Ab06(アビドスぜろろく) 生徒名 レイヴン 作:sepa0
お盆休みのおかげで私の脳内から消えかけていたコーラルは再び集まり増殖を始めたおかげで書き留めることができました。
……設定の齟齬が無いか確認するためたまに読み直しておりますが、ここ最近どシリアスですね。
今回も楽しんでいただけると幸いです。
アビドス砂漠と市街の狭間
ホシノ先輩との戦いは、無駄ではなかった。
私はホシノ先輩のことを、ようやく知ることができた。
先輩の背景が、今になって僅かに見えた。
「……ゆめせんぱい。」
ホシノ先輩が最後に口にした、私の知らない人。
ホシノ先輩は、きっとその人から託されたのだ。
このアビドスの復興と、そこに住まう人々と、いずれできるであろう後輩達を守ることを。
それはきっと、強制されたものではなく、ホシノ先輩自身が自分の意思で選択したのだろう。
たとえそれが、自分の未来を狭めるものだったとしても。
だから、今度は私が背負おう。
ホシノ先輩が受け継ぎ、託されてきたものを。
アビドスを、そこに住まう人々を。
そしてアビドス高校に通う先輩達を守ることを。
たとえそれが、私の可能性を狭めることになったとしても。
ウォルターなら、きっと肯定してくれる。
アビドス高校
対策委員会教室 7:30
アヤネからの緊急招集で対策委員会のメンバーが揃い、ホシノが残していった退学届と私たちに宛てられた手紙。
そして、レイヴンが残していったアタッシュケースに貼られていた『10億円の仕事が入りました。 期待して待っていてください。』と書かれた付箋を皆で見る。
ホシノの手紙には、偉そうな事を言っておきながら自分が道を外れる選択をしてしまったことへの謝罪が、最後に頼れる大人に出会えたことへの感謝が、残される後輩達に自分に残された唯一意味のある場所であるアビドス高校を守って欲しいことが、そしてこの先万が一敵対することがあれば、その時は『自分のヘイローを壊す』ように頼んでいる内容が書かれていた。
「ホシノ先輩っっっ!!!!」
最後まで読み終えたセリカが声を荒げながら立ち上がる。
「何なの!? あれだけ偉そうにしておいて!! 切羽詰まったら何でもしちゃうって、自分でわかってたくせに!!」
「ん……レイヴンのアタッシュケースは、何が入ってたの?」
シロコも動揺しつつ、残ったもう一方の詳細をアヤネとチャティに訪ねる。
「……現金が、3億円です。」
『ビジターはカイザーの対立企業からアビドス砂漠にあるという基地の調査の依頼を受けていた。 これはその報酬だ。』
"アヤネ。 この付箋に書いてある10億円の仕事というのは?"
「……同じ、カイザーの対立企業からの依頼で、内容は……」
アヤネの表情が暗くなる。
どうやらレイヴンも普通ではない仕事に手を出してしまっているようだ。
「……カイザー理事の、殺害です。」
「……殺害っ!?」
「ええっ!?」
"……。"
色々物騒なキヴォトスにおいても、明らかに一線を超えた話に私も対策委員会の皆も動揺する。
『すまないシャーレの先生、俺の失態だ。 俺がいながらこんな仕事を受けさせてしまった。』
"チャティを通した仕事ではないんだよね? それなら、君のせいじゃない。"
「……止めないと、ホシノ先輩も、レイヴンも。」
静かに話を聞いていたシロコが愛銃を取り立ち上がる。
「……PMC基地に行く。 レイヴンが依頼通りに動いているなら、最終的にはそこへ向かうはず。」
「急ぎましょう! ホシノ先輩もその基地にいるとしたら……。」
「……まさか、ホシノ先輩とレイヴンちゃんが戦うなんてこと、無いわよね?」
「……レイヴンちゃんに、人殺しをさせるわけには行きません! 急ぎましょう……!?」
ドカアァァァァァァン!!!
「うわぁっ!?」
「爆発音……!?」
突然今までで聞いた中で1番大きい爆発音が聞こえ、即座にアヤネとチャティが爆発地点を探り始める。
「近いです、場所は……!? そ、そんな!?」
『……アビドス市街地に、カイザーPMCの兵力を確認。 今までの襲撃とは規模が違うな。』
「カイザーPMC!? 何でこのタイミングで……。」
ドカァァァン!!!
