Ab06(アビドスぜろろく) 生徒名 レイヴン   作:sepa0

22 / 23
読者様……書くのが遅い私を……許してくれ……。
というわけでかなり投稿に間が空いてしまいました。
現実が忙しくなったり、気になるゲームにうつつを抜かしていたら頭のコーラルの焼きつきが収まってしまったのでもう一度焼き直していたら遅くなってしまいました。
楽しんでいただけたら、幸いです。


第21話 それでも拾いなおせたもの。(1)

アビドス高校

対策委員会教室

 

カツン、カツンと2人分の足音が暗い廊下に響く。

ホシノの所在の情報を得た私と、アビドスをパトロールしていたレイヴンの足音だ。

もうすっかり深夜だが、対策委員会の教室には電気がついている。

こんな時間まで待たせてしまったことを申し訳なく思いながらドアを開ける。

 

「おかえり、先生。 レイヴンも。」

「お待ちしておりました!」

「先生!」

「レイヴンちゃん! パトロールに出るならちゃんと連絡してください!!」

「……すみません。」

 

どうやらレイヴンは他の皆には秘密で夜のパトロールを行なっていたようだ。

そういえばホシノも同じように、皆には秘密でパトロールをしていたことを思い出す。

レイヴンは欠けてしまったホシノの代わりを務めようとしていたのだろう。

アヤネがレイヴンを座らせてお説教を始めたところで、シロコが私の目を覗き込むように立つ。

 

「……何か、掴んできた顔だね。」

"分かる?"

「もちろん。 じゃ、改めて……」

 

息を吸い込み、他の地域では夜中に出せない声量で言う。

 

"ホシノを助けに行こう!!!"

 

私の掛け声を聞いて、皆の顔に希望と決意が溢れてくる。

 

「……ん、行こう。」

 

"ホシノを助けて、ここに連れ戻す!!"

「はい、そう言ってくださると思っていました!」

 

"助けて、その後は厳しく叱ってあげないと!!"

「うんうん!自分で言ったことを守れなかったんだから、きちんと叱ってあげないと!!」

 

"私達にはホシノが居ないとダメだってことを、教えてあげよう!"

「はい。……もう、にどと、てばなしません。」

 

"「おかえり」って言って、「ただいま」って言わせよう!"

「うん……えっ!? 何それ、恥ずかしい!青春っぽい!!背筋がゾワっとする!」

 

勢いに流されて答えてしまったセリカが動揺して拒否するが、シロコとレイヴンはにこやかに答える。

 

「私はする。」

「わたしもです。」

「か、勝手にして!私は絶対、そんな恥ずかしいこと言わないから!!」

「あ、あはは……ではそれはそうとして、救出の為の準備をしなければなりませんね。」

 

意地を張るセリカを宥めながら、アヤネはタブレットを取り出し弾薬や物資の在庫を調べ始める。

 

「でも、今の私たちだけじゃ勝てない。 誰か協力者を……。」

 

確かに、個々の実力は低いが数が多いカイザーPMC達を正面から相手にするには、こちらは少なすぎる。

もう既に協力者は得ているが、彼女達の考えも聞いてみることにする。

 

「便利屋は?」

「確かに私たちのことを助けてくれましたが……もう一度お願いしても良いのでしょうか?」

「大丈夫だって!またどこに行ったんだか知らないけど、ここまで散々迷惑かけられたんだから、これくらいのお願いは聞いてもらわないと!」

「? おねがいもなにも、かのじょたちはべんりやです。いらいすればよいのでは?」

『報酬は俺たちから出そう。 便利屋68の実力を考えれば、安い買い物だ。』

 

どうやら、レイヴンとチャティが便利屋68に依頼をしてくれるようだ。

本来なら、私が払うべきなのだろうが……

今回は、黙って助けてもらうことにした。

レイヴンを独立傭兵ナイトフォールとして雇った時に払った金額の件について案の定ユウカに問い詰められてしまったし……。

 

"大丈夫。 他にも、強力な助っ人をお願いしてあるから。"

「え……? それは、どういった……?」

"それは来てからのお楽しみかな。 さぁ、明日に備えてもう寝よう。"

 

席を立ち、保健室のベッドを借りに教室を出ようとしたところを、ノノミに腕を掴まれ止められる。

 

「はい! もう人数分のベッドは用意してあります☆」

"……え?"

「ん、もうだいぶ遅い。 家に帰る時間も惜しい。」

「な、な、何言ってるの!? 学校で寝るなんて……。」

「? なにかおかしいのですか?」

「……なんでもないわ!」

「あはは……ホシノ先輩が居ないのは寂しいですが、お泊まり会みたいなものですね。」

「布団でもなく、恋話なんかしながら夜更かしすることもできませんが、皆さんと一緒にお泊まりするの、夢だったんです!」

「ん、今度はホシノ先輩も入れてやろう。」

 

確かに、理にかなっている。

皆で一緒の場所で寝れば、誰か一人が寝坊したり遅刻したりすることもないだろう。

突然ではあるが私達は一つの教室に集まり、そのまま一緒に寝ることにした。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

キヴォトス某所

便利屋68臨時事務所

 

リリリリリリ!!

