Ab06(アビドスぜろろく) 生徒名 レイヴン   作:sepa0

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コーラル、神秘、素敵なものをいーっぱい!
詰め合わせた脳から出力されたものを書き留めてきました。
最初の構想の通り書き始めて、書いてるうちにもっといいアイデアが湧いた時って、気持ちがいいですよね。
今回も楽しんでいただけたら嬉しいです。


第14話 「ともだちだとおもってました。」

アビドス自治区

柴関ラーメン店内

 

「来たあ!!いただきまーす!」

「ひとりにつき1杯…‥幸せです!!」

「いただきます。」

「うう……。」

 

私はハードボイルドでアウトローな便利屋68の社長、陸八魔アル。

超大物の謎の人物から受けたアビドス高校生排除の依頼に気乗りせずウジウジしていたところをムツキに連れ出されて柴関ラーメンに来ている。

 

「アビドスさんとこのお友達だろう。 替え玉が欲しけりゃ言いな。」

「あ、あ、ありがとうございます…‥。」

「こんなに美味しいのにお客さんがいないなんて、変だね。」

「場所が悪いんじゃない?廃校寸前の学校の近くだし。」

「お、お友達……。」

 

優しい店長の『お友達』という言葉が引っかかる。

第3者である店長から見ても、レイヴンはともかく他のアビドスの子達ともそのような関係であると見られている。

何故だ?何故ここまで相手のことが気になってしまうのか……?

いえ待って、そもそも

 

「……じゃない。」

「ん? どうしたの、社長。」

「友達なんかじゃないわよぉーー!!」

 

テーブルをダンッ!と叩きその勢いのまま立ち上がる。

 

「私たちは仕事しにここへ来てるの!ハードボイルドに!!アウトローっぽく!!」

 

そうだ、問題はこの店だ!

お腹いっぱい食べれて!あったかくて親切で!よそ者の私たちに話しかけてくれて、和気あいあいで、ほんわかしたこの雰囲気!

 

「この店にいると、みんな仲良しになっちゃう気がするのよ!!私に必要なのは冷酷さと無慈悲さと非情さなの!こんなほっこり感じゃない!」

「いや、それは考えすぎなんじゃ……。」

「いえ、間違いないわ!私が1人前の悪党になるには、こんな店は要らないのよっ!!」

「アル様、それって……。」

 

このお店があったから、私は彼女達のことを考えてしまうようになったのだ。

一緒の空間で、楽しい食事をしてしまったからだ。

いっそのこと、こんなお店……。

 

「それは、ざんねんですね。」

 

店の入り口から聞き慣れた声が聞こえた。

 

「えっ。」

「わたしはあなたたちのこと、きにいってるんですよ?」

 

店の入り口には、アビドスの制服を着たレイヴンが立っていた。

ナイトフォールではない姿を見るのは、本当に最初に出会った時以来だ。

一体いつからそこにいたのだろうか?

彼女はいつも唐突に現れる。

 

「おはよー、ナイト……じゃなくて、レイヴンちゃん。」

「おはようございます、むつきさん。 となりすわってもいいですか?はるかさん。」

「え、あ、えっと、私なんかの隣でよければ、どうぞ……。」

「れ、れ、レイヴン!!なぜここに!?」

 

相変わらず、堂々としている。

レイヴンは席を引いてくれたハルカに一礼すると席に座り、メニュー表を取り醤油ラーメンを注文する。

 

「べつに、すこしおそめのちょうしょくというだけです。 きのうすこしよふかしをしてしまいましてね……。」

「へぇ、いがーい。」

「レイヴンは醤油が好きなの?」

「いえ、まだたべたことがないのでわかりません。」

「あら、そうなの?……じゃなくてぇ!!」

 

これだ!この感じだ!

なんかほんわかして仲良しな空気になってしまう!というか社員達もフレンドリー過ぎ!

