Ab06(アビドスぜろろく) 生徒名 レイヴン 作:sepa0
そしてその妄想が増殖を繰り返し、破綻したものがこの物語になります。
ぜひ楽しんでいってください。
ミレニアムサイエンススクール
エンジニア部部室
「久しぶりだね、ナイトフォール。 調子はどうかな?」
「わるくないですね。 ぱいるばんかーも、らいふるも、さえずりほうも、いつもがんばってくれています。」
「ただ、ちかくによるようじがあったので、いちおうみてもらおうかと。」
こちらの思惑とはズレた返答をする友人に、私は少し首を捻る。
「……君の調子を聞いたつもりだったんだが。まぁ、いいさ。」
「壊れてなくても定期点検! 物を扱う人達にとって説明不要なくらい当たり前で大切な心構えですね!!」
「パーカーの方は、随分ボロボロになってるね……。 直すのは当然として、予備をもう何着か用意した方がいいかな……。」
私はミレニアムサイエンススクールのエンジニア部部長、白石ウタハ。
朝、部室を開けようとしたら植え込みの木の上から現れた神出鬼没な私達の友人、黒羽レイヴン……おっと、今は独立傭兵ナイトフォールだったね。
今は彼女に渡した装備達の点検とメンテナンスをしている。
彼女の装備は特殊なものが多い。
花火師との共同制作で類似品の無いパイルバンカーや、フルオートで射撃できる対物ライフル。
他の生徒達の武器のように手軽に整備できるものでは無いが、それでも手入れはされているようだ。
本拠地が砂漠地帯にあるアビドス高校である以上、細かいところに砂が入っていると思っていたが驚くほど汚れていない。
……ただ気になることとしては、やけにパイルバンカーの杭の部分が入念に磨かれていること。
それとパーカーのフード部分が大きく損傷していたことで、少なくとも一度はちぎれたことがあるようだ。
彼女の向かった戦場は、私達の想像が及ばないほどの激戦区だったのだろう。
まだまだ改良の必要がある事にワクワクしながら作業を開始した。
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ミレニアムサイエンススクール
エンジニア部部室
「ことりさん、ここでよいですか?」
「はい! ありがとうございます!」
私は独立傭兵ナイトフォール。
他のミレニアムの生徒達の目につかないうちにウタハさん達と合流できた事に満足しながら軽い作業を手伝っていると、部室のドアが開き昨日出会ったばかりの新しい友人達の声がした。
「ウタハ先輩! おはようございます!」
"おはよう、ウタハ。"
「ここがエンジニア部ですか? もう少し離れたエリアの武器屋の方がラインナップが良かったりしませんか?」
「大丈夫だよアリスちゃん。 多分、キヴォトスで1番の武器屋さんだよ。」
「おはよう。 久しぶりだね、モモイ。」
一緒に廃墟地帯を探索したゲーム開発部のメンバーと先生が現れた。
アビドスに帰る前に一声かける予定だったが、向こうから来てくれるとは好都合だ。
こちらも挨拶をしようとしたが、その前にモモイさんが私を見つけ派手なリアクションをとる。
「……ええっ!? なんでナイトフォールがここに!?」
「おや、知り合いなのかい? ゲーム開発部の君達とは接点がなさそうだが。」
「おはようございます、ももいさん。 あいかわらずげんきそうで、なによりです。」
モモイさんとミドリさん、そして先生にも軽く挨拶をする。
そして、私が気にかけているアリスさんにも挨拶をしようとしたが先を越されてしまった。
「おお、また会えるとは思わなかったぞ! 『夜をもたらす者』よ!」
「……はい?」
昨日までのアリスさんからは想像もつかない、変わった話ぶりだ。
さらに両手を大きく広げ、まるで漫画の登場人物のようなジェスチャーも交えている。
あまりの変わりように私が呆気に取られていると、焦った表情のモモイさんが私に近づいてきた。
「そ、それよりナイトフォール! ちょおっといいかな!!」
「? なんでしょ……あの、ひっぱらなくてもついていきますよ?」
聞いておきながら私の返答を待たず、モモイさんはここにきた事情の説明をミドリさんと先生に託し部屋の隅へ私を連れて行く。
どうやらエンジニア部の皆さんには聞かれたくない話があるようだ。
確かに、本来は侵入を許可されていない廃墟地帯の探索の続きの話は聞かれない方がいいだろう。
だが、どうやら別の話のようだ。
(な、ナイトフォール! お願いだから、アリスが私達が廃墟から連れてきたロボットってことは誰にもバラさないで!)
