艦隊これくしょん ~進化の因子宿す少女たち~   作:玄武の使者

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第4話 謎の妖精

第4話「謎の妖精」

 

 

 

 

 

 

―――鹿屋基地 艦娘寮―――

 

 

 

日本の防衛の要――鎮守府の1つ、鹿屋基地。

その敷地内にある艦娘専用の寮では、この鎮守府に所属している艦娘が共同生活を送っている。

大きな鎮守府になると艦種ごとに寮が存在するのだが、鹿屋基地はまだ駆け出しなので寮は1つだけ。

 

 

鹿屋基地唯一の艦娘寮の最上階の一室。

 

 

そこがこの鎮守府を統括する提督の初代秘書艦こと、朝潮に与えられた部屋である。

中は飾り気がほとんどなく、家具は木製の机と本棚、ベッドが1つあるだけ。

唯一の私物と言えば、本棚の上に飾られた大太刀ぐらいだろう。

 

 

「……」

 

 

「すぅ……すぅ……」

 

 

ベッドで気持ち良さそうに眠る朝潮。

そんな彼女にゆっくりと近づいて行くとても小さな影。

それはベッドをよじ登って、枕元まで行くと、朝潮の顔をペチペチと叩く。

 

 

「朝だよー。朝だよー」

 

 

「んぅ……」

 

 

それがくすぐったかったのか、朝潮はゆっくりと瞼を開く。

 

 

「やっと起きたー。おはよー、朝潮。」

 

 

「…………ようせい?」

 

 

若干瞼をとろーん、とさせながら朝潮は起こしに来た者を確認する。

 

艦娘よりも圧倒的に小さい2頭身サイズの身体は間違いなく妖精だ。

首からは妖精サイズの双眼鏡を掛けており、その身体には白黒のゴスロリ服を身に纏っている。

6頭身にすれば、さぞ可愛らしいお人形に見えることだろう。

 

 

「貴女……だれ?」

 

 

「ファムはファムだよー。ちゃんとした妖精だよー」

 

 

間延びした口調で話す謎の妖精、ファム。

どうやら高位妖精のようだが、それ以外にも普通の妖精とは違う部分があった。

 

 

「固有名、持ってるんですね。」

 

 

「ファムは特別だからねー。自分の名前も持っているのですよー」

 

 

えっへんと胸を張るファム。

深海棲艦を倒すために必要不可欠な妖精は大勢居るが、彼女らは固有の名前を持っていない。

しかし、朝潮の目の前に居る謎の妖精は「ファム」という立派な自分の名前を持っている。

この段階でこの妖精が特殊なことが分かる。

 

 

「それよりも朝潮ー。そろそろ時間ではないのですかー?」

 

 

ファムに言われて、枕元に置いてある目覚まし時計で現在の時刻を確認する。

至って普通の目覚まし時計の針はAM6:40を指しており、いつも朝潮が起床する時間だ。

朝潮は寝間着を脱いで、朝潮型駆逐艦の制服に着替える。

 

 

着替え終わるとすぐにファムが朝潮の身体によじ登る。

そして、そこがあたかも自分の席であるかのように朝潮の肩に座るファム。

 

 

「……貴女も来るの?」

 

 

「もちろんだよー♪」

 

 

「………まあいいわ。」

 

 

結局、朝潮は妖精を肩に乗せたまま朝食に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――鹿屋基地 食堂―――

 

 

此処は鹿屋基地で働く者たちに食事を提供する食堂。

間宮という女性がこの食堂を管理しており、毎日美味しい食事を提供してくれることで人気を集めている。

ちなみに、用意されている朝食はいくつか種類あり、競争になっていたりする。

 

 

(今日は何処に座ろうかしら……)

 

 

朝食を受け取ってファムを肩に乗せたまま、座る席を探す朝潮。

食堂が開くのはAM7:00なので、鹿屋基地の艦娘がほとんど揃っている。

 

 

 

「朝潮ぉー、こっちこっち!!」

 

 

座る席に迷っていると、彼女より一足先に食堂に来ていた艦娘が誘う。

朝潮を呼んだのは以前一緒に艦隊を組んでいた第6駆逐隊のリーダー、暁だ。

 

 

「一緒に食べましょ?」

 

 

「私は構いませんが、他の方は大丈夫なのですか?」

 

 

「構わないよ。」

 

 

「大勢で食べた方が美味しいのです!」

 

 

「そうそう。それに知らない仲でもないしね。」

 

 

響、電、雷が順番に応える。

朝潮も断る理由がなくなったので同席させてもらう。

5人揃って「いただきます」と手を合わせた後、朝食に箸をつける。

ちなみに、朝潮の肩に乗っているファムも間宮から貰った握り飯を頬張っている。

 

 

「ん~♪ 間宮さんの料理はやっぱり美味しいわ♪」

 

 

「暁ちゃん、昨日も同じこと言ってたのです。」

 

 