続いて私たちの真上からも爆発音が聞こえた。
砲撃されたのはこのアビドス高校の2Fの教室……レイヴンが部屋として使っている教室だ。
それと同時に私達がいる教室のドアを蹴破りPMCの兵士が現れる。
『対策委員会を発見! こっちだ!!』
『優先排除対象レイヴンは確認できない! 気を抜くな!!……ぐぁっ!』
弾丸1発で致命傷になる私は即座に机の陰に隠れようとするが、それよりも早くシロコがPMC兵士を排除してくれた。
「斥候が、もうこんなところにまで……。」
「アビドス高校周辺にカイザーPMC兵を多数確認!!」
『既に校内にもかなりの数が侵入している。 この展開の速さ、随分と計画的だな。』
「とりあえず、学校に侵入したやつからやっつけよう!! アヤネちゃん、チャティ、支援をお願い!」
「はい! 校内の安全を確保した後は、市民の皆さんの避難を!」
アビドス市街
居住区
いつもの目覚まし時計が鳴る前に、突然響いた爆音で起き上がる。
キヴォトスにおいて爆発が起きるのは普通のことだが、このアビドスにはやんちゃをする子供も少ないので珍しい。
不思議に思いカーテンを開けて外を確認すると、見たことのない戦車が私の家へ主砲を向けていた。
「う、うわ!?」
退避する間も無く主砲は発射され、私はベランダごと吹き飛ばされてしまい表へ投げ出される。
どうやらそうなったのは私だけではないようで、数少ないお隣さん達も謎の勢力の攻撃を受けて避難している。
『行け、行け!』
『進め!』
「うわあぁぁあっ!?」
「早く、早く逃げろっ!」
迷彩柄のオートマタに、追加装甲を施された戦車に、見たこともない二本足の巨大なロボットまでいる。
逃げるあてなどないが、とにかくこの場から離れるしかない。
だが
「ぎゃっ!」
焦りからか、足元の瓦礫に気付かずつまづいて倒れてしまう。
痛みに耐えながら顔を上げると、二本足の巨大ロボットが、主砲そのものの頭をこちらに向けている。
あんな物で撃たれては、大怪我ではすまないだろう。
私は恐怖で両手で顔を覆うことしかできず、襲ってくるであろう凄まじい衝撃と痛みに備えていると
ガコン!!
という砲撃とは別の音がした。
その後に、オートマタ達の怒声と銃声。
『何だこいつは!?』
『アビドスの生徒!? 情報が漏れていたのか?』
『データ照合……アビドス高校1年生、黒羽レイヴンだな!!』
ドォン!!ダァンダァンダァン!
ショットガンとアサルトライフルの銃声が聞こえた後、静寂がやって来る。
恐る恐る、目を開けると
「ひ、ひぃ!?」
私を撃とうとしていた二本足の巨大なロボットは完全に破壊され沈黙し、オートマタ達も機能停止に追い込まれていたが、1体だけまだ動いているオートマタが居た。
『……戦型がシミュレータと一致しない。情報を送信、再照合を……!!』
ダァン! 銃声が響き最後の1体も倒れた。
私は命の恩人に礼を言うべく、銃声がした方を向く。
そこにはもう彼らの言っていた生徒の姿はなかったが、代わりに私は確かに見た。
黒い衣に身を包み、黒い羽を持つ天使が空を舞うのを。
都合の良い幻覚かとも思ったが、その存在が確かにあったと証明するように、私の目の前にはボロボロの黒い鳥の羽が落ちていた。
カイザーPMC基地周辺
黒服の研究所
「……う……?」
いつもより重く感じる瞼を開くと、病室のような真っ白な天井が見える。
……私はレイヴンちゃんにやられて、砂漠の真ん中で頭を撫でられながら眠ったところまでしか覚えていない。
そのままユメ先輩のところへ行けるかと思っていたが、まだその時ではないらしい。
少しずつ寝惚けている頭が冴えてきて、レイヴンちゃんの杭で貫かれたお腹に痛みがないことに気付き、かけられた布団をのけて確認する。
「……なに、これ。」
私のお腹に空いた風穴には、私の肌の色とは違う、青白い肌の腹部があった。
「おや、もう意識が戻ったのですか? 流石はキヴォトス最高の神秘の持ち主のホシノさんです。」
「あんたは……!!」
病室のドアを開けて、不本意ながら長い付き合いになっている怪しい大人『黒服』が入ってきた。
「私に、何をした!」
「何をしたと言われましても。 ご覧の通り、治療をさせていただきました。」
「治療……?」