 

「だからこの雰囲気よ! これじゃもっと仲良くなっちゃうじゃない!」

「いいじゃないですか。 わたしたち、まだともだちではないのでしょう?」

 

そう言うと、レイヴンは隣に座っているハルカの手を取る。

 

「とくに、はるかさん。 あなたとはなかよくなれそうです。」

「え、え、えっ。」

「おー、情熱的だねぇ。」

「ちょ、ちょっと!!」

 

ハルカは自分の手をがっしりと掴み、真っ直ぐ目を見てくるレイヴンに困惑している。

……まさか、便利屋68からハルカを引き抜くつもり?

そうはいかないわ!私達の大切な仲間だもの。

どうスカウトを断らせてやろうかと考えていると、レイヴンは何か懐かしむように語り出した。

 

「あなたは、わたしににています。 においでわかります。」

「に、匂いでですか……?」

「そう、かいぬしのためなら、なんだってできる。 すぐれたりょうけんのにおいです。」

 

猟犬……犬!?

 

「……ちょっと!!私の社員を犬呼ばわりはやめてちょうだい!!」

「あ、アル様……私、アル様の犬になら、喜んでなりますよ…‥?」

「ハルカ!!貴方は便利屋68の社員よ!!犬なんかじゃないわ!!」

「はぁ……確かに可愛いけど、ペット扱いなんてしないよ。」

 

ハルカの事を犬呼ばわりしたことを怒っている私にレイヴンはキョトンとした表情でこちらを見てくる。

悪びれないその姿勢に流石に我慢の限界を感じたが……レイヴンが

 

「わたしににています」

 

と発言していたことが気になった。

 

「ちょっと待って。 私に似ているって、どういうこと?」

「……ことばどおりのいみです。 かいぬしのためなら、なんだってできてしまう。」

「しゅじんのためならどんなあいてにもかみついて、よろこんでいのちをすててしまえるような。」

 

同意を求めるような声色でレイヴンはハルカの方を向き言う。

 

「はるかさんも、そうでしょう?」

 

レイヴンの質問にハルカは、少し考え込んだ後、力強く頷いた。

 

「……はい。」

 

レイヴンの口角が、少し上がる。

不気味さと、危険さを感じさせる笑顔だ。

 

「いきるいみをくれたあるしゃちょうが、だいすきでしょう?」

「……はい!!」

「やっぱりわたしたち、とってもにてますね!」

 

二人はお互いに肩を寄せ合い、にこやかな顔をする。

会話の内容にさえ目を瞑れば、微笑ましい光景だ。

ハルカがこんなに明るい表情をしたのは、いつ以来だろうか?

ただ……

 

(ねぇねぇ、レイヴンちゃんってどんな人生送ってきたの?)

(知らないわよ!……でも、とってもアウトローでハードボイルドな生活だったのかも……だとすればあのかっこよさも説明がつくわ!)

(……そういうレベルの話じゃないと思うけど……。)

 

 

 

 

 

柴関ラーメン

店先

 

朝……というには、少し遅い時間帯。

夜通し行っていたローダー4へのアビドス高校のエンブレム貼りで力尽きた私は、活力を得るため1人で柴関ラーメンに来ていた。

アビドスの皆や先生も誘ってみたが既に朝食を済ませていたり、朝からラーメンは重いという理由で断られてしまった。

1人で飲食店を利用するのは、初めてだ。

ちゃんと支払いが出来るか少し緊張しながら店の扉に手をかけると、中から少し懐かしい声が聞こえてきた。

 

「アビドスさんとこのお友達だろう。 替え玉が欲しけりゃ言いな。」

「あ、あ、ありがとうございます…‥。」

「こんなに美味しいのにお客さんがいないなんて、変だね。」

「場所が悪いんじゃない?廃校寸前の学校の近くだし。」

「お、お友達……。」

 

便利屋68の皆さんだ。

アビドス高校とは敵対していた関係ではあるが、私個人としては彼女達の事を友達と思っている。

そんな友達が、私の好きなお店のことを好きになってくれている。

その事になんだか嬉しく思っていると、アル社長の良く通る大きな声が聞こえた。

 

「友達なんかじゃないわよぉーー!!」

 

どうやら、まだ友達ではなかったらしい。

おかしいな。

ラスティは一度一緒に戦っただけの私を戦友と呼んで慕ってくれたから、一緒に戦えば友達になっているものだと思っていたが。

……ああ、そうか。一緒に戦ったのは私ではなく、ナイトフォールだった。

ならばアビドス高校1年生、黒羽レイヴンとして改めて仲良くなろう。

 

