Ab06(アビドスぜろろく) 生徒名 レイヴン 作:sepa0
お話を作る時も、大体モモイが転がしてくれるので助かっています。
今回も楽しんでいただけると、嬉しいです。
ミレニアムサイエンススクール
廃墟地帯
「ちゃてぃ、ここはどう?」
『駄目だな。 まともな物は残っていなさそうだ。』
「ざんねん。 つぎにいこうか。」
『ここでは何が起きても不思議ではありません。 気をつけて。』
ローダー4の頭部に備え付けられたスキャナーが得た地形データをチャティとアヤネ先輩に送り、残念な結果が返ってきたのを確認して移動を開始する。
私はアビドス高校1年生、黒羽レイヴン。
今は、アヤネ先輩とチャティのサポートを受けながらお金になりそうな物を探してミレニアムサイエンススクール近郊の廃墟を探索している。
連邦生徒会が立ち入りを制限している領域に侵入するということで猛反対を受けたが、ここは既に放置されている地域であることと、物品は持ち出さないという条件でどうにか了承してくれた。
では何を求めて探索しているのかというと、『データ』だ。
ゲーム開発部の皆さんが求めたゲーム作成に関しての解説書である『G.bible』のデータがここにあるのならば、他の専門的な分野に関しての知識がまとめられたデータがあってもおかしくはない。
例えば銃器や兵器、ロボットや素材についてのデータがあればそれを直接売り物にしても良いし、ある程度の物ならローダー4の整備コンテナに備え付けられた設備で作成できる。
販売先はブラックマーケットあたりにでも流せば買い手がつくだろう。
アヤネ先輩から次にめぼしい地点の座標が送られてきてマップに表示される。
廃墟地帯をローダー4で移動していると、耳鳴りと一緒に懐かしい声が聞こえてきた。
『レイヴン、あなたに個人的な依頼があります。』
エアからお願いされた依頼、コーラルの逆流によって廃棄されることが決定されたエンゲブレト坑道の調査をして欲しいというものだった。
『当該坑道は前回の異変まで半ば捨て置かれていましたが、ルビコン開発中期から存在しており、その歴史は古い……。』
『さまざまな時代の痕跡が残っているはず。 それを調べていきたいのです。』
モモイさんから聞いた話ではこの廃墟は『キヴォトスから消えて忘れ去られたものが集まる、時代の下水道みたいな場所』らしい。
きっと、興味深い痕跡が見つかるはずだ。
数時間後
「……だめですね。 なにものこっていません。」
『残念でしたね……。 まぁ、お宝探しというのは、こういう事もあります!』
稼働しているコンピューターの反応があった最後の地点を探索するが、お金になりそうなデータは何も手に入れることはできなかった。
ローダー4から降りて迷路のような屋内を通りようやく辿り着いたにも関わらず、無駄足で終わったことに内心苛立つ。
「……てぶらでかえるわけには、いきません。 あやねせんぱい、この、こんぴゅーたーくらいならろーだーふぉーで、まるごと」
『ダメです。』
電源が付いていただけで中に何のデータも入っていなかった巨大なコンピューターを丸ごと持ち帰りスクラップにして部品単位にして売り払えば端金程度にはなりそうだが、却下されてしまった。
どうにか妥協点を見つけるべく抗議をしようとした私に、アヤネ先輩は声色を変えて返答する。
『それに、レイヴンちゃん。 この何も見つからない感じ、覚えはありませんか?』
「おぼえ?……すみません、ないです。」
『……私達を襲撃していたヘルメット団に供給されていた兵器群の出所を探しに、ブラックマーケットに行った時のことです。』
もう随分と懐かしい出来事だ。
初めて鯛焼きという甘くて美味しい食べ物を食べて感動したことと、あの時同行してくれていたヒフミさんの言っていたことを思い出す。
『お探しの戦車の情報……。絶対どこかにあるはずなのに、探しても探しても出てきませんね……。』
『いくらここを牛耳っている企業でも、ここまで徹底して隠すことは不可能なはず……。』