「ええ、言葉通りの意味ですよ。」
そう言いながら黒服は私のお腹をまじまじと見つめる。
女学生の腹部をまじまじと見る姿に嫌悪感を抱き、変態と罵ろうとしたが、そうする前に黒服が一方的に話し出した。
「レイヴンとの戦闘により貴方は腹部を大きく欠損する怪我を負いました。 貴方が類稀な神秘の持ち主でなければ、あと数週間は意識を取り戻さなかったと思いますよ。」
「ああ、肌の色の違いもそのうち無くなるでしょう。 もっとも、多少跡は残ってしまうかもしれませんが。」
そのまま塞がれた傷口を触られ、不意に走った痛みで思わず声を上げてしまう。
黒服は一言軽く謝罪をすると離れてまた私を観察しながらカルテのようなものに情報を書き留めていく。
私はその様を気味悪く思いながらも、当然浮かんだ疑問を投げかける。
「……なんで、こんなことを?」
「理由としては2つです。 1つは、貴方は失うのが惜しい稀な神秘を持つ生体であること。」
「もう1つは、レイヴンとの約束です。 『小鳥遊ホシノを引き渡す代わりに、その生命が絶たれた時、私だけでなく私に関連する人物を皆殺しにする。』というね。」
「……相変わらず、おっそろしいことを言うね。」
「ええ、全くその通りです。 大人である私でも、久々に背筋が凍りつきましたよ。」
レイヴンちゃんの相変わらず過激な思想について少し黒服と談笑してしまう。
しばらくすると、黒服の持っていた端末が揺れた。
「おや、始まりましたか。 随分と行動が早いですね。」
「早い?何が?」
「ちょうど良いです。 一緒に見ましょう。」
そう言いながら見せてきた端末にはアビドス自治区の監視カメラの映像が流れており、そこには居住区に攻め入るカイザーPMCの部隊が映っていた。
「な、なんで……何をしてる! どうしてアビドスを、街を攻撃するんだ!」
私の身売りで借金の大半は返済されて、アビドスを襲う理由なんてない筈だ。
血相を変えて焦る私を見ても黒服は平然として答える。
「何もおかしいことなどありませんよ、ホシノさん。 借金の大半はきちんと返済させていただきますとも。それが私たちの間に交わされた約束ですから。」
「ですが、カイザーコーポレーションの狙いはキヴォトスに自分の学校を作りキヴォトス支配への足がかりを作ること。」
「アビドス最後の生徒会メンバーである貴方が退学した今、公的な部活も、委員会も、生徒会も、自治区すらないアビドスに学校を作るつもりなのでしょう。」
私が、居なくなったから。
呆然とする私を見て、申し訳なさそうに顔の線を歪めて黒服が話し出す。
「ああ、もしかして何か勘違いをされていましたか? 誤解を招いたのなら謝罪しましょう。」
「しかし私は最初から、カイザーの所属ではありません。『私共の企業』が『カイザーコーポレーション』だとは一言も言っていないはずです。」
「……!!」
私は今まで黒服からのスカウトをカイザーPMCへのスカウトだとずっと思っていた。
だが、実際は違ったのだ。
隣にカイザー理事も居たが、黒服の言い分ではこちらが勝手に勘違いした、ということだろう。
そっか。私は……また、大人に騙されたんだ。
間に合わないかもしれない。
それに、武器も盾もないけれど何が何でもアビドスへ戻らなくては。
布団を跳ね除け外へ駆け出そうとした瞬間、赤い光の線が私を捕らえ体に力が入らなくなる。
「ホシノさん?どちらへ行かれるのですか?」
「決まってるだろ!! アビドスへ、戻らなきゃ、守らなきゃ……!!」
「残念ですが貴方は重傷者です。 まだ安静にしなくてはなりません。」
「うるさい!! 離せ!!」
どんなに暴れても、赤い線は私を離さない。
それでも動かずにはいられない。
「安心してください、アビドスは落ちませんよ。」
「でも、あの子たちだけじゃ、とても……。」
「ええ。 ですが、あの子は貴方が託そうとしたものを背負いました。……クックック、本当に、優しい子ですね。」
「……どういうこと?」
「貴方の後輩であり、貴方を打ち倒した張本人であり、新たなアビドスの守護神……いえ、死神と呼んだ方が相応しいかもしれませんね。」
身動きの取れないまま見せられているアビドス市街襲撃の映像に、黒い影が映る。
