションに繋がるので、次のはなし読みたいなと思ったらお手数ですが感想を書いていただけると幸いです。


憧れは理解からもっとも遠い感情だ

結局真嶋がマニュアルと腕時計、そのほかもろもろが必要だと言ったせいで僕たちは一回船まで戻る羽目になった。坂柳を乗せて追いかけていた橋本は息が切れていたので乗り物は鬼頭に交代した。

 

「本願寺君。私とテントを抱えて葛城君に付いて行ってください」

 

そこから僕に乗り換えるとは、坂柳はなかなかの尻軽だ。

本当はNOと答えるつもりだったが、葛城が真剣な顔で俺を見つめてきたから渋々乗っけることにした。まさかこの僕がNOと言えない日本人だったとは。

葛城の向かった先には洞窟がありおそらくここなら追加のテントを購入せず休めそうだった。

 

「ここで作戦でも立てるの?」

 

「いえ、作戦はもう思いつきました。この試験、他クラスを蹂躙します」

 

僕の腕の中でマニュアルを見ていた坂柳はそれをパタンと閉じるとAクラス全体に通る声で、そう高らかに勝利宣言する。

そして、それは同時に僕への死刑宣告でもあったのだ。なぜこの時、坂柳の作戦に乗ってしまったのかと1週間後悔し続けながら過ごすことになることをこの時の僕は知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

スポットを探して走る。走る。走る。走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

釣り堀を発見し、そこのスポットを占有する。次。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スポットを探して走る。走る。走る。走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あきらかにキャンプファイヤーに使ってくださいとばかりに組み立ててあった木の近くのスポットを占有する。次。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スポットを探して走る。走る。走る。走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

湖を見つけ、スポットを占有する。次。

 

 

 

 

 

 

 

 

スポットを探して走ぎゃああああ!!!!高円寺と綾小路だあああああ!!!!逃げろおおおおお!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんで佐倉ちゃん厄災二人に囲まれてたんだろう。もしやあの二人をたぶらかしてるのか?やっぱおっぱいって最強だな。走る。走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

洞窟を見つけて中に入る。Aクラスのスポットと違い植物で隠してあったこの洞窟の奥には石英が露出していた。ぶっちゃけスポットって水以外何に使うかわからんかったけど、確かに火打石の材料を置いておくのは知識が試されていいかもしれない。次。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ぶっちゃけずっと思ってたよ。なんか面積に比べて標高高いなって。クルーズからもここの高さおかしくねって思ったよ。思ったけどさあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スポットを探して登る。登る。登る。登る。これでスポットなかったらマジでキレるぞ。しかもこれ落ちたら死ぬよな。海も気を抜いたら足つったり海藻に足取られたりして溺れるけど、これほんとに人死に出るだろ。少なくとも100mあるぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頂上まだあああああ!!!???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

息も絶え絶えになりながら登頂したそこには望遠鏡が設置されており、この島一帯を見渡すことができそうだ。肉眼で見えるから意味ねーけど。スポットを占有する。次、の前にちょっと休憩。あっ!あそこスポットだったのか!Dクラスに占有されてやがる!えっビーチってスポットなん!?井戸あるじゃん!うわー!!見逃したーー!!全部のスポット潰して来いって言われてたのに!!Cクラスのスポットは…あそこスポットじゃないっぽいな。というかもうみんな撤収してやがる。今回の試験は放棄するのか?

 

 

 

 

 

 

 

休憩終わり。そろそろ一つ目のスポットが更新の時間なので移動する。移動と中にクロマメノキがあったので食したがおいしかったが、あまり腹の足しにはならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が帰ってくると葛城がさばいた魚とポイントで買える食糧、水を用意してくれていた。気が利くぜ。

 

「飯くれ飯!DとBはもうスポット占有してた。許せ坂柳、でもCはほとんど船に帰って行ったわ」

 

「そうですか。何か所ほどスポットは見つかりましたか?」

 

「ここ入れて6カ所占有した。後はDとBが占有してたところ合わせて8かな」

 

「上出来です。念のため先ほど通ったルートとは別の道を通ってスポット捜してきてくださいね」

 

「……お前の下につかなくてよかったと今日心から思ったよ」

 

「QOLですよね?だから報酬に神室さんのパンツを提示してあげたではないですか「聞いてないんだけど」。条件を呑んだのは本願寺君ですよ?」

 

「恨むぞ坂柳。「ねえちょっと待って聞いてないんだけど」」

 

「減らないくちですね。そろそろスポット占有の時間では?「ねえ坂柳聞いて」こんなところで軽口をたたいている場合ではないですよね。「私聞いてない」」

 

言い返したいが、残念ながら本当に次のスポット占有の時間が迫ってたので葛城弁当(仮称)をかきこみ走り出した。次。

 

 

腹痛い腹痛い腹痛い腹痛い。

 

次。

 

 

次。

 