(え?……まぁいいですが。 しごとのつづきのはなしでは、ないのですか?)
(あ、そうだ! その事なんだけどさ……。)
モモイさんは申し訳なさそうに事情を説明してくれた。
ゲーム開発部の廃部を止めるにはミレニアムプライズで受賞するなどの実績を出すか、部員をもう1人集めなければいけなかった事。
だが新入部員はどうしても集められず、受賞できるようなゲームを作る為にG.bibleを求めた事。
しかし、廃墟地帯で出会ったアリスさんを新入部員として仕立て上げる事で廃部を免れる方へ方針を転換したとの事だった。
……なるほど、モモイさんがあの時閃いた事は、やはり私の想像した通りだったということだ。
「……ということで、もう廃墟に行く事は無いと思う。 もしその為に残ってくれてたのなら、ごめんね。」
「ふむ、りょうかいしました。 いらいのきゃんせるりょうはいただきませんよ。」
「えっ、ほんと!?……よかったぁ〜。」
あっさりと仕事のキャンセルを受け入れた私に、モモイさんは胸を撫で下ろして安心する。
「先生からお金にうるさい人って聞いてたから覚悟してたんだけど……ありがとう!ナイトフォール!!」
「まぁひていはしませんが……めんとむかっていわれると、すこしきになりますね。」
元々、報酬金ではなく先生に呼ばれたから受けた仕事なので気にしていないのだが。
安心しきって晴れやかな顔を浮かべているモモイさんと一緒に先生達へ合流する。
「……なるほど、大体把握できたよ。 新しい仲間に、より良い武器をプレゼントしたい……と。」
「そういう事であれば、エンジニア部に来たのは素晴らしい選択だね。」
自分たちが頼られていることに嬉しそうな表情を浮かべながらウタハさんが頷いている。
「わたしも、あるゆうじんからのじょげんで、ここをたよりましたからね。」
「へぇ、ナイトフォールさんの武器もエンジニア部製なんですね。」
「ナイトフォールのお墨付きであるならば、きっとこの武器屋の評価は星5ですね!」
「そっちの方に、私達がこれまで作ってきた試作品が色々と置いてある。 そこにあるものであれば、どれを持って行っても構わないよ。」
ウタハさんは私が囀り砲を掘り出した倉庫の方を示す。
「やった!ありがとう、ウタハ先輩!」
モモイさんを先頭にゲーム開発部と先生と、案内役のヒビキさんとコトリさんが倉庫の中へ入っていく。
どうやら、私の武器のメンテナンスは終わっているようだ。
私はアリスさんがすっかり馴染めている様子を見届けられたので、報酬を払ってアビドスへ帰る事にした。
「うたはさん、ありがとうございました。 いくらになりますか?」
「ああ。 その事なんだけど、ちょっと良いかな。」
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エンジニア部部室
試作品置き場
「……これはどう? アリス。」
「へぇ、拳銃?」
案内役として付いてきてくれたヒビキが、見た目はシンプルな少し大きめの拳銃をアリスへ勧めてくれる。
「見た感じ、多分だけど……これまでに戦闘経験はあまりないはず……。」
「その言葉は否定します。 アリスはこれまでに人類を27回救い、魔王軍との46回に渡る戦闘を行い、3桁を超えるダンジョン探索を行ってきました。 経験値はそれなりに豊富です。」
「……それは、すごいね……。」
モモイが思い付いた廃部を避ける手段。
それは、アリスをミレニアムの生徒と偽装し、ゲーム開発部の部員として迎え入れて規定人数を満たす事だった。
しかし、喋り方がどうしてもサポートAI気味で、ユウカの目は誤魔化せなさそうだった。
なんとしても、普通の生徒らしい……少なくとも、人間らしい話し方を学ばせる必要があった。
そこでミドリが提案したアリスへ言葉を覚えさせる方法……それは彼女達が作ったゲーム、『テイルズサガクロニクル』を遊ばせることだった。
「緊張、高揚、興味。」
「行きます、プニプニに対して『秘剣!つばめ』ーー!?!?」
「電産処理系統、および意思表示システムに致命的なエラーが発生」
「……質問。 どうして母親がヒロインで、それでいて実は前世の妻で、さらにどうしてその妻の元に、子供の頃に別れたきりの腹違いの友人がタイムリープしてきているのか。」
「いえ、そもそも『腹違いの友人』という表現はキヴォトスの辞書データに登録されていなーーエラー発生!エラー発生!!」
「こ、ろ、し、て……」
彼女達が作ったゲームの独特な言葉遣いや単語に振り回されながらも、一定の効果が現れた。
その後、アリスがゲームをしている様子をずっとロッカーの中から見ていたゲーム開発部の部長、ユズも交えて勧められた別のゲーム達を夜通しやり続けた結果、ロボットらしい単語を羅列するだけのような発言を減らすことはできた。
……だが、完璧に人間らしい喋り方になるにはまだ時間が要るようだ。
果たしてチャティには、どれほどの時間がかけられていたのだろうか?