 

いつ依頼が来ても良いようにお気に入りの黒電話の前で待機していると、ホームページに書いてある受付開始時間になると同時に電話が鳴った。

こんなに早く電話が来るのは久しぶりだ。

急いで身だしなみを整え、受話器を取る。

 

「はい、便利屋68の陸八魔です。」

 

少しカッコをつけて椅子に寄りかかり、メモ用のボールペンを回しながら電話に出る。

 

『やあ、あるしゃちょう。 あなたのよきせんゆう、あびどすこうこうのれいゔんです。』

「レイヴン? どうしたの?」

 

普段の様子からは想像もつかないフランクな喋り方に少し困惑するが、次の言葉でこちらも友人との電話からビジネスへの対応に切り替える。

 

『これは、あるゆうじんからの……いえ、このわたしからの、ごく、してきないらいです。』

「……用件を聞きましょう。」

『あびどすさばくにある、かいざーぴーえむしーきちをたたいてもらいたい。』

「か、カイザーPMC!?」

 

まさかの大企業が所有する、それもPMCという戦闘のプロに喧嘩を売るという依頼に動揺するが、レイヴンは淡々と依頼の内容を続ける。

 

『……このさくせんは、ほしのせんぱいを、わたしたちあびどすこうこうせいにとって、なくてはならないひとをだっかんするためのさくせんです。』

 

サラッと出された大変な状況に驚く。

そういえば、あの時真っ先に駆けつけて来そうな小鳥遊ホシノが居なかった。

まさか、カイザーPMCに囚われていたとは。

 

『もくひょうは、しせつにちらばっているつうしんあんてな。 これをつぶせば……そうですね。れんちゅうのぞうえんのあしどめくらいにはなるでしょう。』

『こんかいは、きちにてんざいするぶっしほかんこや、そのたのしせつにも、はかいほうしゅうをせっていさせてもらいます。』

『かいざーをたたくとかねになる。 そうせんでんしてくれるとありがたいです。』

 

少し舌足らずな、可愛らしい声で容赦のない事を言う。

それはそれとして、私の頭の中で天秤が大きく揺れ動く。

アビドスの子達との友情と信頼に応え、先日のアビドス市街での戦闘を手伝うことができなかった不甲斐なさを払拭するにはまたとない機会だ。

しかし、私達のような小規模な企業がカイザーコーポレーション傘下の企業に喧嘩を売ってしまっては、今後のビジネスにどう響くか分からない……。

そんな迷いは、すぐに断ち切られた。

 

『きゔぉとすさいこうのあうとろーのちから。 ぜひ、かしてほしい。』

 

……そんな口説き方、一体誰に教わったのよ?

けれど私の迷いを払い、道連れにするには十分すぎる言葉だった。

 

「……フフフ、分かったわ!! その依頼、私達便利屋68に任せなさい!!」

 

私の尊敬するアウトローの1人に、こんなことを言われて断れるわけがない。

レイヴンの方も、依頼を受託してくれたことに安堵しているようだ。

 

『かんしゃします。 ほうしゅうにかんしては、あとでかよこさんのほうにもめーるでおくるつもりですが』

 

お金の話に入ろうとしたレイヴンを遮り、私の意見を言う。

 

「安心しなさい! 友達からお金を取るなんてダサいことしないわ!!」

 

私の発言は受話器の向こうのレイヴンにとって想定外だったのか少し沈黙が流れ、混乱気味な声色で返答が返ってくる。

 

『えっ、いやしかし、かなりきけんないらいですし、こんなことにつきあってもらうわけですから』

「何言ってるの!! 困ってる友達がいたら助ける!!人として当然のことよ!!」

『……な、ならせめてまえきんを』

「あら、知らないの?私たちは前金を受け取らないのよ。」

『いや、でも……。』

 

私からの素晴らしい提案をレイヴンは頑なに受けようとしない。

……ふふん、なら、友達らしい報酬をいただくことにしましょう。

 

「どうしても気になるなら、今度柴関ラーメンを奢ってちょうだい。 人数分ね。」

『……りょうかいしました。 もちろん、とくもりをごちそうしますよ。』

「フフフ、取引成立ね。 それではまた戦場で会いましょう、戦友。」

 

チンッ!

勢いよく電話を切り、コートを靡かせながら立ち上がる。

カヨコもため息混じりに立ち上がり、ムツキとハルカも出発の準備を始めた。

 

「……はぁ。 社長、またタダ働き?」

「いいえ、そんなことはないわ。 私達便利屋68の価値を証明する大仕事よ。気合い入れなさい!!」

「くふふ、アルちゃんったら優しいんだから〜。」

「アル様、かっこいいです! 一生着いて行きます!」

 

レイヴンは、ナイトフォールはマーケットガードを踏み台にして名を上げた。

なら、私達も真似させてもらうわ。

カイザーコーポレーションには、踏み台になってもらう……ふふふ、とってもアウトローでハードボイルドだわ!!