結局戦車の情報は見つからなかったが、アビドス高校の借金を回収に来ていた現金輸送車をたまたま見かけた事でカタカタヘルメット団を支援していた組織がカイザーコーポレーションだったと暴くことができた。
しかしその真相は、カイザーコーポレーションからすればなんとしても隠し通さなければならないものだったはずだ。
私達から回収したお金がそのまま私達を追い詰めるのに使われている事を知ることができなかったなら、現状を変えようとはせず今でも細々と利息を払い続けさらに追い詰められていただろう。
「……つまり、あやねせんぱいは、はじめからなにもはいっていないたからばこをみつけたというわけではなく……」
「『てっていしてかくさなければならないなにか』がはいっていたとおもっているわけですね。」
『そういう事です。 レイヴンちゃん、速く撤収しましょう。』
……もしかしたらこのコンピューターには可能性に狂わされ人道を外れた研究記録や、人の手に余るとして隠蔽されたアイビスシリーズのように、『存在を無かったことにするしかない何か』に関しての情報が入っていたのかもしれない。
知るべきでないことを、知らずに済んだ。
手ぶらで帰ることに関して、そう自分を納得させる。
諦めて指示通りアビドスへ帰ろうとすると、アヤネ先輩が驚いたような声をあげたので再び無線に集中する。
『レイヴンちゃん! 近くで戦闘が起きているようです!……どういう事ですか?ここはもう無人と聞いていますが……。』
『アビドス自治区と違って、ただの野盗が入り込める場所でもない。 用心してくれ、ビジター。』
「……りょうかいした。」
ただの野盗でないというのなら、ゲーム開発部の行動に焚き付けられたミレニアムの生徒か、連邦生徒会の調査隊か。
どちらにせよ、アビドス高校の校章を堂々と入れてあるローダー4を見られるのはまずい。
今やローダー4はアビドスの貴重な観光資源の一つで、かなり有名になっている。
お得意様のミレニアムサイエンススクールと亀裂ができるのも好ましくないし、連邦生徒会がどういう存在かはあまり知らないが、惑星封鎖機構のように秩序を保つ事を重要視しているお堅い組織であることは察しがつくので目をつけられるのはまずい。
幸い戦闘が起きているのはローダー4を待機させてあるエリアとは逆の方らしい。
発見される前に立ち去ることにしよう。
付近で戦闘が起きた影響か、動き始めたオートマタ達を蹴散らしながら出口へ向かっていると、アヤネ先輩がさっきよりも焦った声で連絡してきた。
『レイヴンちゃん! 付近で起きている戦闘を調査したのですが、そこにシャーレの先生の反応があります!』
「えっ、せんせいがなんでこんなところに……。」
『理由はわかりませんが……もし、困っているなら見過ごすわけにはいきません。 救援に向かいましょう!』
『……ビジター。 アビドス高校の生徒が無断でここにいることが露見するのはまずいが、シャーレの先生なら多少の事は織り込んでくれるだろう。』
「……まさかね。」
万が一、私の予想が当たっていることを警戒して懐からアル社長から貰った眼帯を取り出す。
スマートフォンのカメラ機能でしっかりと片目が隠れているのを確認してから指定されたポイントへ駆け出した。
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ミレニアムサイエンススクール
廃墟地帯
「……先生っ!伏せて!!」
ロケットランチャーを構えたオートマタの存在に気づき、先生を押し倒して伏せさせる。
すぐに私の頭の上をロケット弾が飛んでいき、誰もいないところへ着弾して爆発した。
起き上がったミドリがロケットランチャー装備のオートマタを撃破して、ユズが私達の無事を確認する。
「うぅ……みんな大丈夫?」
「私は平気、でも思ったより火力が……。 先生、大丈夫ですか?」
"うん、大丈夫。"
私はゲーム開発部、シナリオライターのモモイ!
