転生したらシュラク隊だった件   作:桜霧島

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急に思いついたので



マキ、大地に立つ

 

 

「―――君も俺の部隊に来てくれないか?」

 

 ……あん? 誰だこのメガネ男、どこかで見たことがあるような?

 

「ああ、すまない、俺の名はオリファー・イノエ。リガ・ミリティアの中に新たに作られたモビルスーツ部隊の指揮を取ることになった。君のその類まれなモビルスーツの操縦技術と戦闘センスをウチで活かして欲しいんだが……どうだろうか?」

 

 

 

 ―――んんん???

 

 

 ハァァァァァァァ!? お前、()()オリファー・イノエなのか!?

 

 モビルスーツって……ちょっと待ってくれよ! 俺はただの日本人で、大学生の男で……

 

 男……?

 

 あれ? ()()ぞ? それに、()()

 

 足元に広がる水溜りに映った顔は……誰だこれ、黒髪ロングの女の子? まさか俺なのか?

 

【挿絵表示】

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「―――それで、どうだろうか、マキ=カナオカ」

「え、アッハイ……」

 

 マキ? それが俺……私の名前なのか?

 

「そうか、それは良かった、宜しく頼むよ! 君が7人目のメンバー候補だったんだ。詳しいことはまた連絡するからね」

 

 そう言い残し、機嫌良くオリファーは去っていった。

 イマイチ状況の把握ができていない俺……私は彼の勢いのままに生返事をしてしまい、それが『了承』ととられてしまったようだ。

 

 今からでもクーリングオフ、出来ないっすかね?

 

 

 

 ▼

 

 

 

 姉さん、事件です。

 どうやら私は死んだ記憶がないにも関わらず、愛棒を失いTS転生してしまったらしいのです。

 

 ―――Vガンダム(修羅)の世界に。

 

 オリファーが去ってから、私はマキとしての記憶を頼りに基地の自室(と思われるところ)に戻り、自分の身の上のことをわかる限りで調べてみた。

 

 マキ=カナオカ。16歳。サイド2出身。リガ・ミリティア所属の……女の子だ。家族とは死別、どうやらザンスカール帝国設立のドサクサでガチ党に一家丸ごと捕らえられそうになったところ、両親が命懸けで地球に脱出させてくれたらしい。

 その後リガ・ミリティアに保護され、現在に至るという。

 

 ごめんね、こっちの両親。私、もっと酷い目に遭うかもしれない。

 

 前世……いや、まだ死んだと決まったわけじゃない。そう、前の世界での最後の記憶は大学1年の正月だ。実家に帰って懐かしのジージェネをしながら年越しをしたところ。ここで記憶が途切れている。

 一方で私はマキとしての記憶もある程度保持している。その多くはザンスカール帝国への強い復讐心、人間不信、そしてモビルスーツに関する知識だ。

 

 感情表現に乏しく、あまり口数の多いタイプでは無かったらしい。境遇もあってか友達は居ない。見た目は美人だが、恋人も居なかったようだ。

 何にせよコミュ(ちから)が低くて助かるのは事実。あまり中身が男だと気づかれるリスクは負いたくないからね。今後も必要最低限のコミュニケーションで済ませたいところだ。

 そもそも現実世界でもぼっちぎみだったし、そのあたりは心配ない。

 

 転生にせよ転移にせよ、大事なことは生き残ることである。そう考えれば、キリの良いところで程々のケガか何かを負い、除隊され、月かどこかで暮らすのが良いだろう。退職金代わりにガンブラスターでも貰えたらベストだ。そうして帰る手段を模索してもいいし、帰れなければ定住すればいい。

 

 この世界――正確には宇宙世紀152年の世界―――は『逆シャア』からすると約60年後、クロスボーンの舞台となった『木星戦役』から約20年後の世界だ。

 私はジージェネとかスパロボの知識くらいしか無いので、ガンダムの世界にあまり詳しいというわけでもないが、地球は未だにボロボロで住めたもんじゃないし、コロニーも争いが絶えないのはわかりきっている。

 一方、比較的安全なのが月面だ。アナハイムやSNRY(サナリィ)のようなMS企業があったからか、壊滅的な被害を受けることは殆ど無い。

 まぁそれでも度々占領されたり戦火に晒されたりしてるけど、バグとか毒ガスとかコロニー落としとかに比べりゃマシってもんでしょ。

 

 火星? 木星? ヤダよ。危ないし寒そうじゃん。(小並感)

 

 

 さて、ザンスカール帝国、別名『斬(スカル)帝国』はサイド2に勃興した女王マリアを教主とする、ガチ党による一党独裁国家である。

 歯向かうものは皆死刑(ギロチン)。ロベスピエールかな?

 

 それでもって彼らが地球侵攻を始めたことから、対抗する組織として結成されたのが私が所属するリガ・ミリティアだ。

 リガ・ミリティアは独自のMS製造技術を持ち、ガンダムを開発し、何やかんやで主人公のウッソ少年を巻き込んで本編が始まっていくという流れだ。

 

 おい地球連邦軍、(仕事)しろよ。

 

 また、私がオリファーにより所属させられそうになっているMS部隊ってのは、間違いなくシュラク隊だろう。

 今は、本編開始の1年前くらいだろうか。なんの気休めにもならない。

 

 シュラク隊、全滅するしなぁ。

 

 そんな()かれたメンバーを紹介するぜ!