「とにかく、銃器を使用した経験は……あまり無さそう。」
「そういう人にはやっぱり拳銃が良い……これはプラスチック製だから軽いし、反動も少ない……。」
その後、この拳銃にはミレニアム史上初の『Bluetooth』(無線で音楽鑑賞やファイルの転送などを行えるようにする)機能が付いていたり、交通系ICとしての使用やキャッシュレスでの決済も可能など、拳銃に付いて便利になるかはやや疑問な機能の説明を受けた。
「す、すごいと言えば、すごい気もするけど……。」
「こんびにで、れじにむかってじゅうをつきだすのですか? ごうとうとまちがわれても、もんくはいえませんね。」
「わ、ナイトフォールさん。 いつの間に。」
お得意様であるレイヴンにもツッコまれてしまい、ヒビキは少し残念そうな顔をする。
ミドリが他の銃にしようとアリスに提案しようとして、彼女が側にいないことに気づく。
「あれ、アリスちゃんはどこに?」
"アリス? どこに行ったの?"
「……このあたりは、あしばがせまいうえに、ばくはつぶつもやまほどあります。 ころんでたおしたり、しなければよいのですが。」
「……さすがに信管や実弾は倉庫に置くときに抜いてあるから、爆発や暴発の心配はしなくていい……と思う。」
「な、なんでしないって言い切れないの!?」
ヒビキの発言に少しドキドキしながらアリスを探すが、すぐに見つかった。
アリスは白色の巨大な何かの前で、それを見つめていた。
「これは……。」
「ふっふっふっ……お客さん、お目が高いですね。」
ずっと解説の機会を伺っていたコトリがいつの間にかアリスの真横に立ち、ニコニコと微笑んでいる。
アリスが無事に見つかったことに安堵しながら私達もこの大きな何かについて解説してもらうことにする。
「コトリちゃん、アリスちゃんが見ているこの大きいのは何?」
「いい質問ですね、ミドリ。」
真っ当な疑問をミドリが投げかける。
コトリは腕を組み笑みをこぼしながら答えた。
「これはエンジニア部の下半期の予算、その内の約70%近くをかけて作られたエンジニア部の野心作……」
「『宇宙戦艦搭載用レールガン』です!」
「……ほう。 いわれてみれば、すこしにているかもしれません。」
"何に似てるの?"