鮭の身をほぐしながら苦笑いを浮かべる雷。

ちなみに、朝潮たちの朝食メニューは同じでちょうど良いくらいに焼かれた鮭、ほかほかの白米、赤味噌の味噌汁、きゅうりの浅漬けというオーソドックスな物だ。

 

 

「間宮さんは元々高級料亭の料理長だったそうです。

 その腕を見込まれて、この鹿屋基地の料理長に任命されたらしいです。」

 

 

「へぇー、誰から聞いたの?」

 

 

「司令官です。世間話をする機会があったので」

 

 

「そういえば、朝潮さんって初代秘書艦だったのですよね。

 どうして秘書艦を引退したのですか?」

 

 

電は不意にそんな質問を朝潮に投げ掛けた。

 

 

「別の鎮守府で余った大鯨の艤装が此処に贈られてきたからです。」

 

 

「「「「……えっ?」」」」

 

 

朝潮の返答に思わず、そんな声を漏らす第六駆逐隊の4人。

 

 

工廠で作られる艤装は投入する資材によってある程度の制御が可能だが、ランダムに近い。

そのため、同じ艤装が作られることもあり、ダブった艤装は予備として確保しておくか、他の鎮守府に譲る、もしくは解体して資材に還元する、他の艦娘の艤装を強化するのに使うという4種類の方法が取られる。

現秘書艦の大鯨が使う艤装は蔵馬提督が鹿屋基地に着任した記念に贈られたモノなのだが…………

 

 

「えっと……朝潮さん。電の記憶が間違ってなければ、それって……」

 

 

「そうですよ。司令官への嫌がらせです。」

 

 

そう言いながら朝潮は赤味噌の味噌汁をすする。

 

 

大鯨の艦種は潜水母艦という少し変わった潜水艦である。

その役割は潜水艦に食料や燃料、魚雷、その他物資を補給することであり、戦闘用の船ではない。

つまり、戦闘には向いておらず、新任の提督に大鯨の艤装を贈呈することは嫌がらせとして認識されている。

 

 

「そう言う訳で鹿屋基地に早い段階で大鯨さんが着任しました。

 しかし、大鯨さんは戦闘には向いていないので私の代わりに秘書艦を務めることになりました。」

 

 

「あの司令官って……もしかして嫌われてるの……?」

 

 

「単なる嫉妬ですよ。司令官は提督育成校を最短で卒業してますから。」

 

 

「醜いものだね。共通の敵が攻めてきてるっていうのに。」

 

 

響は冷徹にそう言った。

 

 

「同感です。」

 

 

響の言葉に相槌を打ちながら握り飯を完食したファムの顔を手ぬぐいで拭く。

 

 

「さっきから気になってたんだけど、朝潮の肩に乗っている妖精はなんだい?」

 

 

「朝起きたら部屋に居ました。ファムっていうらいいですけど……」

 

 

「妖精なのに自分の名前を持ってるのね。」

 

 

「珍しいのです。」

 

 

「かわいい~♪」

 

 

目をキラキラさせながらファムの頬を突く暁。

暁は可愛いモノに目がなく、鎮守府の隅っこで迷い込んだ動物を飼っている程だ。

ちなみに、本人は蔵馬提督に気付かれていないと思っているが、当然気付かれている。

特に実害がないので黙認している状態だ。

 

 

「朝潮ちゃん。ちょっと良いですか?」

 

 

「大鯨さん? どうかしましたか?」

 

 

「はい。提督がこれを朝潮ちゃんに渡して欲しいって。」

 

 

そう言って、大鯨は一枚の紙を朝潮に手渡す。

そこには見慣れた提督の字で朝潮と第六駆逐隊への指示が書かれていた。

 

 

「第3艦隊にボーキサイト輸送任務を命じる、ですか……」

 

 

「はい。それと、この遠征任務について報せておきたいことがあるから、後で執務室に来てほしいそうです」

 

 

「分かりました。朝食の後、うかがいます。」

 

 

「じゃあ、私はこれで。」

 

 

要件を伝えた大鯨は食堂から立ち去る。

 

 

「―――という訳で、第3艦隊は午後からボーキサイトの輸送任務に就きます。

 早めに昼食を終わらせてヒトサンマルマルに港に集合してください。」

 

 

「分かったわ。」

 

 

「了解。」

 

 

「了解なのです」

 

 

「はーい。」

 

 

 




ようやく……ようやく導入部が終わりそうです。
今回出てきたファムと名乗る謎の妖精は朝潮の全力を引き出すのに必要不可欠な存在です。

多分、紹介する機会もないのでぶっちゃけてしまうと、ファムはかつての――つまり、朝潮が艦船だった頃の搭乗者の魂の集合体という設定です。(でも、性別は♀)
主な役割は次回に明かされますが、ファムが居ないと朝潮が無双できません。



最後に。この小説に高評価を付けてくださった方が居ました。ありがとうございます!!
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