転生したらシュラク隊だった件   作:桜霧島

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また続いてしまった。
でももう無理だから。フラグじゃないから!



どうしても宇宙(そら)へ行かなきゃなりませんか?

 

 ▼ side:ジュンコ・ジェンコ

 

 

 サイド2から避難してきたという黒髪の女の子を保護したのは後方支援を専門とする第2(リア)シュラク隊のメンバーだ。

 彼女はボロボロの服と呼べるかどうかも怪しい布に身を包み東欧の街をさまよっていたところを保護され、あたし達が今いるリガ・ミリティア東欧基地に移送されてきた。

 

 マキという名のその女の子は、ここに来たばかりの時は怯えてばかりで、他者とのコミュニケーションに難のある子であった。

 一方で臆病な性格とは裏腹に、殺された両親の仇であるザンスカール帝国への復讐心は人並み以上にあったのだろう。テレビジョンにマリアやカガチが映ったときなど、視線で射殺(いころ)さんばかりに睨みつけていた。

 

 しかしながら16歳という年齢もあり前線に出すわけにもいかず、あたし達は彼女に炊事洗濯、倉庫整理や書類仕事の補助などをやらせていた。

 スクールに通っていてもおかしくないような子供をこんなところで保護するのを嫌がる人もいたけど、正直なところ慢性的な人材不足なので、選り好みはしていられないとあたし的には思っている。

 

 ここに来て何ヶ月か経ったが相変わらずコミュニケーション能力は皆無だし、基本的な表情は常に「無」だから何を考えているのかわからない。

 仕事をする中でいくつかの失敗もあったが、復讐心と何を考えてるかわかんないところ以外は普通の女の子であると、そんな風にみんなが思っていた。

 

 あたし達の見る目が変わったのは、珍しく彼女の世話を焼いていたペギーが面白がってMSシミュレータに乗せたときである。

 

「―――何、あれ」

「……ごめん、ジュンコ。珍しく乗りたそうにしてたから、つい乗せてしまった。戦場の恐ろしさ、MSの恐ろしさを教えたかったんだけど、まさかアレほどだなんて……」

 

 彼女は簡単な操作方法をペギーから聞くと、シミュレータではあるものの、まるで手足を動かすかのようにジャベリンを動かしてしまったのである。

 

 MSの操縦というのは車の運転などとは訳が違う。2つの操作桿、2つのフットペダル、各部バーニア、モニターに表示される情報―――普通ならば歩くことすら儘ならない。昔に比べてOSが進化しているとは言え、戦闘機乗りでさえMSを一発で操縦できるということなど殆どないのだ。

 

「明らかに『普通(ノーマル)』じゃない。『異常性(アブノーマル)』……いえ、『スペシャル』ね、彼女は」

「ジュンコ、どうしようか……」

「来週、オリファー隊長とマーベットが地球に降りてくる。その時に話して、後は見てもらうしか無いわね」

「……そうするしかないか」

「しょうがない、一緒に怒られてあげるから安心しなさい」

 

 

 

 あくる日、素人をシミュレータに乗せたことで怒られることは確定しているので、『You may as well be hanged for a sheep as a lamb.(毒を食らわば皿まで)』とばかりに、あたし達は改めてマキをシミュレータに乗せてみた。

 

 彼女はシミュレートを重ねるごとにめきめきと上達し、4,5回もこなせば、そんじょそこらの新兵では相手にならない程度に熟練した―――してしまった。

 

 その時の感想を率直に言えば、恐ろしいの一言である。きっと隣にいたペギーも同じように感じていたと思う。実際、その後シミュレートで戦ったベテラン兵はあたしやペギー、マーベットたちと同じくらいの力量だったが、彼女は苦労しながらも生き残った。

 ベテラン兵に負けはしたが、シミュレータに乗って2日目の人間が良い勝負をすること自体がおかしい。ヘレンやケイトなら不覚を取ってもおかしくない実力に、あたしは大きな不安と小さな希望を抱いた。

 

 この子と開発中の新型の力があればザンスカールの連中との戦争に勝てるかもしれない。

 

