Ab06(アビドスぜろろく) 生徒名 レイヴン   作:sepa0

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また私の頭の中に存在しない記憶が溢れだしたので、書き留めました。
お楽しみいただければ幸いです。
小鳥遊ホシノさんの二面性がとても好きです。


第2話 強化人間の過去

「は〜い、わらってくださ〜い!」

 

私は、C4-621…改め、アビドス高校1年生、黒羽レイヴン。

今は、私の学生証の為の写真を撮り終えたあと、新入生の歓迎として、記念写真を撮っている最中である。強化手術によって感情の起伏に乏しくなっていた私は、いつもの表情で済んだ証明写真と違ってどうしても笑顔を上手く作ることが出来ない。

申し訳ないと思いながら、いつもの表情で写ろうとすると、ホシノさんが私の顔に手を当て、口角を指で押し上げる。

 

「相変わらず、ひんやりしてるね〜。」

「あ!今の表情、良いですよ!レイヴンちゃん、そのままでお願いします〜。」

 

ホシノさんが整えてくれた表情を崩さないように、今まで使うことのなかった頬の筋肉を総動員させる。

カメラのタイマーをセットしたノノミさんが私の隣に駆け寄り、ポーズをとる。

シロコさんも、アヤネさんも、セリカさんも、写真の中央にいる私に寄り添ってくれる。

パシャリ。とシャッターを切る音がする。

 

「おお、可愛く撮れてますよ〜。」

 

ノノミさんがスマートフォンを回収して、撮れた写真を見せてくれる。

真ん中の椅子に座っているのが私だが、

なんとも言えない表情をしている。

目は半開きで、口は「ニマァ」という擬音が似合いそうな開き方をしている。

 

「ほんとに、かわいく、とれてます、か?」

「可愛いですよ!特にいつも凛としている顔をしていますから、ギャップがあっていいと思います!」

 

褒められているのだろうか?

だが、私にははっきり言って可愛いというのがわからない。普通の人生においての先輩達が可愛いというのなら、これは可愛いのだろう。改めて、写真を見る。真ん中に座っている私に、仲良さげに皆寄り添ってくれている。この写真は、この世界での初めての宝物になるだろう。

 

「さて…もう少し、レイヴンちゃんと親睦を深めたいところだけど…」

 

身分証や記念の写真撮影が終わると、ホシノさんが話始める。

 

「実はねぇ、レイヴンちゃんを拾った時に、回収できなかったものがあるんだよねぇ。とても運べそうになくてねぇ。」

 

回収できなかった物?一体なんだろうか。

 

「なんでしょうか、それは。」

「それはねぇ…でっかい人型の機械さ。」

 

人型の機械!私とルビコンを繋ぐ物が、また増えた。

 

「…ろーだーふぉーが、ここにあるの、ですか?」

 

LOADER4(ローダーフォー)。私の飼い主、ハンドラー・ウォルターが私に用意してくれたACだ。

強化人間である私の半身であり、大切な仕事道具であり、何度も共に死線をくぐり抜けてきた相棒だ。まさか、このキヴォトスまで着いて来てくれていたとは。

 

「へぇ、そんな名前なんだ。やっぱり、レイヴンちゃんの持ち物なんだね。」

「そう、です。わたしの、たいせつな、あいぼう、です。」

「それなら、やっぱり一度見に行ったほうがいいよねぇ。」

 

ホシノは椅子から立ち上がり、ショットガンと盾を背負う。

 

「じゃあ、ちょっと遠足に行こうか。皆、お留守番よろしくねぇ〜。」

「分かりました!」

「ん…私も、その機械は気になるけど仕方ない。」

「ちょっと遠いからねぇ。またあいつらが来たら連絡してね。」

「えんそく…どこか、しゅうげきでも、するのですね?」

「…ちょっと発想が怖いねぇ。おじさん心配だよ。レイヴンちゃんとおじさんで、その機械…ローダー4だっけ?それを見に行くのさ。」

「みに、いく。うちあういがいの、しごとですね。りょうかいしました。」

 

私も自分のアサルトライフルとパルスブレードを用意し、アビドスの皆に見送られながらホシノさんと遠足に行く。

なるほど、遠いところに足で行くから遠足。

ミシガン総長は少し言い回しが特殊だったのか。

 

アビドス校舎から十数kmの地点。

 

「レイヴンちゃん大丈夫?ちゃんとお水飲んでる?」

「だいじょうぶ、です。もんだい、ありません。」

 

もう随分と歩いている。その間に、ホシノさんは私を発見した経緯を話してくれた。

いつものようにパトロールをしていたら、昨日まではなかったクレーターが出来ていたこと。その中心に、人型の機械があり、近付いたら胸の所から私が入っている箱が出てきて、保護したということ。

…つまり、ホシノさんは私を担ぎながら、この道を徒歩で歩いたということになる。

砂漠(正確には砂丘だが)はルビコンにもあったが、とても徒歩で長距離を移動できるとは思えなかった。ACで歩いていてもうんざりするのだ。ホシノさんが凄いのか、それともこの世界の人間はそれが普通なのだろうか?