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

アビドス砂漠

カイザーPMC基地近郊

 

私はアビドス高校1年生、黒羽レイヴン。

今は先生がシャーレから借りて来てくれたヘリコプターに乗り込み、アビドス砂漠を横断している。

ヘリコプターでの移動はルビコンで何度も経験して来たはずだが、妙に体に馴染まないのは吊るされていないからだろうか。

皆、広くも狭くも無いヘリの中で静かに目的地に到着するのを待っていると、アヤネ先輩とチャティから通信が入る。

 

『……探知されずに進めるのは、ここまでが限界です。 皆さん、準備はよろしいですか?』

『持ち物の確認は遠足の基本……だったな、ビジター。』

「そうだねちゃてぃ。 もうこのじてんできづいても、どうしようもないとおもうけど。」

 

アヤネとチャティの指示に従い、装備の最終チェックを行う。

私は久々に握った元のアサルトライフルを磨き、その後はパルスブレードの試運転を行い、どれも故障していない事を確認する。

そして左手にホシノ先輩のショットガンを、背中に盾を背負いヘリの扉の前に立ち、開ける。

砂が混じった冷たい風と大きな風切り音が私の体を包みこみ、耳鳴りがして懐かしい声が聞こえてくる。

 

『621、準備はいいか。』

『独立傭兵が単機で仕掛けてくるとは、封鎖機構も想定していない。』

『行ってこい。 仕事の時間だ。』

 

久々に頭の中に響いたウォルターの声に従い、飛び降りようとしたところをガシッと腕をセリカ先輩に掴まれ止められる。

 

「ちょちょ、ちょっとレイヴンちゃん!? 何考えてるの!?」

「えっ、もうさくせんちてんなんですよね?」

「ん……まだ降りるには高すぎるし、ヘリも止まってない。」

"びっくりしちゃった……。"

「レイヴンちゃん。 今回は最終的には歩きですし、そもそも空中のヘリから降りる時は静止してもらったあとこのロープを使って降りるんですよ。」

『な、何しようとしたんですか!?』

『ビジター。 いくらその身体が頑丈とはいえ、生身には変わりない。ACの様にはいかないだろう。』

 

……いまいちまだ納得できていないが、どのみちヘリが地面に降りるのであれば、余計なリスクを負う必要は確かに無い。

しばらくしてヘリは着陸し、それぞれ順番に降りて最終チェックを行った。

 

「ん、準備完了。」

「補給品もおやつもばっちりです!」

「睡眠もしっかり取ったし、お腹もいっぱい! どっからでも来なさい!」

「……ちゃてぃ、もしかしてわたしってけっこうらんぼうにあつかわれてた?」

『大陸間輸送用カーゴランチャーで生身の人間を打ち出すような事は、乱暴に扱われていることに入るだろうな。』

「なるほど。 じゃあへりからちょくせつとうかされるくらいはふつうだね。」

"経験があるの!?"

「普通じゃないからね!?」

 

そのような雑談をしながら、インカムの調子を確かめる。

しばらくすると、私たちが使っている回線にもう4人入ってきた。

 

『遅かったわね! 先に始めちゃうところだったわ!』

『やっほ〜☆ 久しぶり〜!』

『よろしく。』

『お、お邪魔します!』

 

どうやら便利屋68の方は既に到着していたようだ。

『花火会場』の時のカーラ達とは違い、ちゃんと作戦時間に合わせてくれた事に感謝する。

 

『先生に教えていただいた情報ですと、ホシノ先輩は第51地区の中央あたりにいるはずです。』

『了解したわ! ムツキ!ハルカ!準備はできてる?』

『大丈夫ですアル様、いつでも吹き飛ばせます……!』

『準備オッケーだよ〜。』

『突入ルート計算完了、マップに表示。 先生、いつでも始めてくれ。』

"みんな、ありがとう。 それじゃ、出発!!"

『はい!ホシノ先輩救出作戦……開始です!!』

 

アヤネ先輩の号令と同時に基地内で爆発が起き、それに合わせて突入する。

便利屋68に事前に位置を知らせておいた燃料貯蔵庫や弾薬庫から火の手が上がり、PMC兵達が混乱しながら出てきた。

 

「て、敵襲!!」

『人数は……4人? 迎撃を開始する!本部に連絡を!!』

『外部通信が途絶している……どう言う事だ!?』

「ダメです! 通信が繋がりません!!」

『裏手にも襲撃者が……! 増援をまわせるか!?』

「こちらもやられている!!」

 

便利屋68の皆さんは依頼通りに仕事をしてくれたおかげで敵は混乱状態に陥っている。

企業といえど、統率を欠けばこの程度。

上からの指示がなければまともに対応できないのはどこも同じのようだ。

 