「それはざんねんですね。」

「えっ。」

「わたしはあなたたちのこと、けっこうきにいってるんですよ?」

 

私は店内に入り声をかけた後ハルカさんの隣に座り、ラーメンを注文しながら軽く談笑する。

涙が出てきてしまいそうなほど、すごく普通な会話だ。

だがアル社長は頑なに

 

「だからこの雰囲気よ!これじゃもっと仲良くなっちゃうじゃない!」

 

と、この雰囲気を否定し続けている。

なぜこのような態度を続けるのか考えてみて、思いつく。

闇銀行からの融資を受けれたとは思えないが、何かしらの方法でアビドスに再襲撃をかけられる資金を得られたのだろう。

依頼主から援助金でも出してもらったのだろうか?

しかし、アル社長は憧れているアウトローの一例である覆面水着団がアビドス高校の生徒である事に気づき仕事を果たすことに迷っているのだ。

 

……使命か、友人か。

なんとも皮肉なことに、今度は私が故郷を守る側だ。

エア、ラスティ。今になって、貴方達の気持ちが、ようやく分かった気がする。

この予測が当たっているのならば、私は彼女達に『友人』を選んでもらいたい。

アル社長は良い人だ。もっと仲良くなれば、私と違って絆されてくれるに違いない。

だからまずは外堀からだ。ご友人のご友人は、ご友人同然。アル社長だけでなく、便利屋68と仲良くならなくては。

 

「いいじゃないですか。 わたしたち、まだともだちではないのでしょう?」

 

私は慣れない事に内心ドキドキしながら一度肩を並べて戦ったことがあり、そして密かに自分と同類であると感じていたハルカさんの手を取る。

 

「とくに、はるかさん。 あなたとはなかよくなれそうです。」

 

アビドスの図書館にあった本によると、仲良くなるには共通の話題で盛り上がるといいらしい。

それから相手の目を見て、自分の気持ちを正直に話すことも重要とのことだった。

上手くできているかは分からないが、私はハルカさんに思っている事を打ち明ける。

私は称賛のつもりだったのだが、猟犬という表現が悪かったようでアル社長に怒られてしまうが、ハルカさんは満更でもなさそうだ。

怒ったアル社長が私とハルカさんが似ているとはどういうことかと聞いてきたので

 

「……ことばどおりのいみです。 かいぬしのためなら、なんだってできてしまう。」

「しゅじんのためならどんなあいてにもかみついて、よろこんでいのちをすててしまえるような。」

「はるかさんも、そうでしょう?」

 

そう答えてしまった後、攻めた発言をしすぎたと思ったがハルカさんは少し考え込んだ後、

 

「……はい。」

 

と、頷いてくれた。

自然と口元が緩んでしまう。やはり彼女は、私と同じだ。

生きる意味を与えてくれた主人の為ならなんでもできてしまう。

ハルカさんも私の事を分かってくれたのか、にっこりと笑ってくれた。

嬉しくなって思わず肩を寄せてしまうが、ハルカさんはそれを受け入れてくれた。

仲良くなった私達を見て他の便利屋の皆さんは安心したような顔をするが、しばらくするとまたアル社長が頭を抱えて唸り始める。

 

「うぅ……やっぱりこのお店のせいよ…‥。こんなお店いっそなければ、こんなに悩まずに済んだのに……。」

「!!……あ、あ、アル様!! 私に任せてください!!」

 

社長が机に突っ伏すと自分の仕事が来た!!と叫ばんばかりにハルカさんは目を輝かせながら鞄を机の上に置く。

 

「私!! アル様の為ならなんだって出来ますから!!」

 

そう叫ぶと、ハルカさんはどこからともなくスイッチを取り出した。

一体なんのスイッチだろう?アル社長を元気付ける何かだろうか?