「むかし、かーまんらいんのちょっとうちがわで……あ、いえ、なんでもないです。」
少し懐かしそうな顔をしたあと、はぐらかされてしまった。
きっとレイヴンの事だから、昔撃たれたことがあるとでも続けるつもりだったのだろう。
当たることは無かったことに安心しながら、モモイ達の方へ向き直る。
「宇宙戦艦って……また何かとんでもないことを。」
「前にも、確かコールドスリープしようとして、『未来でまた会おう』って言いながら冬眠装置を作って大騒ぎした挙句、みんなして風邪ひいてなかった?」
「その『未来直行エクスプレス』なら、今でもよく使っているよ。……まぁ、冷蔵庫として、だがね。」
「ずいぶんとおおげさな、なまえですね。 まあ、じつようせいはあったようでなによりです。」
「ええ!いつでもひんやりした飲み物が飲めるので作業効率が上がりました!……話を戻しますと、エンジニア部はヘリコプターや汎用作業ロボットに続いて、宇宙戦艦の開発を目標としているのです!!」
「このレールガンは、その最初の一歩です。 大気圏外での戦闘を目的として開発された実弾兵器! これはミレニアム史上、明らかに類を見ない初の試みです!!」
コトリが瞳を輝かせながらする夢のある解説に、私達も興奮する。
このサイエンススクールが常に技術の最先端を行くのは、彼女達をはじめとした開拓の心がこの学園の生徒達に満ち溢れているからだろう。
「かっこいい……聞いただけでワクワクしてくる!」
「さすがミレニアムのエンジニア部! 今回は上手くいってるんだね!」
「ふっふっふっ、もちろんです!!」
コトリの解説に感化されたモモイとミドリがエンジニア部を讃え、エンジニア部の3人とも少し照れくさそうに笑う。
だが、その態度は残念ながら長くは続かなかった。
胸を張っていたコトリの姿勢が元に戻り、説明を続ける。
「……と言いたいところだったのですが、ちょっと今は中断してまして……。」
「えええっ!なんで!期待したのに!」
「……なにかひつようなぶひんが、どうしようもないくずに、もちにげでもされたのですか?」
「! 大変です!早く取り返さないと盗まれたアイテムは消えてしまいます!」
レイヴンとアリスが戦闘態勢に入ろうとしたのをコトリは焦りながら止める。
「違いますよ!……いつものことながら技術者達の足を引っ張るのは、いつの世も想像力や情熱の欠如ではなく、予算なんです……。」
「このレールガンを作るだけで下半期の予算の70%もかかったのに、宇宙戦艦そのものを作るには果たして、この何千倍の予算がかかることやら……。」
「……たしかに、うちゅうたんさせんならともかく、たたかうあいてがいないせんかんでは、ぱとろんもみつからないでしょうね。」
「うぐぅっ!!」
「そんなの計画段階で分かることじゃん! どうしてこのレールガン、完成まで持って行っちゃったのさ!?」
「愚問だね、モモイ。」
レイヴンの鋭い指摘にダメージを負っているコトリの代わりにウタハがモモイからの質問に答える。
「……ビーム砲は、ロマンだからだよ。」
その答えにヒビキは頷き、コトリも起き上がる。
「その通りです!ビーム砲の魅力が分からないなんて、全くこれだからモモイは。」
「バカだ!頭良いのにバカの集団がいる!」
「ふふっ。 なかなか、わらえるひとたちですね。」
……さっき、実弾兵器と言っていた気がするけど、これはビーム砲なのだろうか?
まぁ私が気にしても仕方のないことだし、ビーム砲でもレールガンでもどちらもかっこいいことには変わりない。
「それに今は、少し別の物に注力していてね。 宇宙戦艦の方は後回しにしているのさ。」
「ともかく、エンジニア部の情熱が注ぎ込まれた、この武器の正式名称は……。」
「『光の剣:スーパーノヴァ』!」
「また無駄に大袈裟な名前を……。」
「れーるがんなのか、けんなのか。 ちゃーじによってぶきのとくせいがかわる、ということでしょうか。」
「……! ひ、光の剣……!!」
コトリが教えてくれた正式名称にミドリは呆れ、レイヴンは真面目な考察をし、アリスは瞳を輝かせた。
