Ab06(アビドスぜろろく) 生徒名 レイヴン   作:sepa0

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キリのいいところまで書いたと思ったら、2万文字を超えてびっくりした上で、すごく分割しやすそうな場所があったので分割しました。
後半も楽しんでいただけると嬉しいです!


第9話 マーケットガードの落日

「どういう事…」

『どうしたもこうしたもあるか!! テロリストどもを追跡しろ! 役立たずのクズどもめ!!』

『ゴリアテまで引っ張り出してこのザマとは…あんたの立場も危ういんじゃないのか?隊長殿。』

『やかましい!! とっとと追跡するか、ゴリアテを起こすのを手伝え!!』

 

ブラックマーケットの闇銀行に、銀行強盗が入ったとの通報があり急行した私達マーケットガードの増援部隊は、信じられない光景を目にすることになった。

大量の気絶している同僚達、今まで不敗を誇っていた大柄のオートマタの先輩はハイウェイ下で動けなくなっていて、目の前には頭部と右足の関節を破壊され実質無力化されたゴリアテが転がっていた。

 

「相手は、一体どんな戦力で来たのですか?」

『市街地の監視カメラの映像を確認した。

まさに銀行強盗といった見た目の5人と、それとは別の勢力らしいがフードを被った子供が1人だな。』

「たった6人で、この封鎖を破ったということですか…?」

『そうなるな。 やれやれ、マーケットガードも舐められたものと思ったが、舐めていたのは俺たちの方かもな。』

『いつまでグダグダ喋っている!! 行くぞ!!』

 

応急修理を施したゴリアテが起き上がり、追跡を開始する。

一体、どんな化け物達が待ち構えているのか。

その答えは、すぐに出た。

ブラックマーケットの出入り口の1つであり、強盗団の逃走ルートに使われたハイウェイの出口。

そこに、たった1人。

フードを深く被り、身長に釣り合わない大型のライフルを携えた、ボロボロの羽根が生えた少女が待ち構えていた。

 

『テロリストめ…一体どれだけ我々を馬鹿にすれば気がすむ!! 情けは一切かけるな!!粉微塵にしてやれ!!』

「りょ、了解!」

『たった1人にゴリアテとラージシールド部隊だろ? 大人気ないねぇ。』

 

だが相手の方も、降伏する気は一切ないらしい。

こちらを視認すると同時にこちらへ駆け出してきた。

 

『正面からとは、命知らずだな!!』

 

相方がシールドを構え、私はその隙間から敵を覗くが…

 

「い、居ない!?」

『なんだと!?…この盾、構えてると前が見え』

 

タァン!!っと銃声が響くと同時に、相方が崩れ落ちる。

視線を上げると、そこにはフードを被った少女が、器用に盾の上に乗っていた。

 

「たしかにりっぱなたてですが…わたしとはあいしょうがよくなかったみたいですね。」

「この!よくも相方を!」

 

即座に少女に向けて発砲するが、引き金を引いた直後に視界から消える。

だが、今度は追えた。

足場のシールドを大きく踏み込んで、上に跳んだ。

空中では、身動きはできないはず。

次は当てる!!

銃を上に構え発砲しようとしたところで、右肩に衝撃が走る。

 

「ぐあっ…」

「いって、おそかったですね。」

 

相手は空中に逃れた時、既にこちらに狙いをつけていた。

まるで、空から撃ち下ろしたことがある経験が何度もあるような、正確な一撃だった。

体勢を崩した私に猛禽類のように着地と同時に踏みつけ、そのまま後方にいる部隊へ襲い掛かっていった。

彼女はもう私を無力化したと思っているらしい。

好都合だ、不意をつければ何とかなるかもしれない…そう思ったが、彼女の戦いぶりを見ると、このままじっとしていようと思ってしまった。

何人も集まったラージシールド部隊は、少女のスピードに翻弄され、盾を構えるもあっさりと回り込まれ撃破され、後続の射撃部隊は攻めることも逃げることも出来ず、次々と倒されていく。

隊長の乗っているゴリアテも勇敢に立ち向かったが、残像が発生しているのかと見紛うほどのスピードについていけず、左腕を破壊され、気づけばゴリアテに取り着いていた彼女の蹴りでゴリアテの頭部がひしゃげる。