 

「起爆装置?なんで?」

「ハルカ、ちょ、ちょっと待っ……」

「アル様が消して欲しいと言ったものは、全て消します!! 例え、思い出が詰まったこの店であっても!!」

「……へ!?」

「えっ?」

 

思い切りが良すぎる。だがルビコンでの私も、きっとこのような感じだったのだろう。

 

カチッ

 

止める間も無くスイッチを押された。

私は厨房に飛び込み大将を伏せさせる。

大将は驚き声をあげるが、その声をかき消すようにあの鞄の大きさに見合わない爆発が起き辺り全てが、私の大切な思い出が詰まった柴関ラーメンが、吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

「ゴホッゴホッ……うわぁ、建物が無くなっちゃったよ?」

「ケホッ……これは一体……。」

「う、うああ……。」

 

突然起きた爆発と、それに伴い降ってきた建物の残骸から這い出して周りを確認する。

先ほどまで和気あいあいとしていた店舗の面影は一切なく、ただの瓦礫の山が広がっていた。

幸い皆怪我はなさそうだ。

カヨコとムツキは埃を払いながら立ち上がり、ハルカは目をぐるぐるとさせながら呆然としていて、店長とレイヴンも瓦礫の中から這い出てきた。

何が起きたの?最後の記憶は私が

 

「こんなお店いっそのことなければ悩まずに済んだのに……。」

 

と発言して、それからハルカが爆弾を……

 

「……アルちゃん……マジで?マジでぶっ潰しちゃったの?」

「え……え?」

 

状況の整理にいっぱいになって立ち尽くしていた私にムツキが驚いた表情をしながら近づいてくる。

 

「情に絆されるからってあんなに優しくしてくれたラーメン屋さんと、ハルカちゃんの新しいお友達を吹っ飛ばしたの?やるじゃーん!?」

「これぞまさに、血も涙もない大悪党! そんじょそこらのザコには到底できない鬼畜の所業!悪人中の悪人じゃん!」

「……。」

 

ムツキは滅多に見せない凶悪な笑顔をして、揶揄うつもりのない心からの賞賛を感じられる拍手をしながら続ける。

 

「これがハードボイルドなアウトローって奴だね!!すごいよアルちゃん!見直したよ!」

「……そう、そうね。」

 

これで良いのよ。恩人も、友人も、思い出も、目的の為なら切り捨てる。

冷酷無比で、情け無用。金さえもらえればなんでもやる。それが便利屋68のモットーだ。

何を悩んでいたのだろう。

思ったような反応が返ってこなかったのかムツキがキョトンとした表情をして、拍手を止める。

ハルカは静かな私を見て、ミスをしてしまったのかと不安そうな表情だ。

 

「あ、あ、アル様、私、また間違ってしまいましたか……?」

「……いいえ、良くやったわハルカ。 おかげで目が覚めたわ。」

 

今にもショットガンを自分の頭に撃ち込んでしまいそうなハルカの肩を叩いて落ち着かせる。

さて、始めてしまったからには最後までやり通さなければならない。

それがどんなに後味の悪いものだったとしてもだ。

 

「今の爆発で間違いなく、アビドスの子達が駆けつけてくるわ。その前に……。」

 

私は大将を介抱しているレイヴンに銃口を向ける。

私の殺気を感じ取ったのかレイヴンはゆっくりとこちらを振り向き銃口を向けられているのを確認すると、残念そうな顔をして大将の盾になるようにゆっくりと立ち上がった。

 

「黒羽レイヴン。貴方を……始末するわ。」

「しまつ、ですか。」

 

元のプランでは、レイヴンを偽の依頼によって辺境に追いやり戦力を分散させるつもりだった。

しかし今はレイヴン1人。

ここで仕留めてしまえば偽の依頼を受けさせるための高額な前金を払わずに済み、アビドスの子達を爆弾が仕掛けてあるポイントまで誘い込むための人質も手に入る。

実際、アビドス高校の子達は誘拐された子を見捨てずに助けたそうだ。

たとえ罠だと分かっていても必ず来るでしょう。

レイヴンが一筋縄ではいかない手練れという事は理解している。

だが、アビドス高校の生徒の排除という仕事を受けている以上どこかで必ずぶつかる事になる。

ならば、彼女にとって不利な状況な今が最適だ。

 

「……わかりました。」

 