今は部員を既定人数揃えるだけでは出来なかったゲーム開発部存続の為に、ミレニアムプライスで賞を取れるような素晴らしいゲームを作るのに必要な『G.bible』を求めて廃墟に再び来ているところ!
先生が立ち上がるのを助けようと手を差し伸べた瞬間に、再び銃撃を受けたので急いで伏せる。
「来た、ロボットたち……!」
「大丈夫、まだ引き付けられる……!」
調整不足のシミュレーションRPGばりに続々と出てくるアサルトライフルや盾持ちのオートマタ達を一直線上に並ばざるおえない地形へ誘い込み、十分な数が揃ったところでミドリがアリスへ合図をする。
「……よし、アリスちゃん! やっちゃって!」
「はい!前方のモンスター達を殲滅します。……光よ!」
フルチャージされたスーパーノヴァの青い光の柱が、集まっていたオートマタ達をまとめて撃破する。
……うーん、やっぱりまとめて消すのは気持ちが良いよね!
「よし、成功!」
「アリスちゃん、すごい!」
私達の称賛にアリスはにこやかな笑顔で答えてくれたけど、そんな余韻に浸る間もなくオートマタ達の増援が現れた。
「ここで立て続けはちょっと……流石に不利だけど、どうする?お姉ちゃん。」
いつもなら安全第一に一時撤退を提案するミドリが、私に意見を求めてきた。
そして、たとえ双子としての共感が無かったとしても、その目からは本当は答えが出ているのが分かる。
私も、ミドリも、アリスも。
模擬戦だったとはいえ、ナイトフォールを退けたという実績で自信がついてるみたい。
「……ここで退くわけにはいかない、突破しよう!」
「……ええっ!?」
「そうだね。 どのみちこの廃墟にいる全てのオートマタ達を排除してから安全に調査なんて出来るわけない。」
「はい!アリス知ってます! 無限湧きの敵がいるエリアは、適度に捌いて走り抜けが最善の手段です!」
ナイトフォールとの戦いを経験した私達の変わりぶりにユズは戸惑うけど、すぐに覚悟を決めて賛同してくれた。
「どう転んでも、危険はある……わたしも、頑張る。」
「どれだけ危険な状況であってもアリスが、その仲間達が先生を守ります!」
"ありがとう。 指揮は任せて!"
「うん! ゲーム開発部、敵を突破するよ!」
『G.bible』の座標が示す工場まで、あと少し!
アリスが開いてくれた道が塞がれる前に私達は全力で走り出した!
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「このどくとくすぎる、はかいあとは……。」
『い、一体どんな攻撃をしたらこんな形になるんですか?』
戦闘の反応があった地点へ辿り着くと、そこには破壊された大量のオートマタの残骸と何か大きなバケモノが通った後のようにえぐれた地形。
そして、未だに赤熱している建造物の瓦礫が残されていた。
こんな痕が出来るのは、アリスさんのスーパーノヴァ以外ありえない。
『……レイヴンちゃん、急ぎましょう! こんなことができる危険な存在に先生が追われているなら、護衛の人達もいるでしょうがいつまで持つかわかりません!』
「あ、はい。」
事情を知らないアヤネ先輩はこんな痕跡を残せるバケモノに先生が襲われていると勘違いしたらしく、先を急ぐようにお願いされる。
だが、バケモノ自体はいないにしてもここは無尽蔵にオートマタ達が現れる。
モモイさん達は思っていたより頼りになるとはいえ、急がなければならないことに変わりはないだろう。
更新されたマーカー情報に従いながら、アヤネ先輩にわかっていることを伝える。
おそらく先生についているのはミレニアムサイエンススクールのゲーム開発部であることと、彼女たちも許可なくこの廃墟に侵入しているであろうこと。
彼女達はインドア派にしては強く頼りになり、この破壊跡はそのゲーム開発部の新入りの武器によるものであること。
そして、独立傭兵ナイトフォールとして出会い、色々あって素顔を見られてしまっていることを伝えた。
『なるほど……無理に正体を隠す必要は無くなりましたが、あまり関わりすぎないようにしてくださいね。』
