其の勇者は元戦闘メイド   作:蒼猫まろん

1 / 3
お気に入り、コメント、評価、お待ちしております。
面白いって思ってくれたら幸いです。



鷲尾須美は勇者である-刻まれた魂-
Prolog. 戦闘メイドの役目


 

「君を生き返らせる代わりに、私の世界を救って欲しい。彼女たちを守ってあげて欲しいんだ」

 

 

 ―――あぁ、私は死んだんだった。

 美しい虹が掛かる蒼空の下、その少女―――和泉(わいずみ)(れい)はそう自分の状況を理解した。

 刺客から雇い主を護衛する職業、戦闘メイドと言う者になって約十年。自分の死に様は随分と情けなかった。

 結論から言ってしまえば、任務失敗。

 今まで一人で護衛をして来たが、百に近い人数の刺客を相手にしてつい先程、命を落とした。どんなに経験を積んでも数には勝てないと痛感させられた日だった。

 

 実親に捨てられた五歳の頃から戦闘メイドの心得を鍛えられて来た彼女にとって、死と言う物は怖くなかった。寧ろ、雇い主を守って死ぬ事は誇らしい事でそんな最期(終わり方)をしたかった程にだ。

 一体、雇い主は何をしてあんな人数に恨まれているんだと正直呆れたが自分の死に様よりかは幾分とマシに思えた。

 三途の川を渡る為の六文銭(ろくもんせん)は当然持っていないし、身ぐるみを剥ぎ取られてまで渡りたいとは思わない。渡ったとして、何人ものの命をこの手で葬った彼女が向かう先は無論、地獄一択。

 

 このまま彷徨っていようか、とも思っていた矢先、彼女の前に一つの光が向かってきた。その光は自らを神と名乗り、提案して来たのは転生だった。

 出来る事ならもう二度とこの手で凶器を振るいたくは無かった。殺意を向ける者を殺戮する機械として生きる為に、全ての感情を捨てた彼女だが戦闘メイドと言う自分の舞台から降りたかった。

 

 

「………それは貴方様のご依頼、と言う事でしょうか」

 

「―――そうだね。依頼と言うか、お願いと言うか。私はもう見たくないんだ。あの子たちの絶望は」

 

 

 あぁ、やはり降りれない。

 玲はそう思うと同時に自分のスカートの裾を少し持ち上げ、頭を下げる。神ならば、知っている筈なのに。世界を救える程、自分は凄くない。あの情けない死に様を知っているクセに。

 

 それでも依頼と言われてしまえば、それに応えなければならないと考えてしまう自分が一番嫌いだ。と玲は少し顔を歪ませた。

 

 

「………ご依頼(お願い)とあらば、仰せのままに」

 

 

 その世界で正しき事をすれば、少しは自分の罪も赦されるだろうか。眩しい光に包まれる中、ゆっくりと目を閉じる彼女はそう、溢れる様に呟いた。

 

 

      

 

 

 神世紀二八六年。その日、運命の歯車は変わった。

 繰り返される少女たちの絶望に、絶望の世界に一筋の光がやって来た。自分の役目を淡々とこなす彼女の姿は、未来永劫きっと語り継がれる事だろう―――。

 

 これは、神が望んだとあるおとぎ話。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。