艦隊これくしょん ~進化の因子宿す少女たち~   作:玄武の使者

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第7話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――鹿屋基地 海岸―――

 

 

深海棲艦から日本を守護する要――鎮守府の中でも一番新しく建設された鹿屋基地。

その鎮守府には他の鎮守府と違って水遊びができるような海岸が妖精の手によって拵えられている。

主に艦娘たちに対して開放されている海岸は時期外れなこともあって、人影はほとんどない。

 

 

しかし、そんな海岸に1人の少女が刀を携えて立っていた。

精神を集中させるように目を閉じた彼女はそこに居るだけで強い存在感を放っている。

やがて十分に精神統一を終えると瞼を開き、同時に鞘に入った刀を抜刀する。

 

 

開いた視線の先にはそこら辺に転がった流木をしっかり砂浜に立てただけの的。

 

 

「―――終の型、絶剣。」

 

 

白磁の剣から放たれる神速の11連撃。

それらは十字を描くように的を貫き、11撃目の最後の突きが的を吹き飛ばす。

 

 

「良し。腕は鈍ってないわね。」

 

 

細身の剣を鞘に戻した黒髪の少女――朝潮は1人呟く。

 

 

銘を《雪月花》というその刀は朝潮が使う剣術専用の刀だ。

朝潮の実家に伝わる特殊な製法で作られたオーダーメイド品で、この世に一振りしかない。

分類的には細剣に該当するが、多少の斬撃にも負けぬように刀身の幅が少しばかり広く作られている。

軽量で頑丈なことが特徴で見た目は西洋剣に似ているが、これは朝潮の趣味である。

 

 

「さて、と。」

 

 

朝潮は《雪月花》から工廠から持ち出してきた《天崩》に持ち替える。

さらに先ほど吹き飛ばした流木を回収して同じように砂浜に突き刺すと、剣の柄に手を掛けて向きあう。

 

 

「ふぅ…………絶剣!!」

 

 

流木に対して同じ剣技を放つ。が、11連撃は終わるまでの時間が大きく違う。

その結果を見て、朝潮は落胆したようにため息を溢した。

 

 

「やっぱり、雪月花を使わないとダメね。」

 

 

朝潮が使う霧生式剣術の奥義――『終の型 絶剣』。

壱から玖までの型を習得した後に教えられる神速の11連撃でこれを習得すると免許皆伝になる。

この剣術は《雪月花》のような特殊な剣を使うことを前提にしているので《天崩》では本来のスピードを発揮できない。

 

 

「戦闘で雪月花が使えるのが一番良いのだけど……」

 

 

朝潮はもう一度ため息を零す。

 

 

知っての通り、深海棲艦を倒せるのは妖精が作った武装のみ。

彼女の持つ《雪月花》には妖精の手が加えられていないので深海棲艦に傷をつけることはできない。

 

 

「この刀、私には合わないのよね。」

 

 

朝潮は正直な話、無骨な《天崩》は好かなかった。

軽量さを活かして連撃を叩きこむ《雪月花》に対して、《天崩》は重量で叩き斬ることを主眼に置かれている。

筋力的には問題なく振るえるのだが、やはり剣げきの速度は遅くなってしまうからだ。

 

 

「………止めましょ。無い物強請りしても仕方ないわ。」

 

 

《天崩》を構えて、霧生式剣術の壱から玖の型を反復してかつての感触を取り戻していく。

そして、九つの型を一通り反復すると何処からともないパチパチと拍手の音が聞こえてきた。

 

 

「……何時からそこに居たんですか? 天龍さん。」

 

 

「ついさっきだよ。俺も少し剣を振るいたくてな。」

 

 

そう言う第3艦隊の旗艦――天龍の手には艤装に使われているモノと同じ長さの木刀があった。

彼女とその妹の龍田は艦娘の中でも珍しい近接戦闘用の艤装を持っている艦娘である。

朝潮と同じように砂浜で自主訓練しているので居合わせることは珍しいことではない。

 

 

「いつものように手合わせしますか?」

 

 

「ああ、そうだな。」

 

 

朝潮の提案に二つ返事で了承する天龍。

さすがに《雪月花》や《天崩》を使う訳にはいかないので予め持ってきた木刀を使う。

こうやって自主訓練を兼ねて手合わせするのは初めてではないので部屋から持ち込んできたのだ。

 

 

「ふっ!!」「はぁっ!!」

 

 

朝潮の木刀と天龍の木刀がぶつかり合って、砂浜に心地よい音が響く。

 