頭部が歪んだことで発生した装甲の隙間に、彼女はライフルをねじ込み、何度も、何度も発砲した。

発射された弾丸はゴリアテの中で何度も跳弾を繰り返しながら内部機器にダメージを与え、火が吹き始める。

ゴリアテに乗っている隊長の無線から、会話が聞こえた。

 

『貴様は…貴様ら…何者だ…!』

『わたしは、どくりつようへい、ないとふぉーる。 ほうしゅうとひきかえに、あらゆるいらいをすいこうする、ようへいです。』

『傭兵だと…たった1人の傭兵に…ぐわぁあああああ!!!』

 

隊長の断末魔と共に、ゴリアテは内部から連鎖爆発を起こし、爆散した。

そしてその爆炎の中からは、忌々しい灰色のフード付きのパーカーを着た、独立傭兵が堂々と歩いてきた。

 

『重装歩行戦車、ゴリアテの撃破を確認。 流石だな、ビジター。』

「これだけやればじゅうぶんかな。」

 

マーケットガードの亡骸(死んではいないが)の山の中を独立傭兵は歩いていく。

私は気絶したフリをしていた。

不意を打ったところで、返り討ちにされるのが関の山だ。

奴は、自分の正体を何でもないように明かした。

独立傭兵、ナイトフォール。

襲撃者の情報を得られただけでも十分…

 

「ねぇ、あなた。」

 

奴が、私の前で足を止め、突然言葉を発する。

 

「まだ、いしきがあるのでしょう?」

「!!」

 

気づかれていた、もうやるしかない。

私は予備のハンドガンを抜きながら起き上がり構えるが、彼女の回し蹴りでハンドガンを弾き飛ばされる。

 

「…くそっ!!やるなら一思いにやれ!!」

「いえ、あなたにおねがいごとがあるのです。」

「テロリストの要求なぞ…!?」

 

彼女はこちらの意見を無視しながら、手帳を取り出しサラサラと何かを書いて渡してきた。

渡された紙には、やや汚い文字で「ナイトフォール」という名前と、連絡先が書かれていた。

 

「どくりつようへい、ないとふぉーるは、ほうしゅうとひきかえに、あらゆるいらいをすいこうします。」

「な、なんのつもりで…」

「? ただの、せんでんですよ。 つぎは、みかただといいですね。」

 

そう言うと、彼女はまだ煙があちらこちらから立ち上っている戦場を後にし、どこかへ消えていった。

 

「…化け物め…」

 

この言葉しか、出なかった。

つまり、彼女は雇われたというだけでブラックマーケットを敵に回し、さらにそのブラックマーケットに営業をかけているのだ。

彼女にとって、争いは、飯の種でしかないのだろう。

生きる為に、お金の為に戦っているのは私達も同じだが、彼女は異質だ。

 

この後、たった1人の傭兵にマーケットガードが敗北した事実が広まり、ブラックマーケット内の治安はさらに悪化。

マーケットガードの権威は地に落ち、今回の事件に似たような事例が頻発するようになった。

「マーケットガードの落日」と呼ばれるようになるこの事件は、個人により、史上最も多くの損害を出された事件でもある。

 

 

 

 

 

ブラックマーケット郊外 市街地

 

『封鎖地点を突破。 この先は安全です。』

「やった!大成功!」

「ふひー、ひさびさにこんなに走ったよー。」

 

レイヴンちゃんが殿を務めてくれたおかげで、私たちは特に障害に遭うこともなく逃げることができた。

レイヴンちゃんに作戦成功のメールを送り、合流を促す。

どうやら既に撤退していたのか、すぐに既読がつき、返信も届いた。

迷わないように現在地までのナビのデータを送り、レイヴンちゃんを待つ。

その間に、出来ることがある。

 

「シロコちゃん、集金記録の書類はちゃんと持ってるよね?」

「う、うん…バッグの中に。」

 

カチャッとバッグを開けると、書類よりも先に札束がドサッと落ちてきた。

 

「…へ?なんじゃこりゃ!?カバンの中に、札束が…!?

