今でも続き待ってます。
苦しい。あれだけ練ってきた作戦が全部パーだ。というか最初はどう違うクラスになるか考えてたはずなのに後から考えれば同じクラスの方がデメリット少ないんだよな。とくにお互いが退学させにくいってところが良い。良かったはずなんだけどなぁ。
くよくよしてても仕方ないのでメンタルを切り替える。教卓で御託を並べている真嶋先生の話をエキセントリックペン回しの片手間に聞きながら新たな作戦を立てていた。
ひとつはDクラス仲良し作戦。Dクラスを手助けすることで綾小路の邪魔を、とまあぶっちゃけおなじAクラスだった時のための作戦を焼き増ししたものだ。問題はAクラスの好感度調整が必要になる。
もうひとつは徹底的に他クラスを潰す、行ってしまえば(この学校の)普通で過ごすだけだ。問題は退学させられないために他クラスの好感度調整が…僕はギャルゲーでもやってんのか。
「えっと、本願寺です。よろしくお願いします」
糞みたいな自己紹介をしたあとさっさ教室を出る。プライベートポイントが欲しいんだよ僕は。こういうのはとりあえず先達に聞くのがいいんだって僕知ってるんだ。
その辺歩いてた先輩から聞いた方法は道場破りだった。
手始めに空手部で先輩方をぼこぼこにしてきたわけだが、なんともらえたポイントは50万、途中から相手が乗ってこなくなったため話を聞いてみると、どうやら現生徒会長である堀北学が先輩から同じ方法で毟っていたため入学したての生徒にはある程度警戒しているらしい。許さんぞ堀北学ぅ!入部は丁重にお断りした。
綾小路清隆は最強だ。計画性に長け、応用力も高く、優秀な戦闘能力を有しており、気配を察知する能力は野生児並。しかも本当に恐ろしいのは、これらの能力を得るに至った高い学習能力だろう。こう書くとまるで付け入るスキのない化物みたいな印象を受けるが、実は意外な弱点があるのだ。というか最近発見した。
こいつ、目的がないときの動きがなめ腐っているのだ。おそらく奴はすでにプライベートポイントに当たりをつけているだろうし、ついでに言うなら各クラスのポイントに気づいていてもおかしくないはずなのに情報収集した結果、彼は自己紹介に失敗した陰キャである。
「まじ?」
「えっと、まあ綾小路君も緊張してたんじゃないかな?」
こいつの名前は平田洋介。Dクラスで女の子にちやほやされてるからとりあえず話しかけたイケメンだ。もう半ば自棄になって綾小路に会いに来たのだが、残念ながらあいつは帰ってしまったらしい。
「本願寺君は綾小路君と同じ学校だったの?」
「おおむねそう。まあこのクラスに来た理由は3年も一緒の学び舎で生活するんだし、他クラスの人とも友達になっとこうかなって思いもある」
すんません嘘です。本当は学校にも通ってないし、綾小路退学させて3年以内に此処出たいし、友達よりも手駒が欲しいです。
「それじゃ、僕は綾小路捜しに行くよ。手間取らせて悪かったな」
「気にしないで。僕も他クラスに友達が作れてよかったよ。それじゃあまたね」
平田に見送られながら教室を出た僕は綾小路を探し回ったが、残念ながらその日は会えなかった。
本願寺、最近の三つの出来事。
ひとぉつ!一之瀬帆波に接触後、Bクラスとの関係が悪化!
ふたぁつ!Cクラスと接触、のち逃走!
そしてみっつ!クラスから孤立!
いや違うんすよ。僕放課後は他クラスとの交流に使ってたからAクラスにほとんどいなかったんだけどなんかいつの間にか葛城派閥と坂柳派閥ができてて、いつの間にかいなくなってた俺はどっちにも入ってなかったせいで肩身が狭い、だけで済めばよかったなぁ。
問題は、先ほど坂柳がクラスポイントとクラス対抗の予想を説明し、真嶋先生の説明が始まったんだが、その抜き打ちテストの結果が、
坂柳有栖 100点
本願寺寺 100点
と坂柳と同点だったせいで僕がクラス対抗を知ってた上で敵にすり寄っていったように見えるってことだ。なお、たちが悪いことにそれは事実なので何も反論できない。逃ーげよ。
プライベートポイントを払って今日は休もうかな。なんて考えながら帰り支度をし始めた僕の肩を葛城が掴む。
「本願寺、すまないが今日は重要な話がある。少し時間をくれ」
誰か助けてくれー!!異端審問にかけられちまうよーー!?