『先生!こちらで中継アンテナを破壊したわ!   これで連中はしばらく通信ができないはずよ!』

『……敵の目はこちらに引き付けておく。 その間に作戦を進めて。』

『でも、流石はプロだね〜。 復旧対応が早いよ。そう長くは持たないから急いでね〜♪』

『消えてください!!消え』

 

便利屋68の助力を、無駄にするわけにはいかない。

ホシノ先輩がいるはずの地区まで、私達はさらに足を早めた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

アビドス高校

対策委員会教室

 

ホシノ先輩救出作戦は、不気味なほど順調だ。

便利屋68の皆さんのおかげで初動はこちらが優勢で、カイザーPMCの通信回線が復旧し北方から大規模な増援を察知したものの……

 

「……はぁ。」

『カイザーPMCの増援を発見。一個大隊の規模です、委員長。』

「分かった、準備して。」

「了解です、委員長。」

「どうして私もここにいるんだ……。」

(イオリと部隊長はともかく何故私まで……)

「ここで全軍止める、誰一人として先生には近づけさせない。 行こう。」

 

そちらは先生が協力を取り付けておいてくれたゲヘナの風紀委員会の精鋭が相手をしてくれている。

どうやら空崎ヒナ委員長も参戦しているらしく、既に北方からの敵の反応は無くなりかけている。

先生に教えていただいた座標まであと一歩というところで現れた増援部隊も……

 

ドゴォォオォン!!

 

「支援射撃?」

『あれは……L118、トリニティの牽引式榴弾砲です! 一体どうして……』

『あ、あぅ……わ、私です……。』

「あっ!ヒフ」

『ち、違います! 私はヒフミではなく、ファウストです!』

 

ヒフミさん……ではなく、ファウストさんがトリニティ総合学園とは『一切関係の無い』支援砲撃をしてくれたおかげですんなりと片付いた。

ホシノ先輩のところに辿り着くまで、あとほんの少しというところでチャティさんが呟いた。

 

『……頃合いだな。』

「え? チャティさん、どうしました?」

『奥空アヤネ。 要求がある。俺をローダー4のコックピットに繋いでくれ。』

「え……。まさか、私達も直接行くんですか?」

 

まだ勝利が確定したわけでは無いが、ここで出来ることは確かにもうほとんどない。

だからといって、ここを離れる理由にはならないが、チャティさんはAIらしからぬ口調で言い切った。

 

『分かっていないな、奥空アヤネ。 小鳥遊ホシノの救出劇だ。劇場で見ないでどうする。』

「げ、劇場?」

『……ボスの真似だ、気にしないでくれ。 それよりも急いでくれ。入場に間に合わなくなる。』

「わ、分かりました!」

 

支援用のノートパソコンを折りたたみ、チャティさんが入っているデバイスを重ねて表の整備コンテナへ移動する。

砂が入らないように厳重に閉じられた扉を開けて中へ入ると、自動で照明が付きさっきまで真っ暗だったコンテナの中が一瞥できるようになる。

改めて大きいと思いながらローダー4を眺めると、違和感を感じた。

 

「……あれ? チャティさん、ローダー4ってあんな箱を背負ってましたっけ?」

 

ローダー4の背中に、見慣れない長方形の箱が付けられている。

少し前までは、ローダー4には何もついていなかったはずだ。

 

『ああ、あれは一種の商売道具だ。 特に俺達の「商談」には欠かせないものだ。』

「なるほど……?」

 

商談……ということは、中身に何か入っているのだろう。

ちょうど書類鞄の様にも見えるデザインではあるし……もしかしたら、アビドス高校の借金返済には使えない現金でも詰められているのかもしれない。

堅牢で動き回る金庫となれば、セキュリティは万全だろう。

とにかく、チャティさんの要望通りにまずはコックピットに近づく。

レイヴンちゃんのテリトリーでもあるコックピットに入る前に一礼し、シートに座る。

……座り心地は、ゴツゴツしていてあまり良くない。

その後、チャティさんの指示通りにコンソールを触り、チャティさんとローダー4を端子で繋ぐと目の前のディスプレイが起動した。

 

『メインシステム 戦闘モード起動』

『よくやってくれた、奥空アヤネ。』

「い、いえ、私は言われた通りにやっただけで……!?」

 

クイン、クインと1人でに操縦桿が動き出しローダー4が動き出した。

画面に『ACCESS』という文字と白い棒が現れ、棒が伸びきると同時にコンテナのドアが開いた。

眩しい陽の光が入り込んできて思わず目を閉じる。

 

『行くぞ、奥空アヤネ。』

「はい!!……えっ、もしかして、もしかして!?」

 

覚悟ができる前に、ローダー4は空へ向かって飛んでいた。

これがホシノ先輩を、ノノミ先輩を、シロコ先輩を、セリカちゃんを、先生を、それからネルさんを動けなくしてしまうほど弱らせたローダー4の機能『アサルトブースト』

……遂に、私の番か……。

自分の体にかかる圧倒的なGで、悲鳴を上げることもできないまま、私はアビドス砂漠の空を飛んでいった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

アビドス砂漠

元アビドス高等学校本館 地下

 