「うええっ!? シロコ先輩、現金を盗んじゃったの!?」

「ち、ちがう…銀行の人が勘違いして入れただけで…。」

 

確かに、銀行強盗に脅されては、まともな判断はできないだろう。

要求していた書類はしっかり入っていたので安心する。

 

「どれどれ…2千万、4千万、6千万…うへ、1億。 本当に5分で1億稼いじゃったよー。」

 

突然現れた現金の山に、セリカちゃんは声を上げて喜ぶ。

借金の返済にこの金を当てるつもりらしい。

だが、そんなことをしたらいよいよ犯罪だ。

カワイイ後輩に、犯罪者にはなってもらいたくない。

セリカちゃんは納得はしてくれなかったが、説得には応じてくれた。

 

「だから、このバッグは置いてくよ。 頂くのは必要な書類だけね。」

「これは委員長としての命令…」

「それは、こまります。」

 

突然、聞き慣れた声が上から聞こえた。

皆がびっくりして上を見上げると、鳥のように電柱の上に立っているレイヴンちゃんがいた。

 

「び、び、びっくりした!!」

「うへ、到着したなら先に言ってよー。 というか、どうやって登ったの?」

「ふつうに、じゃんぷでのりました。」

「ん…レイヴンは高いところが好きなんだね。」

「その、言いづらいのですが…スカートで高いところに登るのは、やめた方がいいと思います。」

「そうですか? いいながめですよ。」

 

レイヴンちゃんは、ノノミちゃんの忠告の意味を特に理解していない様子で、電柱から飛び降りて着地する。

しかし、先の発言の意味が気になる。

 

「レイヴンちゃん? 現金の入ったバッグを置いてくことに関して反対してたけど、なんで。」

「かんたんです。 あなたたちはわたしをやといました。」

 

今は、アビドス高校生ではなく、独立傭兵であることを示すようにレイヴンちゃんは改めてフードを深く被る。

 

「わたしはようへいです。 ただばたらきはしません。ほうしゅうをようきゅうします。」

「なるほどー、そうきたかー。」

 

確かに、最初にレイヴンちゃんは強盗団に雇われた傭兵として行動すると言っていた。

つまりレイヴンちゃんにとって今回の銀行襲撃作戦は立派なビジネスだったわけだ。

大変に、迷う。

犯罪行為で得たお金を借金返済に使おうとするセリカちゃんに

 

「そうやって学校を守ったって、何の意味があるのさ。」

 

なんて柄にもなくカッコつけて啖呵を切ってしまった上で、それはそれとしてレイヴンちゃんの報酬に払うのに使うのでは、説得に成功したセリカちゃんもまた借金返済に使わないことに反対しだすに違いない。

なにせレイヴンちゃんは得た報酬を借金返済に充てる為に傭兵をやってくれている。

あまり詳しくないが、多分マネーロンダリングとかいう悪いことに近しいことが起きてしまう。

 

「うーん…ところで、いくら欲しいの?」

「そうですね…ちょうどよく、はっぴゃくまんでどうですか。」

「800万円か…。」

 

ちょうど、来月の利息に困らなくなりそうな金額だ。

だが、金額の問題ではない。

来月の利息分が許されるなら、なぜ1億丸々返済することはできないのかと言われてしまえば、言い返せない。

筋を通すには、こうするしかない。

 

「わかった…支払いは任せるよ。先生。」

"えっ!?私!?"

「えっ!?そっち!?」

「だってこのお金を使うわけにはいかないし…まさか、先生は私たちを犯罪者にしたりなんかしないよね…?」

「なるほど、たしかに。あんしんしてくださいしゃーれのせんせい。 りょうしゅうしょ?というのをきってあげましょう。」

『シャーレの先生、もう書類は出来上がっている。 あとはサインだけだ。』

"いや、まぁ、シャーレの予算ならそれくらい払えるけど…うーん…ユウカにおこられちゃうなぁ…"

 

先生とシャーレには悪いが、これならまだ筋を通せている。

シャーレは借金を肩代わりしたのではなく、外部から雇った傭兵に報酬を払っただけだ。

かなーりグレーのラインだが、このバッグの中の1億円に手を出さない為に、頼らせてもらうことにしよう。

先生は大人のカードを取り出し、あっさりと一括払いしてくれた。

 

「…たしかに。それでは、またのごりようをおまちしています。」

「うへぇ、ごめんね先生。 今度ラーメン奢るからさ。」

"うぅ…5万円のロボットのフィギュアで怒られちゃったから、突然の800万円の出費はどうなっちゃうのかな…"

「せんせい、ちゃてぃがおしえてくれました。 こういうときこそ、それでもわらうんです。」

"君に払った金額なんだけどね!?"