「敵対するものを完膚なきまでに打ち倒し、全て真っ黒に焼き尽くす、死を告げる鳥。……『レイヴン(黒い鳥)』とは、彼女に付けられる名前として最も相応しいものでしょう。」
瓦礫につまづき転んだ住民にゴリアテが攻撃をしようとした瞬間、ゴリアテの胴体の正面装甲が見覚えのある杭によって貫かれ倒れる。
撃破されたゴリアテの影から、私のショットガンを左手に持ち、私の盾を背負ったボロボロのレイヴンちゃんが現れた。
彼女はそのまま周囲のPMC兵を蹴散らした後、また別の襲撃地点を迎撃するべくビルの壁を蹴りどこかへ跳んで行った。
「レイヴンちゃん……。」
私と戦った時以上に自分を顧みない戦い方をするレイヴンちゃんに心が痛むが、今の私には情けなく涙を流すことしかできなかった。
アビドス自治区
襲撃された街
「ん、これは……どういうこと?」
「戦闘が……既に終わってる?」
アビドス高校に侵入したカイザーPMCの勢力の迎撃に成功した私達は、そのまま市街地へ侵入したカイザーPMCの迎撃及び市民の安全を確保するために市街地へ向かったが、到着した私たちは奇妙な光景を目にすることになった。
『最後の観測では、今までとは比べ物にならない大規模な戦力が展開されていた筈ですが……。』
『スキャン完了。 カイザーPMC勢力の壊滅を確認した。』
襲撃を受けているはずの市街地は静寂に包まれていて、そこには破壊されたカイザーPMCの勢力の残骸だけが残っていた。
戦車や装甲車は異質な凹みと共に風穴が開けられている。
装甲の薄い背面からやられている車両もあれば、見せつけるようにわざわざ強固なはずの正面装甲を貫かれている車両もあった。
一体どんな武装で攻撃したらこんな痕ができるのだろうか。
"……状況を確認しよう。 皆、警戒は緩めないで。"
「ん、了解。」
「了解です!」
私たちを油断させる為の罠、という可能性もあるが、それにしては用意した囮が多すぎる。
しばらく進んでいると、避難中の市民に出会った。
「そこの人! 大丈夫ですか!?」
「ひっ!……君たちは、アビドス高校の生徒達か。」
「すみません……私達がもっと早くきていれば、こんなことには……。」
ノノミが申し訳なさそうに頭を下げるが、市民の方はにっこりと笑って答えた。
「大丈夫だよ。 天使様が守ってくれたんだ。」
"天使?"
「そう、もうダメだって思った瞬間に、空から天使様がやってきて助けてくれたんだ。」
私たちは市民の方が幻覚を見るほど追い詰められてしまったと思いさらに申し訳なくなるが、天使の特徴を言われた瞬間にその正体について察しがついた。
「その天使様は、真っ黒な翼をしていたんだ。 ほら、お守りになるかもと思って、そこに落ちてたのを拾っておいたんだよ。」
「……この羽根は!!」
今まで何度もみてきた、カラスを思わせる真っ黒な羽が市民の手に握られていた。
カイザー理事暗殺の依頼で遠くまで出払っている筈のレイヴンが戻ってきているのだ。
果たしてアビドス市街の襲撃を察知して依頼を途中で投げ出して戻ってきてくれたのか、もしくは依頼を『完了』させたから戻って来てくれたのか。
定かではないが、この異様な光景の理由が判明したことで、私たちは市街地の調査からレイヴンの捜索へ目的を切り替える。
アヤネとチャティの探査で最後に戦闘が終了したと思われる市街地の中央へ辿り着いた。
そしてそこに、市民の方が見た天使がいた。
気絶しているPMC兵やオートマタ達が山のように積み重ねられ、さらに3機のゴリアテが破壊されておりそのうちの1機の残骸の上に、砕けちる星を思わせる赤いヘイローを持つ天使がこちらに背を向けて立っていた。
その姿を捉えた時、私達は動揺してしまった。
様々な車両や兵器を破壊した時に浴びたであろうオイルをそのままにしていたのか、銀の髪とパーカーは真っ黒に染まり、元々黒かった羽根はさらに深みを増して黒くなっていた。
だが、それ以上に……
「なんで……なんでレイヴンがそれを持ってる!!?」
シロコが、声を荒げる。
レイヴンは私達を、アビドスをずっと守ってきてくれたホシノの盾を背負っており、左手には白とピンクに塗られたホシノの愛銃が握られていた。
「まさか……ほんとに、ホシノ先輩と……?」
"……レイヴン、聞こえてる?"