「ええ。 ごうりゅうはせず、きけんそうであればたすけて、さっさとたちさります。」
「それに、がんたいもつけてるのでだいじょうぶです。」
『……大丈夫、ですかね?』
装備も服装もナイトフォールとは違うし、顔も違えばすぐに気付かれることはないだろう。
社長からのプレゼントをずっと大事に持っておいて良かったと思いながら破壊の跡を辿る。
どうやらゲーム開発部は強引に敵陣を突破し、この先の工場へ逃げ込んだようだ。
前回侵入した時と同じように、自分たちの管轄外のエリアへ入ったであろう侵入者達を諦めたオートマタ達が代わりに私を見つけ発砲してきた。
今回はナイトフォールとして来たわけではいので、囀り砲は持ってきておらず範囲攻撃の手段が無い。
先生達が後に通ることを考えると片付けておきたがったが、私も最低限の対処で工場へ向かい入り込んだ。
前にモモイさん達と侵入した工場に非常に似ているが、まぁ工場などどこも同じものだろう。
どうやって先に行っている先生達を探そうか歩きながら考えていると、微かに人の声が聞こえてきた。
(だ、ダメ!お願いだからセーブデータは残して! そこまで装備揃えるのはすごく大変だっ……ちょっとおおぉぉぉおお!!)
……モモイさんの声がした。
発言の意味は分からないが、悲鳴じみた声に自然と足が速くなる。
そしてどうやらあの声を聞いたのは私だけではなかったようで、工場内の巡回警備をしていたオートマタが足を止め振り向き、声がした方へ向かい出している。
道中で遭遇したオートマタは始末したが、この工場の複雑さを考えるとモモイさん達がいるところへ向かうルートが一つだけとは思えない。
最初のプランである姿を見せずこっそりと助けるのはもう難しそうだが……まぁ、今は眼帯もしているし多少見られても問題はないだろう。
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廃墟地帯
工場内部
「ああぁぁ! 私のゲームガールズアドバンスのデータがあぁぁっ!!」
私達が探していた『G.bible』を含んだデータを電力限界を迎えて電源が落ちる寸前のコンピューターから救うため、ゲームガールズアドバンスのメモリーカードへ転送した結果不足している容量を確保するために既存データを消されてしまったモモイが泣きながら膝から崩れ落ちました。
モモイが普段ショックを受けた時によく見る姿よりも悲壮感のある姿に悲しみを、私に自慢げに見せてくれたコンプリート率120%のあの画面を見れなくなったことに残念と感じました。
ですが、品物を買うにはゴールドを使うように、何かを得るには何かを失わなければならないというのは基本的なことです。
『G.bible』が消えてしまったモモイのデータに釣り合うに相応しいものであることを期待します。
悲しみに暮れてうずくまっているモモイの代わりにミドリが画面が消えてしまったゲームガールズアドバンスを確認します。
傾けたり電源を入れ直しましたが無反応だったので、叩いて衝撃を与えようとした瞬間に画面が付きました。
「あ、何かが画面に……?」
「えっ?」
ミドリの発言に私も含めた全員が携帯ゲーム機故の小さな画面を覗き込みます。
『転送完了』
『新しいデータを転送しました <G.bible.exe>』
私達が求めていた宝物の名前が表示され、全員の心拍数が上昇します。
アリスには心臓はありませんが、私も同じくらい興奮しました。
「こ、これって!?」
「い、今すぐ実行してみよう!本物なのか確認しなきゃ! exe実行!」
モモイがミドリからゲームガールズアドバンスをやや乱暴に取りAボタンを押します。
一瞬ロードを挟み、起動すると同時にポップアップが表示されパスワード入力画面が現れました。
ゲームであれば周囲の壁や落ちているメモにヒントがあるのでしょうが、残念ながらここには無さそうです。
「パスワードが必要!? 何それ、どうすればいいのさ!?」
「……大丈夫、普通のパスワードくらいなら、ヴェリタスが解除できるはず……!」
(こくこく!)