「なんのことですか? ここにいるのはあびどすこうこういちねんせい、くろはねれいゔんですよ。」

 

レイヴンちゃんは被っていたフードをようやく取る。

都合よく立場を入れ替えて使うとは、なかなかいい性格になってきた。

しかしここで気になることができた。

 

「ねぇ、レイヴンちゃん。 独立傭兵の時のあなたは、なんて名前で活動しているの?」

「…それは、いえません。なにかもんだいがおきたときに、むかんけいをつらぬくためにも、おしえられません。」

 

なるほど、確かにたくさんの恨みを買うであろう独立傭兵に、身内がいると知れれば、報復としてこちらが狙われる可能性を危惧してくれているらしい。

だが、私はこのアビドス高校の委員長として、後輩のことはよく知っておく義務がある。

どうやって聞き出そうか考えているときに、アヤネちゃんから通信が入る。

 

『待ってください! 何者かがそちらに接近しています!』

「ん…追手のマーケットガード?」

 

皆、即座に覆面を被り、素顔を見られないようにする。

レイヴンちゃんもすぐにフードを深く被り、先生は近くの茂みに駆け込んだ。

 

『い、いえ。敵意はない様子です…あれは…!?』

「はぁ、ふう…ま、まって!!」

『べ、便利屋のアルさん!?』

 

便利屋68の社長、陸八魔アルだ。

シロコちゃんは即座に銃のセーフティを外し、私もショットガンを握り込む。

だが、次の言葉で何もかも吹き飛んでしまった。

 

「やっと追いついたわ!! 素敵なアウトロー達に…」

「独立傭兵、ナイトフォール!!」

 

思いっきり、独立傭兵の名前を呼んだ。

レイヴンちゃんは隠していた仕事上の名前をあっさりと暴露されたショックで、膝から崩れ落ちる。

 

「うへぇ、そういう名前なんだ。ナイトフォール? すごいおしゃれな名前だねぇ。」

「そうよね!! 夕暮れ時や夜の訪れを意味する言葉で、敵対するものに暗い夜をもたらす、つまり終わらせてやるという意味が込められている、とてもイカす名前よね!!」

「ん…かっこいい名前。」

『ナイトフォールさんって、結構思い切った名前を考えるんですね。』

「そのセンス、私達にも分けて欲しいわ。何よ覆面水着団って…。」

「なるほど…グループ名、カタカナで考えるのもありかもしれませんね☆」

 

皆が感想を言うたびに、膝から崩れ落ちているレイヴンちゃんはビクンビクンと痙攣を起こす。

見ていてとても面白いが、そろそろやめてあげよう。

 

「うへ、ところで、何の用? 場合によってはここで始末させてもらうけど…」

「あ、いえ!落ち着いて!敵じゃないから…。」

「ん…それなら、早く用件を言って。」

「あ、あの…大した事じゃないんだけど…」

 

そう言うと、便利屋の社長は物騒な仕事を生業としている人間の目とは思えないほどキラキラした目で語りかけてきた。

 

「銀行の襲撃、見せてもらったわ…。ブラックマーケットの銀行を5分で攻略して見事に撤収…あなたたち、稀に見るアウトローっぷりだったわ。」

「すごく、衝撃的だったというか、このご時世にあんな大胆なことができるなんて…感動的というか。」

「わ、私も頑張るわ! 法律や規律に縛られない、本当の意味での自由な魂! そんなアウトローになりたいから!」

 

