ダンガンロンパ〜オリキャラ約1名を添えて〜 作:ハッピーエンド至上主義の曇らせ人
最終回だ。
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「霧切さん。これなら大丈夫そう?」
「ええ。これなら飛び降りても問題ないはずだわ。」
ゴミ袋に詰め込まれたクッションを見て、苗木君は満足そうに頷いた。
モノクマの話と私が調べた通りであれば、兄さんが落ちていったのは地下のゴミ処理場で間違いない。
用意周到な黒幕のことだ、恐らく地下も封鎖されているはず。そうなればいくら兄さんといえど自力での脱出は不可能に近い。
なら、唯一それらを解く事ができる私が助けに行くことになるのは自然な流れだった。
「ほんとに大丈夫?やっぱりボクが行くべきじゃ……」
「問題ないわ。それに、もう貴方に迷惑をかけるわけには行かないから。」
「……それって、学級裁判のこと?」
「……。」
学級裁判が終わったあと、私達はすぐに兄さんの救出に取り掛かった。
アルターエゴのことや、事件の真相。その他にも色々確かめたいことはあったけれど、それよりも早く兄さんに会いたかった。
……わかってる。私は兄さんを殺しかけた。いいえ。それだけじゃない。生き残るためとは言え、苗木君を贄にしようともした。
許されるはずもない。そう、思っていた。
「さっきも言ったけど、ボクは気にしてないよ。そもそも霧切さんのせいでもないし。」
苗木君。貴方は本当に優しいのね。
つい、甘えてしまいそうになる。この期に及んで私は何をしているのかしら。
自分を戒めようと首を横に振る。
「いえ。私はたしかに貴方を見殺しにしようとしたわ。兄さんだって、そのせいでこの下にいる……。」
開けたダストシュートの奥を覗いて、不意に足が震えた。
これは……そう。私は怖がっているのね。兄さんに合うことを。
あんな姿を晒して、今の今まで忘れておいて、まだ私を妹として見てくれているのか。それが不安で震えている。
揺らがないうちに早くいきましょう。
「待って。」
ゴミ袋に潜り込もうとする私に、苗木君が待ったをかけた。
振り向くと、彼は口元に苦笑いを浮かべて目を泳がせている。暫く「あ〜」「う〜」と唸り、それから小さく息を吐いた。
「気にしてないって言っても、納得してくれないんだよね。」
「……。」
「じゃあ……霧切さん。」
私の無言の返答に、彼の纏う空気が変わる。
優しげな視だった線は鋭く私を射抜いて、口元はきゅっと結ばれる。
私は、その表情をよく知っていた。
「怒らせてもらうよ。」
彼は静かに口を開く。何時もより一段低い声は、痛いほど耳に響いてくる。
私は思わず、彼から顔を背けていた。
「たしかに学級裁判のとき、何も感じてなかったっていうのは嘘になるよ?驚いたし、なんでそんな事言うんだって思った。
でも、ボクが怒ってるのはそこじゃない。
霧切さん、寄宿舎の捜査をしてたんだよね?ずっと一人で。
どうして頼ってくれなかったの?風邪で寝込んでたボクが強いことは言えないけどさ。
もしあのとき……誰でもいい。誰かと一緒に捜査をしていればあんなことは起こらなかったんじゃない?」
……ぐうの音も出ない。
信頼だの何だのと語っておいて、私は結局誰も信頼し切ることができなかった。
誰も巻き込見たくない。必要のない危険にさらしてしまうかもしれない。
そんな言い訳をして、単独で捜査を続けた結果があの学級裁判なのだから。
「ごめん。責めるような言い方して。
だからさ、垂日君を助けて戻ってきたら、二人のことを聴かせてよ。」
「……え?」
突然柔らかくなった苗木君の声。
驚いて振り向くと、彼は嬉しそうに笑っていた。
……なんとなく負けた気がした。
「モノクマの目的は霧切さんを消すことだけじゃないと思うんだ。多分、僕たちが互いに信用できない状況を作ろうとしてるんじゃないかな。」
たしかに、性格の悪い黒幕のことだ。今の苗木君の言うことは十二分に有り得る。
「ようやく思い出したんでしょ?自分のことも、垂日君のことも。
だったらもっと、霧切さん達のことを知りたい。
ミステリアスなのはいいけど、それだとお互い信頼しあうのは難しいんじゃない?
今僕たちがやるべきなのは、お互いに恨み合ったりすることじゃない。もう二度と黒幕に同じ手を使わせないことだと思うんだ。」
……苗木君。本当に貴方という人は。
彼の言葉を聞き終わるや否や、私の口から小さなため息が漏れた。
「それがあなたの考えた妥協案?」
「……だめ、かな?」
贖罪をしなければならないのは私の方だと言うのに、どうしてあなたが申し訳無さそうな顔をするのかしら。
苗木君を見ていると、意地を張っている自分が子供っぽく見えて、馬鹿らしくなってきて、いつの間にか私の口元には笑みが浮かんでいた。
「苗木君のくせにナマイキよ。」
「えぇ……。」
「フフッ。心配しなくてもいいわ。戻ってきたら全部教えるから。」
苗木くんの瞳が輝く。
相変わらず現金というかなんというか。
……いえ、バカ正直とでも言いましょうか。
まぁそんな彼だから、私も信頼しようと思えたのだけれどね。
「それじゃあ行きましょう。」
「うん。垂日君、朝からずっと霧切さんのこと探してたんだ。早く合ってあげてよ。」
「……朝から?」
「え?うん。捜査もそっちのけであっちこっち走り回ってたよ。」
……本当にあの人は。
「ありがとう。さ、苗木君。やって頂戴。」
「わかった。気をつけてね。」
私がゴミ袋に潜り込むと、苗木君がダストシュートへと運んてくれる。
そして……
私の身体を浮遊感が包んだ。
◇◆◇
凄まじい音と衝撃。ソレをクッションと体裁きでどうにか逃がす。
まず第一関門は突破。ゴミ袋を開ければ地下ゴミ処理場が広がって……
「……粗大ゴミ?」
「失礼ね。」
あんまりな言われようにムッとしながら立ち上がると、まずは酷い匂いが鼻を突いた。思わず顔をしかめてしまう。
そのまま声のした方に視線を向けると、そこには見慣れたはずの、とても久しぶりに出会う兄さんの姿があった。
まさかゴミに紛れて助けが来るとは思っていなかったのでしょう。珍しくポカンと呆けたような顔をしている。
「兄さん……」
私がそういった途端、兄さんの目が見開かれる。
そして、
「響子。」
優しく、笑った。
「おかえり。」
思わず兄さんの胸に飛び込む。
残念ながらステージはゴミ処理場。ロマンスの欠片もないけれど、もう一度兄さんに出会えたことが、そのすべてを吹き飛ばしてくれた。
「ただいま……ッ」
本・編・完・結