ただ庚子様を幸せにしたかっただけのモブ裏鬼道 作:リョウタロス
uniuni様評価ありがとうございます
※1/22 加筆修正しました
─現代─
「ひやあああああ!?」
「キアアアアアア!」
哭倉村跡の地下に隠れた洞窟で眼鏡をかけカメラを持った男が3体の狂骨に追いかけられ必死に逃げている
男が大きな窪みが広がる開けた場所に出ると狂骨に追いかけられるまま窪みの近くにまで追いやられてしまうがそこに救いの手が現れた
「霊毛ちゃんちゃんこ!」
「ウアッ!?」
黄色と黒の縞模様に編まれたちゃんちゃんこが拡がり狂骨達を捕らえ男を守るように左目を髪で隠した少年 鬼太郎と紫髪の少女 ねこ娘が立ち塞がる
「き、鬼太郎くん!」
「邪魔!危ないから下がってなさい」
「はいぃ!」
「父さん、あれが最後の狂骨でしょうが様子がおかしいです」
「うむ、2体の狂骨が1体の狂骨を庇うように覆い被さっておる。家族だったのかもしれん」
「ウウ……」
突然庇われていた狂骨が鬼太郎と鬼太郎の髪の間から出てきていた目玉の親父を見て涙を流す
その狂骨から懐かしい魂を感じ魂の姿を見た目玉の親父は鬼太郎の髪から抜け出し彼の手のひらの上に乗る
「そうか、あれから70年。わしらが守れなかった君も狂骨となってここに最後まで残り続けておったとは。無理もない。未来を奪われた君の無念は相当のものだったじゃろう。後ろの2人はご両親かの、トキちゃん」
狂骨達の姿から生前、本来の魂の姿が浮かびあがる
かつて語った長田家の座敷牢の中からの景色で幼いままの時弥、その後ろには目玉の親父には見覚えのない緑色の着物を着た女性と群青色の着物を着た男性
『いえ、俺は』
『うん!僕の母さまと本当の父さまみたいな人だよ』
『時弥のこと本当にありがとうございました』
『……時貞を討ち村の咎を祓っていただいたこと心より感謝します。あの時、貴方と彼がこの村に来ていて本当に良かった』
「わしらはわしらのやるべき事を果たしたに過ぎんよ。トキちゃん、この70年だいぶ待たせてしまったのう。……辛かったろう」
『うん……それでも母さま達がいたから寂しくはなかったよ。あの時喋ってくれた未來は、まだ実現できてはないんだよね』
「うむ、あれから70年経った今も治せない病気も人間同士の争いも絶えてはおらん。けれどわしはあの夜共に夢見た未来を諦めてはおらん。いつか叶うと、あの日あやつが見せてくれた人間の善性を信じておる。あやつのおかげで産まれる事ができたこの鬼太郎と一緒にのう」
『そっか、なら僕も信じてる!おじさんの言った未来!』
泣きながら笑ってみせる時弥の頭を後ろの2人は優しく撫で頭を下げるとつかの間の幻のように魂の姿は消え元の狂骨の姿のみが残される
「時弥くん、君の事は父さんから聞いている。僕にもなにか君に出来ることはないかい?」
鬼太郎の言葉に時弥は後ろの2人と涙を流したまま手を繋ぐ
「ボクタチヲ……ワスレナイデ」
『僕達はここにいたって事を忘れないで!』
「ああ、約束するよ、忘れない。僕たちが必ず語り継いでいく」
その鬼太郎の言葉に時弥は満足したように笑みを浮かべ空に登るが手を繋いでいた筈の2人はその場に残されている
『母さま?端場さん?』
『申し訳ありません、時弥様。私達はそちらへはまだ行けません』
『私は数々の外道を働き堕ちた身であるが故』
『私は龍賀の女であれに見て見ぬふりをし続けてきたから』
『先に地獄で罪を償わなければならないのです』
『だから時弥、先にそっちで待っていてね』
『やだ!やだよ!母さまも端場さんも!一緒に行かないなら僕もそっちに!』
『時弥はこっちに来ては駄目。大丈夫、必ずまた迎えに行くから』
『彼女と共にそちらで待っていてください』
『うぅっ、待ってるから!絶対迎えに来てくれるのをずっとずっと待ってるから!』
穴の底に射し込む光の中、かつてこの地を訪れた男に片思いし狂骨の依り代となった少女が一時の別れを嘆く時弥を連れて天へと登り、それを手を振り見送る穴の底に残された2人は暗い炎で開かれた地獄の門へと落ちていく
後に残るは今を生きる生者のみ
死んだ彼らを残すため、彼らの想いを託すため
目玉の口より語られる、継がれる彼らの物語
これにてこの話はおしまいとなります。
皆様ここまでご拝読ありがとうございました。
3人がまた会えたのはあの世か現世か、それはあなたのご想像にお任せいたします