アリスは光の剣の周囲を、全身で感動を表現しながらくるくると周り観察する。
「アリスちゃんがこんなに興奮してるの、初めて見たかも。」
「でかくてかりょくのあるぶきは、いつだってひとをとりこにするものです。」
一通り周り終えたあと、アリスは両手を腰に当て胸を張り、ずっと探していた宝物を見つけた冒険者のような顔つきでヒビキへ伝える。
「これ、欲しいです。」
「……え?」
「偉大なる鋼鉄の職人よ、あの龍の息吹が欲しいのだ。」
少し間が空き、返答がされる。
「うーん、そう言ってくれるのは嬉しいのだけれど……。」
「申し訳ないのですが、それはちょっと出来ないご相談です!」
渡せないという答えにアリスはショックを受けて硬直し、モモイが憤慨する。
「何で!? この部屋にあるものならなんでも持っていって良いって言ったじゃん!」
「いや、まぁ、しかたのないことだとおもいますよ。」
「……それは、理由があって。」
「理由?……!」
アリスとモモイは思い当たることがあったのかハッとした顔で順番に発言する。
「もしかして、私のレベルが足りてないから……装着可能レベルを教えてください!」
「いや、悪いがそういった問題ではなくてだね……もっと現実的な問題なんだ。」
「お金かー……心配しないでアリス。 私が、ミドリのプライスステーションを売り払ってでも……。」
「おかねのもんだいでも、ないとおもいますよ。」
「現実にお金以上の問題なんて無いでしょ!……まさか、ナイトフォールが予約済みとか? お願い!譲って!!」
「ちがいますよ……ああちょっと、だきつかないでください!」
レイヴンに縋りつき譲歩してくれるよう頼み込み始めたモモイを流しながらウタハとコトリが答える。
「この武器は、個人の火器として使うには大きくて重すぎる。」
「なんと、基本重量だけで140kg以上です! さらに光学照準器とバッテリーを足した上で砲撃を行うと、瞬間的な反動は200kgを超えます!」
「でもナイトフォールなら扱えるんでしょ!?」
「あつかえませんよ!……ためそうとしたことは、ありますけど。」
"あるんだ……。"
エンジニア部の説明を受けてアリスはしょんぼりとしてしまう。
「これをかっこいいと言ってくれただけで、私たちは嬉しいよ。 持っていけるのならば、本当にあげたいところなのだけど……。」
「?……!!」
その姿を見て申し訳なさそうにウタハは謝罪するが、その言葉の内容にアリスは再び立ち上がった。
「……汝、その言葉に一点の曇りもないと誓えるか?」
「ん? この子、また喋り方が……。」
「た、多分ですが『本当なのか』って聞いているんだと思います。」
ミドリが咄嗟にフォローをして、ウタハが質問に答える。
「もちろん嘘は言っていないが……それはつまり、あれを持ち上げるつもり、ということかい?」
アリスはその質問にこくりと頷き、スーパーノヴァの中心をがっしりと両手で挟む。
「この武器を抜く者……この地の覇者になるであろう!」
まるで伝説の剣の説明をする王様のような台詞でアリスは高らかに宣言した。
エンジニア部の3人はアリスのやる気に感心するが、持ち上げようとするとヒビキとレイヴンが声をかけた。
「んんんんんっっ……!」
「無理は、しないほうがいい……クレーンでも使わないと持ち上がらな……」
「そうですね。 わたしも、すこしかたむけるのがせいぜ……い……。」
"わぁ。"
アリスが必死に踏ん張ると、なんと、スーパーノヴァが持ち上がっていく。
流石に軽やかな動きではないが、アリスは見事にスーパーノヴァを持ち上げ、構えてみせた。
「……も、持ち上がりました!」
「嘘……信じられない……。」
「……あのみためで、このりょりょく? いったい、なんのために……。」
その場にいた全員がアリスの怪力に目を丸くしていると、アリスはスーパーノヴァの持ち手部分を触りだした。
「えっと、ボタンは……これがBボタンでしょうか?」
「ま、待って……!」
「え? じつだんはぬいてあるんですよね?」
止めるヒビキの声が届く前に、見覚えのある青白い光がスーパーノヴァから溢れ始める。
「……っ、光よ!」
ドガアァァァァァン!!