私の声にピクリ、と特徴的な耳が反応し、こちらへゆっくりと振り向く。
「……ああ、げんきそうで、なにより、です。」
「? レイヴンちゃん、右目が……ひっ!」
"レイヴン……その、右目はどうしたの?"
振り向いたレイヴンの瞳は、いつもより赤く輝いて見えた。
しかし、その数がいつもよりひとつ少ない。
そのことに疑問を持ち、凝視してしまったセリカが悲鳴をあげる。
レイヴンの顔右半分はひどく傷つけられ、閉じられた瞼から血が流れている。
……レイヴンは、このキヴォトスにおいて間違いなく最強の一角であるゲヘナの風紀委員長、空崎ヒナと戦うことができるほどの実力者だ。
そんなヒナを相手に、ヒナの方にはあまりやる気がなかったとはいえ怪我を負わされることなく帰って来てくれていた。
いくら相手がプロとは言えカイザーPMC程度ではこのような怪我を負わせる事は出来ないだろう。
だとすれば、レイヴンの右目を奪った犯人は……
「……レイヴン!! ホシノ先輩に、何をした!!」
「シロコちゃん!落ち着いてください!」
「嘘、でしょ。 だって、あんなにホシノ先輩と、仲良かったじゃない!!」
『みなさん、一体、何が起きてるんです!?』
『……ビジター。 依頼はどうなった?』
チャティの発言に対して、レイヴンは答える。
「……いらいは、しっぱい。 じょうほうが、ながれていたか、さいしょから、まちがえていたのか。 かいざーりじは、いなかった。」
「!! じゃ、じゃあ、その、人をこ、殺したりなんかは、してないのよね!?」
「そんなことはどうでもいい!! なんで、レイヴンがホシノ先輩の盾と銃を持ってる!!?」
「……わたしが、しゅうげきした、ぶたいは、ほしのせんぱいを、ぴーえむしーきちまで、ごそうするためのぶたいでした。」
"……まさか。 ホシノと?"
私の質問を聞くと、レイヴンは大切そうに盾とショットガンに手を添えて答える。
「ほしのせんぱいと、たたかいました。 そして、わたしは……」
タァン!
不意に後ろから発砲音が響く。
シロコだ。
シロコがレイヴンに向けて放った弾丸をレイヴンは上半身を捻り躱す。
私とノノミは止めようとするが間に合わず、シロコはレイヴンへ向かって駆け出す。
「よくも、ホシノ先輩を!!」
「……ああ、いいですね。 あなたにころされるなら、わるくない。」
レイヴンもそれに応えるようにライフルを握り直す。
「ですが、まだおわるわけにはいきません。 わたしには、このあびどすでなすべきことがあります。」
タタタタタタ!!
とシロコはアサルトライフルを連射しながらレイヴンへ肉薄する。
"シロコ!!"
「ホシノ先輩……嘘ですよね……?」
『ま、待ってください!! 車両が1台近づいてきます!!』
アヤネの報告に1番最初に反応したのはレイヴンだった。
レイヴンが真っ先に視界にとらえたそれは、あの時校舎にやってきたカイザー理事が乗っていた高級車だ。
恐らく自分の部隊によるアビドス自治区侵攻の様子でも見に来たのだろう。
そして、レイヴンが何を考えているのかは分かった。
"シロコ、ノノミ、セリカ!!レイヴンを止めて! アヤネ、チャティ!!カイザー理事にどんな方法でもいい!近寄らないように知らせ……"
コンコンッ!!
