転生したらシュラク隊だった件   作:桜霧島

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続かねえって言っただろ! 何で赤バーついてるんだよ!(感謝)

思いつきを書いてただけなので設定と前話を修正しました。

前話修正点
・物語のスタートを宇宙暦152年に(原作スタート1年前)
・シュラク隊は原作開始1年前の時点で結成済みということに(調べた限りいつから活動しているのかわからなかったので)
・マキの年齢を16歳に(マーベットさんが21歳→22歳なので帳尻合わせ)



イマジナリー・ワールド

 

 オリファーの長い話と私の膀胱が戦っている。

 いや、そんなにアツく語られても私は途中で退場しますし、戦争は残った若い人達で……。(ゲス発言)

 

「話はそれだけでしょうか。なら、私からは特にありませんのでこれで失礼しても? やるべきことは変わりませんよ」

「―――!」

「ちょっと、貴女!」

「よせ、マーベット!」

 

 何かマーベットさんが興奮しているが最早これまで。私の膀胱がトイレにつれてけと光って唸って轟き叫んでいる。

 バン、と机に手をつきながらやや乱暴に席を立ち、足早に自室へ向かう。

 膀胱が保たん時が来ているのだ! それをわかるんだよ、マーベット!

 後ろの方で何か言っているが無視だ、無視。

 

 

 あースッキリした。

 女子って方向を指定出来ないから大変なんだな……。

 

 

 あ、そういやオリファーが何か言ってたな……? そう、もうすぐ彼らは宇宙(そら)に上がるのだとかなんとか。

 

 宇宙暦149年に始まった《ヴィクトリー()プロジェクト》ももうすぐ大詰めだ。ガンイージの開発に始まり、V2の完成を以てこのプロジェクトはほぼ完了する。

 ちなみにリガ・ミリティアのMSはアナハイム製である。その後は落ち目のサナリィに代わってアナハイムが幅を利かせるようになるらしいが、アニメで描かれているものでは無いし、正史かどうかは知らん。

 一方、ザンスカール帝国はサイド2にあったサナリィを接収してるから、このザンスカール戦争はサナリィvsアナハイムのMS開発における代理戦争という側面もあったかもしれない。

 

 しかしサナリィもF91の開発から約20年でよくもそこまで落ちるものだ。まぁ車とか飛行機の開発でも試作機の完成度に比べて量産機の完成度が低いなんてのはよくある話だし、それでもこの時代の量産機は互換性の向上や小型化の成功など逆シャアの時代に比べると雲泥の差がある。そこで負けてしまうと、どうしても会社としての安定度が悪いという印象をユーザに与えてしまうのだ。

 そう考えればジェムズガンやジャベリンが地球連邦軍に正式採用されている以上、サナリィもF91開発以降はどのみちジリ貧だったのかもしれない。

 

 アナハイムは地上にも分散して生産拠点はあるのだが、彼らの本拠地は月なもんだからVガンダムのテストパイロットたるマーベットさんも宇宙に上がる必要があるのだろう。彼女もアニメでは「埃っぽい」とか「住みたくない」とか、あまり地球に良い印象を持っていなさそうだったな。なお戦後は恋人が散ったカサレリアに定住する模様。

 

 ちなみにマキ()がシミュレータで使っていたのは地球連邦軍の標準MSであるジャベリンだ。試作型のガンイージは重力下試験として私のいる東欧の基地でジュンコさんが使っているから、私たちへもそのうち量産が成功したガンイージが近い将来に配備されるのであろう。ジャベリンとて悪いモビルスーツでは無いが、20年の型落ちはさすがに厳しい。

 

 だがもっと大きな問題は、そもそも私にMSが扱えるのかどうかというところだ。マキの記憶では扱えていたが、中身に私がインストールされてしまった以上、どうなるかわからない。

 そりゃ健全な男子(なお体は女子)なら一度はMSに乗ってみたいという欲はあるけどさぁ……というかこの子、この年齢でシュラク隊のメンバーと渡り合えるなんてニュータイプじゃなかろうか。

 