思わず目を閉じてしまうほどの閃光が走り、轟音が鳴り響いた。
アリスが咄嗟に銃口を上に向けてくれたおかげでこちらに飛んでくることは無かったが、その代わりに部室の天井には大きな穴が開いていた。
そして瓦礫と粉塵が舞う中心には、目を輝かせたアリスが立っていた。
「……すごいです。 アリス、この武器を装備します。」
満足げな顔で背中にスーパーノヴァを回したが、つけるところがないのでそのまま落としてしまい部室の床がへこむ。
目の前の光景にやっと整理がついたコトリが口を開いた。
「ほ、本当に使えるなんて……で、ですがそれだけは、その……! 予算とか諸々の問題で、できれば他のでお願いしたく……!」
下半期の予算を70%注ぎ込んだものをタダで渡すわけにはいかないという真っ当な理由を述べるコトリを遮りウタハが言う。
「……いや、構わないさ。 持っていってくれ。」
「ウタハ先輩……本当に良いんですか?」
あまりに気前の良すぎるエンジニア部の対応にミドリが確認をとる。
ウタハは少し頭を抱えるが、頷いた。
「ああ、どちらにせよ、この子以外には使えないだろうからね。」
「ヒビキ、後でアリスが持ち運びやすいように、肩紐と取っ手の部分を作ってあげてくれ。」
「分かった……前向きに考えると、実戦データを取れるようになったのはありがたいかな。」
「……せんかんのしゅほうを、ひとがうったでーたって、やくにたつものなんですか?」
「前例が無い武器ですからね! どんなデータであっても貴重なデータになります!!」
"そういうものなんだ……。"
とにかく求めていたものが手に入ってよかった。
ただ、ちらりと見えたレイヴンの口角が少し上がっているのが気になった。
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ミレニアムサイエンススクール
エンジニア部部室
「なんだかものすごい武器をもらっちゃったね! ありがとう!」
「あ、ありがとうございます!」
私達の新しい仲間、アリスへのプレゼントと生徒として疑われない為の武器を貰えないかとエンジニア部の人達を頼ったところ、すごい武器をもらってしまった。
こちらとしては本当に武器ならなんでもよかったんだけど……でも、アリスはとても気に入ってるみたいだし、良かった。
……部室の床、抜けたりしないよね……?
そんな考えが浮かぶくらい浮かれている私達に、ウタハ先輩が残念そうに言いだした。
「いや、お礼にはまだ早いさ。」
「え?」
「ヒビキ、以前に処分要請を受けたドローンとロボット、全機出してくれるかい?」
「……うん。」
ヒビキが手元のタブレットを操作すると周囲の倉庫のシャッターが開き、ややガタついた動きをしたロボットとドローンが現れた。
不穏な空気にミドリが口を開き、私もそれに続く。
「えっと……ウタハ先輩? なんだか展開がおかしいような……。」
「これってもしかして、『そう簡単に武器は持って行かせない!』みたいなパターンじゃない!?」
私達の質問にウタハ先輩とコトリは満足気に頷きながら答える。
「その通りさ。 その武器を本当に持って行きたいのなら……」
「彼らを倒してからにしてください!」
彼女達が好きなドッキリ!という雰囲気でもなく、攻撃命令を受けたロボット達がこちらへにじり寄ってくる。
「他の武器なら、喜んで渡しただろうけれど……その武器については、確認が必要かなと思ってね。」
「いや……『資格』と読んだ方が相応しいかな。」
「資格?それって……。」
ウタハ先輩の意味ありげな言葉に対する追求を始める前に、アリスが戦闘態勢に入る。
「前方に戦闘型ドローン及びロボットを検知、敵性反応を確認。 来ます!」
「ああもう!!」
とにかく、やれと言われたらからにはやるしかない。
……幸い、もっと怖い思いを最近したばっかりだし、廃墟で出くわしてきたオートマタ達に比べればイージーモード!……のはず!!
「行くよ、ミドリ!アリス!」
数分後。
私の撃った弾丸がドローンを落としたのを確認して次の標的を探すと、もう何もいなかった。
どうやら私が落としたのが最後だったらしい。
「……あれ、これで終わり?」
「敵性反応無し、完全勝利です!」
自分たちでも驚くくらいあっさりと勝ててしまった。
先生も、
"よくやったね。"
と拍手をして褒めてくれてる。
もしかして、私達って思ってるより強いのかも?
「……とにかく! これで本当にスーパーノヴァはアリスの」
「ふむ、やはりこの程度では実力を測るには不十分か。」
「……じゃあ、よろしく頼むよ。」
勝利宣言をしようとした私をウタハ先輩が遮る。
それと同時に、不自然に閉まったままだったシャッターが開いてそこから……
「追加ボスですね! 倒して経験値に……」
「えっ、嘘!」
「な、なんであなたが!?」
いつもと手に持ってる武器は違うけれど、間違いない。
あの人は……!
