「本願寺氏が僕に声を掛けるのは珍しいですね。」
僕に声を掛けられた金田はいの一番にそう言った。確かに金田視点では僕との関わりは薄く声を掛けられることは不自然に僕の部屋に連行された橋本、清隆、金田の三人は他二人を見てからどういう面子かと首を傾げた。
「今日集まってもらったのは他でもない。君達3人には僕の作ったデジタルカードゲーム、高育最強クラスバトルのテスターをしてもらおう。」
カードゲームも多少触ったことのありそう(偏見)な橋本正義、TCGなど触ったことのない(事実)無知の工事清隆、カードゲームをやる相手などいなかったであろう(差別)金田。この三人にバランス調整とゲーム参入の難易度を調べてもらおうという魂胆である。そもそもな話、Plが稼ぎにくいというごくごく真っ当な壁に僕はぶち当たった。もちろん、1ポイントにつき1円の価値を持つとか言う何処調べかもわからん馬鹿な条件を鑑みれば、一学生が部活動の結果や成績、クラス全体の評価でもらえる額は当然破格であるし、様々な課題や自己研鑽に励まねばならない関係上か、バイトのような手伝いもスケジュールを道々に詰める必要もなく稼ぎやすい環境が整っている。しかし僕たちが必要とするPlは日常生活のみならずクラス対抗戦にも使われたり、それ自体を使って特殊なものを買ったり、それこそ趣味や学問、娯楽などにも使うとなると結局金が足りなくなるのはどこも同じだ。
さらに、同じ生徒でも浪費は大きく異なる。一番わかりやすいのはそれこそ高円寺だろう。彼は高円寺コンツェルンの次期当主でありその金遣いの荒さは圧巻の一言だ。そして彼に負けず劣らずの金遣いの荒さを持つ男こそ僕である。僕と彼の共通点はやりたいことに金をじゃぶじゃぶ使わせてもらえたという所だろう。僕の研究である後天的遺伝子改良はモルモット(齧歯類)から始まり、徐々に人に近づけたモルモット(実験動物)にしなければならなかったため、それこそ猿の調達は100じゃ効かなかっただろう。流石に大人の調達は難しかったらしく最終的には共同研究者の先生方と僕に実験を施し完成させたものの、かけた金額は優に国家予算と同等になっているはずだ。パパの小路の集金力には目を見張るものがあった。
ようはそのパパの小路がどうやって金を集めていたかという話に帰結するのだが、クラウドファンディングで集金を行ったらしい。まあ老化細胞発生率減少ってだけでも飛びつく金持ちはごまんといるだろうからあとはいかにそれの信ぴょう性を高めるかとその話の広げ方にかかっているだろうが、今回重要なのはそのどちらでもない。何なら方法自体も大した重要性は無い。
ここで一番重要なのは、
「しかしカードゲームとは久しぶりですね。中学では友人たちと盛り上がりましたよ。」
嘘だろ(1敗)!?金田に友達がいてカードゲームしているだと!?まずい、このままだとプレイしたことのない忌憚のない意見が聞けなくなるじゃないか!綾小路?こいつにはさっさとルール覚えてもらって一番強いデッキの開発と相性表の作成を期待してるだけだから。忌憚のない意見とか聞けるわけ無いから。
「金田はやったことあんのか、俺はこういうの始めてやるからな。わかりにくいところはどんどん言ってくぜ?集められた時はどんな面子かと思ったが、俺と金田でゲームシステムの確認、綾小路にはこのゲームのリリースが通るかを生徒会目線で判断してもらおうって魂胆か。相変わらず抜け目ねえな。」
「ハイ、ソノトオリデス。ボクノサクセンヲミヌクトハハシモトモナカナカヤルジャナイカ。」
「橋本氏、違ったっぽいですよ。」
黙れ金田、てめえはさっさとゲームをプレイして玄人目線の意見をよこせよ。そうして僕らは丸一日を使いゲームを作成した。その日は3人で知恵熱でも出るんじゃないかってくらい頭ぶん回して、時に腹抱えながらカードをしばいた。作戦カード王位簒奪で龍園のリーダーゾーンから引きずり降ろした後退学した石崎の代わりにリーダーゾーンに座る龍園。またまた王位簒奪でお互いにリーダーゾーンを取り合う坂柳と葛城。アルベルトに保健室送りにされる龍園。生徒会所属の生徒をデッキから手札に持ってくるはずがバグって誰も来ない橘先輩。池の能力で捨てられる確率Topの山内。やっぱり神室にボコられる龍園。
そうして数多のカードを触り俺たちは一旦環境がこう固まるんじゃ無いかと予想をたてデッキ毎やカード毎のTier表を作成し堀北学に企画を提出した。かくして4日後、高育最強カードバトルは無事リリースを遂げた。そこまでは良かった。
・悲報、池寛治強すぎる。
手札を1枚捨て、山札の上4枚を見てその中から
最高ランクのデッキ使用率を確認すると、「池ハンドレス」アグロ5割。プレイ難易度は非常に高いものの、唯一池ハンドレスに5分を取れるデッキ、葛城が溜め坂柳が殴る「
色々加味した場合これらの環境デッキで池をナーフした場合、池が入っている池ハンドレス、生徒会コントロールは両方弱くなり
「問題はこのデッキか。」
その他に含まれている中でも更に使用者の少ない、たった三人しか使っていないデッキ。それがいま最大の懸念点になっている。「hexagon」「Queen」「本橋」、この3人のプレイヤーはフレンドなのだが、おそらくそこで密かに研究されているデッキ、通称「ランプ本願寺」が池をナーフすることで暴れまわる可能性があるのだ。