『「奇跡」というのはもっとすごくて、珍しいもののことですよ。』

 

すごく懐かしい、あの頃の会話が頭に響く。

もう会うことは叶わない、私の大切な先輩との、数少ない会話の記憶だ。

 

『……ううん、ホシノちゃん。 私は、そうは思わないよ。』

『ねえ、ホシノちゃん。いつかホシノちゃんにも可愛い後輩ができたら、その時は……』

 

先輩の言っていたことが、今になってよく理解できた。

可愛い後輩達がいて、頼れる大人が現れて、良いことも悪いこともたくさんあったけれど、それが全て『奇跡』だったということが。

……そして、それはもう、私の前から消えてしまった。

いや、私自身が、手放してしまったのだ。

 

ズシィィィイン……!!

 

突然、大きく周囲が揺れ、その拍子に私を縛り付けて動けなくしていた赤い光の糸が消え去る。

 

「体が自由に……?夢でも見てるのかな……。」

 

夢か現実か、どちらともつかない状況の中で、遠くから聞き覚えのある声が聞こえた気がした。

 

(ホシノ先輩はすぐそこにいるはずです!!)

(ん、壊れない……もう一度……。)

(皆さん!! 状況は!?)

 

私を閉じ込めていた部屋から出ると、ずっと暗い廊下が続いていた。

その先から、また懐かしい声達が聞こえた。

 

(あ、アヤネちゃん!?どうしてここに!?)

(チャティさんが動かしてくれたローダー4で!! ホシノ先輩は!?)

(この先です! でも、ドアが開かなくて……!!)

(みなさん、さがってください。……ぶったぎってやります。)

 

頑丈そうな鋼鉄製のドアの向こうから、後輩達の声が聞こえる。

……夢でも良いから、最後にもう一度だけ会いたい。

そう思いながらドアのハンドルに手をかけようとした瞬間だった。

 

バジュ!!

「うへぇぇええ!?!?」

 

という独特の溶断音とともに、淡い緑色の光が私の掴もうとしたハンドルごと扉を両断した。

あと一瞬手を引くのが遅くなっていたらどうなっていたことだろうか。

重厚だったドアは豆腐のようにぐにゃりと歪み、切断面から崩れ落ちて倒れ、眩しい日の光が入ってくる。

 

「「「「「ホシノ先輩(ほしのせんぱい)!!!!」」」」」

 

毎日毎日、当たり前のように呼ばれていた私の名前が聞こえた。

日の光に目が慣れてきて、ようやく鮮やかになった私の視界には、私の可愛い後輩達と、先生が立っていた。

 

「あ、あれ……どうやって……。 だって、私は……。」

「ほしのせんぱい!!!!」

 

状況を理解できず呆然としている私に、レイヴンちゃんが私の盾を背負っているとは思えない速さで突撃してきた。

大型犬が自分のサイズを理解しないまま主人へ抱きつくようなパワーと衝撃を受けて体勢を崩して倒れてしまう。

けれど、その力強さが、これが夢ではないと教えてくれた。

 

「レイヴン、ちゃん……?」

「はい……!? すみません!!おなかのきずは!?」

「もうすっかり治ってるよ……って、レイヴンちゃん、その眼帯は……。」

「きにしないでください。 おしゃれです。」

「……そうなの? ほんとは、私のせいでもう見えなくなってるとかじゃ……。」

 

レイヴンちゃんとの戦いの最後、私は急所を狙い、その右目を撃ち抜いた記憶がある。

私の声が震えているのを察してかレイヴンちゃんは眼帯を捲り、綺麗な赤い瞳を見せてくれた。

先行してきたレイヴンちゃんに続いて、他の後輩達も私のそばに駆け寄る。

 

「……お、おかえりっ!先輩!」

「ああっ、セリカちゃんに先を越されてしまいました!」

「……はずかしいから、いわないって、いってたじゃないですか。」

「う、うるさいうるさいっ! 順番なんてどうでも良いでしょ!!」

「ホシノ先輩、おかえりなさい!!」

「おかえりなさい、です!!」

「……無事で良かった。おかえり、ホシノ先輩。」

"おかえり、ホシノ。"

『小鳥遊ホシノ。 出口まで歩いてくる元気が残っていたようで何よりだ。』

「さぁ、かえりましょう。 わたしたちがまもった、あびどすへと。」

 

ああ、私は、なんて幸せものなんだ。

 

「うへ〜……みんな、ただいま。」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

『感動の再会、というところだな。 おめでとう、シャーレの先生。 それと、アビドス高校の諸君。』

 

ホシノを救出し、高揚した気分のところへ聞き覚えのある声が響いた。

 

「あんたは……!!」

「カイザーの理事……!!」

「……つぎにそのかおをみせにきたら、こんどこそころしてやるといったはずですが。」

 

私達の後ろには、護衛を一人も連れず、顔に何重も包帯が巻かれたカイザー理事が立っていた。

 