レイヴンは動揺している大将を宥めて避難を促すとライフルを持ち直し相対する。

レイヴンが戦闘体制に入った事で、社員達も私の側へ寄る。

4対1という人数差にも彼女は怖気付かず、猟犬のような耳がピンと立ち、赤い瞳がぎらりと輝く。

 

「恨み言1つ言わないのね。」

「わたしには、しゃちょうをわるくいうしかくがないですから。」

「悪いけど……手加減はしない。」

「ごめんねー。 ま、全力で行かないとやられるのはこっちだろうけど。」

「すみません、レイヴンさん。 でも、貴方を討てばアル様のお役に立てるんです。……本当に、すみません……。」

 

レイヴンはまた懐かしむような表情をする。

彼女も友達に、恩人に銃を向けたことがあるのだろうか?

いや、あるのだろう。資格がないというのはきっとそういうことだ。

そのまま彼女は言葉を続ける。

 

「ちゃてぃからのうけうりですが……『えらぶことはよいことだ。 えらばないやつとは、てきにもみかたにもなれない。』」

 

彼女の中にいくつかあるモットーの一つなのだろう。

 

「あるしゃちょう。 わたしはあなたのせんたくをそんちょうします。」

「わたしも……それに、こたえます。あなたたちをはいじょします。」

 

迷いを断ち切るように、レイヴンの目つきが鋭くなる。

 

「……あびどすのために。」

 

レイヴンが大きく踏み込み、こちらへ跳ねる。

いよいよ始まった。

 

「行くわよ!皆!」

「了解!」

「りょーかい!」

「了解しました!」

 

まずはハルカには何がなんでもレイヴンを抑えてもらう。

彼女の戦闘スタイルは熟知している。

相手の発砲のタイミングに合わせて回避して近づき、自分の間合いへ持ち込み仕留める。

彼女の間合いに持ち込まれれば、こちらの負け。

傭兵部隊は残りのアビドスの子達まで温存する。

数を揃えたところで私達の連携の邪魔になるだけだ。

 

つまり私達4人でこの生徒を、マーケットガードの落日の犯人を仕留めなければならない。

今までで1番か2番を争う危険な相手だが、勝算はある。

彼女は恐らく感覚で戦っている。

発射された弾丸を目視で認識できるほどの動体視力と、それを躱すことのできる身体。これが彼女の強みだ。

ならば、それを使わせないようにすれば良い。

 

「死んでください!死んでください!!死んでください!!!」

「……ははっ!いいですよ!あなたのたたかいかた!……まさに、りょうけんといったかんじです!!」

 

ハルカはおおよそ銃での戦闘距離とは思えないほどの近距離戦を挑み、尋常ではない威力のレイヴンのライフルを受けきって抑えてくれている。

だがそう長く続けられるわけじゃない、この戦いはハルカが倒れたらお終いだ。

その前に仕留める必要がある。

 

「ハルカちゃんだけ見てるなんて、ちょっと甘いんじゃな〜い!?」

 

ハルカがレイヴンを押し止めているところにムツキがマシンガンを叩き込む。

側面から狙われている事に気づいたレイヴンはハルカを蹴りつけその反動で後ろに跳ね弾丸をかわし、ムツキへ標的を変更する。

 

「じゃまをするなら、あなたから……っ!?」

「くふふっ!残念でしたっ!!」

 

ムツキへ駆け出したレイヴンが突然爆発する。ムツキが事前に仕掛けていた地雷にかかったのだ。

吹き飛ばされたレイヴンは体勢を立て直さずそのままムツキを狙うが発砲する直前、カヨコのサプレッサーにより発射音を消された弾丸がレイヴンのライフルを叩き弾道を反らせる。

おまけにレイヴンは何をされたのか理解していないようで周囲を確認したがすぐに遮蔽物は身を隠したカヨコを発見することができず、不調を疑ったのか自分の愛銃を見つめる。

予想は当たった!

レイヴンは発射された弾丸には反応できるが、トラップに引っかかり、銃声のしない攻撃に反応できていなかった……つまり意識外からの攻撃は躱せない!!