「知性ある暴虐 本願寺寺」、このカードはこのカードを除いてデッキに同名カードがある場合効果が発動しないという効果を持っており、尚且つコストも高いため、出たらほぼ勝利みたいな性能をしながらほぼ盤面に出ない悲しきカードである。
このカードも当然製作意図があり、このカードは特殊なルールや効果が発動するNPCとの対戦を行えるストーリーモードの1章ラスボスキャラが使用することを想定されている。ストーリーボスがバカみたいなランプをしていく変わりにPLは別の特殊能力を自らでカスタマイズして本願寺を出される前に決着をつけるもよし、全本願寺を倒して真っ向からぶちのめすもよし。何て想定をして作られたカードのため匿名掲示板では
・こいつ入れるなら高円寺入れたほうが良いだろ。
・出れば勝ち、出るわけ無いから負け
・ストボス専用インチキカード
・製作者絶対本願寺のことキライで草
・↑あいつのこと誰が好きなんwww
などなど言われている。最後の奴てめえ絶対殺すからな。ID控えるなんて生易しいことしねえから。死すら生ぬるいと思うような人生送らせてやる。
しかしこのカードの可能性に気づいたこの3人のプレイヤーはデッキ開拓を始め、環境デッキに3部7分9部という恐ろしい勝率を叩きつけている。そんな中池をナーフしようものなら絶対終わる。環境ごとこのゲームが。
そんな初めてのカードゲーム運営に四苦八苦しながらも僕はなんやかんやうまくいくと思っていた。思っていたのだ…(2敗)
「本願寺、2弾はまだか?」
ある日の放課後、僕は唐突に南雲先輩に呼び出された。当然行かないこともできたのだが、個室の良い焼き肉を奢ってもらえるという話は非常に魅力的だったので、行かない選択肢は無かった。
そうして僕が牛タンに舌鼓を打っているときに投げかけられた言葉がこれだ。僕は今回のゲーム作成に当たり、関係者以外には匿名で出演許可とカード化する際のイラストの要望をもらっていた。ボイスは大体声真似だ。バレるわけないと高をくくっていた僕は、あんまりにも驚き過ぎて、肉で咽るどころか勢い余って肺の中に入って行った。
「ごぼっほ!?がはっ、はっはっは!!?ごぶぅ、ヒュー、ヒュー」
「図星をついた人間は泡を喰うのが相場と決まっちゃいるが、そこまで動揺されると言ったこっちも自信がなくなるぜ」
僕が対策に対策を重ねて追跡されないようにして全校生徒に送ったカードのモチーフとボイスの捏造許可のメールを必死になって手繰って僕に行きついたらしい。綾小路でもそこそこのスペックを要求されるPCが無いとどうしようもないだろうし、教員に決して少なくない額を払っているはずだ。南雲先輩の場合、唯の道楽にそこまでかける可能性も考えられなくないが、それはあくまで少額で済んでいた場合でしかない。プライベートポイントを集金し退学の救済を持って支配している南雲にとってプライベートポイントは勝手に集まってくる武器でありながら確実に一定以上懐に蓄えながらうまくやりくりしなければならない制約の多い武器でもある。そんなものをわざわざ使ってここまで来たということは確実に、僕に通したい要望があるということだ。
「なあ、俺のカードが弱いってのはどういうことだ?」
「…は?」
は???
「今の環境で俺が活躍する場が少なすぎる」
「…それは、まあ、そうでしょう。実装されているのは1年生が主であり、2,3年生からはあまり許可が取れていませんからクラスシナジーも学年シナジーも組みにくいですし、生徒会カードに至ってはそもそも人数が少なすぎます。今の南雲先輩のカードは生徒会軸で作ってあるのでせめて2弾が発売されて生徒会生徒の別カードが入らないとあくまでほかのジャンルと共生する複合デッキとしてカードパワーの強さだけで戦うことになるでしょうからそれは仕方ないことじゃ」
「150万ポイントやる。今すぐ2弾を実装しろ」
は!!??!??!?
「い、いやいやいや!無理無理、絶対に無理です!今から全力でカードを考えるとしても2週間はかかりますし、それを実装に移すとなれば3週間はかかります!しかもまだ実装当初ですからカードのパワーバランス見てナーフとか色々あるのに…」
「じゃあ納期は4週でいい。ついでに今首をたてに振っていない2年生全員の許諾も取ってきてやる。それでどうだ?」
それは、確かに魅力的だ。朝比奈先輩や桐山等の一部から人気のある生徒はやはりまだ許諾が取れていないし、僕もせっかく自分が遊ぶゲームならいろんな種類のカードやキャラクターが欲しい。焼肉と言い追加条件と言い、実に人が欲しいものが何かをわかっているやつだ。
「…なら、先輩が許諾を取ってきてから4週間後までに実装します」
僕の端末に振り込まれる150万pr、鞄から飛んで来る2年生全員(まさかの鬼龍院先輩まで入っている)とついでに橘先輩の許諾が書かれた書類。俺はもう行くが驕りだから存分に食ってくれといって退席した南雲、一人残された僕。
「ド、door in the fase…」
やられた!!(3敗)
本日の勝敗、本願寺の敗北