「あたらしいごゆうじん。 またあえましたね。」
「ご、ご友人?」
「わぁ、とっても素敵な呼び方です! アリスもご友人がたくさん欲しいです!」
「あ、明らかにその挨拶は状況にあってないって!!」
廃墟の探索でお世話になった独立傭兵、ナイトフォール。
彼女はやけに柔和な挨拶をしながら両手に持ったサブマシンガンに弾を込めつつ、カツン、カツンとわざとらしく足音を立てながら私達の前に歩み出す。
「あなたたちのしけんのあいてを、うたはさんからまかされました。」
「みせてもらいましょう。……かりもののつばさで、どこまでとべるか。」
彼女のイメージに合わないキザなセリフを言って、2丁のサブマシンガンを構える。
「さぁ、たのしいときをすごしましょう。」
「「「楽しめない(よ)(です)(ません)!!!」」」
独立傭兵、ナイトフォール。
普通にステージボスを務める。
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エンジニア部部室
アリスがスーパーノヴァを引き抜く数分前
「うたはさん、ありがとうございました。 いくらになりますか?」
「ああ、その事なんだけど、ちょっと良いかな。」
「? なにか、わるいところがみつかりましたか?」
「いや、そうじゃなくてね……。」
ウタハさんは周りを見渡して2人きりなのを確認してから、口を開いた。
「あの子、ロボットだろう? あれほど精巧な機体は見た事は無いが、私には分かる。」
「……そうなのですか? とても、そのようにはみえないですが。」
「おや、意外だね。 君ならなんとなく感じ取れているものかと思っていたけれど。」
流石は、エンジニア部の部長だ。
モモイさんとの約束なので私は知らないふりをするが、果たしてどうなるだろうか。
「まあ、だからといってどうするつもりもないんだが。」
「……しかし、どのような機能を持っているのかは知りたいんだ。」
ウタハさんの目に、探究心に満ちた光が灯る。
普通であれば、生徒ではない正体不明の謎のロボットを無許可で連れ込んでいるであろうモモイさん達を通報なりなんなりするべきなのだろうが……このミレニアムサイエンススクールは、常識では測れない変人達の集まりである事を思い出した。
「そこで適当な理由をつけて模擬戦をさせて、アリスの戦闘データを取りたいんだが……あいにく、自由に使える廃棄予定のロボット達の数が少なくてね。」
ウタハさんが手元のタブレットを開き倉庫に置いてあるロボット達を見せてくれる。
私が装備の製作を依頼したときに、戦闘能力を測るために相手をした四角くて小さいロボットとドローン達だ。
……もしかして数が足りない理由は、私が壊しすぎたからだろうか?
「そこで依頼だ。 君に、仮想敵としてゲーム開発部の子達の相手をしてほしい。」
「報酬は今回のメンテナンス代を補填するという事でどうかな? 受けてくれるかい?」
「ふむ……。 ほんらいなら、しごとのいらいはまねーじゃーをとおしてもらうのですが……。」
今回は報酬金が発生するものでもないし、元々メンテナンスの提案をしてくれたのもチャティだ。
特に報告する必要はないだろう。
「いいでしょう。 そのいらい、うけますよ。」
「ありがとう、ナイトフォール。」
「……しかし、君用の武器だと思わぬ怪我を負わせてしまいそうだ。 今回はモモイ達が向かった倉庫から、適当に見繕って使ってもらえるかい?」
「そうですね。 わたしも、かれらをつかうのはひかえようとおもっていました。」
確実に行動不能にさせる必要のある不良グループやオートマタ達と違い、今回のターゲットは一般の、それもインドア派の学生だ。
元々人に向けて撃つものではないが、迫撃砲やパイルバンカーを打ち込んで良い相手ではない。
私はローダー4のアセンブリを思案している時の気持ちを思い出しながら倉庫の方へ向かった。
読んでいただき、ありがとうございました。
沢山の帰還を歓迎する感想を頂けて大変嬉しいです。
AL1SとC4-621の組み合わせは、学園の枠を超えての先輩後輩の関係になれると思います。
とても妄想が捗りますね。
どんなに確認しても生まれる誤字報告、長文短文を問わない感想を送ってくれたら素敵だ……。
それでは、また。