私の顔のすぐ横を2発の砲弾が飛んでいき、高級車に命中する。
即座に大爆発が起こり、車両はぐしゃぐしゃになりながら吹き飛び近くの建物に叩きつけられる。
「ぐあっ!!」
というシロコの悲鳴が背後から聞こえ、振り向くと同時にレイヴンが私の横を砲弾のスピードよりも早くすり抜けカイザー理事のところへ降り立つ。
カイザー理事の護衛と思われるオートマタが4名、車両から這い出てきて即座に銃を構える。
『貴様! 理事に近づくな……』
ドォン!!ドォン!!ドォン!!ドォン!!
一切の躊躇なく、護衛のオートマタをショットガンで撃ち抜き沈黙させる。
カイザー理事は満身創痍といった感じで破壊された車両から這い出てきて、そこで初めてレイヴンに見下ろされていることに気づき、狼狽える。
『き、貴様! 何をするつもりだ!?』
「あなたをころせば、じゅうおくえんもらえるてはずになっている。 あなたがすきな『ごうほうてき』にね。」
腰が抜けて立てないカイザー理事の額へ、レイヴンのライフルが押し当てられる。
『ま、待て! 落ち着け!!その口ぶりからすると、どこかに雇われたのだな!?』
「ええ、あなたがきえるとよろこぶれんちゅうに。」
『なるほど……いいか!! 私は知っての通りカイザーPMCの代表取締役だ!つまり部隊の入出金には私に管理権限がある!!』
カイザー理事の発言に、レイヴンはピクリと反応し、銃を一旦下ろす。
理事はその顔を器用に変形させ笑みの表情を浮かべたまま立ち上がる。
その余裕ができた隙にダウンしているシロコ以外の私たちはレイヴンの側へ近づくことができた。
『いくらで雇われたか知らんが、見逃してくれれば君が受けた依頼の倍の金額を払おう!! そして、もうこのアビドス市街及び自治区には手を出さないことを約束しよう!』
「じ、十分じゃない! ね、レイヴンちゃん!」
「レイヴンちゃん、今回の騒動は、お金を稼ぐ為でしたよね? お金さえ手に入れば、殺さなくて済みます。 この話は受けましょう?」
レイヴンは数秒考える動作をした後、口を開いた。
「……いいでしょう。 あなたのこと、みのがしてあげます。」
そういうと、レイヴンはショットガンとライフルをしまった。
これで受け取ったお金を借金返済に充てることはホシノが守ろうとしていた一線を越えるためできないだろうが、レイヴンがようやく止まってくれたことに安堵する。
『ふふふ、話がわかるようで助か』
パンパンパンパン!!
私達も、カイザー理事も何が起きたのか分からなかった。
だがレイヴンの手にはあまり見慣れない拳銃が……ホシノの盾にしまわれていた拳銃が握られていた。
いつも使っている銃をしまうところを見て安心した私達はそれを止めることはできなかった。
『ぐっ……?!?』
「レイヴンちゃん!!」
"レイヴン!?"
「さわがないでください。 うたれてももんだいないばしょをうちました。」
腹部を押さえて倒れるカイザー理事の胸ぐらを掴み、レイヴンはカイザー理事のカメラアイを睨みつけるように顔面を寄せる。
「あなたのかんがえていること、わかりますよ。 あなたとわたしのいまのとりひきには、なんのしょうこもない。」
図星をつかれたように、理事はびくりと体を震わせる。
「このじょうきょうをどうにかできればそれでいい。 くちやくそくなんて、まもるひつようなんてない、とね。」
『ま、まさか本当に私を殺すのか?』
「わたしは、ほしのせんぱいとやくそくした。 だから、いまはころさない。」
ガァン!! と凄まじい音がするほどの頭突きをカイザー理事に当て、理事の顔面にヒビが入る。
理事は悲鳴を上げながらその顔面を抑える。
「おぼえておけ、おまえはくちやくそくひとつでいかされている。」
「わたしがほしのせんぱいとしたやくそくには、せいしきなしょるいも、さいんも、まもるぎむもない。 つぎ、そのかおをみせにきたら……」
「こんどこそ、ころしてやろう。」
掴み上げられていた胸ぐらが離され、理事は必死に逃げだす。
その言葉を向けられていない私たちですら背筋が凍ってしまうほどの威圧感が込められた警告……いや、宣言だった。
だが、その宣言の中に気になるものがあった。
レイヴンがホシノとしたという約束。
それは一体なんなのだろうか。
"……レイヴン。 色々と教えてもらいたいことがあるけどまずは、ホシノはどうなったの。"
「……ほしのせんぱいは、いきてます。 でなければ、ここでりじをころしていました。」
ホシノは生きている。
その言葉を聞いて、私もノノミもセリカも、少し遠くでうずくまっているシロコも無線越しで会話を聞いているアヤネも安堵した。
「ほしのせんぱいはわたしに、『かいざーりじをころすなら、わたしをころしてからにして』といいました。」
「だから、まだ、ほしのせんぱいは、いきてます。いきてるはずなんです。」
"レイヴン?"