少し、頭が混乱する。

全く予想していなかった方面の発言だ。

つまり、要約すると私たちの行動が彼女の感性に大きく響き、交流をする為にここまで徒歩で追ってきたらしい。

なるほど、レイヴンちゃんの言うとおり、悪い子ではないらしい。

悪いことに憧れてはいるようだが。

 

「そ、そういうことだから…な、名前を教えて!!」

「ん…。名前…!?」

「その、組織っていうか、チーム名とかあるでしょ? 正式な名称じゃなくてもいいから…私が今日の勇姿を心に深く刻んでおけるように!!」

 

どうやら、私達は常にこのような事をしていると勘違いされているようだ。

だがまぁ、確かに初めてにしては手際が良すぎたし、喧嘩を売った相手も相手だった。

どう返答しようか迷っているところで、ノノミちゃんが動いた。

 

「…はいっ!おっしゃることは、よーくわかりましたっ! 私たちは、人呼んで…覆面水着団!」

「…覆面水着団!? や、やばい…!!超クール!!カッコ良すぎるわ!!名前だけで、どのような集団か丸わかりね!!」

 

この子、純粋が過ぎないか?

だがこれは好機だ。

このまま、私たちがアビドス高校生だということが勘づかれないように、もっと盛ってしまおう。

 

「うへぇ、本来スクール水着に覆面が正装なんだけどね、ちょっと緊急だったもんで、今日は覆面だけなんだー。」

「そうなんです! 普段はアイドルとして活動してて、夜になると悪人を倒す正義の怪盗に変身するんです!そして私はクリスティーナだお♧」

「だ、『だお♧』…!?きゃ、キャラも立ってる…!? ところで、ナイトフォールとの関係は!?」

「とくになにもありませんよ…。わたしはふくめんみずぎだんにつけられた、やすいおまけです…。」

「お、オマケ!? 相当腕の立つ独立傭兵ナイトフォールを安いオマケ扱いだなんて…ますます底が知れないわね!!」

 

レイヴンちゃんが地面に突っ伏したまま、やや投げやり気味に答える。

そろそろ、トドメと行こう。

 

「うへ、目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く。 これが私らのモットーだよ!!」

「な、なんですってー!!」

 

本当に、この子面白いな。

便利屋で、私達を排除する依頼を受けている間柄でなければ、友達になれていたかもしれない。

少し名残惜しいが、そろそろ帰らせてもらおう。

 

「それじゃあこの辺で。 アディオス〜☆」

「行こう!夕日に向かって!」

「夕日、まだですけど…。」

「いま、わたしのなまえいじりました?」

「ひぇえっ!?そ、そんなことないです!」

 

かなりやさぐれているレイヴンちゃんを引き摺りながらそそくさと退散し、校舎へ帰還する。

色々あったが、中々楽しい一日だった。

何より、最初は無感情だったレイヴンちゃんが、すっかり普通の女の子のように、感性が豊かになってきている。

彼女の飼い主のことはよく分からないが、レイヴンちゃんの幸せを願っていたことは、あのメッセージから感じ取れた。

それだけで、悪い大人ではないと断じることはできないが、化けて出てこないように頑張らせてもらおう。

途中でノノミちゃんが現金の詰まったバッグを置き去りにしてしまったことを思い出すが、もう些細なことだ。

 

 

 

 

 

アビドス高校 対策委員会教室

 

「なっ、なにこれ!?一体どういうことなのっ!?」

 

ヒフミさんも合わせた全員で、書類の確認を行なっている時に、セリカ先輩が机を強く叩き、声を荒げながら立ち上がる。

当然だ。

先輩達が稼いだ金が、犯罪資金として使われていることまでは察しがついていたが、流れていった先が問題だ。

 

「現金輸送車の集金記録にはアビドスで788万円集金したと記されてる。…その後、すぐにカタカタヘルメット団に対して『任務補助金500万円提供』って記録がある…。」

「ということは、それって…。」

「私たちのお金を、ヘルメット団のアジトに任務補助金として渡したってことだよね!?」

「ヘルメット団の背後にいたのは、まさか…カイザーローン?」

 