『残念だがその脅しは成り立たない。 何故ならここは私たちカイザーPMCの所有地だからな。』

『私が顔を見せに来たのではなく、君が見に来たのだよ。 黒羽レイヴン。』

 

堂々としているカイザー理事に、アビドスの子達は銃を向ける。

 

「一人で出てきて、何のつもりよ!」

「どいてください!さもないと……!」

 

銃を向けられても微動だにしないカイザー理事の背後に巨大な影が現れ、レイヴンを除いた私達は動揺する。

 

『残念なお知らせだ。 我らがカイザーコーポレーションは「シャーレの先生」と「黒羽レイヴン」を優先排除リストに登録した。』

『本来なら消すのは二人だけで良いのだが……君達はとても仲良しだ。 とても優しくて気がきく私は、君達全員を消すことに決めた。』

 

またゴリアテとも思ったが、違う。

逆関節ではない足に、巨大な銃が握られている2本の腕。

サイズも、ゴリアテとは比較にならないほど大きい。

ちょうど、ローダー4と同程度の大きさだ。

……見たことがある。

確か、レイヴンにローダー4のコックピットに乗せてもらった時のシミュレーターで見たロボットだ。

 

『黒羽レイヴン、貴様には感謝しているぞ。 貴様がもたらしてくれた技術は、我々の武力を更に高めてくれた。』

「……まさか、私達の学校を襲った時に、ローダー4の解析を?」

「と、いうことは……少し見た目は違うけど、あれもACなの!?」

『クククク……そうだとも!! 我々は貴様らの最終兵器であるそのロボットを解析し、我らの物にした!!』

 

更に複数のローター音が聞こえ、巨大な輸送用ドローンに1機ずつ吊るされたAC達が現れる。

ドローンは私達を取り囲む様に移動すると、ACを投下した。

私達はあっという間に逃げ場を失い、ホシノがいた黒服の研究所から動けなくなってしまった。

 

『ここは、元はアビドス高校の本館でもあった場所だ。 君達の墓標にはうってつけだろう。』

『安心して、死ぬと良い。 校門に君たちの名前も彫ってあげよう。』

 

カイザー理事が左手を振り下ろす。

それを合図に、カイザーPMC所属を示す黄色主体のカラーリングのAC達は一斉に銃を構える。

 

「い、いくらレイヴンちゃんとローダー4が強いといったって、この数じゃ……。」

「うへ……せっかく助けてくれたのに、こんな結末か……。」

"くっ……レイヴン!! ここは私に任せて皆を連れて"

『……すこしも、わらえませんね。』

 

私が囮になっている間に皆を連れて逃げて、と伝える前にローダー4からレイヴンの声がして立ち上がる。

だがそれは逃走のためではなく、ローダー4は私達を守る様に前へ出てきた。

レイヴンは、やる気だ。

 

「レイヴンちゃん!? あの数を相手にする気なの!?」

「無茶です!! あれが戦車やヘリならまだしも、ローダー4と同じACなのでしょう!?」

『ええ、そのつもりです。』

 

焦っている私達とは対照的に、随分と落ち着いた声が返ってきた。

 

『せんせい、みなさん。 ほしのせんぱいがいた、ちかしせつにひなんしてください。』

『ここからは、わたしのしごとです。』

 

こんな状況でも一切の動揺を感じられないどころか、余裕すら感じ取れるレイヴンの言葉に私達は更に驚く。

本来ならレイヴンの戦いを見守りたいが、おそらくこれから起きるのはキヴォトス内で起きる戦闘とは比較にならない、次元の違う戦いだ。

ここにいるだけで、彼女の邪魔になってしまうだろう。

一人にさせまいと立ち向かおうとするセリカとホシノをそう説得し宥め、黒服の研究所の奥へと避難する。

 

"……任せたよ、レイヴン!"

「死なないでよ! レイヴンちゃん!!」

『りょうかいです。』

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

先生と先輩達が施設の中に避難したのを見届け、正面のディスプレイに向き直る。

ローダー4のFCSが敵影を認識し、照準が射程距離内を示す赤色に変化する。

 

「はらがたつね、ちゃてぃ。……わたしとろーだーふぉーが、ここまであまくみつもられるとは。」

『無知というものは恐ろしいな、ビジター。』

 

私がいた世界、それとそこに普及している兵器について知らない先輩達では分からなくても仕方ないが、カイザー理事が自信たっぷりに出してきたあの兵器は……ACではない。

ルビコンでやまほど見てきたBAWS社製の量産二脚MTだ。

ローダー4を解析して作ったと言っていたが、そのままそっくりは作らなかったのだろう。

彼らは企業だ。

質よりも数を揃えることを重点に置き、コストカットをした結果、ACではなくMTに先祖返りしてしまったのだ。

だがそれでも、この世界の主な兵器である戦車やヘリ、ゴリアテと比べれば圧倒的な性能を誇る兵器であり、間違いなく普通の生身の生徒たちではどうにもならない相手だ。

それにスペックだけ見れば、MTとACの性能差はそれほど離れてはいない。

一般的な独立傭兵が乗ったACではMT部隊の相手が精々で、撃破されてしまうことも珍しくはないし、実際に先生にACの教習シミュレーターをやってもらった時も、先生はなす術なく撃破されている。