本物かどうかはわかりませんでしたが、偽物にわざわざ鍵をかける必要はありません。
……あれ、しかし鍵をかければ本物らしさが増すので、デコイとしてはそうするべきなのでしょうか?
少し思考を巡らせましたが、ここはクエストのメインターゲットの確保を喜ぶべきと判断しました。
後はミレニアムサイエンススクールへ帰還し、ヴェリタスの皆さんに納品するだけです。
「これがあれば、本当に面白いゲームが……『テイルズ・サガ・クロニクル2』が……!」
「うん、作れるはず! よしっ!」
先ほどまでの落ち込み方が嘘のようにモモイは背筋をピンと張って立ち上がり、大きな声で宣言します。
「待っててねミレニアムプライス……いや、キヴォトスゲーム大賞! 私たちの新作は今度こそ、キヴォトスのゲーム界に良い意味で衝撃を与えてやるんだから!!」
「お、お姉ちゃん、声大きすぎ。 そんな大声で叫んだら……!?」
ダダダダッ!!
ミドリが言い終わる前に銃声が響き、弾丸が飛んできます。
振り向くと大柄の盾を構えたオートマタが2体いました。
どうやらG.bibleに夢中になっている内にエネミーの接近を許してしまったようです。
しかもなぜか2体ともモモイへ一直線に向かっています。
先ほどまでの棒立ちで射撃しかしないオートマタと行動が違い、なぜだか怒っているようでやけに好戦的で俊敏です。
光の剣で攻撃しようとしましたが、オートマタとモモイの位置が近すぎて撃てません。
分断されてしまったモモイは応戦していますが、大盾に防がれどんどん接近を許しています。
「や、やば!!」
"モモイ!"
「お姉ちゃん!!」
モモイの危機に解決方法を必死に考えていると、アリスの生体センサーが突然新しい反応を感知すると同時に反対の廊下の角から白い何かがすごいスピードで現れました。
そしてモモイを捕まえようとしているオートマタが手を伸ばした瞬間、
バジュッ!!
と聞いた事の無い音と、緑色の光の束が走りました。
謎の光が通ったオートマタの胴体に赤色の線が浮かび上がり、攻撃を加えた乱入者の方へ向こうと回した胴体が傾いてずり落ちます。
突然現れた何者かは、切りつけた勢いのまま回転しながらもう一体のオートマタとモモイの間へ滑り込み、右手で異様な形の大型ライフルを向けて止まると両手で構え直さずそのまま引き金を引きました。
タァン!タァン!タァン!タァン!タァン!