レイヴンの呼吸が急に乱れ始め、頭痛を抑えるように額に手を当てる。
「だから、だから、せんぱいがかえってくるばしょを、まもらなきゃ。 わたしが、まもらなきゃ……。」
パチン!
どこかへ走り出そうとしたレイヴンの腕をノノミが掴み、レイヴンの頬を平手打ちする。
「……言いましたよね。 私達は、運命共同体なんです。」
「これ以上、私たちに黙って何かするのは、絶対に許しません!!」
叩かれた左頬を抑えながら、レイヴンは倒れ込む。
「……すみません、でした。」
「とにかく、レイヴンちゃんを今すぐ病院に連れていきます!! 早くしないと、治るものも治らなくなってしまいます!!」
「レイヴンちゃん、乗って。 背負ってあげるから、少しでも休んで。」
「ん……武器は、私が持つ。 先に校舎に戻ってるね、先生。」
"お願い、シロコ。"
『……レイヴンさんの部屋は、さっきの襲撃で吹き飛んでしまいました。 別の教室にベッドを運び込んでおきます。』
『ビジター、傭兵活動は当分禁止だ。 次に俺の仲介を経ていない依頼を受けたらお前の傭兵活動の支援を停止させてもらう。』
「……わかった。 ほんとにわるかったよ、ちゃてぃ……。」
そういうと、レイヴンはセリカに背負われたまま眠りについた。
Ab06、生徒名レイヴン。 普通にお仕置きされる。
アビドス市街
中央区
「お、終わっちゃったの?」
「いやぁー、出る幕なかったね。」
「はあ。ただ、ラーメンを食べに来たら市街が襲撃されてて、『友達の危機は見過ごせないわ!!』って言って戦おうしたけど……。」
「な、な、なんだか、いつものレイヴンさんでは、無かったですね。 なんだか、とても怖かったです。」
別の地方で依頼をいくつか片づけたもののまだ資金の貯蓄は十分ではなく、また柴関ラーメンのお世話になろうとアビドスを訪れた時、なにやら物騒な連中がアビドス市街にて破壊活動を行っているところに遭遇してしまった。
たまたま彼らの本隊と思われる大規模な部隊がアビドスの子達とまだ敵対していた頃に仕掛けた爆弾が埋まったままの地点に集結していた為手助けをしようとタイミングを測っていたが、その前にレイヴンがやってきて全てを片付けてしまった。
「どうするアルちゃん? 帰る?」
「……いえ、私の勘がまだここに留まるべきと言っているわ!! きっと私達が必要になるタイミングがあるはずよ!!」
「はぁ……相変わらず、ただ働きが好きだね。 社長。」
「……レイヴンさん、大丈夫でしょうか? お見舞いに……ああでも、私なんかがお見舞いに行ったところで嬉しくないですよね……。」
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
さて、送られてくる感想が阿鼻叫喚のものが多く早く安心させてあげたいと思う今日この頃。
お気に入り数5010件(2024/8/16現在)ありがとうございます!
もう私の頭の中ではハッピーエンドまで見えていますが、フロム信者の言うハッピーエンドって信用ならないですよね。
あと1、2話で終われると思いますので、また皆様にお見せできるほどのものが出来上がったらお見せしようと思います。
感想、ここすき、誤字報告いつも助けられております。
それでは、また。