そんなことを考えながら歩いていると、先を行ってくれていたホシノさんが足を止める。

 

「ふぅ、着いたぁ〜。流石に疲れたよ〜。」

 

ひんやりさせてー、と私に抱きついてくる。

先輩としてこのひっつき具合はどうなのだろうかと気になったが、クレーターの真ん中で擱座しているローダー4…私の相棒が視界に入ると、すぐに気にならなくなった。

左腕はちぎれて無くなり、機体全体はエアとの戦いやコーラルの爆発に巻き込まれたときに着いたであろう焦げ跡や弾痕が痛々しく残っている。

私は引っ付いたままのホシノさんを引き摺りながらローダー4に近付く。

 

「おおおお?相変わらずすごいパワーだぁぁぁ…」

「ろーだー、ふぉー…」

 

どうやら、コックピットブロックを排出すると同時に、電源が落ちたようだ。

ホシノさんの話によれば、誰か助けてくれそうな人が来るのを待ち続けていたようだ。

この子に意思などというものは無いが、それでもパイロットである私を守る為に稼働し続けてくれたことに感謝する。

自分の体が動くようになったらやりたい事があった。

私は、膝をついた姿勢で動かなくなっている

ローダー4に近づき、足の部分に手を添える。

 

「…ありがとう、ろーだーふぉー。」

 

自分の機体を、この手で労ってやりたかった。自分のやりたかった夢が一つ叶ったことを認識すると、目が潤む。

随分と、私は涙脆い性格なのだなと思う。今は泣けることが嬉しいが、もしあのルビコン3でこんなにも涙脆ければ、ウォルターから託された「仕事」をこなすことはできなかっただろう。

 

「さて、本題に入ろうか。」

 

ホシノは周辺の安全を確認すると、盾とショットガンを下ろして、近場の程よい岩に座る。

 

「実はね…シロコちゃんも、この砂漠で彷徨っている所を保護したんだ。記憶喪失の状態で見つけてね。」

 

なんとなく、ホシノさんの雰囲気が変わる。さっきまで私に引っ付いていた人と同じか微妙に感じるほどだ。

 

「でも、レイヴンちゃんは違う。そのロボットに、あの端末に残されてた大人の人のメッセージ。」

 

ホシノさんの目が、鋭くなる。

 

「実はね、このアビドスは悪い大人に、食い物にされてる真っ最中なんだ。厄介な事に巨大な企業も絡んでてね。レイヴンちゃんも、そこか、はたまた別の何かと繋がりがあるのかもしれないって思っちゃってるんだ。」

「私には、アビドス対策委員長として、自分の後輩についてちゃんと知っておく義務がある。レイヴンちゃんは良い子だから、何かあった時、もしかしたらって疑いたくないんだ。」

 

なるほど、もっともな意見だ。

どこまで、話すべきだろうか。ホシノさんは良い人だ。だから、疑われたくないし、彼女の望みに応えてあげたい。

でも、もし、私が、人殺しであることを知られてしまったら、彼女は、優しい先輩であり続けてくれるだろうか。

 

「なにを、しりたいですか?」

「じゃあ、まずはどこから来たの?」

「…わたしは、るびこんすりーという、しげんわくせいから、たぶん、ひょうりゅうしてきたのだと、おもいます。」

 

ホシノさんの眉間に皺が寄る。

当たり前だ。私は今、別の惑星から来たと言ったのだ。私の世界では恒星間航行は当たり前の技術として確立されているが、この世界ではまだせいぜい月に有人着陸をして、宇宙に無人の探査機を飛ばしている程度らしい。

ホシノさんにとって今の私の回答は、ふざけているのだと思われているのだろう。

 

「…そう、別の惑星からやって来たんだ。そのロボットに乗って?」

「そう、です。わたしは、このろぼっとにのっているときに、…じこにあって、ひょうりゅうしたのだと、おもいます。」

「…なるほどね。」

 

とても納得しているようには見えない。やはり、隠し事はホシノさんには出来そうにない。

 

「じゃあ…次は」

 