 

1合、2合、3合……と幾度となく木刀を打ち合う2人。

 

 

そして、10回ほど木刀を打ち合った所で2人は一度インターバルを挟む。

 

 

「やっぱり強いな……」

 

 

「物心ついた時から剣を握らされてきましたから。

 天龍さんにはそう簡単に負けるわけにはいきません。」

 

 

「へっ……いつか剣の腕前だけで勝ってやるからな。」

 

 

「楽しみにしています。」

 

 

そう言って朝潮は笑みを浮かべる。

そして、再び木刀を握りしめて2人は自主稽古を再開した。

 

 

 

・・・

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

―――第2工廠―――

 

 

朝練を終えた朝潮は《天崩》を返すために第2工廠を訪ねていた。

 

 

「工廠長、天崩を返しに来ました。」

 

 

「おう。今、手が放せねぇからそこら辺に置いといてくれ。」

 

 

「………何をしてるんですか?」

 

 

朝潮が第2工廠を訪れると、工廠長含め数人の工廠妖精が朝潮の艤装の周りで作業をしている。

滅多に開くことがない艤装の機関部を開けて、パソコンで何かしている。

 

 

「Pandoraのアップグレードだ。ついさっき完成したんでな。」

 

 

「アップグレート……ですか? 最近搭載したばかりなのに」

 

 

「ああ。嬢ちゃん、艤装が使いづらく感じてただろ?」

 

 

「……ええ。ピーキー過ぎて使いづらいと思ってました。」

 

 

朝潮は正直な感想を述べる。

《自己進化プログラム『Pandora』》の力で進化した朝潮の艤装だが、問題点は山積みだ。

 

 

まず、主砲であるレールガンは連射ができないので敵艦載機の迎撃に向かない。

持ち前の射程を活かそうにも目視範囲外の居る敵に当てるためにはファムの索敵能力が必要不可欠だ。

魚雷発射管も暁型駆逐艦の物を採用してしまったために魚雷発射の自由度が減ってしまっている。

何よりも困ったのが装備を追加することができず、12.7cm連装砲など使い勝手の良い武器が使えないことだ。

 

 

―――と、朝潮の艤装は非常に運用に困るような性能になっているのだ。

 

 

「そこで旧バージョンを参考に問題点を修正したモノを作り上げたのさ。

 プログラムを作るだけだから資材を使うこともないから、やりたい放題だからな。」

 

 

「あんまり無許可でやると司令官に怒られますよ。」

 

 

「大丈夫さ。取り引きとして希望通りの艤装を拵えてやったからな。」

 

 

心配することはないと笑う工廠長。

 

 

(神通さんの艤装、でしょうね。この前、原典(オリジン)が見つかったと言ってましたし。)

 

 

朝潮は工廠妖精たちが弄っている自分の艤装を見つめる。

 

滅多に見ることができない艤装の中枢部が開放されて、真ん中にある宝石にいろんなコードが繋がれている。

その宝石は艤装のコアであり、そのコアが損傷しない限り艦娘の艤装は修理することができる。

なお、それには元になった軍艦の魂――原典(オリジン)から見れば自分の分霊体――が内包されている。

 

朝潮も知識では知っていたが、実際にその目で見るのは初めてだ。

 

 

「一応忠告しておくが、アップグレートしても起動条件はまだ未知数だ。

 だから、轟沈しても大丈夫なんていう間違った考えは持つんじゃないぞ?」

 

 

「大丈夫です。2度も沈みたくはありませんから。」

 

 

「中には“死ぬまで戦わせろ”なんていう困ったちゃんも居るがな。」

 

 

「居ますね。しかも、かなり身近に。」

 

 

「じゃあ、俺も作業に戻るか。いざという時に出撃できないと困るからな。」

 

 

そう言って、工廠長は工廠妖精たちの輪の中に戻って行った。

 

 

「―――っと。私もそろそろ行かないと。」

 

 

朝潮は《天崩》を置いて、第2工廠を後にした。




失踪したかと思った? 残念!!トリックだよ!!(単にリアルが忙しかっただけ)

リアルが忙しかったので頭の中でひたすらプロットを練っていました。
小説を書く時間はなかったけど、プロットを考える時間は腐るほどありましたからね。

そういえば、艦これの秋イベントがあと一週間程で終わりますね。
読者の皆さまはどこまで突破できましたか?
私は一応、「秋月」「朝雲」は着任しました。現在はE3に挑戦中です。
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