前作の『勇敢なる君に花束を』も頑張ってリメイクしてます(*^^*)
「………一緒に行けないの?」
神世紀二九八年。季節は春。
今にも泣いてしまいそうな震えた声でそう尋ねる少女は、和泉
彼女との出会いは小学校低学年頃の事。幼い頃から武術を親に習っていた彼女を同級生の男子が揶揄っていた所に、偶然にも目撃をしたのがきっかけだった。
習った武術で返り討ちにしない彼女を不思議に思う玲華だったが、それもきっと親の教えなのだろうと目の前に立ちはだかって彼女の代わりに軽く脅す事にした。隣の教室から掃除用の箒を取り出し、教卓の上に立ち上がる。
『か弱い女子を男子数人で虐め抜く、正義の名のもとで裁いてくれよう』
玲華だと言う事を知られまい、と顔を隠していたものの、彼女にはすぐバレてしまったが男子数人はその事がトラウマになったのか彼女を揶揄う事はもう二度と無かった。そこから中学年になっても高学年になっても同級生の関係だった故に、卒業まで一緒に通えるんだと信じて疑わなかった。
「………通う学校が変わっただけで、別に引っ越す訳じゃない」
「でも……一緒にいたいよぉ」
「………」
世界を救う為にこの世界に来た玲華は最高学年に進級すると同時にあの時の神―――神樹を奉る組織、大赦から命令が下ったのだ。勇者として戦う為、今まで通っていた学校から“神樹館”と言う格式の高い小学校に移るだけであって家ごと移る事は生まれてきた家柄が良かったのかしなかった。
そう、玲華が説明しても少女はポロポロと大粒の雫を地に染み込ませるばかりで玲華だけではどうしようも無かった。
転入早々、遅刻するのは戦闘メイドや勇者と言う前に人として常識的では無いし、送り迎えをしてくれる大赦をいつまでも待たせる訳にも行かなかった。
「大丈夫、君は強い。私が居なくても、沢山の友達が居る」
「やだぁ! 玲ちゃんと居るのぉ!」
「………はぁ」
仕方がない。
玲華は少女の涙を拭き取った後、頬にキスを落とした。突然の事に唖然とする少女の頭にポンと手を置いて「帰ってきたら構ってあげる」と約束までも一方的に、だが交わした。
「だから、良い子にしてるんだよ」
「………うん」
いつ、どこで命を落とすか分からない勇者の役目を担っている筈なのにそう言って車に乗り込む玲華の姿はこれ以上無い自信があった。相手がどんな奴かはまだ分からないが一人で戦っていた前世と比べ、仲間と戦う今世では簡単に死ぬ事は無いと分かっていたからだ。
「お時間を取らせてしまい申し訳ございません。よろしくお願いします」
「朝の学活までには余裕で間に合いますので構いません。発進致しますので、シートベルトをしっかりして下さいね」
シートベルトがカチッと鳴った事を合図に黒塗りの車はゆっくりと発進していく。未だに放心状態の少女はその車の姿が見えなくなるまで、ずっと見続けていた。
「………私は、玲ちゃんの隣で―――」
小さく呟いた彼女の言葉は誰にも届く事は無かった。
其の勇者は元戦闘メイド
鷲尾須美の章 -刻まれた魂-
01. 友達と役目