カイザー理事から見れば、私と先生を殺すには十分な……いや、過剰な戦力だろう。

私は目の前の敵機体をロックし、ウェポンハンガーに付けられた武器を手に取る。

RaD製の重機関砲、ATTACHE(アタッシュ)だ。

アビドス高校周辺のスクラップをかき集め、エンジニア部の皆さんが残してくれた3Dプリンターと、チャティの持つRaDの製品データを駆使して作ったコピー品であり、大容量のマガジンには資材の関係で3分の1程度しか入っていないが、十分だ。

 

「ひさびさの、えーしーでのせんとうです。……たいくつさせて、くれるなよ。」

 

偽装用のカバーが外れ、銃身がせり出してくるのを確認すると同時にレバーを前に押し出し、私とローダー4は狩場へ繰り出した。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「な、なによあれ!?」

「ゴリアテではない……カイザーの新兵器?」

「相手が何であろうと……先生と、私のお友達を傷つけるのなら消します!!」

「ハルカちゃん落ち着いて〜。 正面から挑んでどうにかなる相手じゃないって。」

 

レイヴンの依頼で受けた小鳥遊ホシノ救出作戦の為の陽動を終わらせ、無事に救出できたか確認するために先生達と合流しようと移動し始めた矢先、私達の頭上を何かが飛んでいった。

その巨大な物は先生達が目標としていた座標に付くと降ろされ、なんと立ち上がった。

10mは越す鋼の巨体に、それに見合う大きさの銃。

見た目は玩具のように安っぽい見た目だが、あの大きさではどれも脅威だ。

スコープを覗き前線の様子を確認すると、残念ながらまだ脱出できていないアビドスの子達と先生が確認できた。

……だとすれば、やることは決まっている。

 

「皆、仕事の続きよ。 あの化け物達の注意を私達に向けるわ。」

「わぁお、アルちゃんやる気満々じゃん♪ 」

「はぁ、本来なら止めるべきなんだろうけど……。 シャーレの先生や友達を見殺しにする様な便利屋には、依頼なんて来なくなるだろうからね。」

「待っていてください!!先生!レイヴンさん!!」

 

ここはカイザーPMCの基地だ。

乗り物や重火器には困らない。

ムツキとハルカにはありったけのロケットランチャーと弾薬を集めてもらい、カヨコが用意してくれたジープへ積み込み、私は倉庫にあった対物ライフルと弾薬を借りて乗り込む。

 

「さぁ、もう一仕事よ!!」

 

私の合図と同時にカヨコはアクセルを踏み込み、細かい砂達を巻き上げ先生と友達の下へ向かう。

あの巨大ロボットにどこまで通用するかわからないが、ブラックマーケットでレイヴンがゴリアテを相手にした時は関節部や表へ出ているパイプを狙って攻撃していた。

つまり、巨体には巨体の弱点がある。

関節部や、恐らくカメラと思われる胴体の赤い発光部に直撃を加えられれば、撃破まではいかずとも注意くらいは引けるはずだ。

目標まであと数百mというところでムツキが車体から乗り出し誘導ロケットを構える。

私も対物ライフルに付けられたスコープの誤差を調整しカメラアイを狙おうと覗き込んだ瞬間悲鳴をあげてしまった。

 

ガコォン!! 

 

と金属と金属が重くぶつかり合った音が響き、巨大なロボットが私達の頭上を飛んでいった。

胴体部は大きくへこみ、手足が風化した虫の標本の様にポロポロと取れながら地面へ落下して転がり、止まると同時に爆散した。

ロボットとの衝突は避けられたが、飛散した破片がジープへ当たってしまい車体が吹き飛ばされてしまう。

カヨコはなんとかハンドルを持ち直し、近くの倉庫へジープを衝突させ停車させた。

 

「いったたたた……。」

「はぁ……死んだかと、思った。」

「あっははは……私たち、ほんっと運が良いね!」

「あ、あ、アル様、大丈夫ですか?」

 

ほんの短い付き合いになってしまったジープを乗り捨て、熱い砂の上に降りる。

倉庫の角の向こうからはいくつもの激しい砲撃音の様なものと、ジェット音を響かせながら巨大な何かが高速で動く音、金属がひしゃげ爆散する音が響いている。

意を決して覗き込むと、この世の光景とは思えないものが広がっていた。

先程私達を轢きかけたロボットと同型のもの達が隊列を組み……また別の巨大なロボットと戦闘を行っている。

そして狙われているロボットの動きには、見覚えがあった。

圧倒的な人数不利にも怯まず、敵の攻撃を予兆し避け、自分の射程へ持ち込み仕留める。

……黒羽レイヴンと、同じ動きだ。

いや、むしろこちらの方が本来の動きなのかもしれない。

生身の人間では不可能な動き……空中を羽ばたく様に舞い、目にも止まらぬ速さで敵の激しい弾幕の中を潜り抜けていく。

その人型のロボットの胸に描かれたエンブレムを、私達はかろうじて認識することができた。

アビドス高等学校の校章だ。

 