「本願寺君。まず最初にはっきりさせておきたいことがあります。あなたはAクラスの敵ですか?」
目がガチの坂柳が僕に問いかけてくる。先ほど教壇で説明してた時はとるに足らない虫を見つめる目だったのに。
「いやいやいや、クラス対抗とかさっきまで知らなかったって。そもそもそんなこと気付くわけないじゃん」
「坂柳、さすがにそれは疑い過ぎだ。だがDクラスで本願寺が楽しそうに話していたのを俺も見ている。なぜクラスメイトとは話していないんだ?」
「幼馴染がDクラスにいるからそいつを話題にして盛り上がっただけだよ。別に変な意味じゃない」
「そうか、疑ってすまなかった。坂柳もこれでいいな?」
「…ええ、まあたとえ間者だとしても今のところバレても惜しい情報はないはずです」
葛城最高ぉーー!坂柳こえーー!?今味方だったよ良かったねチャンチャンで終わる流れじゃん?頼むよ監視とかつけないでくれよ。僕の場合「綾小路の後手に回る=死」なんだからさ。
「それでは本題と行きましょうか。今Aクラスは私の派閥と、葛城君の派閥でわかれています。単刀直入に伺いますが本願寺君はどちらに付きますか?」
「ごめん。どっちの派閥がどういう方針とかあんまり知らないからPRとかしてもらっていい?」
僕が言い終わると同時に坂柳から「ピキッ」と音が聞こえた気がした。気がしただけだよね?なんか隣の神室が「こいつマジか」みたいな視線を送ってくるけど気のせいって言ってくれよ。
「ふふふ、ええいいでしょう。全然いいですよ。この派閥争いはどちらをAクラスの頭に据えるかという話です。先ほどまでは完全にそれだけでしたが、クラス対抗戦をやるにあたってはリーダーの嗜好が戦略に出ます。もし私がリーダーとなった暁には他クラスを徹底的に叩き潰し、他の追随を許さない盤石なクラスとしましょう。葛城君はどうですか?」
「そうだな、俺がリーダーとなった時は堅実な作戦を行い、一歩ずつ着実に他クラスとの差を広げていこうと思う」
うーん葛城は自クラスの強化に、坂柳は他クラスの排除に力を入れるつもりか。
「葛城なー。うーん悪くないんだけどなー。守り主体なー。うーん」
「ということは私の派閥に入るということでよろしいですか?」
「いや入るなら葛城派閥一択なんだけど」
一瞬の静寂ののち、「ブチッ」という音がクラス中に響き渡る。鬼頭、なぜ坂柳から目をそらすんだい?君の主人の機嫌は君が取っておくれ?
「ち、ちなみに、なぜ葛城君なのですか?やはり他クラスと仲良くしたいという思いが?」
「坂柳の方がQOL低そう」
僕の目的は綾小路清隆の退学である。もしもクラス単位で綾小路を退学にしようと画策する場合は綾小路清隆に他生徒を退学にするよりもメリットがなければならない。でもさぁ、なんかDクラスにいるんだよ?今Dクラスのポイント0なんだよ?あいつまじでなんもしてねえじゃん。なんなら後ろから足引っ張ってる可能性すらある。現時点でAクラスに最も近いBクラスの象徴となっている一之瀬帆波、シンプルにガタイがよすぎる山田アルベルト、この短期間で全クラスに友達を作った櫛田桔梗、器用万能イケメン平田洋介。この四人を放っておいて綾小路退学にする理由あるぅ!?ねぇよなぁ!?
だからこそ、プライベートポイントはできるだけ徴収されないのが望ましい。クラス単位で何かするより僕一人で動いたほうが強いから。
葛城は真面目そうだ。あんまりからめ手とか使わないだろうし、逆にからめ手には弱いんじゃないかとさえ思う。でも僕がいる。あいつが見えない罠があるのなら、それを僕が除くだけであいつは自分の最も強い正々堂々という手段を貫けるから。
「そうと決まれば今日の勉強会、本願寺には教師役として出てほしい。小テストで満点を取った頭脳をぜひ貸してくれ」
「あー、いいけどちょっと遅れていくわ。せっかくだから先輩に過去問もらってくるよ」
「もうそんな間柄の先輩がいるのか。お前ともっと早く話をしておけばよかったな」
ふはははは、葛城くぅん。そんな間柄の先輩は今のところ居ないさ。しいて言うなら今日その間柄になるんだよ。
ダイナミックエントリー!(勢いよくドアを開ける。)
始めまして柔道部の先輩!(道場破りの宣言。)
持ってる過去問とプライベートポイント落とせオラァ!(勝者に払われる報酬の交渉。)
僕は昨年と一昨々年と3年前の過去問データ、さらに320万プライベートポイントを手に入れた。
現在学校支給のデバイスで見ているのだが、率直に言ってマジで糞だ。なんとこの学校この三年間の抜き打ち小テスト、中間テストの内容がそれぞれ同じなのだ。しかも抜き打ち小テストは今年の物も同じ。だというのに、
「今年の中間テストの範囲ちげえじゃねえか」
問題の出題傾向も何もあったものじゃない。
これは比較的大雑把な計算ではあるが、ABCDのクラスポイントの合計が4000のとき、1年間のプライベートポイントの支出はざっくり2億、今年はAが940、Bが760、Cが490、Dが0ポイントなので合計のクラスポイントは2190となる。ようは今の段階で1年過ぎれば学生に支払われるプライベートポイントは1億、それが3学年あるとすれば、毎年3億円の出費となる。ケヤキモールの人件費や電気代がそこから支払われるとしても、学校施設の維持費、寮費etc.にはさらに別の費用が掛かることになる。しかもその学校の教師はテストを手抜きで作ってるときたもんだ。
「ゆるせねぇ」
パパの小路。僕は決めたぞ。僕が官僚になった時、この学校は速攻潰す。こんな玉石混淆の学校じゃなくて、日本の宝石だけを集めてそれを磨く学校を俺は作るんだぁ!