ホシノさんは若干呆れたように別の質問をしようとする。

心がざわつく。

捨てられるのは嫌だ。

失望されるのは嫌だ。

拒絶されるのは嫌だ。

拾ってくれた、命の恩人に。

せっかく出来た先輩で、友達に。

私は嘘や誤魔化す為の技術を持っていない。

だから私は、決心する。

 

「まって、ください。」

 

質問をしようとするホシノさんを制止し、鞄から例の端末を取り出す。

 

「このなかに、わたしの、すべてが、つまってます。」

「ほしの、さんなら、みせても、いいです。いっしょに、みてください。」

 

ホシノさんは、キョトンとした表情でこちらを見る。その端末の中身が、それほど重要なのかと言いたげだ。

この端末には、私がルビコン3で回収したログや、作戦中の音声データ、受け取ったメッセージなどその他様々な物が入っていることを確認してある。

私の舌足らずでゆっくりとした口調での証言より、ホシノさんを納得させられるだろう。

私は端末を起動し、アーカイブの欄を開く。

ちょうどいい写真があった。

惑星封鎖機構によって起動され、氷原に現れたルビコン技研製の化物。通称「アイスワーム」。これを撃破するために、ルビコンに進駐した巨大企業で、対立していたベイラムとアーキバスが一時共闘することが決定した時、ベイラム専属AC部隊「レッドガン」の総長を務めるG1ミシガンの提案で撮った写真だ。

 

『命知らずどもが死んだ後遺影に使う為の写真を探す手間が省ける!!』

 

と言いながらアイスワームを撃破する為に関わった人達で集まって撮った物だ。

ミシガン総長、イグアス、スネイル、ラスティ、カーラ、ウォルター。そして、私。

車椅子に乗せられ、全身が包帯に巻かれた上で、常に生命維持装置を付けられている。

私は、その写真をホシノさんに見せる。

 

「わぁ、大人がたくさん写ってるね。…わざわざ見せるってことは、レイヴンちゃんも写ってるんだよね。どれ?」

「…まんなかの、くるまいすにのっているこです。」

「は?…どういうこと?」

 

ホシノさんの目が大きく開かれ、私を見る。

 

「わたしの、まえのなまえ。しーよん、ろくにーいち。これは、きょうかにんげんとしての、なまえです。」

 

ホシノさんの眉間にまた皺が寄る。でも今度は疑いではなく、理解できないと言った感情が読み取れる。

 

「強化、人間?」

「あのろぼっと…えーしーのそうじゅうにさいてきかするための、しゅじゅつをほどこされた、ひとのことです。」

「最適化の為の手術って…君は、何をされたの!?」

 

ホシノさんが声を荒げる。

 

「あたまを、ひらかれて。のうみそを、やかれて。そうじゅうするために、ひつようなものいがいを、すべてすてられました。」

 

ホシノさんは、信じられないと言った表情をして、写真を改めて見る。

今目の前に居る私と、写真の中の私を何度も見比べる。

 

「もしかして、その喋り方も、わざとじゃなくて…」

「そう、です。こえをだしたのは、みなさんにたすけてもらったときが、はじめてです。」

 

しばらく、沈黙が続く。ホシノさんは、あまりの衝撃で何を話せばいいのか分からなくなってしまったようだ。

 

 

とんでもない情報が出てきた。

元々、あの端末に残されたメッセージとか、番号そのものな名前とかから只者じゃないとは思っていた。それでも、てっきりカイザーコーポレーションか、もしくはカイザーと似たような目的で進出してきた別の企業と何か関わりがあるのかと思っていた。

レイヴンちゃんはあの時、私達を守る為に戦ってくれた。でも、それは私達に取り入る為の演出だったのかもしれない。だから、もっと信頼できるような情報が欲しくて、二人きりで話せる場所を作った。

そうしたら、別の惑星から来ただとか、ここに来たのは漂流だとか。正直ふざけているとしか思えない内容が出てきた。

子供だから、こんな物で騙せると悪い大人に教えられでもしたのだろう。

私の苛立ちが伝わってしまったのか、レイヴンちゃんはおろおろとした表情の後、何か決意したように彼女のやや大きめな端末の電源を入れて、私に見せてきた。

 

「このなかに、わたしの、すべてが、つまってます。」

 

そう言いながら端末を操作して、何かちょうどいいものを見つけたような顔をして端末の画面をこちらに向ける。

見せてくれたのは、たくさんの大人が写っている写真。なぜか真ん中にはミイラのような物が置かれている。

この写真で、何を伝えたいのだろうか?でも確かに、キヴォトス内ではなさそうだ。それにしても、わざわざ見せたのならば

 

