未来から転移してきた最強兵士、アイドルになった元上官と渋谷駅前にて再会す   作:オムライス2000

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※※※ お知らせ ※※※
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この話から、かなり重い、いわゆる「鬱展開」に入ります。

どうしても必要な展開なんですけど、苦手な方には不快感を与えてしまうかもです。

最終的にはハッピーエンドですので、
どうか最後まで二人を見届けてやってください。


誕生日

 

 

 

僕らが荒川の土手を転がったあの日から、ひと月ほどが経過した。

 

 

僕の体調は完全に元に戻り、副脳の無い生活にもだいぶ慣れてきた。言語の面ではかなり苦労しているが、日本語の聞き取りくらいなら何とかこなせる様になってきている。

 

 

僕と少尉殿の関係に大きな変化は⋯⋯無い。

 

 

相変わらず二人で川辺を散歩し、スーパーに買い物に行って、たまにマサに会いに行く。そんな生活を繰り返している。少尉殿の睡眠時間がますます長くなっている事が気掛かりだが⋯⋯普段は元気だ。時々元気すぎるのではと思うくらいに。

 

 

そんな感じで時間は流れて、日付は7月29日。

 

 

今日は少尉殿の誕生日だ。プレゼントは、マサ提案の謎の手続きに従って指輪を買ってあった。

 

だが、購入した直後からコレは違うと後悔している。もっと少尉殿が欲しがりそうな物を検討すべきだったのではないか?あんな棒を倒すだけの意味不明な手続きに従うのは思考放棄と何ら変わらないではないか。

 

その次の日から、僕のPS5さがしの旅がはじまった。少尉殿が寝ている午前中が主な活動だったが、家電量販店に電話したり、定期的に売られていると噂の店を行脚したりとかなり頑張ったのだ。

 

しかし、努力は実らなかった。誕生日の三日前になってもPS5を確保できていない。悩みに悩み、苦渋の検討を重ねた結果。

 

 

僕は06を脅迫することにした。

 

 

僕は電話口で奴に迫った。A3を失い、あまつさえ副脳すら失った僕に、今こそ対価を支払うべきではないのか?と。

 

そして誕生日の当日、僕は謎の大男から受け取ったPS5を担いでアパートへと急いでいるところである。さすが06、入手困難なゲーム機を迅速に用意してきた。大したコネである。あと何回かは使えそうだ。

 

少尉殿の喜ぶ顔を思い浮かべながらアパートの階段を駆け上がり、扉に近づく。その時、部屋の中から複数の声が聞こえてきた。

 

この声は、まさか。

 

僕は扉を開けて中に踏み込んだ。やはりだ。春野社長と泉マネージャーがちゃぶ台を囲んで座っている。ここに乗り込んでくるとは良い度胸をしている。僕は靴を脱ぎ散らかして室内に踏み込んだ。

 

「こっ、こここ」

 

直後に壊れた装置から出る異音のような声が聞こえて、僕は思わず立ち止まった。

 

声の方へと首を廻らせれば、キッチンでグラスに麦茶を注いでいる少尉殿の姿が目に入った。彼女は麦茶がグラスから豪快に溢れ出ている事も忘れて、僕の左手に提げられたPS5に釘付けになっている。

 

「これ⋯⋯」

 

手にしていた物を全て放り出した少尉殿は、僕を凝視しつつPS5を指さした。鬼気迫る表情の少尉殿に、僕は思わず首を縦に振る。直後、熱い塊が僕の身体にぶつかって来た

 

「軍曹おおおぉぉぉ!!」

 

ジロー呼びを忘れた少尉殿が、両腕を僕にきつく巻きつけて声を弾けさせた。そして拘束状態の僕にかつてないほど深いキスをしてくる。

 

侵入してくる少尉殿の舌を感じながら、僕は手に持っていた物を落として彼女の背中に腕を回した。頭の中がどんどん痺れてきて、周りが全く見えなくなっていく。もっと深く。互いを絡め合い、僕らはさらに腕の力を増していく。

 

「あー、お邪魔みたいなんで帰るわ」 

 

現実に引き戻されて、僕らは弾かれたように身体を離した。恐る恐る顔を向けると、物凄く気まずそうな顔をした春野が所在なさげに立っていた。その後ろには、顔を真っ赤にして佇む泉マネージャーの姿が。

 

「お前ら、姉弟なんだから※※だけはしっかりしろよ」

 

春野はそう言って部屋を出ていく。一部聞き取れなかったが、間違いなくロクでもない事を言ったはずだ。

 

「男の子がちゃんとしないとダメですからね」

 

続いて泉マネージャー。

 

二人が出ていって扉が閉ざされたあと、先に再起動したのは少尉殿だった。湯気が出そうなほど真っ赤な顔の彼女は、塩の入った容器を棚から取ると扉を開けてそれを数回ばら撒く。

 

「に⋯⋯二度とくんな〜」

 

その声は物凄く弱々しかった。

 

 

 

 

あの後なぜか部屋に居づらくなった僕らは、サイゼリヤに行って誕生祝いの続きをする事にした。

 

少尉殿の家計管理が厳しいため、いつもは二人合計で千五百円が外食の上限予算なのだが、今日は特別である。手当たり次第に好きな料理を注文した。

 

少尉殿は届いた料理にがっついてウマイウマイと喜んでいる。僕は少尉殿の料理のほうがずっと好きだが、大切な人と特別な席を囲む事がこんなにも楽しく、嬉しい事だとは思わなかった。誕生日という慣習の意義をようやく理解できた気がする。

 

食事を終えた僕らがメニュー表の間違い探しに飽き始めた頃、不意に少尉殿が僕の誕生日をどの日にしようかと聞いてきた。

 

しばらく考えてから、僕は少尉殿と同じ日がいいと答える。

 

「なんでだ。もう今日が終わっちゃうぞ!プレゼントの用意とか間に合わないだろうが」

「いいんです。来年はハナさんと同じ日に歳を取りたいです」

 

僕がそう答えると、少尉殿はくすぐったそうに笑顔を浮かべた。

 

「そ⋯⋯そっか。ならそうしよう」

 

店内の暖かな照明の中で笑う少尉殿に見惚れながら、僕は嬉しさで胸が痛かった。伸ばした僕の手に少尉殿の手が重なる。

 

またここで、二人の誕生日を祝おう。

僕らはそう約束した。

 

 

 

 

 

 

そして次の日から、少尉殿は目を覚まさなくなった。

 

 

 

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