 この時代のニュータイプは、ありていに言えばトンデモ的存在だ。何だよサイキックって。きっとやけっぱちになったおハゲ様(黒富野)が「ニュータイプの幻想をぶち殺す!」と言わんばかりに脚本家をぶん殴ったに違いない。

 作中に描写は無いが、ウッソに加え、シャクティ、マリアは確実にニュータイプだろう。マリアとシャクティと血縁関係にあるクロノクルもほぼ確実。カテ公とかファラって強化人間になったんだっけ?そんな奴らと戦いたくないなぁ……。

 

 マジで戦場に出るだけでリスクだ。原作初期ならファラさんとかクロノクルに攻撃されるし、後半ならカテ公とか正気を失ったファラとかが殺意マシマシチョモランマでやってくる。

 でも出なけりゃ出ないでベスパに攻撃を受けたり捕虜になったり、バイク型戦艦で地ならしされたりしてしまう。密出国した(マキ)には捕虜という選択肢が無いから、ギロチン行きは免れない。

 あと最終的にはエンジェルハイロゥって一部が落ちてくるんだっけ?

 

 もうこれ詰んでるのでは?

 

 ……もういい、止めだ、止め。寝るぞ。

 

 

 

 ▼

 

 

 

 俺が(マキ)になって一晩過ぎた。やはり夢ではない。

 

 

 帰りたい。

 

 

 お父さん、お母さん。

 

 

 ごめんなさい。

 

 

 

 ▼

 

 

 

 一夜明けて翌日。

 

 いくら考えても仕方がない。とりあえず少しでも生存率を上げるため、シミュレータ室に籠城する。

 スイッチを入れモニターを起動させると、旧世紀と変わらないブオンという音が響いた。シームレスな全天型モニターが足元と頭上に仮想の森林と鈍色(にびいろ)の空を映し出すと、私は少し緊張と感動を覚えた。

 ぎこちない動作でポチポチと手元のボタンを押すと、マシンに火が入ったような感覚に包まれる。

 

 ―――あ。これ、わかる。

 

 マキとしての自分が顔をのぞかせているのか、ジャベリンをどう動かせば良いのか私に教えてくれている。

 

(マキ、君はそんなにザンスカールへ復讐したかったんだね。)

 

 操縦(かん)を握りフットペダルを踏みこむと、私のジャベリンが空に舞い上がった。シミュレータであるためGは感じないが、変な浮遊感を覚える。

 ジャベリンを良く知らない人向けに一言で解説すれば、高機能小型化されたジェガンだ。ミノフスキードライブを積んでいないから単独での長距離飛行は出来ないし空中での複雑な姿勢制御は難しいが、飛び上がるくらいなら余裕で出来る。

 

 私は自分(マキ)の感覚に身を任せ、空を駆ける。1回の跳躍で飛び続けられる時間は、宙返りは、地上を走るスピードは、ブレーキは。

 基本的な動作を身に染み込ませながら今までにない景色を堪能する。前の世界では海外旅行なんてしたことなかったしなぁ。

 

 一通り基本動作を確認したあと、私はシミュレータを一度切った。次は模擬戦闘だ。手元に呼び出したコンソールを操作し、対戦相手を設定する。

 とは言いながらもこの時代、まだシャッコーやコンティオは存在していない。正確に言うなら実戦には投入されていない。

 

 私はプログラムされている連邦の旧式MS―――ジェムズガン3機の小隊を対戦相手に選んだ。ちなみに相手パイロットの技量は新兵より少し上を設定している。

 ジャベリンはジェムズガンの発展型だ。単純なカタログスペックではこちらが上回っているが、こちらが単独で複数相手なら差し引き互角だろう。

 後は私の腕次第……ってとこか。こんなことになるなら《戦場の絆》でもやってりゃ良かった。

 

勝利条件:

①相手MSを全て撃破

②敵基地への到達

敗北条件:

①自機の大破

 

 こんなところかな。

 コンソールを元に戻しシートに深く腰をかける。少し汗ばんだ手をグーパー握りながら、緊張をほぐすために首をグルっと回す。

 さて、往くか。

 

