白い部屋から出たとして   作:九頭竜 胆平

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日刊乗れたのは皆さまの応援のおかげです。本当にありがとうございました。


喧嘩より過激で闘争より平和

ホワイトルーム。それは凡人を天才に仕立て上げるための施設。その名の通り真っ白な施設の中、二人の少年がいた。少年の一人は少々の発汗と呼吸のみだれはあるものの、目の前の少年をじっと見ている。もう一人は鼻から血をだらだらと垂らしながら、大の字で寝転んでいた。腹部にもらった一撃がまだ引いていないのか、呼吸は不規則でひどく息苦しそうだ。だが目の前の敗北したはずの少年は、この施設に似合わない笑みを浮かべている。

綾小路清隆と本願寺寺がホワイトルーム内で邂逅したのは、これが最初で最後。お互いの脳裏に刻まれたのは、酷くつまらなそうな最強と、まるで今にも飛び立ちそうなほどの自由な子供の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前5時、鳥の鳴き声が空に響き渡る。

チュンチュン、ピーチチチチ、コォーーカカックルルゥ!鳥の鳴き声に紛れ込ませた合図により、相棒である鷹の小路を呼びつける算段だ。どれが僕の鳴き声か聞き分けるのは鳥類学者でもないと不可能だろう。

 

「グッボーイ、痛っ!あっお前メス?あだだだだ!悪かったって!ほら、手紙持って」

 

僕の腕を傷物にした鷹の小路の足に手紙をくくりつけ窓辺から放つ。さながら僕はディズニープリンセス。そして飛び立った鷹の小路はおやつに雀をつまんでいった。僕をR18Gのプリンセスにしやがって。

 

「…弱肉強食って思ったよりきついな」

 

先ほどの映像を見た後だとさすがに昨日の残りの唐揚げを食べる気になれず、仕方ないからとお茶漬けを食べて登校するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

プライベートポイントが送金されてない理由をHRで説明された後、坂柳に捕獲された。

 

「坂柳さん。HR直後に鬼頭に押さえつけられるいわれはないんですけど」

 

「本願寺君、あなたにはクラスを裏切った容疑が掛かっています」

 

「僕は無実です」

 

「黙りなさい。どうやら最近行われた中間テストの平均点、私たちが100点で一位なのは当然として、なんと二位がDクラスだったそうです」

 

へえ!平田頑張ったんだな!ゴミと恩を押し付けた僕と違って、誰かが過去問でもあげたのかな?

 

「そこで話を聞いたのですが、どうやら本願寺君から過去問を貰っていたそうではないですか」

 

あーやべ。あのゴミが宝の地図だったことすっかり忘れてたわ。もしかして利敵行為だったりする?

 

「待ってくれ坂柳!それは俺の指示したことだ!」

 

「保守的な思考の葛城くんが、恩を売ってなにかしようなどとは考えないでしょう。ねえ本願寺君?」

 

「なるほどな。しかしそれは過去問が答えになると発覚する前だ。つまり坂柳、これは僕の失態でもありお前の失態でもある。早期にお前がクラス全体に情報を流布しておけば避けられた事態。50:50(フィフティフィフティ)つまりノーサイドだな」

 

「ノーサイドはどちら側も悪くない(サイドがノー)という意味ではなく試合終了を意味する言葉です。それともあなたの学校生活がノーサイドということですか?」

 

やばい!学校生活がノーサイド(意味深)した暁には人生設計がノーサイド(意味深)してしまう!

うーん詰んだ?否、まだだ!諦めたらそこで試合終了(ノーサイド)だと松雄が、間違えた松岡が言ってた。松雄は火遊び(ファイヤー)で人生ノーサイドしたやつだ。

 

「くっ、せめて辞世の句だけでもっ!」

 

「皆さん席についてください。授業を始めます」

 

坂上先生大好き♥️僕将来数学者になります♥️

 

 

 

 

 

 

授業の終わりと共に僕は教員室に逃げた。

 

 

 

よくよく考えれば僕には官僚となりこの学校を潰す使命があるので数学者にはなることはできない。裁判官しながら数学者より数学やってたフェルマーがいるだろって?知らんそんなやつ。ごめんなさい坂上先生♥️あなたの職場を潰します♥️廊下を歩いているとシューベルトの魔王が俺のデバイスからけたたましく鳴り響いたので、通話拒否。

長々と僕の逃避行、もとい情報収集を聞いていても面白くないだろうから、この学校の特にヤバいやつでもご紹介しよう。

堀北学、トランプで言うところのACE。シンプルにスペックが高い。他人を頼るという行動を取らないが人を使えないのではなく使わないが正しい。明確に僕より強い。

南雲雅、トランプのKING。堀北学には及ばないもののこいつも学力、運動能力がたかい。さらにこいつは人を使うことを好む。飴と鞭の使い方もうまいしまさしくKingだ。実は一人だと意外と弱い。

坂柳有栖、QUEEN。単体性能は恐ろしくゴミ。部下がいると強いんだけど戦略がうまいだけで人望はスペックで無理矢理補ってる。人望を補えるほどの脳みそってどういうこと。

鬼龍院楓花、JOKER。ぶっちゃけ能力値は未知数だが、少なくともタイマンは張りたくない。

高円寺六助、言うまでもなくJOKER。こいつを切ったときは大勝か大負けかの二択。綾小路はこういう手合いを御する方法は知らないはずなので頭の片隅においておくぐらいでいいや。

