艦隊これくしょん ~進化の因子宿す少女たち~   作:玄武の使者

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第8話

第8話

 

 

 

 

 

 

―――鹿屋基地 港―――

 

 

第2工廠を出た朝潮は港で第6駆逐隊の演習の様子を眺めていた。

港から目視できる領域で艤装を装着した暁たちが2人一組で演習を行っている。

ちなみにチーム分けは暁・響チームと雷・電チームとなっている。

 

 

(響は問題ないけど、他の3人はちょっと問題ね)

 

 

12.7cm連装砲から放たれる演習弾の押収を眺めながら自分なりの評価を書類に纏める。

第3艦隊の主任務は新規着任した艦娘の教育なのでその経過報告を提督に報告する義務があるのだ。

 

 

(暁も雷も射撃の腕がまだまだね。この辺りは経験で賄えるけど、問題は…………)

 

 

チラッ、と視線を移す朝潮。

その視線の先にはおどおどとした様子で演習に参加している電が居た。

射撃技能は他の姉妹艦とそう変わらないが、彼女には致命的とも言える弱点が存在する。

 

 

(彼女は優し過ぎる。博愛主義も行き過ぎれば、とんでもない地雷となる。)

 

 

雷の致命的な弱点……それは優しすぎる性格だ。

現に、今も演習弾が敵役の暁や響に当たらないように少しズラしている。

暁たちは気付いていないかもしれないが、朝潮の目は誤魔化せない。

 

 

(さて、どうしたものでしょうか……)

 

 

朝潮はため息を溢した。

技術面での問題なら朝潮もアドバイスできるが、性格面の問題はどうしようもできない。

 

 

「あさしおー、何かかんがえごと?」

 

 

「ええ。まあ、私にはどうしようありませんが……」

 

 

そう言いながら肩に座るファムの頭を撫でる朝潮。

 

 

「朝潮さん、此処に居ましたか。」

 

 

演習を眺めていると朝潮と同じぐらいの背丈の艦娘が声を掛けてきた。

 

茶色のボブカットに黒を基調とした制服を身に纏うその姿は小さいながらも凛々しさを感じさせる。

身に付けている艤装は「陽炎」や「不知火」のような陽炎型駆逐艦のモノだ。

そして、その隣には黒髪の少しおどおどした雰囲気を漂わせる女性が立っている。

 

 

「雪風? どうかしましたか?」

 

 

「司令官から辞令です。」

 

 

そう言って黒い制服の艦娘――雪風は「辞令」と書かれた手紙を手渡す。

手紙を開くと、そこには朝潮の第1艦隊への配置換え命令が書かれている。

そして、第3艦隊の旗艦は川内型軽巡洋艦2番艦「神通」の原典(オリジン)が代わりに務めるらしい。

 

 

「もしかして、その隣の方が?」

 

 

「はい。神通さんです。

 正式な着任は明日になりますが、業務引き継ぎのために一足先に」

 

 

「久しぶり、朝潮ちゃん。」

 

 

「はい。お久しぶりです、神通先輩。」

 

 

再会を喜ぶ神通と朝潮。

 

 

朝潮は前世で神通を旗艦とする水雷船隊に所属していた経歴がある。

一緒に行動したことはほとんどないが、お互いに面識はあるのだ。

 

 

「では、雪風は別の仕事があるので失礼します。」

 

 

「ありがとうね、雪風ちゃん。」

 

 

雪風は神通に敬礼すると、そそくさと立ち去ってしまった。

 

 

「朝潮ちゃん。貴方から見て、あの子たちはどうかしら?」

 

 

まだ演習を続けている第6駆逐隊の面々を見つめながら神通が問う。

暁と雷は演習弾を撃ち尽くしてしまったのか、艤装に付けられた錨を携えて接近戦に移行している。

 

 

「まだ経験が浅いので何とも言えません。

 ただ…………1人だけ問題児というか、何と言うか」

 

 

「あの子ね。素人目には分かりにくいけど、意図的に射線をズラしてるわ。」

 

 

「はい。」

 

 

朝潮は神通が明日から教導を担当する第6駆逐隊の面々に関する情報が纏められた資料を渡す。

資料を受け取った彼女はおどおどとした雰囲気から一変して、凛々しい雰囲気を纏う。

ペラペラと資料をめくり、電のページでピタッと手を止める。

 

 

「敵も味方も助けたい、か……。朝潮ちゃんが問題児っていうのも頷けるわ。」

 

 

「一応、実戦の時は戦ってくれますが、やはり躊躇してしまってます。」

 

 

「そう…………」

 

 

神通はふぅ、とため息を零すが、その後すぐにクスッと笑った。

 

 

「でも、久しぶりの教導で腕がなるわ♪」

 

 

(あの4人、神通先輩の訓練についていけるかしら……)

 

 

笑みを浮かべる神通に朝潮は少し不安を覚えた。

 

かつて“華の二水戦”の旗艦を務めていた「神通」の訓練はとんでもなく厳しいことで有名だった。

彼女の訓練は実戦以上に過酷かつ想像の範疇を越えたような状況を想定した危険な猛訓練。

その猛訓練の果てに「蕨」という駆逐艦と衝突事故を起こしたりもしている。

 

「朝潮」もかつては第2艦隊第2水雷戦隊(通称、華の二水戦)に所属したので神通の鬼教官ぶりは把握している。

もっとも「朝潮」は中国方面での活動が主だったので一緒に行動したことはほとんどないが。

 

 

「神通先輩。少し手加減してあげてくださいね?」

 

 

「大丈夫よ。倒れるまで訓練するだけだから♪」

 

 

ニコッと笑う神通。

そんな彼女を見て、朝潮は再びため息を溢した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、次の日。

 

