白い部屋から出たとして   作:九頭竜 胆平

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法で裁けない悪は存在する。無邪気な悪はその最たるものだ。


私刑は必ずしも悪いことではない。

暖かい日の光を浴びながらうとうとしている僕の耳に通知音が耳に入る。マナーモードにし忘れた。寝る。船内アナウンスうるせえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本願寺、今の通知は特別試験に関わるものだ。起きろ。」

 

再度眠りに付こうとしている僕の体を誰かが揺らす。なに?特別試験?あぶねー、起こしてくれて助かったぜ神崎。

デバイスを確認すれば中途半端な時間に指定された部屋に来るように指示がされている。

 

「神崎、そっちは何処で何時に集まるって書いてある?」

 

「?202号室に20時40分からだが。」

 

「僕の方は201号室の20時40分からだ。受ける教室が違うってことは別々の課題でも出されるのかな。」

 

「わざわざ聞いてきたってことは何かを思いついたのか?」

 

「まさか、でもDクラスのテスト範囲変更がちゃんと連絡されなかったり、夏休みに試験させたりと生徒のこと騙す気満々だから、このメールも誤植かなって。時間も中途半端だし。」

 

僕の話を聞いた神崎はわざわざ知恵ちゃんに連絡を取ってくれたらしい。メールに誤植は無いようで、僕たちはそれぞれバラバラの場所で何らかの特別試験を受けるらしい。

ならばそれまで寝るしかあるまい。僕は20時40分にアラームをかける。

 

「それじゃあ僕は寝るわ。おやすみー。」

 

「もう少し試験についての話を…こいつ、もう寝たのか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!!!!」

 

現在の時刻は20時42分。集合時間にアラームを設定した僕は当然遅刻していた。やっちまったなぁ!

船の側面を確認しデッキから壁伝いに空いてる窓に侵入。

 

「は!え!?なんだ!?」

 

「悪いんだが見なかったことにしてくれ!」

 

小宮が筋トレをしていた客室から出た後、近くの階段でさらに下へと降りる。あった、201号室!

 

「セーフ!」

 

「本願寺君。流石に許されないですよ。」

 

「遅刻とはたるんでいるな。まったく、今回だけだぞ。」

 

「葛城さん、本願寺君に甘すぎじゃないですか

?」

 

201号室には葛城、坂柳、矢野さん、そして知恵ちゃんがスタンバっていた。

 

「知恵ちゃーん!チーエーちゃーん!むぎゅー!」

 

「寺君おひさー!あれ?ちょっと前にもあったっけ?」

 

抱き着いた知恵ちゃんはお酒臭い。どうやらまだお酒が抜けきっていないようだ。葛城は僕と知恵ちゃんを見て唖然としていた。

 

「名残惜しいけど、そろそろ説明を始めるね。」

 

星之宮先生の説明は酷くまどろっこしかったがクラスの垣根を越えてグループを結成し、そのグループの中にいる優待者を見つけてそれをグループ内でどうさばくかという試験らしい。一人で裁いても良し、味方と裁いても良し。ただ、優待者を見つけられなかった場合はその優待者の一人勝ちを許すということだ。

僕たち龍グループの面子はこんな感じだ。

 

Aクラス、葛城康平・坂柳有栖・矢野小春・本願寺寺

Bクラス、安藤紗代・神崎隆二・津辺仁美

Cクラス、小田拓海・鈴木英俊・園田正志・龍園翔

Dクラス、櫛田桔梗・平田洋介・堀北鈴音

 

堀北という生徒は最初は名前を聞かないどころかDクラスのお荷物的扱いだったが、無人島試験の作戦を考えた張本人だという話だ。たしかにDクラスの300点オーバーは見事というほかないが、僕はDクラスがどんな作戦取ったか知らないからいまいち恐ろしさが伝わってこない。なんならこっちのスポット全部潰したり首絞めてきたりした綾小路の方がよっぽど恐ろしいからちょっとホッとしている。

Bクラスも一之瀬がいないようだし、これは勝ったながはは。

 

「風呂入ってくる。」

 

「少し待ってください。ここでAクラスの方針を決めてしまいたいです。」

 

「俺もそれには賛成だ。本願寺、少し残ってくれないか。星之宮先生との関係も聞いておきたい。」

 