更に動きもあからさまに鈍っている。

当然だ。どこに爆弾が仕掛けられているか分からないところでは不用意に移動ができないだろう。

 

彼女がどうしようもない化け物ではない事を確信できた私たちはさらに攻勢を強める。

もちろん、一瞬の油断であっさり逆転される可能性もある……いや、むしろ高い。

このまま一気に終わらせる!!

 

「ハルカ!!」

「はい!!」

 

ハルカとレイヴンが揉み合っているところに、ハルカを狙い発砲する。

ハルカは完全に私の狙いを把握し半身をそらす。

レイヴンはいきなり目の前に現れたスナイパーライフルの弾丸をかわすことは出来ず、胴体に被弾した。

 

「やったわ!!」

「アルちゃん!それフラグじゃない!?」

 

 

 

 

 

久々の、まともな被弾。

それも完全に虚をつかれたアル社長の攻撃は、本来よりも痛みを増して私に襲いかかる。

 

「ぐっ……あっ……!?」

 

結構タフな方だと思っていたが、たまらず当てられたところを抑える。

ヒビキさんが作ってくれたパーカーを着込んでいればまだマシだったろうが、生憎今は着ていない。

それにしても、あの攻撃は訳がわからない。

ハルカさんが急に仰け反ったかと思ったら、目の前に弾丸が飛んで来ていたのだ。

どう考えてもハルカさんが仰反る前に発射されていた。

尋常ではない信頼がなければ出来ない芸当だ。この4人組は決して侮れないと思っていたが、まだ甘かった。

2人くらい道連れに出来るかと思っていたが、このままでは1人も減らせず負ける。

ハルカさんがここまで頑丈とは思っていなかった。ほぼ1マガジン分を当てたはずなのにまだピンピンしているように見える。

思わず左手のパルスブレードを見つめてしまう。

いや、だめだ。戦車の装甲を、そしてそれよりも装甲の厚いパワーローダーすらも簡単に切断できるこの武器を生身の人間に、生徒に使うわけにはいかな……

 

バチュンッ!!

 

という嫌な音と共に左腕の感覚が無くなる。

馬鹿か私は!!戦場で足を止めるなんて!!

考え事をしてしまっていた私の左肩がハルカさんのショットガンで撃たれ動かなくなる。

これでパルスブレードを使うということがそもそも出来なくなった。

 

「すみません!すみません!すみません!」

 

ショットガンを撃ちながら近づいてくるハルカさんから牽制射撃をしながら距離をとるが、マガジンが空になる。

ライフルを脇に挟み、右手でどうにかマガジンを取り出して装填しようとするが突然マガジンが私の手から離れる。

私は即座にマガジンが飛ばされた方とは逆の方を見る。

そこにはハンドガンを構えたカヨコさんが誇らしげな顔で立っていた。

銃声は間違いなく聞こえなかった!

さっきムツキさんに撃った弾がずれたのもこれか!!

 

「うわぁあああああ!!」

 

叫び声に気付き、ハルカさんに向き直る。

ショットガンを逆手に持ち、銃床で殴りつける姿勢で走り込んできている。

私はもうただの長い棒になったライフルを投げ捨て素手でハルカさんに殴りかかる。

振り下ろされたショットガンを半身を逸らして避け渾身の一撃を顎に叩き込む……が、ハルカさんは痛そうな表情をしつつもそのまま私の腕を掴み押し倒してきた。

流石に、もう手詰まりか?

見苦しく手足をばたつかせるが抑え込まれ私の顔面にショットガンが突きつけられる。

 

「はぁ、はぁ……おわりです……!!」

「……すみません、ほしのせんぱい……。」

 

ヒュルルルル……

 

ハルカさんが引き金を引ききる直前、異音が聞こえる。

いや、聞き覚えのある独特の落下音……迫撃砲?

次の瞬間、あたりで再度爆発が起きる。

 

「うっわ!?何!?もうアビドスの奴らが来たの!?」

 

違う、アビドスにある装備に迫撃砲なんてものはなかったはずだ。

 

「50mm迫撃砲……これは!」

「社長!ムツキ!ハルカ!早く離れ……っ!?」

 

何かに気づいたカヨコさんに榴弾が直撃し爆発する。

そうとう当たりどころが悪かったのか吹き飛ばされた先の瓦礫に叩きつけられそのまま気を失ってしまった。

 

「課長!?」

(!……今なら!!)