朝潮が編入した第1艦隊は運良く出撃任務がなかったので神通が旗艦を務める第3艦隊の演習風景を見学していた。

ちなみに第1艦隊は雪風を旗艦として随伴艦に朝潮、瑞鳳、祥鳳、愛宕、高雄を据えた鹿屋基地の主力艦隊である。

その任務は主に深海棲艦から制海権を奪取することであり、支給される装備も他の艦隊に比べて優遇されている。

 

 

「「「「「うわぁ………」」」」」

 

 

朝潮を除く5人は神通の訓練の様子に唖然としていた。

 

 

「神通先輩……容赦なさすぎです。」

 

 

海上では新規着任艦娘の教育を一任された神通が早速演習を行っている。

演習内容は非常に単純で神通に一度でも直撃を与えることができれば、演習終了というモノだ。

だが、ここで注意するべきは神通が普通の艦娘ではなく【原典(オリジン)】である。

それがどういうことかと言うと……初心者である暁たちは熟練の艦娘を相手にしなければならないということである。

 

 

「うぅ~!! 全然当たらないわ!!」

 

 

「暁、ちゃんと狙わないとダメだよ!!」

 

 

「狙ってるわよ!! でも、全部避けられちゃってるの!!」

 

 

演習開始から10分が経過しているが、神通は弾が掠りもしていない。

 

 

「きゃあっ!!」

 

 

「雷!! 大丈夫!?」

 

 

「だ、大丈夫なのです……直撃は免れたのです。」

 

 

雷は右腕をおさえながら12.7cm連装砲を神通に向ける。

このように神通の方も砲撃や雷撃を行ってくるので神通にだけ注意を向けることができない。

ちなみに、使用しているのは演習用なので大きな怪我を負ったりすることはない。

 

 

「朝潮……あの子たちにまったく勝ち目がないように見えるけど、どうなの?」

 

 

「雪風の言う通りですよ。あの4人の練度では絶対に勝てません。」

 

 

「それって意味あるのかしら? 逆に自信を失くしちゃうと思うけど………」

 

 

「それは大丈夫だと思います。――――多分」

 

 

愛宕の質問に自信なさげに答える朝潮。

 

 

しかし、彼女たちは神通の指導方針にとやかく言えるような立場ではない。

新規着任艦娘の教育は第3艦隊の旗艦に一任されているので決定権は神通にあるからだ。

朝潮の時はそれほど厳しい訓練を課していなかったので彼女の訓練は寝耳に水だろう。

 

 

(神通先輩の事だから、壊すようなことはしないと思うけど……)

 

 

どうしても不安が拭えない朝潮。

そんな彼女の不安を他所に神通による地獄のような訓練は続いて行くのであった……。

 

 

 

・・・。

 

 

 

・・・・・・。

 

 

 

・・・・・・・・・。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

そして、数時間後。

 

 

神通から地獄の訓練という名の扱きを受けた第6駆逐隊の面々はやはり倒れていた。

結局、神通による初日の訓練は4人が力尽きたことで終了となった。

疲労の余りに自分たちの部屋にたどり着くのもやっとな状態だった4人は神通や朝潮、雪風の助けを借りて部屋に到着するや否やベッドに飛び込んだ。そして、今に至るわけである。

 

 

「無理。毎日あんな訓練なんて耐えられない。」

 

 

枕に顔を埋めたまま暁が呟く。

 

 

「朝潮から少し聞かされてたから覚悟はしてたけど、正直予想以上だったよ。」

 

 

「そもそも着任したばかりなのに相手はよりによって原典(オリジン)。直撃させられる訳ないじゃない。」

 

 

「弾が掠りもしなかったのです。」

 

 

響に便乗するように雷がぼやく。

 

その時、第6駆逐隊部屋の扉が4回ノックされる。

丁寧なノックの後に部屋の中へ入って来たのは彼女らの上司、神通だ。

しかし、訓練時のような凛とした雰囲気は何処へ行ったのか今は気弱そうな女性にしか見えない。

 

 

「寝転んだままで大丈夫ですよ。動くのも辛いでしょ?」

 

 

慌てて起き上ろうとした4人を制する神通。

此処は神通の言葉に甘えて、そのままの体勢で神通の話に耳を傾ける。

 

 

「別に緊張しなくても大丈夫ですよ。私はこれを渡しに来ただけですから。」

 

 

そう言って、神通は持って来たハードカバーの冊子4冊を暁の机に置く。

 

 

「今日の訓練で判明した問題点を私なりに纏めておきました。

 明日から資料に書いてある内容で訓練を行うので少し予習してきてください。」

 

 

「「「「――――――っ!!」」」」

 

 

“訓練”という言葉に過剰反応する4人。

そんな彼女たちの反応に神通は苦笑いを浮かべつつ口を開く。

 

 

「大丈夫ですよ。今日のような訓練はしばらくやりませんから。

 明日の訓練は午後から行うので、それまではゆっくり身体を休めてください。」

 

 

それだけ言い残して、神通は部屋から立ち去ってしまった。

 

 

「ああ~、良かった。あんな訓練、もうこりごりよ。」

 

 

「私も少し遠慮したいね。」

 

 

「なのです。」

 

 

「同感~」

 

 

あの地獄のような訓練がしばらく行われないことを聞いて、4人は安堵した。




自分で書いてて何だけど、所々分かりにくい表現があるな。
特に軍艦の歴史を書いてる部分とか。別の表記法考えた方が良いかも。
ちなみに、私の軍艦に関する知識はWikiによるものです。もしも、間違ってたら感想等で教えてください。


あっ、それとそろそろ題名を変えようと思っています。
まだ良い題名の案が浮かんでいないのでもう少し先になると思いますが。
「こんなのどう?」っていうのがあったら、教えてください(他力本願
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