皆、表情が固まる。

当然だ。

必死に稼いだお金が、私達を追い詰めるために使われていたのだ。

ルビコン3の星内企業であるBAWS社でも、ルビコンに進駐してきた星外企業に戦力を提供し、得た資金を星外企業に対抗しているルビコン解放戦線や同じ星内企業であり、より技術が進んでいるエルカノに提供し反抗作戦を支えるという似たようなことはしていたが、それはルビコンが襲撃される側であり、弱者が取れる戦術の一つだった。

この場合は違う。

 

「ど、どういうことでしょう!?理解できません! 学校が破産したら、貸し付けたお金も回収できないでしょうに…どうしてその様なことを…?」

「ふーむ…」

「この件、銀行単独の仕業じゃなさそうだね。 カイザーコーポレーション本社の息がかかってるとしか思えない…。」

「…はい。そう見るのが妥当ですね。」

 

釈然としない結果だが、とにかくカタカタヘルメット団と便利屋68の裏にいた組織についてははっきりさせることができた。

カイザーコーポレーション。

小賢しいやり方ばかりの弱小企業。

いずれ、決着をつける必要が出てくるだろうが、それは今ではない。

とにかく当初の目標を達成した私たちは、最後まで付き合ってくれたヒフミさんと別れを告げる。

 

「本当に…1日でいろんな出来事がありましたね。」

「そうだね、すごく楽しかった。」

「…楽しかったのはシロコ先輩とレイヴンちゃんだけじゃないの?」

「たのしいえんそくでしたね。 まんぞくです。」

「あ、あははは…私も、楽しかったです。」

「いやぁー、ファウストちゃん、お世話になったね。」

「そ、その呼び方はやめてください!」

 

その後も少し雑談を続けるが、この片田舎のアビドスでは、電車一本、バス一台逃すともう今日中に帰ることはできない。

名残惜しいが、別れの時間だ。

 

「それでは…みなさん、またお会いしましょう。」

「またね〜。」

「さようなら。またどこかで。」

"気をつけてね。"

 

ヒフミさんがバスに乗り、その姿が見えなくなるまで、皆で手を振り続けた。

 

「みなさんお疲れ様でした。 しばらく、ゆっくり休みましょう。」

「ふぁあー、それじゃ、解散〜。」

「…そういえば、きょうはいつもよりはやくおこされたんでした。」

「そりゃたいへんだ、今すぐおじさんとお昼寝しようねぇ。」

「…そうですね。 きょうはつかれたので、おねがいします。」

「うぇっ!?良いの?…うへへ、久々のレイヴンちゃんだぁ。」

 

今日は、楽しかったけれど、頭が爆発しそうなほど恥ずかしくなることが沢山あって、とても疲れた。

もう、今日はなにも考えたくない。

 

Ab06、生徒名レイヴン。普通に先輩に甘える。

 

 

 

 

 

 

アビドス高校 2F レイヴンの寝室。

 

『…君が、独立傭兵ナイトフォールの代理人か? 噂は聞いている。ブラックマーケットで一騒動起こした上で、見事マーケットガードを打ち倒したらしいな。』

『ようやく名が売れたようで何よりだ。』

『その実力を見込んで、一つ仕事を頼みたい。何、特別なことじゃない。』

『最近アビドスでカイザーPMCが謎の行動を起こしているらしくてな。それの調査を頼みたい。それだけだ。』

『なるほどな。ところで、あんた達は何者だ?』

『それは、まだ教えられないが…まぁ、カイザーに「不幸な事故」でアビドスから消えて欲しいと思っている集団と思ってくれ。』

『ああ、それと特に期限とかもない。頭の悪いカイザー共のことだ。そのうち勝手に自分から尻尾を出すだろう。…こんなところか。』

『悪い話ではないと思うぜ。 連絡を待ってる。』

 




C4-621は、空っぽでした。
だから、今まで出会った人たち全てが、何かしらの形で移ってしまうんですね。
それがたとえチャティの仇だったり、虚言癖で収まるような物じゃない狂人であったり、嫌味たらしい企業の役員だったとしても、彼女はスポンジのように取り込んでしまうのです。
つまり何が言いたいかというと、これからもAC6語録を喋らせます!
また妄想が頭から溢れたら記録しますのでその時は、またお願いします。
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