突然の奇襲にオートマタは盾を構える間もなく被弾し、頑丈な装甲は一発あたるごとに抉られ、五発目で機能を完全に停止し仰向けにゆっくりと倒れました。
「……。」
オートマタの機能停止を確認し、こちらをちらりと見ると左手を軽くあげて、まるでジェスチャー「よっ。」の様な動作をすると背を向けて立ち去ろうとします。
余りに突然の出来事でびっくりしましたが、ようやく現れた乱入者の容姿を確認できました。
ミレニアムのものでは無い学生服。
猟犬のような尖った耳。
千切れているようで痛々しい黒い羽。
やや白みがかった銀髪。
赤い左目と、右目を隠すかっこいいロゴの入った眼帯。
使用している武器を総合して、ナイトフォールとの一致率は85パーセント。
とても似ていますが同一人物とは認められ
「ありがとう!ナイトフォール!!」
「うわっ」
颯爽と立ち去ろうとした何者かにすかさずモモイが感謝を述べながら抱きつきました。
完全に背中を向けていた何者かは動揺しながら押さえ込まれ、モモイから何度もナイトフォールという名前と感謝の言葉と仕事の続きを今からして欲しいというお願いを言われたあたりでモモイの顔を押し退けながら言いました。
「わたしは!!ないとふぉーるじゃ、ありません!!」
やはりナイトフォールでは無いようです。
しかし私には彼女の名前よりも気になることがありました。
先ほど見た緑色の光を発した謎の機械を、私とは別の『光の剣』の存在に思考のリソースを取られていました。
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"どうしてここにいるのかは分からないけど、助かったよ。 ありがとう。"
『ご無事で何よりです、先生。』
「……ほんとうは、さっさとたちさるつもりなのでしたが……しかたありませんね。」
「ね、ねぇミドリ。 ナイトフォールってだ、誰?」
「え、えーとね。 前にここに来た時にお世話になった傭兵さんで、あの人とは別の人だよ。」
「その光の剣は一体なんですか?どこで入手したのですか?必要レベルはいくつですか?その武器を扱うのにおすすめのジョブは何ですか? アリスに教えて下さい!」
「ひとつずつきいてください。」
ピンチに陥ったモモイを助ける為大人のカードを取り出そうとした瞬間に、ここに本来いるはずのないレイヴンが現れて助けてくれた。
最初の態度からして馴れ合う前に立ち去ろうとしたようだが、モモイに足止めされアリスに左腕につけたパルスブレードについての質問責めが始められたあたりで観念してくれたようだ。
「ほ、本当に別人なの?」
「べつじんです。 せんせいもそういってますよ。」
"うん、別人だよ。"
モモイにしつこく質問されながら、レイヴンが目配せしながらこちらへ話を振ってきたので求めているであろう返答を出す。
それでも何か言いたげなモモイを遮る形で、アヤネからの通信が繋がる。
『改めて、自己紹介といきましょう。 私達はアビドス高校の対策委員会のものです。』
「わたしは、あびどすこうこういちねんせい、くろはねれいゔんです。」
『音声のみで失礼します。 同じく1年生、奥空アヤネと申します。』
学校の名前に覚えがあったのか、モモイとミドリが反応する。
「え? アビドス?」
「ああ……確か、最近オーパーツじみた人型ロボットで有名だよね。 私達の学校の生徒がSNSに上げてるのをよく見るよ。」
「それは、アリスよりもすごいのですか?」
"うーん……方向性が違うからなんともいえないかな。"
『……?』
エンジニア部のような機械工学を専攻している生徒以外にも話題になっている事を知ったレイヴンは誇らしげに胸を張る。
続いてゲーム開発部の皆も軽く自己紹介をして、なぜこの廃墟にいるのか尋ねてみる。
「あるゆうじんから、ここにきちょうなでーたがころがっているかもしれないとじょうほうをもらいましてね。」
『気分転換も兼ねて宝探しに来た、という感じです。 まぁ、こんな危険な場所だと初めから知っていたら中止したと思いますが……。』
「ほんのこづかいかせぎのつもりでしたが、なにもみつからず、あきらめてかえろうとしたところに、はでにあばれているあなたたちとせんせいをみつけた、というかんじです。」
彼女達も探しているものがはっきりしていないという違いはあるが、この廃墟に残されたデータが目的だった事を知りアリスが『G.bible』の入ったゲーム機を隠しながら身構える。
「残念ですが、これは私達が先に見つけたお宝です! モモイが積み上げてきた全てと引き換えに手に入れたこれを渡すことはできません!」