 

カヨコさんが吹き飛ばされ動揺したハルカさんを強引に押し退け拘束から逃れる。

ハルカさんは逃げた私を追うかアル社長達と合流するかで迷ってしまったのかその場でキョロキョロし始めたが、合流する方を選んだようだ。

アル社長とムツキさんが気絶したカヨコさんを回収しようとするが激しい砲撃の嵐で身動きが取れない。

これほどの大規模な攻撃は、ヘルメット団のような小さな組織では無理だ。

マーケットガード?それともまた別の組織?

どちらにせよ、このアビドスで好き放題させるわけにはいかない。

まだ屋根が残っているところへなんとか移動し砲弾の雨を避ける。

しばらくすると砲撃が止み、見慣れない格好の生徒の集団達が近づいてくるのが見えた。

 

「いったいなにもの……?」

「……うちの風紀の連中だよ。」

「わぁっ!」

「くふふ!今のびっくりした表情、かなり笑えたよ!あは……いたたた……。」

 

全く気づかなかったが、すぐ隣に便利屋68の4人が座りこんでいた。

たまたま同じ場所へ逃げ込んでいたらしい。

……撃ってこなかったということは、もう戦う気はないということだろうか?

私も結果だけ見れば救われた形ではあるが、自分の自治区でよくわからない連中が暴れている状況は気に入らない。

標的は便利屋68から正体不明の団体へ変わっていた。

 

「まったく……!こんな所まで追いかけてくるなんて、本当にしつこいわね!」

「あ、あ、アル様、どうしましょう……?」

「かよこさん、ふうきって?」

「私たちのいたゲヘナ学園の治安維持部隊。

私たちを捕まえに来たんだよ。」

「なるほど。」

 

風紀委員会は隠れた私たちを探しているのか散開して探索を始める。

 

「どうする? このままだと見つかるのは時間の問題だよ。」

「あいてはひかくてきしょうすうです。 きしゅうをかければどうにかなるかもしれませんね。」

「でも、私たちだーいぶ傷を負っちゃったよ?」

「わ、わ、私はまだまだ行けますよ!! ちょっと右足の調子が悪いですけれど……。」

「このまま大人しく捕まるなんて、ありえないわ!……ちょっと待って!!なんでレイヴンがナチュラルに作戦会議に混ざってるのよ!?」

 

どうやらまだ声を張り上げる元気は残っているらしい。

 

「アルちゃ〜ん。せっかくレイヴンちゃんが手を貸してくれるって言ってるんだから、借りようよ〜。」

「だ、だってさっきまで本気でやりあってたのよ!?」

「ええ、あのほうげきがなければ、やられていたでしょうね。」

「惜しかったです……。」

「申し出は嬉しいけど、確かに信用はできないね。 いきなり後ろから撃って風紀委員に差し出すつもりなのかもしれない。」

 

てっきり共通の敵ができてすんなり共闘できるものかと思ったがそうはいかないらしい。

グリッド086でイグアスと戦った時の事が思い出される。

 

『壁越えの噂は聞いてるぜ? ますます調子に乗ってやがるってな。』

『てめぇはどうにも鼻に付く……くたばりな野良犬!!』

 

RaDの商売敵『ジャンカー・コヨーテス』に雇われたG5イグアスに一方的な逆恨みを受けながら戦闘をしていた時の事だ。

既にかなりの数のMTを相手にした後でやや弾薬が心もとない戦いの中、私たちの間に青いレーザーが飛んでくる。

 

『!?』

『新たな敵性反応!』

(なに?)

