未来から来た人造兵士、渋谷でアイドルになった元上官と再会す   作:オムライス2000

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【他者視点】とある月支配者の失敗

 

 

ここで一度、

軍曹たちがC小隊からの砲撃を受けて、時空転移する直前へと時を戻す。

 

再生歴99年(西暦2313年)12月24日

マリウス月面都市、月

 

長老会第八席次 セネカの行動記録

 

 

 

 

月の氷穴の最深部。

 

情報生命体(インフォナス)から地球を奪還する人類最後の戦い、その意思決定を司る『長老会』が進行している大ホールで、私は戦況を震えながら見守っていた。

 

無数の部隊が降下し、地上を這い回り、敵部隊との交戦を展開している。

 

一見すれば、人類が圧倒的な戦果を収めているように見える戦況図だった。事実、多くの情報生命体の施設を制圧、無力化した報告が次々と到着し続けている。

 

だが、私は、私だけは、これがまやかしだと知っている。

なぜなら、私が⋯⋯私だけが、情報生命体とコンタクト可能であり、()()()の狙いを知っている唯一の人間なのだから。

 

 

 

たった今、最後の作戦目標と共に『例外小隊』、そして私の駒である『C小隊』が、時空の彼方へと消え去った。

 

 

 

私が膝から崩れ落ちるのと同時に、勝利の歓声が大ホールの天蓋に響き渡る。私は呆然と、その反響を浴び続けた。

 

愚か者どもが。

情報生命体(インフォナス)は、人類に敗北したのではない。

 

情報生命体(インフォナス)、いや、我が愛娘エーリカは、我ら人類を見限って過去へと去ったのだ。

 

 

そう。我らは見限られたのだ!!

 

 

あの子は地球環境の再生システムを、根こそぎ!全て!!過去へと持ち去ってしまった!!あとに遺ったのは、もはや手の付けようがなくなった滅びゆく地球と、忌むべき旧人類(フレッシュ)の群れだけだ!!

 

あの子の計画の兆候を掴んだ時、私はそれを気にも留めなかった。インフォナスが、我が娘が、私を見捨てるはずなど無いと否定した。すべての事象がそれを真実であると示し始めた時ですら、私は疑いもしなかったのだ。

 

いよいよ計画が現実となったその時に、ようやく私は最精鋭の大隊を情報生命体の本体(セントラルユニット)に向けて投入した。例外小隊の隊長が搭乗し、異常な戦績を発揮した機体。その量産機А-21を12機全て投入したのだ。

 

だが、切り札だった大隊からの通信は途絶。

そして、あの子は……セントラルユニットは、時空のかなたに消えてしまった。

 

消えてしまったのだ。

愚かなフレッシュの象徴たる『例外小隊』と共に。

 

なぜだ?エーリカ!

なぜコールドではなく、

生みの親である私ですらなく、

屑のようなフレッシュどもを!お前は選んだのだ!?

 

あの、半端物を寄せ集めた屑ども!

あんなゴミどもと一緒に過去からやり直すというのか!?

親たる私を、この死んだ世界に置き去りにして!!

 

せめて、あの屑どもだけでも。

私を差し置いて娘に選ばれたあれらだけでも。

砲撃を浴びせ、原子にまで分解させることができていれば。

 

これほどまでの悔恨と怒りを味わうことは無かっただろうに。

 

地球奪還を祝う歓喜の声が、未だホールに響いている。何が起きているのかもわからず沸き立っている、愚者の群れの叫び。私にはそれが、永きに渡る人類の歴史の断末魔に聞こえた。

 

勝利の果てに、私たちに残されたのは、もはや手の付けようがない地球。こんな泥玉を、膨大なコストを支払い手に入れた救いようのない者たち。

 

何がいけなかった。わが娘エーリカよ。

私と共に愚かな旧い人類(フレッシュ)を滅ぼし、最適化された新しい人類(コールド)によって地球を再生させる。この計画に、お前も賛同していたのではないのか。

 

「ついに……ついにやったな、セネカ。地球奪還の宿願が叶った。我々が再び大地を踏む日が来たのだ。情報生命体(インフォナス)を作り出してしまったというお前の自責の念も、これで綺麗に晴れるだろう」

 

第一席次のキケロが、涙を流しながら私の肩の上に手を置く。こうして膝を屈している私を、感極まって脱力していると勘違いしているらしい。

 

本当に、

本当に、

なんと愚かなものたちだ。

 

死を恐れたことはない。

だが、こいつらと一緒に朽ちていくのだけは嫌だ。

 

 

 

私は、次の延命処理を拒否することを固く心に決めた。

 

 

 

 

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