 でも果たしてこの『スペシャル』と同じチームになった場合、上手くやっていけるのだろうか。劣等感や嫉妬心、猜疑心を抱くこと無く、共にザンスカールと戦っていけるのだろうか。

 あたしは次世代量産型機(ガンイージ)のテストパイロットを務めている。けど、あの子のほうが適任では無いだろうか。

 そんな疑問が鎌首を(もた)げて私を睨んでいるのだ。

 

 彼女がその力を以て何を為すのか、あたし達は見届けなくてはならない。それが、彼女より一足先に大人になったあたし達の責任だから―――。

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 シミュレーションを終え、タオルで汗を拭きつつ一息吐く。口にした経口補水液が身に染みわたる。

 

「ふう……」

 

 あれから色々と条件を変えて一通りやってみた。やはり中堅パイロット相手あたりからキツくなってくる。彼らは状況判断も早いし、狙いも正確だ。いちいち人の嫌がることをやってくる。

 

 でも回数を重ねれば重ねるだけ楽しくなってきた。

 最初の2回程は普通のシミュレーションにしたけど、後はなるべく原作にあったような乱戦や護衛ミッションをメインにやった。5回を超えたところから数えてはないが、勝敗はだいたい半々といったところかな。反省点は多い。

 それに宇宙空間のシミュレーションは出来なかった。まぁこれは当たり前か。まだ人類は重力を制御すること能わず。

 

 現実世界において、AIは『良いAI』と『楽しいAI』に分類可能だと提唱したのは『Civilization』シリーズで開発を努めたSoren Johnson氏だ。

 氏は『良いAI』とは、人間のチャンピオンを打ち負かすチェスコンピューターのように、強いAIのことだとしている。対する『楽しいAI』とは人間の代役であり、そのアルゴリズム自体がゲームコンテンツである。そして、最終的には「人間プレーヤーに負けるためにプレイをする存在」だと定義した。

 

 その意味において、シミュレーションのAIは『良くて楽しいAI』だと言える。こちら側を負かすために最善の手を淡々と打ちつつも、そのアルゴリズムは新兵からベテランまで変更可能だからだ。

 加えてシミュレーションであるため()しんばプレイヤーが勝てなくても良いのだから、強さにキャップを嵌める必要もない。

 

 ガンダムの世界において兵器としてのAIは殆ど触れられていない。AIを広く定義するのであればEXAMシステム、Aliceシステム、宇宙世紀以外ではモビルドールあたりが候補としてあげられるだろうか。ファンネルやバグなど武器に積まれているであろうものは多くあるが、OS、プログラムの域を出ないものも多々ある。

 

 まぁ、それだけじゃあスポンサー様(バン●イ)も喜ばないし、そうした戦争の自動化に対するアンチテーゼとしてGガンダムが生まれたわけだから、この世界の神様(富野由悠季)の中でAI兵器は『無粋なもの』という立ち位置だったのだろうが、技術の発展としては些かアンバランスが過ぎる。兵器以外ではハロとかはあるのに。

 きっとミノフスキー粒子が悪いんだ。そうに違いない。

 

 

 

 そんなことを考えつつシミュレータ室から出ると、ジュンコ・ジェンコさんが居た。赤みがかったロングヘアーが色っぽい、シュラク隊のお姉さん的存在だ。私と同じくシミュレーションでもしていたのだろうか。

 

 まるで化物を見るかのような私への視線が気になる。

 

「―――アンタ」

 

 ギロリと鋭い視線が私を射抜く。

 怖い怖い、睨まないでよ! 私だって好きでやってるわけじゃないよ! やらなきゃ()られるからやってるだけであって……

 

「調子が良いみたいじゃないか。けどアンタも宇宙(そら)に上がるのなら、ちゃんと準備だけはしておくんだね」

「はぁ……?」

「ザンスカールの連中とやりたいんだろ?」

 

 バーカ! バーカ! カーバ神殿!

 何でだよ、進んでやりたいわけ無いだろ!

 大体、宇宙に上がるって何だよ! 聞いてないよぉ!