身構えたアリスに、レイヴンは警戒されている事を少し残念そうにしながら返答する。
「あんしんしてください。 はいぶか、はいこうかのちがいはありますが……」
「わたしたちとおなじように、じぶんのいばしょをまもるためにたたかっているひとのじゃまをするつもりはありませんよ。」
ここに来るまでの激戦により戦う力がほとんど残されていない状況でもう一戦することになるかもしれないという可能性が無くなり皆安心する。
しかし
「……あれ? 私達ゲーム開発部が廃部寸前って話までしたっけ?」
名前と学校しか紹介していないはずなのにと疑問を持ったモモイが口走り、レイヴンが目を大きく開いて固まる。
しかしすぐに言い訳を思いついたのか、かなりの早口で話し始めた。
「ここはほんらいせいとかいによってしんにゅうをせいげんされているほどきけんなとちです。 そこにわざわざくるとなればよほどのじじょうがあるはずですし、わたしたちとちがってあなたたちみれにあむさいえんすすくーるのせいとがおかねもくてきできけんをおかすひつようせいはかんじません。」
「だとすればおかねでかいけつできないもんだいということになりますし、みれにあむはほかのがくえんにくらべてがくえんないでのきょうそうがはげしいとききます。 つまりあなたたちのちょくめんしているもんだいとはぶかつどうとしてのじっせきぶそくであり、げーむかいはつぶというなでありながらげーむをつくるせんすが」
「わ、分かった分かった! お願いだからそこまでにして!」
「断片的な情報でここまで把握できるなんて……分かりました! レイヴンの職業は探偵ですね!」
思ったよりも酷いことを言われそうになったモモイが遮り、その場は落ち着いた。
しかし、それと同時に周囲から増援のオートマタ達の足音が聞こえ始めレイヴンはライフルの安全装置を解除する。
「……まぁ、これもめぐりあわせです。 いえにかえるまではついていってあげてもいいですよ。」
「助かります! 実はもう弾がほとんど残ってなくて……。」
「ゲストキャラですね! 離脱すると分かっているキャラに経験値を持っていかれるのは心苦しいですが……背に腹は変えられません。」
「……なんだかあまりいいきぶんはしな……わっ。」
アリスの辛辣な言い分に少し眉をひそめるレイヴンを気にせずアリスはレイヴンの手を取り上に掲げる。
身長差のせいでレイヴンの足が地面からぎりぎり離れてプラプラと揺られている。
「パンパカパーン! レイヴンが仲間になりました!」
「……えっと……よろこべばいいんですかね?」
『ど、独特な子ですね……。』
今まで見たことのないほど混乱しているレイヴンの表情に思わず笑みをこぼしてしまう。
「レイヴン! どうしてこんなに軽いのですか? 装備重量が軽いと攻撃力が上がる指輪でも付けているのですか?」
「ありすさんがちからもちなだけでは……ちょっと、なんでさらにもちあげるんですか?」
その後もレイヴンは自由なアリスに比喩的にも直喩的にも振り回され続けることになるのだが、この時のレイヴンがアリスへ向ける表情は、初めて後輩ができた先輩の様な少し満足げな顔に思えた。
しかしいよいよオートマタ達が間近に迫り、モモイが指示を出す。
「とにかく、早く逃げよう! ユズ、先生を守りながら進んで!私とミドリは殿を!」
「りょ、了解!」
「任せて!」
「アリスとレイヴンは先頭をお願い! 動いてる奴は全部片付けて!」
「りょうかいです。」
「はい! アリスとレイヴンが皆さんを導きます!」
『先生、ローダー4のレーダーで得た情報を共有します! 指揮に役立ててください!』
"ありがとう、アヤネ。"
役割分担が終わり、モモイは自分の頬を叩いて気合いを入れ直す。
「ようやく『G.bible』を手に入れたのに、こんなところでやられるわけにはいかない……! みんなで無事に部室まで戻ろう!」
「うん!」
"やっぱりあたり一面敵だらけだね。 足を止めないようにしつつ、蹴散らして行こう!"
Ab06、生徒名レイヴン。 普通にパーティに参加する。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
6月21日時点では3話溜め込んでいたので途切れないと思っていたのですが7月8月の暑さを忘れていました。
ですが、どうしても書きたいシーンがあるのでそこまでは続けたいと思います。
コメント、ここすき、誤字報告をいただけるととても嬉しいです。
それでは、また。