白い部屋から出たとして   作:九頭竜 胆平

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クラス代表仲良し5人組

本願寺を何度も殺す気で襲った。最初の数回は一撃で意識を刈られる作業だった。胴か、頭か、どちらかに攻撃を受けて負ける。なんなら勝負にすらなっていなかったため負けとすら言えねえ何かだったかもしれねえ。

変化があったのは4回目、本願寺の前に立った時、脊髄を通って背骨から脳味噌まで百足が這うような感覚に動きが止まり、また意識を飛ばす。これが3回程度続き、やっと動けるようになってからも特に結果に変わりはなかった。

更に変化があったのは13回目、バールを持って奴に振りかざしたときに背骨と脳みそを這い回っていた百足は腕に移動した。バールを放し即座に腕を引いたとき、本願寺の蹴りがバールを曲げながら吹き飛ばす。

最初は頭のおかしいアイツの言動が俺を狂わせたのかと思ったが、何度も繰り返すうちにこの百足は本願寺の狙っている場所を知らせてくれるものだと理解した。第六感というのが正しいのだろう。

特別試験中は本願寺と戦闘することはなかったが、俺が潜伏していた森の中で一回だけ首にその感覚が湧き出た。周囲を見渡すが本願寺の姿は見えなかった。その時、アイツの言っていたことを真に理解できた気がする。

(本願寺)より強い奴がいる』、それが真実だったなら、手駒を増やす判断を下した俺は間違っていなかった。

この最高の学校で坂柳も、本願寺も、Xも、何もかもを踏み潰したときが、俺の人生で最大の愉悦を感じる最高の瞬間になると確信している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボロボロの体に鞭を打ち、特別試験の会場へと向かう。1時間も真面目な会話なんてどうせ僕ができるわけがないので、ペンションでやろうと思っていたゲームと食べるはずだったお菓子を持っていく。洋介は一緒に遊んでくれるだろうし、櫛田ちゃんもごり押しすれば行ける行ける。葛城はどうだろう、遊んでくれるかな?坂柳は煽れば案外簡単に食いつきそうだ。神崎は…ないだろうなぁ。一之瀬なら絶対一緒に遊んでくれたんだけど。

 

『ではこれより1回目のグループディスカッションを開始します。』

 

僕が試験会場のドアを開けると同時に短いアナウンスが鳴り響いた。

 

「Aクラスはよほど特別試験を舐めている様ね。まさか試験開始と同時に部屋に来るような人がいるなんて。」

 

「そんなことはない。我々も試験にかける真剣さは同じだ。」

 

「くっくっく、鈴音ぇ、そいつに常識を当てはめて会話するのは意味がねえ。重箱の隅をつつくだけが目的ならさっさと口を閉じな。」

 

怖ぁい、開始からバチバチだよぅ。雰囲気の悪いところにはいきたくなかったので、空いているイスを洋介と葛城の間に移動させて座る。

 

「二人ともラムネ食べる?」

 

「今は大丈夫かな。」

 

「俺もいらない。というか何でそんなものを持ってきたんだ。」

 

「本願寺君。平田君たちと何をこそこそ喋っているのかしら。」

 

「頭使う試験だって言われたからラムネ食べるかなって。」

 

「やる気がないなら隅っこで平田君たちに遊んでもらってたらどうかしら。」

 

悲しい。ぼこぼこにされて心に傷をおった僕は洋介と葛城、それにさっき庇ってくれた龍園を強引に引きずって隅っこに座った。

 

「あーそーぼ!」

 

「おい、俺は試験について話し合わなきゃいけねえんだ。」

 

「付き合ってくれたら僕の毒にも薬にもならない推察聞かせてあげるからさー。一緒に遊ぼうよー。これ人数いたほうが面白い奴なんだって。」

 

僕の推察を聞きたかったのか、龍園は渋々といった様子で座る。

 

「本願寺、お前の推察が聞けるというのなら俺も参加しよう。もちろん聞かせてくれるよな?」

 

「か、神崎!!」

 

一緒に遊ぼうなんて言われるの何年ぶりだろう!各クラスからの評価が高かったりして嬉し恥ずかしってところだ。

 

「でへへ、そ、それじゃあゲームを始めます!」

 

僕は箱に同封されている導入を、できるだけ不穏な雰囲気が出るように読み上げ始めた。

 

ある洋館でパーティーが開かれた。

その翌日、凄惨な殺人事件が起こってしまった!

犯人は館で一夜を過ごした者たちの中にいる

 

「変わり種の人狼ゲームかな?この試験にぴったりだね。」

 

…気がする…。

 

「ん?」

 

「空気が変わってきやがったな。」

 

洋介、すまないが人狼ゲームなんて嘘つきを見抜くだけの簡単なゲームはブラックルームでみんなとやりつくしたんだ。最終的にどれだけ反射を抑えられるかのゲームになって糞ゲーと化した。

 

しかし皆、妄想力と言い訳だけが達者で、推理力はゼロ!