 

「あのオリファーに『やるべきことは変わらない』なんて啖呵を切るからには、宇宙でもそれなりの動きは期待したいところだね。特にMSに乗るからには」

 

 Oh...ちょっと待てよ、確かにそれっぽいことは言った気がする。

 

 

『話はそれだけでしょうか。なら、私からは特にありませんのでこれで失礼しても? やるべきことは変わりませんよ』

 

 

 ―――マキちゃん(わたし)さぁ、多分だけど私の口、使ってるよね? おしっこ行きたかったから前後の脈絡なんて全く覚えてないけど、明らかにそこまで言わなくていいじゃない。

 

「ふふっ。安心しなさい、宇宙(そら)での戦い方はあたしがあっちで教えてあげる。だから―――死に急ぐんじゃないよ」

 

 勘弁してくれ、まだ宇宙になんて行きたくないよ。身を守る自信なんて全く無いし、ゾロアットとかと遭遇したら宇宙の藻屑は避けられない。

 

 あ、隙を見て逃走とか?

 

 いや、無理だな。キャッシュも無い、住居も無いでは『何で蛍すぐ死んでしまうの?』エンドまっしぐらだ。嫌だぞ私は、おはじき舐めるの。

 

 あるいは娼婦になって糊口をしのぐという手も―――無いな。絶対嫌だ。

 私、お●ん●ん生えてたんだよ?(錯乱)

 

 よし、勇気を振り絞ってここは断ろう。

 

「や、でも、その、あの―――」

「ああ、こんなところに居たのか、ジュンコ」

「オリファー隊長!」

 

 オリファー、このデコ助野郎! せっかくコミュ障がなけなしの勇気を振り絞ったところなのに邪魔するんじゃない!

 あとジュンコ、メスの顔をするんじゃない!

 

「あんまり新入りを虐めるなよ?」

「虐めてなんてないですよ、隊長。ただ少し―――彼女の事が気になっただけです。まだ若いんですよ?」

「ああ、だから俺達が責任を持って安全に月まで送り届けるんだ。それに、今ならザンスカールの連中も大人しいから問題無いだろう」

 

 月かぁ、そんなこと言ってたのか。っていうか、月に行って何をするんだって話よ。

 あそこは地球の重力の6分の1、昼は110℃、夜は-170℃と寒暖差280℃という極限地帯だ。うさぎさんとかいるのかな(現実逃避)。

 

 そんな現実逃避をしているとオリファーから話しかけられた。

 

「マキ、来週には出発するぞ、準備しておいてくれ」

「どこで、何を……?」

「ん、昨日言ったじゃないか。俺とマーベット、ジュンコの3人がフォン・ブラウンに向かう。君はその間、アナハイム社のドッグで検査してもらうんだ」

「検査……」

「なに、怖がることは無いさ。危ないことなど一つもないからね」

 

 本当でござるかぁ? 『ちょっと隣の研究所に行ってみようか』とか言って強化人間にしたりしない?

 

「マーベットは新型機(ヴィクトリー)のテスト、ジュンコはガンイージの調整、君は……そうだな、検査が終わったら俺がシミュレーションに付き合ってあげよう。俺の前で大口叩いたんだ、戦士として戦えるようにしてやる」

 

 いやいやいやいや、結構です、間に合ってます! ()()として戦うよりも()()を避けられるように何とかしてくれ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなやりとりがあった一週間後、月面へと向かうシャトルの中に私は鎮座していた。

 

 あ、『たまひゅん』した。玉無いけど。

 

 おそらきれい(白目)

 





お気に入り登録、感想、評価、ありがとうございます。
思いもがけぬ評価を頂き震えが止まりません。

ですが、いいですか皆さん?
皆さんは一流のニュータイプと言えるでしょう。
なら次にやるべきことはわかってますね? そう、皆さんは私の胃ではなく、アマプラにVガンダム全話放送するよう圧力(プレッシャー)をかけるのです。これを毎回読んでくれている2000近いニュータイプ(サイキッカー)サイコ・ウェーブ(お気持ち表明)があれば、戦争(エタ)など起きない世界を作れるのです。
祈りましょう。
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