 

次。

 

 

登る。登る。登る。ちょっと寝る。

 

 

 

次。

 

 

午後7時48分にAクラスの拠点に帰ってきた僕は真嶋先生の点呼を受けてから葛城弁当をかきこみまた走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前パンティーもらったことあるッ?女の子からパンティーもらったら、それはラッキー♡って思わない!?僕は今最悪の時だ…でも…もし今ホカホカのパンティーもらえたら最悪な時にもラッキーな事は起こるって事だよな~~っ」

 

山の上でなぜそれを叫んでいたのか定かではないが、僕の精神からエルメェスの兄貴(姉御)が分裂し始めたのは二日目の早朝のことであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前パンティーもらったことあるッ?女の子からパンティーもらったら、それはラッキー♡って思わない!?僕は今最悪の時だ…でも…もし今ホカホカのパンティーもらえたら最悪な時にもラッキーな事は起こるって事だよな~~っ」

 

伊吹の荷物をあさっていた俺の耳に聞こえてきたのはそんな意味不明な戯言だった。

今の声で誰かが起きてくる可能性もあるため即座に伊吹のカバンをもとの場所に戻しやや離れた場所で背伸びをしているふりをする。

 

「おはよう、綾小路君。トイレ?」

 

「いや、暑さで目が覚めてしまっただけだ。平田は?」

 

「さっきの誰かの叫び声でね。テントも固いし眠りも浅かったから起きちゃった」

 

テントから出てきた平田はいまだ眠たそうに眼をこすっていた。そんな動作すらかっこよく見えるのだから、やはり平田は選ばれしイケメンということなのだろう。

先ほどの雄叫び、慟哭?はこの島の高台から聞こえてきた。あれほどの高さを上る道がどこかにあったのか定かではないがもしも登ることを想定されているとすればおそらくスポットとなっているだろう。

 

「本願寺君、かな」

 

「確定とは言えないけどな」

 

「あはは、そうだね。でも、声がちょっと本願寺君っぽかったし、…言い方は悪いんだけど、その、あんな変なことを言うのは本願寺君以外思い至らないから」

 

もしも本願寺だったらあの言葉に意味はない可能性もあるが、

 

「逆に戦略を練った故の発言だったのかもしれないな」

 

「ふっふっふ!綾小路殿、それは読み違いでござるよ」

 

俺たちが話している背後から外村がそう声をかけた。外村はアニメとかに詳しく時たま本願寺といわゆるオタクトークなるもので盛り上がっていたらしいが、それに関係する何かなのだろうか。

 

「外村君、あれはどう言う意図があったのか教えてもらってもいいかな?」

 

外村は左腕で自分の服の裾を、右手で首元を引っ張りながら話し始める。

 

「あれはジョジョの奇妙な冒険でエルメェスの兄貴が言ったセリフ。考えられる可能性は二つ。一つは唐突に語録を喋りたくなったことでござるが、これは正直言ってあまり可能性が高くないでござるよ。エルメェスの兄貴の語録はどちらかというと「もうあげちゃうわッ…あたしのパンティー!」の方が有名でござる。そちらをすっ飛ばしてそのあとのセリフを言うのはちと現実的でないでござるから、もう一つの可能性が高いでござるよ」

 

まったく意味が分からなかったので平田に助けを求めるが、こちらを見た平田は肩をすくめた。どうやら平田もわからないらしい。

 

「その、もう一つの可能性って言うのは?」

 

「…同志は自殺を止めようとしていたんでござるよ」

 

「!?」

 

外村の言葉に一切の信ぴょう性を感じなかった俺だったが、逆に平田の顔色はみるみる悪くなっていく。

 

「平田殿!?大丈夫でござるか!?」

 

「うぷっ、ごくっ、…問題ないよ。続けてくれるかな」

 

一度こみ上げたのであろう吐瀉物を呑み込み平田は続きを促す。櫛田と平田がなぜDクラスにいたのか当初は理解できなかったが、櫛田があれだったところを見ると何か明確なウィークポイントがあったため平田はこのクラスにいるのだろう。

思わぬ収穫だ。最初は櫛田も平田も後に回すか放っておく算段だったが、この分なら手に入れるのも苦じゃなさそうだな。

 

…であるからして本来は「僕」の部分は「お前」が正しいんでござるよ。しかしそこをわざわざ変えているということは自殺したがっているのは本願寺殿本人でござる」

 

「そんな、本願寺君が…」

 

平田、おそらく外村はふざけてるだけだから無理して聞かなくてもいいんじゃないか?

もうすこし平田と話したかったが、この試験の時間調整はとてもシビアだ。残念ながら打ちひしがれている平田と会話を続ける時間がなかったため俺はその場を離れた。

あとほんの少しの策略で佐倉を落とすことができる。お前がナンパしていた佐倉を手に入れることができれば、俺はお前に近づけるだろうか。

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