綾小路清隆、JOKER。分析不要。この学校鬼札多すぎ。

とまあここまで語っておいてなんだが、大事なのは誰が敵になるかと言うことである。

堀北学は戦う理由がない。南雲雅も同上。鬼龍院楓花はそもそも特定の人物にしか興味を持たない上に飽き性。高円寺は触らぬ神に祟りなしということで、実質的な相手は綾小路清隆と坂柳有栖の二名だ。なんで同じクラスのやつがここに上がってくるんですかねぇ。

教員室前でシューベルトの魔王が俺のデバイスからけたたましく鳴り響いた。通話拒否。

 

「真嶋先生、匿ってください」

 

「クラスメイトに吊るされそうになる度にわざわざ理由を作ってまで教員室に逃げ込むのはやめろ」

 

ケッ、坂上先生と違って使えない野郎だ。入部届けを提出し、教員室から出る。

教員室で思い出したのだが、反逆の平田事件の時にいたあのむちむちボディは一年Bクラスの担任である星之宮知恵先生と言うらしい。いつも保健室にいるのだが保健医と言うわけではなく、シンプルに保健教諭とのこと。じゃあ保健医は誰やねんとなるわけだが、なんとびっくり。この学校保健医がいないんだよなあ。

人柄としては学生と距離が近く、どの学年からも人気で、肌艶が生徒に勝てないことを気にしており、酒癖が悪い。

???なぜ世間一般から聖職者と呼ばれている教師の酒癖がばれている?ド田舎の学校ならともかく、この学校国営の都立だぞ。国営の都立ってなに?

シューベルトの魔王が俺のデバイスからけたたましく鳴り響いた。通話拒否。これから図書館に向かうのでマナーモードにしておく。やっぱりログの残るネットより立ち読みするだけで知識の得られる図書館が正義なんだよなあ!指紋なんて関係ねえ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミステリーがお好きなんですか?」

 

「たまたま見てただけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何だあのやべえ女。え、僕ミステリーの棚見てただけだよね?なんで話しかけてきたの?怖すぎるでしょ。内心びくついている僕のデバイスからまるで縮こまった心を鼓舞するような威風堂々が響き渡る。この着信音は!

 

「葛城さぁん!」

 

『葛城君でなくて残念でしたね。』

 

ひぇ、坂柳なんでぇ?

 

『それで、せっかく泳がせてあげたのですから、情報は手に入ったのですか?』

 

「ん、え?ああ、ポイント未払いの理由か。少し前にうちのクラスにCクラスが喧嘩腰で呼び出そうとしたことがあっただろ?ようはそれでまんまと連れ出されたDクラスの須藤って奴が相手を殴ったらしい。須藤は殴られたから殴りかえした。Cクラスは一方的に殴られたと意見が食い違ってるせいでクラスポイントの増減がまだ定まってないらしい。場所は特別棟、ぱっと見は監視カメラ無し」

 

『本願寺君は解決法などすでに思いついているのでしょう。』

 

「はいはい。今回は言いませんよ」

 

『ちなみにどのような作戦を?』

 

「Cクラスの奴がぼこぼこだったけど、須藤が言葉で煽ってくるだけのやつを一方的にタコ殴りにするとは思えんから。多分特別棟から帰った後にばれないところで傷跡を作ったんだと思うから。解決方法は別塔から出たときの傷が現在について少ないことを指摘するとかどう?特別棟には監視カメラが無くても移動するところは映ってるだろうし。須藤が本当にぼこぼこにしたならわからないけど」

 

『だそうですよ?櫛田さん、平田君。』

 

『本願寺君ありがとう!あとでお礼するよ!』

 

バタバタと足音が遠ざかっていく音、腹立たしいことに僕はまたこの女に一杯食わされたらしい。

 

「図ったな?」

 

『今回は私だけの作戦ではありませんよ。ねえ葛城君?』

 

『すまない、本願寺。俺は、まだDクラスに恩を…いや、隠すのは止そう。俺はただ平田を助けたかった。あいつは須藤が孤立することをよく思っていなかったし、それ以上にクラスの崩壊を恐怖していた。お前はきっとこの件に対しては口を出さないだろうと。だから、俺は…お前を裏切って。』

 

「皆まで言うなよ。そもそもそこ教室だろ。んでどうせハブられてたのは僕だけなんだろぉ?葛城、お前の言う通りだよ。間者の疑い掛けられてるからもしもお前に頼まれたとしても今回の解決策は出さなかったさ」

 

『ふふっ。美しい友情ですね。思わず涙が出てしまいそうです。』

 

「うるせえつるぺた女、どうせお前にもなんか」

 

利益があるんだろ?と聞こうとしたところで通話がキレた。彼女の堪忍袋も切れたのだろう。愉快極まりない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教室が静まり返っている。私と視線を合わせる者はおらず、さきほどまで本願寺君を裏切ったという罪悪感でしにそうな顔をしていた葛城君すら真顔で地面を凝視している。不愉快極まりない。

 

「葛城君、あなたとの派閥争いは一時保留とします」

 

本願寺君。私の電話をさんざん無視したこと、それは許しましょう。それによって平田君と本願寺君のパイプを斬りつつ、私と平田君のコネクションを形成する作戦のはずが、なぜか私より葛城君と平田君のコネクションをより強固にしてしまったこと、これも許しましょう。ですが最後のあれ、あれだけは許せません。デリカシーがなさすぎます。腹立たしいです。私はこれから大きくなるんです。殺します。

 

「戦争です」

 

葛城には、教室の床をついた杖の音が嫌に大きく聞こえた。

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