「ねぇねぇ、今見えたのってアビドスの校章だよね?」

「……まさか、アビドスにあんなものがあるなんて……。」

「が、が、頑張ってください!! レイヴンさん!」

「ハルカ!! 危ないから戻って来なさい!!」

 

どうやら、もう私たちが出る幕では無いらしい。

先生達と合流しようにも、巨大な人型兵器同士が戦ってる戦場を生身で突っ切るのは無謀だ。

残念だが、私達は倉庫の影から応援する事にした。

大丈夫、ナイトフォールが、レイヴンが……私の憧れたアウトローが、こんな奴らに負けるはずがないもの。

 

「やってしまいなさい! レイヴン!!」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

『ビジター、アヤネからの通信だ。 回線を繋ぐぞ。』

「りょうかい、ちゃてぃ。」

 

数だけは多いが、どうやらカイザー理事が用意したMT達は無人制御で、その上ACテストで用意される標的以下のAIらしい。

どうやらハードは作れてもソフトの方は今ひとつだった様だ。

味気ない戦闘に退屈しながら、ディスプレイの一角に小窓で表示された先輩達と先生を確認する。

 

『先生! ローダー4とのリンク、出来ました!』

『"ありがとう、アヤネ。 レイヴン!……ずいぶん、余裕そうだね。"』

『うへぇ……見てるだけでちょっと酔ってきちゃう……。』

『圧倒的じゃない!! そのままコテンパンにしちゃって!!』

「まかせてください。 このていどのあいてにやられたら、あのよでみしがんそうちょうになぐられてしまいます。」

 

そう発言すると同時に、あの地獄の様な仕事を思い出した。

アイスワーム戦後、敗戦を続けるベイラムに対してとどめを刺すためレッドガン部隊の迎撃及びG1ミシガンの撃破を依頼された。

あの仕事は、私のやってきた仕事の中でも一、二を争うくらい危なかった。

アーキバスは、スネイルは私に、依頼通りベイラムを再起不能に至らしめるよりも、レッドガン部隊を削った上で死んで欲しかったに違いない。

……きっと、ラスティにも死んで欲しかったのだろう。

 

『なお、受託なき場合はヴェスパー第4隊長がこれを代行することが決定されています。』

 

あの時の私は、ラスティについてどう思っているのかわからなかった。

けれど、彼には、死んでほしくなかった。

……だから私は、ミシガン総長を捨てたのだ。

 

そんな事を思い出しながら、最後の1機を撃破する。

ちょうどアタッシュの弾が尽きた。

いつもの戦場ならそのまま投げ捨ててしまうのだが、この世界には回収業者はいないのでそのままハンガーへ戻す。

 

「おわりましたよ、せんせ」

『レイヴンちゃん!! 地底から何かが!!』

 

アヤネ先輩の報告と同時に、私が立っていた地面が捲りあがり、砂埃が舞う。

そしてその中から、無数の砲弾が飛んできて当たってしまう。

凄まじい衝撃と共にピピピピッ!とACSがエラーを起こした音がコックピットに響く。

 

「うぁっ!?」

『レイヴンちゃん!?』

『"レイヴン!!"』

 

砂埃の中に、ローダー4よりも数倍は大きい影が現れ、赤いカメラアイが光り私のコックピットへ通信が入ってくる。

 

『黒羽レイヴン。 貴様を子供扱いするのはもうやめよう。』

「……かいざーりじ。」

 

砂埃が晴れ、私の前にBAWS製の4脚MTが姿を現す。

胴体に直接つけられた9連装のロケットランチャーと、両腕につけられたガトリング。

ルビコン解放戦線の『壁』やヒアルマー採掘場で遭遇した、瞬間的な火力に優れた構成だ。

まさか安物の2脚だけでなく、4脚タイプまで用意していたとは。

 

『貴様は……駆除すべき害鳥だ!!』

 

ぞわっ……と背筋に冷たいものを感じる。

今目の前にいる標的からは、私が前にいた場所では何度もぶつけられてきた感情が感じ取れた。

怒り、恐れ、憎しみ。

負の感情と共に、それに立ち向おうとする『戦意』。

頭の中が熱くなってきて、つい口角が上がってしまう。

ああ、なんて、狩り甲斐のある獲物だろうか。

そう思っている自分に気づき、嫌悪する。

私は彼を、ホシノ先輩と先生との約束を、破らずに止められるだろうか。

 

Ab06、生徒名レイヴン。普通ではない相手と対峙する。




最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
本当は今回で終わらせるつもりだったのですが、もっと面白い展開を思いついて書き直していたらもう1話伸びてしまいました。
もう自分の中ではゴールが見えているので、あと少しだけお付き合いください。
誤字脱字報告やご感想など、いつも楽しみにさせていただいてます。
それでは、また。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。