未来から転移してきた最強兵士、アイドルになった元上官と渋谷駅前にて再会す 作:オムライス2000
第一話で、砲撃を開始しようとしているC小隊隊員の視点です。軍曹たちがタイムスリップする少し前から話が始まっています。
再生歴99年12月24日
月標準時0200
101降下強襲装甲連隊 第1装甲大隊 第1中隊所属
C小隊より定時報告
当小隊は現在4L14を移動中。作戦継続に問題なし。
※
10―0045。
それが私に与えられた個体番号である。
私は百二十五日前にロールアウトされたばかりの新型兵士、いわゆる『コールド』だ。今は小隊を率いて、破壊的な暴風が吹き荒れる地上を行軍中である。私の後に続いている部下たちも同様の新型兵士であり、全員が従来型の兵士を遥かに上回る性能を持っている。使用する機体も最新鋭機が与えられていた。
我々が連隊司令部から与えられた任務は、クラスD兵器工廠の奪取。前衛のA小隊と我々であれば、それほど難しくない任務である。
だが厄介な事に、今回は軍以外のルートからも任務が与えられている。これが少々面倒を予感させる内容だったのである。
『目標施設の破壊』
『A小隊の抹殺』
軍の命令とは真逆な指示だが、目標の破壊だけならば奪取に比べて格段に容易な上、我々は交戦中のA小隊を背後から一方的に奇襲可能である。無理な内容とは言い難い。それでも私は楽観視ができなかった。標的であるA小隊が、例外小隊とあだ名される異常な戦績を誇る集団だったからである。
スペックシートの比較による有利を、私は信じ切ることができなかった。
※
行軍を終えて目標地点に到着していた我々は、陣地の構築を完了させて待機状態に入っていた。遠く廃墟群の向こうに我らの目標とする施設があるはずだが、肉眼では当然目視する事はできない。
およそ1時間後にA小隊が到着。彼らは小休止もそこそこに、作戦行動に移ると連絡を寄越してきた。闇の向こうへと消えていく彼らの姿を見届けた直後、私は軍から受けていた命令を破棄し、新しい任務への準備に取り掛かる。
まず私は、変更された任務を部隊に共有し始めた。大抵の事では揺るがない彼らだが、やはり友軍への攻撃命令には動揺したようだ。複数の思考が送り返されてくる。その全てが内容を一致させていた。
『友軍への攻撃理由を説明せよ』
当然の要求だが、それに応える事はできない。
「説明は不要である。これは『オリジナル』から下された命令だからだ。従って何よりも優先される。当然、軍の命令よりもだ」
『オリジナル』とは、文字通り我らコールドの元となった個体のことである。
全てのコールドの人工脳は、たったひとりの
そのオリジナルが、最優先の指令としてA小隊の抹殺と目標施設の破壊を我らに命じている。命令の意図が何なのかは知らされていない。知る必要もない。ネットワークの末端である我らはオリジナルの手足となって動く駒でしかない。
部隊の意思が一つにまとまったようだ。私は機体を立ち上がらせた。前方ではA小隊が敵防衛部隊との交戦を開始している。
「小隊各機へ。砲弾の装填を開始」
「各機砲撃開始」
バレルから砲弾が次々と放たれ、闇夜に六本の弧を描いていく。それらはやがて、地平の向こうの空を真昼のように明るく照らし出した。
その直後だった。
あらゆるセンサーから異常な数値が流れ込み始めた。同時に情報戦担当の85からレポートが送られてくる。
『要塞クラスの主機の起動を確認。出力増大中』
人類がわずか三基しか保有していない、超大出力な動力源が動き始めた。
こんな出力を何に使うのかは不明だが、我々が有利になるような用途ではないだろう。
「全機、目標に向けて斉射」
同時に放たれた六発の弾頭が、目標施設へと飛翔していく。
着弾。
その直後に強大なエネルギーが検出され、衝撃波と振動が遠く離れたこの場にまで到達する。目標施設は完全に蒸発したはずだった。しかし。
『A小隊全機の反応、消失』
『目標施設、健在』
A小隊が片付いた事に、私はほとんど意識を払わなかった。あれほどの砲撃を浴びながら目標施設が無傷。異常事態が進行している。
『強大な重力勾配が目標施設を中心に発生、小隊各機の慣性制御、全力運転で対抗中』
『重力勾配の分布、砲撃による爆発エネルギーと相互作用した形跡を認める』
もはや状況の理解など不可能だ。
私は迷う事なく命じた。
「各個に離脱せよ」
とっくに手遅れだったらしい。我らは強大な力に捉われてしまっていた。私が注視する中で空が泡立ち、歪み、破れた泡が真っ黒な穴となって爆発的に広がっていく。
激しく振動する機体の中で、私は妙に落ち着いていた。音もなく、暗闇が我らを飲み込む。私の意識は、勾配を強めていく時空間の底、三百年前の過去へと真っ逆さまに落ちていった。