もちろん犯人が誰かわからない。

重要なのは犯人を見つける事ではない、

妄想を膨らませ

犯人はこいつだと決めつけることだ。

 

「…終わってる…。」

 

口に出したのは神崎だが、龍園と葛城も大体同じような顔をしていた。

 

幸い近くに住む刑事も

流されやすい性格なうえポンコツだ。

刑事が来る前に容疑者の中で

最も怪しいものを口八丁でつるし上げ、

警察に突き出そう!

 

「そういうお前はどうなんだ?スタート!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うそでしょ…。」

 

本当に遊び始めた本願寺君に私は開いた口がふさがらなかった。試合開始直後にジャブで揺すろうとしたらリングを降りられた気分だ。

 

「えっと、あんまり話さない堀北さんは知らなかったかもしれないけど、本願寺君ってこういう人なんだよね。」

 

櫛田さんの説明に、Aクラスの二人が首を縦に振る。

 

「ですが堀北さんは見事な活躍をしてくれました。」

 

「嫌味?」

 

「いたって本音ですよ。本願寺君がここにいたら会話がしっちゃかめっちゃかに荒らされた挙句、本願寺君以外が全員泣きを見ることもあります。素晴らしい誘導でしたので、ぜひ私も見習わせていただきたいものです。」

 

坂柳さんから惜しみのない称賛を受けるが、素直に喜んでよいものかはわからなかった。

 

『パーティーの翌日、被害者が館裏手のがけ下で死体で発見された!崖までは少し距離があり、誤って落ちたとは考えにくい、何より謎なのは被害者が服を纏っていないということだ…。また変わり種を引いたな。』

 

『ほかの事件もこんな感じなのか?』

 

『これは特別おかしい…いやそうでもないわ。』

 

ちらほらと聞こえてくる単語が集中力をそぐ。一体何の話をしているのかしら。

 

「今回の試験のスタンスを話し合いたい。Cクラスは今回の試験を結果1で終わらせたい。」

 

「Bクラスも同じかな。Aとの差を縮めたい気持ちはあるんだけど、退学の危険性を減らせるプライベートポイントがやっぱりほしいってクラスで結論が出たの。」

 

『近くに住む老婆で甘えんぼう…口癖は〖ね?平田〗か。龍園、お前の尊厳は今日ここで地に落ちるようだけど大丈夫?』

 

『どれだけ泥水を啜ろうと勝てばいいんだよ勝てば、ね?平田。』

 

『『『『んふふっ』』』』

 

…全然集中できないわ。甘えん坊の老婆ってなに?なにがどうなっているの?

 

「…北さん、堀北さん!」

 

「え、あ、何?」

 

「Dクラスはどうするの?」

 

どうやらいつの間にか私たちの番が来ていたようだ。

 

「私たちはもちろん結果3を目指すわ。私たちのクラスは貴方たちのように余裕があるわけではないから、クラスポイントを得られるタイミングでは妥協しないつもりよ。」

 

綾小路君にはこれで良いと言われたけれど、正直3クラスを相手取るのは厳しいと考えていると意外なところから手が差し伸べられる。

 

「ではB,Cが結果1を、A、Dが結果3を目指す形になりますね。」

 

どうやら聞き逃したAクラスも優待者をあてに行くつもりらしい。しかしまるで2対2の構図に見えるが、実際は2対1対1。決して楽な道のりではなさそうだわ。

 

『今回殺されたのは館のメイド、そして彼女は裸だった。犯人はきっと彼女に欲情したのだろう。55歳の私はすでにそういう欲望は枯れてしまっているし、妻と洋介と龍園が彼女に欲情するわけもない。つまり犯人は息子である神崎に違いない!知らんけど(設定された口癖)。』

 

『たしかにつじつまが合うな。ね?平田(設定された口癖)。』

 

『んぐふっ、そ、そうだね龍園さん。僕のそばにいる霊魂も神崎さんが犯人だと言っているよ。そういう運命なのです(設定された口癖)。』

 

『父さんはどうしても俺を犯人にしたいようだな、実に面白い(設定された口癖)。だがそういうお前はどうなんだ?父さん。暴露カードは……行き過ぎた愛!?そういえば、父さんはメイドのことを深く愛していたよな!先程の推理、それは父さんの考えていたことだったんじゃないのか!?』

 

『そんな、主人が犯人だったなんて、しらなかったんでございますです(設定された口癖)。』

 

『僕の周囲の霊魂たちも寺君が捕まると言っているよ。そういう運命なのです(設定された口癖)。』

 

『てめえの周囲の霊魂、さっきまで神崎が犯人って言ってたじゃねえかああ!!!知らんけどおおおお(本音)!!!!』

 

 

 

 

 

「ふふっ、あ!ごめんね?聞こえてきたセリフが普段なら絶対平田君の言わないようなセリフだったからつい。」

 

