お久しぶりです
いやぁ……シャトルでの長旅は強敵でしたね……。
やぁ、ウルトラ超絶かわいい黒髪美少女ニュータイプ(仮)のマキだよ。え? うるさい? まぁそう言うなよ。
狭いシャトルの中で約3日間のフライトを堪能し、私を含んで4人のシュラク隊一行は月のフォン・ブラウン・シティに着いた。軍用ならもうちょっと早く着いたらしいけどね。まぁリガ・ミリティアは貧乏だから仕方がない。
地球の6分の1という重力は非常に御しづらいものであったが、幸いなことにどうにかこうにか周りの人の見様見真似で歩くことが出来た。*1
私ことマキちゃんはサイド2ではお尋ね者なので、月にもいると思しきベスパの秘密警察などに見つかるとまずい。どれくらいまずいかと言うと、捕まり次第首と胴がオサラバーしてしまうくらい非常にまずい。
なので少しばかりびくびくしながらも、私はぴょこぴょことスキップのように歩きつつ、ノーマルスーツのバイザー越しにメタリックな輝きを放つ都市を観察していた。
到着早々オリファー達に連れられるがまま、私は古びたドッグにやってきた。巧妙に偽装されているが、恐らくここはアナハイム社の秘密生産ラインの一つだ。そんなところへ一応民間人である私を連れてきて大丈夫なのだろうか。
ま、言うてみんな正規軍じゃないし、いいか。
しかし何でかアナハイムって聞くと、いの一番にニナ・パープルトンを思い出すんよなあ……。
見上げたドッグの中では塗装もされていない、フレーム剝き出しのモビルスーツに装甲が付けられているところだった。
「わぁ……」
「どう、マキ? これが間もなくロールアウトするLM111E02、通称ガンイージよ。私たちリガ・ミリティアの『Vプロジェクト』、その最初のモビルスーツであり、このあたしがテストパイロットを務める愛機ってワケ」
私が感嘆の声を上げると、隣にいたジュンコさんが解説してくれる。
ほえー。しゅごい。
小学生並みの感想しか出てこないよ。モビルスーツの実機は見たことがあったが、こうやって開発中のものを見ることが出来るだなんて、ガンダムファンの端くれであった身としては感無量だ。
整備士がぴょんぴょんとウサギのように飛び跳ねながらモビルスーツを駆け上がっていく。
そう言えば逆シャアでνガンダムがドッグに入っていた時がこんな感じだっけ。
でもあの時代からは大きく……いや、小さくモビルスーツは変わっている。
比較するとこんな感じだ。
| νガンダム | ジェムズガン | ガンイージ | |
| 体高 | 22.0m | 14.5m | 14.9m |
| 重量 | 27.9t | 7.1t | 7.6t |
| ジェネレータ出力 | 2,980kW | 3,860kW | 4,820kW |
| スラスタ推力 | 97,800kg | 66,810kg | 81,840kg |
本体だけでこれくらいの違いだ。でもスパロボではアムロをガンイージに乗せても強くはならないんだなあこれが。
アムロはメタスに乗せるのが通だもんね。え、ちがう? あ、もしかしてコアブースター派の方ですか? すみません、そっちはクリスティーナ・マッケンジーさんで埋まってるんですよ。
何の話だっけ。
そうそう、それでガンイージの話ね。
こいつの利点は小型化による小回りの良さだけではない。むしろそっちはオマケとも言うべきで、本来の利点は互換性の高さだ。
ガンイージはVガンダムと兵装をほぼ一にしており、連邦側のジェムズガンやジャベリンともパーツに互換性がある。はっきり言って、量産型MSとしてはある意味で完成形だ。Vガンダムの外装が比較的地味な機体であるのも理由があるのだ。まぁ、スポンサーからは不評だったけどね。
とは言いながらもこの機体性能でザンスカールのチート機体達を相手にするのはさすがに息切れしてしまうので、物語中盤でガンブラスターに、最終盤ではVダッシュヘキサにその存在価値を奪われてしまうが、個人的には高く評価したい機体である。将来的には【俺の家】になるかもしらんからな。
「さぁ、マキ。行くよ」
ガンイージに見惚れていたところ、ジュンコさんに促される。そもそも月なんぞに来たのは私を検査するためだ。正直、地球でやればいいじゃんと思わなくも無いが、ワンチャン私の専用機とか貰えたりしないかなぁと期待していたりもする。
いったいどんな検査をされるのだろうか。
せめて痛くしないでね……?