「レイヴンちゃんも写ってるんだよね。どれ?」

 

レイヴンちゃんは、迷いなく真ん中のミイラを指差して言う。

 

「…まんなかの、くるまいすにのっているこです。」

 

悪い冗談かと思った。でも、指差されたミイラをよく見ると、車椅子に乗せられて、後ろには60代程の男性が車椅子に手を添えて立っている。

そのミイラからは何か医療器具のような機械に繋がっているコードが伸びているし、点滴のようなものも付けられていた。

レイヴンちゃんはその後も、淡々と自分の過去を話し始めた。

強化手術を受けた時に、それまでの記憶は消えてしまったので覚えてないが、自分が強化手術を受けさせられた理由は、両親が溜め込んだ借金が原因であること。

人として生きる為の機能を全て奪われ、自分の意志で寝返りすら出来なくなっていたと言うこと。

その上、不良品や在庫品など、完全に物扱いで、10年ほど冷凍保存されていたこと。

廃棄処分寸前に、ハンドラー・ウォルターという男に買われたこと。

その後、ハンドラー・ウォルターの元で「仕事」をやらせてもらっていたこと。

 

「…ありがとう。もう十分だよ。」

 

やっていた「仕事」の内容を話し出そうとしたので、やや強引に打ち切る。もう十分だ。この先は、何を聞いたとしてもうんざりするだけだろう。

レイヴンちゃんは、自分のことを知ってもらえたこと、信じてもらえたことが嬉しいようで、かなりぎこちないが笑顔を浮かべている。

色々と言いたいこととかぶちまけてしまいたいことはあるが、とにかく、レイヴンちゃんは企業とは一切関わりがないことは分かった。

 

「ごめんね。辛いこと、思い出させて。」

 

信じたくはないが、レイヴンちゃんが今言ったことは、全て事実だろう。あまりにも現実味がないが、レイヴンちゃんの目を見れば、彼女は本当に「思い出話」をしているだけと分かる。

 

「だいじょうぶ、です。いまはもう、ふつうのからだですから。」

 

そう言うと、とても嬉しそうに手足をぶんぶんと動かす。そうか、レイヴンちゃんの人生は、これからなんだ。

 

 

ホシノさんが沈黙している間、気まずさに負けて私はひたすら自分の過去を話し続けた。

いよいよ本当に話したくない部分。

ウォルターの猟犬としての仕事の内容を話そうとしたところで、ホシノさんに止められる。

 

「…改めて、よろしくね。レイヴンちゃん。」

「はい。ほしの、さん。」

 

ホシノさんは、何かきっかけを見つけたような表情をした後、今まで通りの、はっきり言って腑抜けた表情に戻る。

 

「レイヴンちゃん、これからはさぁ、先輩って呼んでくれないかなぁ?」

「え、でも、じつねんれいはわたしのほうが」

「だめだよぉ。おじさんはアビドス高校3年生。レイヴンちゃんは1年生!人生これからのぴちぴちの15歳なんだからさぁ。」

 

ホシノさんは、私を今度こそ本当に受け入れてくれたようだ。身を寄せ、肩を組んで耳元でそう囁く。復活したばかりの感覚器官が刺激され、全身にこそばゆさが走る。

 

「わ、わかりました、ほしの、せんぱい。だから、そのきょりで、はなすのは、やめてくださ、ああっ。」

「うーん、やっぱり可愛い後輩ってのはいいねぇ〜。幸せだよ〜。」

 

更に私の体に覆い被さってくる。まるで抱き枕に抱きつくようだ。

 

「はなれて、ください、せんぱい!」

「う〜ん。レイヴンちゃん、ひんやりしてて気持ちいいんだよね。」

「わたし、は、だきまくらじゃ、ないです!」

 

でも、本当は悪くない。

誰かの体温を感じられること。

自分の意思を言葉にできること。

全部、嬉しい。

それがバレているのか、ホシノさんは表向き嫌がっている私の意見を無視して寝息を立て始める。

 

Ab06 生徒名、黒羽レイヴン。

普通(?)な先輩と後輩の関係が、始まる。




まずは、前回のAb06生徒名レイヴン、お気に入り数130(2024/1/27現在)ありがとうございます。こんなにもたくさんの人に喜んでもらえるとは、感激だ…。
次は、読んで下さった皆様の物語を見てみたい。
この作品が読んでくれた方の創作意欲を刺激して強く羽ばたく為の踏み台になってくれたら、私は、嬉しいです。
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