だめだ。今日はもうだめだ。正直私も少し笑いそうになってしまったし、Cクラスも笑いをこらえきれないらしい。でもCクラスの面々は笑うたびに顔色が悪くなっているので、あれで笑った人は龍園君に暴力を振るわれるのかもしれない。暴君にもほどがあるわ。

こうしてあっという間に1時間が立ち、自由に解散をしてよいとのアナウンスが流れてしまう。

 

「…今日はもう、解散しましょうか。」

 

「…ええ、そうですね。」

 

「次頑張ろう!ねっ?」

 

疲れ切った矢野さんの言葉に疲れ切った安藤さんが同意を示し、櫛田さんが励ます。こうして、私たちの1日目の特別試験は解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、やっぱり僕が犯人だよね。」

 

「最後の暴露カードが痛すぎたな。神崎に押し付けるところまでの流れは完璧だったと思うぞ。」

 

「あれが無かったら俺が犯人になっていた。危なかった。」

 

「あんな綺麗に地雷を踏みつけることあるんだな。無敵の本願寺様もどうやらアナログゲームは雑魚らしい。」

 

「龍園君はキャラが強すぎて狙われなかったのが強かったね。」

 

わいわいがやがや、女三人集まれば姦しいという言葉があるが、3人以上揃えば男であろうと女であろうと大体姦しいものである。

ゲームの感想をしばらく語り合ったところで龍園から報酬を迫られた僕はいくつかの推測を述べた。

 

「僕が今回の試験で怪しいと思ってるのはグループが干支で別れているところだよね。」

 

「説明時間とかではないのか?」

 

「説明時間のばらけは、たぶん今回グループに集められた人員が何らかのルールにのっとって定められた、もしくは教師とかに選出されたっていう印象を強く植え付けるためだと思うんだよ。このグループには多分クラスの代表的な人が集められてると思うんだよね。一之瀬さんがいないからもしかしたら何か条件があるのかもしれないけど。」

 

「そこに優待者の法則があるかもしれないだろう。」

 

「どちらかというと、試験のレベルを合わせるためだと思ってるんだよね。坂柳なら口八丁で須藤とか山内とかを騙せそうでしょ?格下狩りみたいな負けを教師は起こしたくないとか?今回の試験はシンキングってわざわざ言われているくらいだから話して嘘つきを見つけたりするより、各クラスの優待者から法則を割り出してほしいと思ってる…んじゃないかなぁ。」

 

龍園はどうやら僕と同じ思考らしい、洋介と葛城は素直に僕の話を聞いているかんじで、神崎は納得していない顔をしている。

 

「グループ内の出席番号順とか、生年月日順とかその辺で決められてると思うんだ。比較と情報の入手が容易なもので順番付けされるんじゃないかな。細かい血液型とかだと本人も知らなそうだし。」

 

情報の入手難度は今回の試験で重要なピースだろう。推測を立てれたとしても、それが立証できなければ世間では妄想としか判断されない。情報の入手が難しいのなら、試験のテーマはシンキングなどとは言われないはずだ。…あ。

 

「生年月日は、違うかも。」

 

「それはまたどうしてだ?」

 

ブラックルームにどんな伝手があったのか知らないが、僕の親は僕を売り払って金をもらったらしい。しかし、佐々木寺だか鈴木寺だかは忘れてしまったが、そんな名前の幼児は戸籍登録されていなかったため、本願寺職員が僕を養子として登録したのだ。どうしてその時に名前をそのまま提出してしまったのか。もしも少しでも変えてくれたら、寺寺なんて面白い字面は出来上がらなかったのに。長々と語ったが要するに、僕の本当の誕生日は闇の中だ。

 

「僕、何月何日に生まれたのか知らねえや。」

 

言い終わった時に、この話題が厄ネタであることを僕は悟った。3人の表情が固まり、その目に憐憫が浮かび上がる。

 

「ごめんごめんごめんごめん!いや全然気にしてないから!今の今まで自分の誕生日知らないことを忘れてたくらいだから!」

 

実際、違う()()程度の話だ。本願寺職員はブラックルームではなくホワイトルームの職員なので、僕が知らないだけで適当に誕生日を設定している可能性もある。その辺の知識は申し訳ないがブラックルームで学ばなかったので、戸籍登録とかの詳しいこともぶっちゃけ分かってないのだ。親が判明していないのに戸籍登録できるんか?できなかったとして、戸籍登録すっ飛ばして養子にできるんか?…こいつネットの変な知識はあるのに、自分のこと何にも知らねえな。

 

「と、とにかく!僕が感じたのはそんなかんじ、です。」

 

せめてこいつらがお前誕生日も知らないの~ぎゃははははは!って笑う屑だったらバックブリーカーでもかけて場を和ませることもできたのに!

 

「今度、誕生日パーティーでもしよう。」

 

「そうだな、特別に一之瀬も呼んでやる。」

 

うっあっ、止めて!僕に可哀想な子のレッテルを張らないで!うわああああ!!!

あまりの惨めさに耐えきれなくなった僕は死んだ。

 




「そういうおまえはどうなんだ?」は本当に存在するゲームです。
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