▼
病院着に着替えさせられた私は、健康診断のように血液検査や視力検査(両目ともに裸眼で2.0近くあった)などをこなした。良かった良かった。フラナガン機関みたいにヤク漬けにされなくて。
だけどこう、なんというか、脳波検査みたいなのってやらないの?
そんな疑問を抱きつつ1時間ほどで全ての検査を終え待合室のようなところに戻ってくると、ジュンコさんがやってきた。なぜだか彼女はノーマルスーツを着ている。ガンイージのテストでもやっていたのだろうか。
「さぁ、マキ。最後の検査よ」
「?」
はぁ、まさか実機に乗せるとか言わないよね?
「ノーマルスーツに着替えて、今から実機で模擬戦をするわよ!」
言いやがった。乗るだけじゃなくて模擬戦ときたか。
「バカなの?」
「何よ! こっちは真面目よ!」
すまんすまん、つい心の声が漏れてしまった。
「嫌なんだけど」
「何のために高い金払って月まで来たと思ってるのよ。少数精鋭と言えば聞こえはいいかもしれないけど、正直言って私たちは貧乏よ。あなたもシュラク隊の一員なら、黙って特k……検査されなさい」
うへぇ。特訓とか言いかけてたよ。
心ばかりの抵抗を試みるが、ズルズルと首根っこを掴まれ訓練用のジェムズガンに乗せられる。乗る前に身体のあちこちにセンサーのようなものを張り付けられ、やや強引にハッチが閉められる。これで検査という建前も満たされたので、私の逃げ場は本格的に失われた。
―――よぉし、やってやらぁ! 男(女)は度胸!
「……発進します」
カタパルトから漆黒の闇に飛び出していく。
上下左右前後、全て暗闇に包まれて……
包まれて……?
闇?
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
闇が、闇が襲い掛かって来る……!?
私は手元のレバーをガチャガチャと無秩序に操作する。体に掛かるGによって機体があらぬ方へ、あらぬ体勢になっていることを私に知らせるが、どうしようもない。
どうすれば、どうすれば……!
「どうしたマキ!? あ、早くモニターのスイッチを! マキッ!!」
「あッ……あッ……!」
周囲の光景とは裏腹に真っ白となった頭へジュンコさんの声が響く。
モニター……?
あ、そうだ。
手元のボタンを押すと、カチッという音と共にモニターに明かりの補正が入った。今は明るく青みがかったスクリーンに星々が映し出されている。
「ふー! ふー!」
息を荒げ、パニックになった頭を無理やり冷やす。
ヤバい、忘れてた……。全天型モニターはその名の通り球体型。月や地球等目印になるような光が無いと、上下左右前後、全て暗闇に包まれてしまう。
そりゃ自分で簡易宇宙漂流刑なんてしてたらパニックになるわな。いやぁ恥ずかしい。
「大丈夫かい、マキ!?」
「……ふぅ。お騒がせしました。もう大丈夫です」
腹の底から息を吐き、過呼吸発作のようになった肺と脳みそを正常に戻そうとする。
「……こりゃあ、検査どころじゃないね。帰投するよ!」
「すみません」
『気にすることは無い』
通信機越しに私を慰めるオリファーの声が聞こえる。
『これからしばらくは特訓だな!』
オリファーの死刑宣告が私の耳にこだました。
お仕事が忙しいのでもう続きません