「嫌です。」

 

俺は風呂につかりに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日に矢野ちゃんから話を聞いたが予想通りというかなんというか、葛城と坂柳の意見はまとまらなかったらしい。葛城は話し合いを設けず各クラスに平等にポイントが入るように、坂柳は積極的に話し合って優待者を見つけ告発する方向にシフトしたかったらしいが水と油が合うわけもなく、当然Aクラスの方針は二つに分かれた。親の顔より見た展開だな(親の顔を見た回数は0)。

 

「戸塚、里中、俺は覚悟を決めるぞ。」

 

「本願寺!お前が最低なことは知ってる!しってるけど、それをしたらもうお前は止まれないんだぞ!」

 

「止めろ里中、こいつの覚悟は本気(マジ)だ。俺たちがどうこう言う時間は終わっちまったんざよ。」

 

同室の里中と戸塚にこの一発芸を披露すると言ったとき、戸塚はそれだけで腹を抱えて笑い、里中は笑いをこらえながらも僕を諫めた。

しかし二人は僕の手にあるものを見て、どうやら僕の覚悟が生半可なものではないと悟った。イケメンランキング1位に君臨する里中は止めに来たが、お調子者ランキング7位の戸塚は僕を信じてくれたらしい。里中は最低って言ったこと忘れないからな。トツカヴァーさん見ててくれよ!!

両の手に持った坂柳のパンツ(洗濯済み)を引き延ばし、足を通す部分が目の位置に来るように装着する。

 

「エクスタシーーーーー!!!Fooooooooooo!!!!!!!!」

 

一瞬にして上下の服を脱いで(パージ)、この日のために買った超伸縮パンツを頭の上まで引き上げ、クロスさせる。股間に食い込んで痛たい。

なぜ僕が女子のパンツを欲したのか、なぜ使用済みではいけなかったのか!その答えがここに詰まっている。

まさに原作再現!完全完璧な変態仮面に全身全霊でなり切るためだぁー!

遂に里中さえこらえきれずに噴き出した。だがこれで終わりではない。変態仮面と言えば、あの最強の決め台詞を言わなければ締まらない!そのためにわざわざ葛城まで呼び出したのだ。

 

「本願寺、そろそろ試験がお前何をしているんだ!?」

 

葛城が扉を開けた瞬間左手に持っていた携帯端末をベッドに落ちるように右上に軽く放る。それを目で追った葛城の視線から外れるように左下に抜け、前進する。通りすがりに葛城の右肩を押して倒し後ろに先回りする。これで準備は整った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本願寺に呼び出された俺を迎えたのは呼吸困難で死にかけている戸塚と、爆笑している里中、そしてパンツ2丁のド変態だった。

その変態は手に持っていた携帯端末を持ち手と逆方向に投げ、それに深い意味があると思い目で追った俺の視界から変態が消えた。急いで変態を目で追おうとするが、突発的な出来事の連続で混乱していた俺は肩を押され後方に倒れこんでしまう。そして地面に向かって倒れかけた俺の頭は固い床にはぶつからず、後ろにいつの間にか用意されていたクッションによって受け止められた。

 

「すまん、たすか「()()()()()()()()()()()()」うおお!!!!!!」

「こぉっ!?ほあああああああああ!??!?」

 

真っ白なブリーフにこれでもかと詰め込まれた陰茎と陰嚢が俺の頭に当たったことを理解した俺は反射的にそれを全力で殴った。本願寺の悲鳴が客室にこだまする。

…この学校に来てから自分の至らなさを思い知らされてばかりだ。だが、それで落ち込むくらいならば、欠点を一つ一つ解消するほうがよほど有意義だと、本願寺ならば言うのだろう。俺が本願寺に甘くし過ぎたのならば、今後は厳しい罰を与えれば良い。

そう考えた俺は自分の派閥のグループチャットにメッセージを送信した。

 

『本願寺に怒りが溜まっている者は武器を持って戸塚の部屋へ来るように。』

 

馬鹿が死んでも治らないのなら、死ぬよりつらい目にあってもらうしかあるまい。




朗報:葛城、正しい本願寺の扱いを学ぶ。
悲報:本願寺、無事死亡。
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