 

辺りをスキャンすると、耳障りなノイズと共に見覚えのある不気味なMTが姿を表す。

……ウォッチポイントデルタでスッラと戦った時に出てきたステルスMTだ。

放っておくと鬱陶しい狙撃タイプと、油断すると危険な近接タイプの混成部隊が突然襲いかかってきた。

 

『なんだこの、訳の分からねぇ機体は……!』

 

突然現れたステルスMTのプラズマウィップをまともに食らい、イグアスのACヘッドブリンガーはスタッガーを引き起こされる。

 

『チッ……背に腹か……! おい野良犬!てめぇも手を貸せ!』

 

私に助力を求めてきたので心底驚いてしまったが、確かにステルスMTは私たちに無差別に襲いかかってきていたので合理的な判断ではある。

識別タグを変えていないのが少し気になったが共闘し、その場を潜り抜けることができた。

まぁそのあとは

 

『邪魔者は消えた。 次はてめぇだ野良犬!』

 

と言って襲ってきたのでパルスブレードで斬ってやった。

脱出レバーを引くのが上手いやつで取り逃がしてしまった。……イグアスは結局、どうなったのだろうか。

負けがこんで逃げ出したとレッドガン隊員が言っていたが、やはりあの火で焼け死んでしまったのだろうか。

 

「……ヴン!レイヴン!!」

「……あっ、はい、なんでしょう?」

 

懐かしい気分になっていると揺らされる体と、私の名前を呼ぶ声で現実に引き戻された。

 

「なんでしょうじゃないわよ!急に目を瞑って黙るんだもの!」

「すみません、むかしをおもいだしてました。」

「このタイミングで昔を思い出すの?なんで?」

「……にたようなじょうきょうがあったんです。」

「ど、どんな状況だったんですか……?」

「たたかっていたところに、だいさんしゃにとつぜんらんにゅうされて、てきだったひとといちじきょうとうしました。」

 

ザッ、ザッ、と風紀委員会の生徒達が近づいてくる。

仕掛けるなら今だ。

 

「せにはら、というやつです。てをかしていただけませんか?」

「……社長、どのみちこの状況では私達だけじゃ逃げきれない。」

「でもでも〜、レイヴンちゃんの大切なお店、吹っ飛ばしちゃったの私達だもんね〜?」

「う、うぐぐ……レイヴンが私達を裏切ることは……でもアウトローだし……私達は実際アウトローに裏切ったし……。」

 

どうやら便利屋の皆さんは私のことをまだ信じきれないらしい。

仕方ない。後ろから撃たれるのが怖いなら、私が前に出るとしよう。

 

「しんじますよ、あるしゃちょう。」

「えっ!?」

 

私は廃屋から単身飛び出し手近な風紀委員へ発砲する。

 

「わぁっ!?」

「い、いたぞ!……あれ?便利屋68じゃない?」

「構うな!!応戦しろ!!」

 

同じ格好をした生徒達が一斉に私へ発砲する。

本調子であればなんでもないだろうが、便利屋68に負けかけた後だ。

いつもなら完璧に躱せる弾丸が頬や足の薄皮を剥がしていく。

 

「速っ!?」

「けど、捉えられない速度じゃない!」

「砲撃によって手負いのはずだ!さっさと仕留め……ぐわぁっ!」

 

ドォンッ!ドォンッ!

タタタタタタッ!

ズキューン!!

 

完全に私に気を取られた風紀委員達が、便利屋68の皆さんの射撃で一斉に倒れる。

 

「あっははは!! 釣られすぎでしょ!!」

「レイヴン! 私も貴方を信じることを選ぶわ!」

「……ヒナ以外の風紀委員は大したことない。 逃げ切るだけなら十分できるはず。」

「れ、れ、レイヴンさん! 一緒に、全部消してしまいましょう!!」

 

どうやら手を貸してくれるらしい。

……ラスティとも、こうなれたら良かったのにな。

 

「ひさびさのきょうとうです。 たすけあいのせいしんでいきましょう。」

「あら?貴方と組むのは初めてのはずだけど?『黒羽レイヴン』?」

「……そうでしたね。」

「くふふ、アルちゃんったら意地悪〜♪」

 

Ab06、生徒名レイヴン。

普通に共闘する。




最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
さて、ムツキさんの笑い方を「くふふ」から「くはは」にすると一気に海賊っぽくなるなぁと思う今日この頃。
この621が普通のレイヴンの火ルートでないことに勘づいてくださった方がいて大変ニンマリしております。
感想、ここ好き、誤字報告、いつも楽しみにしております。
それでは、また。
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