 

・ジュンコ・ジェンコ

 シュラク隊のリーダー格。隊員からは『姉さん』と呼ばれ慕われるが、物語中盤で爆弾の解体に失敗して爆死。

 

・ヘレン・ジャクソン

 戦い方が荒々しく、最もモズ(シュラク)に相応しい性格をしていると言われているが、モブのトムリアットにやられてシュラク隊初の戦死者となる。

 

・マヘリア・メリル

 シュラク隊で一番色っぽいお姉さん。ジブラルタルでトムリアットにやられて戦死。

 

・ケイト・ブッシュ

 赤髪のお姉さん。ジブラルタルでマスドライバーを支えながらコクピットを貫かれる、ある意味シュラク隊で一番有名な人。

 

・ペギー・リー

 金髪美人。MSの操縦技術が高いらしい。クロノクルのコンティオからウッソを庇って戦死。

 

・コニー・フランシス

 シュラク隊で一番長生きした、そばかすと緑がかった髪が印象的な女性。最終話付近でカテジナさんに撃たれて戦死。

 

 

 この6人がアニメに出てくる初期メンバーだ。その他、何人か追加メンバーもいるし、第2シュラク隊らしきものもある。だが共通して言えるのは、文字通り『全滅』したということだ。

 

 そもそも隊長のオリファーでさえポンコツ極まりない。色々とあって敵戦艦に特攻するのだが、貴重なV2ガンダムのコアファイターを使った上に、戦艦のタイヤ……そう、タイヤなんだ。そこに特攻するという訳のわからんことをして、結局戦果が「巡洋艦一隻と僅かな時間」だ。これでは無能との誹りを免れないだろう。

 

 

 私、生き残れるかなぁ。

 

 

 私は原作にいない『7人目』である。居なくてもウッソ少年が何とかしてくれるだろう。

 しかし、すんなりと辞めさせてもらえるのだろうか。

 パイロットスーツを脱ぎながらそんなことを連連と考えていた時、コンコンと自室のドアがノックされた。

 ドアを開けると、そこに居たのはオリファーと色黒の肌をした女性だった。おそらく、マーベット・フィンガーハットであろう。

 

「部屋に居たのか、これから打ち合わせを……って、うわぁッ!?」

「オリファー!」

「ガハッ!」

 

 マーベットさんの鉄拳がオリファーの頬にクリーンヒットする。

 

 ……あ、私、パイロットスーツを脱いでた途中だったからパンイチだったわ。

 

「貴女! 早く服を着て!」

 

 マーベットさんはそう言い、扉を勢いよく閉めた。こりゃすまんかった。

 私はいそいそと部屋着に着替え、改めて彼・彼女を出迎えた。

 

「先ほどはすまなかった……決して意図したものではなく……」

「いえ、お気になさらず。こちらこそ見苦しいものを申し訳ありません」

 

 内心は少しばかり同情するものの、仕事をしない私の表情筋は無表情を保ったままである。

 

「それで、何か?」

「いや、特に用事と言えるほどのものでもないんだ。こっちのマーベットのことは?」

「何度かシミュレータで」

 

 正確には私自身がやったのではなく、『マキ』としての私がやったのである。

 まぁ彼らにそんな話をしたところでわかるはずもないのでオリファーにそのように返事をすると、脇に控えていたマーベットと視線があった。

 

「……よろしくね」

「はい」

 

 少しばかり鋭い視線で睨みつけられる。どうやら警戒されているようだ。

 安心してくれ、オリファーを取ったりなんかしないから。イギリス人みたいなハゲ方をしそうだよな、オリファーって。

 

「それじゃあ、今後の流れを簡単に話すよ。まずは―――」

 

 二人とのいくらかギクシャクとした挨拶が終わると、オリファーがタラタラと話し始める。

 

 ……あートイレ行きてえ。女子ってどうやってやればいいんだろ?

 

 棒がないというのがこんなに不便だなんて。おしっこの我慢も心なしか難しくなった気がする。ほら、棒の分だけ水位に余裕があるじゃん。

 

(話、早く終わってくれないかなあ……)

 

 そんなことを考えながら、私はずっと貧乏揺すりをしていた。

 

 

 

 ▼side:オリファー・イノエ

 

 

 リガ・ミリティアに少女が保護されたらしい。それだけなら残念ながらよくある話ではあるが、なんと彼女はモビルスーツパイロットの適性があるというのだ。

 

 そんな話をマーベットから聞いた俺は、居ても立っても居られず、自分の目でその少女―――マキ=カナオカを見に行った。

 

「こいつは……」

「どう? これでモビルスーツに乗るのは3回目だそうよ」

 

 脇に立つマーベットが呆れたような口調で解説する。

 

「シミュレータでは完璧。私やジュンコ、ペギーでようやく相手になるレベルよ。特に相手の殺気を読んでいるかのようなあの動き……はっきり言って、異常だわ」

「『ニュータイプ』か……」

「『ニュータイプ』?」

「ああ、俺たちが生まれるよりも昔、そういった優秀なパイロット達が居たらしいんだ。まぁ、半分伝説みたいなもんだよ。それで、彼女はどうしてリガ・ミリティアへ?」

「―――彼女、サイド2の出身なのよ」

「それは―――なるほど、復讐か」

「ええ、彼女のご両親は反帝国分子だと言いがかりを付けられて殺されたらしいの。本当は、ただの弁護士だったのにね」

「可哀想に……」

「地球に降りてきてウチに保護された時、後方支援に配置することも提案したのよ? でもあの子、ああ見えて決して自分を曲げないの」

「割と淡々としたように見えるけどね」

「そうね」

「とりあえず今度結成する部隊に誘ってみるよ。色好い返事が聞けると良いんだけど」

「―――あんな少女を戦争に巻き込まなきゃいけないだなんて、私たちの地獄行きは決まってるようなもんね」

()()()()に祈ってみるかい、マーベット?」

「冗談でもよして!」

 

 そう言い、俺はシミュレータから降りてきた彼女の方へ歩き出した。

 

 





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