 モニターが切り替わり、先程と同じ深い森と鈍色の空が映し出された。レーダーには前方に3つの固まった赤い丸印とその向こうに基地が表示されている。

 突破しろ、ということね。実戦なら……逃げの一択だ。

 

 深く息を吸うと疑似コクピットの機械的な匂いが肺に充満したが、何故だか私はそれを心地好く感じてしまった。

 

 牽制のためにスラスターを噴かしながら勢いよく前方に移動すると、3機が散開しながらこちらにビーム・ライフルを撃ってくる。もちろん黙って当てられるわけにいかないので、移動の向きを左方向に急激に変えながらまずは1機を潰しにかかる。

 今のところジャベリンは私の言うことを素直に聞いてくれている。

 

(良い子だ……!)

 

 私は狙いをつけた最初の1機をなるべくジグザグな軌道で追いかけながら、右手にビーム・サーベルを取り出した。取り出すまでは半自動だが、斬りかかるのは私の仕事だ。

 右手側と後方から私を狙ってビーム・ライフルが連射される。何故かそれがわかった私は推力を上げ、体勢を低くしてまるで地を這うかのようにそれらを避け、相手の懐に潜り込む。相手はライフルを握りっぱなしなので反応が遅れる。この辺りが新兵とベテランの違いだな。

 

「ふッ!」

 

 短く鋭く息を吐いてライフルを持ったままの腕を切り落とす。ジェムズガンは頭部バルカンを使おうとしたのか、顔をこちらに向けるがそれよりも速く、返す刀で切り上げたサーベルが相手の頭部を潰した。

 

(1つッ!)

 

 そのまま背後に移動した私は1機を左手に抱え、盾にするよう立ち回りする残りの2機を牽制する。

 相手は各個撃破の愚を悟ったのか、ツーマンセルで私と僚機を牽制しながらバイザー越しのカメラ・アイで見つめている。

 

 ランチェスターの第2法則により戦力比は1:9(=3^2)から1:4(=2^2)へ変化した。つまり2倍のスピードで2倍の攻撃を加えたら勝てるということだな。ありがとう、ゆで先生、自信が持てたよ。よし、突撃!

 

 左手に持ったジェムズガンを投げつけると、相手は1機がサーベルを持ち突っ込んできた。もう1機がライフルで私の動線を限定してこようとしているので、私も頭部バルカンで応戦。有効打にはなっていないが、ライフルの射線が乱れている。つまり突っ込んできている方はほぼ無援護の状態だ。

 ここでランチェスターの第1法則、1:1の戦いであれば質が優先される。右腕側―――私にとっては左手側から襲いかかってくるサーベルを左手側に避け、相手の死角に回ると相手のコクピットのあたりを私のサーベルが貫いた。

 

(2機目ッ! だがジャベリンの反応が重い。私の操作に追いついていない……)

 

 マキの身体は異常なほどに繊細で、かつ鈍重な男だった前の世界では考えられない反応速度だ。動体視力が上がっているのか、残った3機目がライフルを捨てサーベルに持ち替える動作がやけに緩慢に見える。

 

(これがニュータイプって奴なのかな……)

 

 仮にニュータイプだったとして過度な信用は禁物だ。当たり前だが優れたニュータイプと優れたパイロットは異なる。ギレンの野望だったらエースパイロットとてフライマンタで六方囲んで爆撃してたら落とせるのだ。なお損耗率は考えないものとする。

 

 相手が接近戦を望むのなら付き合ってやる必要はない。ビーム・サーベルを収納し、ライフルを取り出す。

 言うほどジェムズガンとジャベリンで性能差があるわけではない。宇宙空間なら2,3倍の推進力があるが、ここは地上。精々2,3割増しくらいだろう。だがその20%、30%が生死を分けるんだ。

 まあTSしたせいで精子は出せなくなったけどな!

 

 走りながらサーベルを振りかぶるジェムズガンの足元に狙いを付けると、2,3発打ち込む。相手は大きく迂回するように軌道を修正したので()()()()だ。

 

 

 

 私はバーニアを最大出力で噴かし―――もう1つの勝利条件である敵基地への到達を果たした。

 

 





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