未来から転移してきた最強兵士、アイドルになった元上官と渋谷駅前にて再会す 作:オムライス2000
現代に出現した彼らはマリアの部隊のストーカーと化しています。
C小隊第1分隊、
個体番号10−0045からの報告。
現在地、南米8E21区域、ナポ川流域の密林。
観察対象の作戦行動を確認。追跡を開始。
※
私は現在、米海軍の第一歩行戦車大隊第二中隊の降下を待つべく密林に潜伏している。私の位置から約12キロ離れた位置には0051が同じく潜伏しており、115分前に出現した『漂流物』と呼ばれる施設のデータをこちらに送り続けている。
さほど時を置かずに降下してきた第二中隊のカプセル群を、複数のセンサーが捉える。夜空に延びゆくそれらの軌跡のうち、二つだけ明らかに降下速度が違うものが混じっていた。一つに中隊長のマリア・ブラッドベリ大尉、もう一つに小隊軍曹が搭乗しているものと思われる。
小隊軍曹の個体番号は06-5026、階級は一等軍曹。
戦闘記録を見る限り、部隊の実質的な指揮を執っていたのは彼だ。戦闘能力も高く、例外小隊の中心と言ってよいだろう。
目視から12秒後、交戦開始。
私は現地人が製造した歩行戦車の動きに注意を向ける。慣性制御ではなくロケットブースターで行うその跳躍は、A3と比較してあまりに鈍重だ。それでも搭乗している兵士たちの技量が高いのか、彼らは我々の想定よりも善戦している。
しかし、順調な戦いは大型多脚砲台の出現で終わりを告げる。多脚砲台を中心として力場が急激に膨張し、歩行戦車部隊は一瞬で半壊状態に陥った。
小隊軍曹は擱座した僚機から敵を引き離そうと試みているようだが、集中する圧力を捌ききれていない。彼が被弾するのは時間の問題だ。
私は躊躇する。
果たしてこの状況を座視していてよいのか。
「⋯⋯51、観測支援を開始せよ」
『観測支援開始』
私はウェポンラックから長距離狙撃用のライフルを選び、ジェネレータに接続する。目標までの距離はおよそ15キロメートル。あれほどの巨体だ、51の支援が無くとも当たる。支払われた労力を有効活用すべく、ブラッドベリ機が与えた損傷部分に着弾地点を定める。
「そこのフレッシュ。吹き飛ばされたくなければ急いで後退しろ」
私からの警告を受けて、多脚砲台の前で跳ね回っていたA3が即座に退がり始める。
「発射」
結果は見るまでもなかった。
木々をなぎ倒す衝撃波と共に白い光が膨れ上がり、黒い煙が夜空へとめくれ上がっていく。
『例外小隊に助力した目的を説明せよ』
強い疑問を表すタグと共に、51が問いかけてくる。
私はライフルをウェポンラックに収納しつつ、彼への回答を思考パッケージとして送り返した。内容は概ね以下の通りである。
《我々は期せずしてこの時代に転移したが、情報生命体がなぜ各地で時空転移を引き起こしているのかを理解していない》
《例外小隊は、恐らく情報生命体によって意図的に時空転移させられている。彼らを追うことで、情報生命体の計画の一端を知ることが出来るのではないかと私は考えている》
期待してはいなかったが、この回答では51の疑念を解消するに至らなかったようだ。彼は未だ疑念のタグを表示し続けている。『オリジナルの命令は何よりも優先される』と言っていた私が、真逆の行動を取ったのだから当然である。反乱を疑われなかったのが意外な程だ。
しばらくして、51が無言で接続を切断した。
判断保留というところか。
予定通り、我々はピックアップ地点に向けて移動を開始する。ピックアップを行うのが米国の諜報機関であるのは皮肉な話だ。我が小隊ですら内部は矛盾だらけなのだ。米国の如き巨大組織に至っては宜なるかなである。
遠くに未だ立ち昇る黒煙を一瞥してから、私は暗い密林の中に身を投じた。