七囚人『深淵の蛇』 作:ゲヘナ狂
此方の小鳥遊様はユメパイセンと総監部パワーのおかげで適度な青春をお過ごしあそばされたので最初から先生への印象が良さげなんですわ~(お嬢様部)
「せんせ~い、ちょっと早いけどお昼にしよ~?おじさんいい店知ってるんだよ~」
アビドス高等学校にて。
小鳥遊ホシノは、つい今しがたに支援要請に応えて来たという大人『先生』に提案を行っていた。
溜まり場として使用している教室には、先生やホシノの他に四人の生徒が存在している。
「いやそれどころじゃないですよホシノ先輩!?ヘルメット団が!」
「え~また来てるの~?」
その提案に勢いよく異を唱えるのは、猫耳の少女『黒見セリカ』。
アビドス待望の新入生、その片割れであり活発な性格をしている。
「ん~そーだね、先生とやらの実力を見せてもらおーではないか」
「いや、銃撃戦はちょっとできないかな…」
困ったような笑顔でそう呟く優男風の男、彼こそが『先生』である。
「でも、指揮は任せて欲しいな」
「おっ、言うねぇ~、じゃあみんな~せんせーの下につどえ~」
「はい♧」
「ん」
「わ、わかったわ!」
「私はバックアップを務めます!」
ホシノの発言を聞き、気合をいれるアビドス対策委員会。
前衛4、後衛1という少々心許ない構成であるが、そこをカバーすることこそ先生の腕の見せ所である。
「………腕が鳴るね」
先生は、連邦生徒会長より託された旧型のタブレット端末─シッテムの箱を起動しながら、対策委員会の面々と共に戦場へと向かった。
「頼んだよ、アロナ」
『はい!』
『ごめ~ん先輩、ヘルメット団の相手をしないといけなくなっちゃったから遅れるね~』
「そっか~…懲りないなぁあの子達も」
所変わって、こちらはユメとヤツメの方である。
アビドスはただでさえ広く、二人のいた病院から柴関までは結構距離があるために、ドライバーのユメの休憩も兼ねて其処らへんで休憩していた。
ユメの端末には、ホシノから少々遅れる旨の連絡が来ており、ユメは溜息を吐いて独り言ちた。
「逆にすげぇよ、あの留まるところを知らないヒナホシコンビを知ってて尚アビドスにカチコミできるんだからな」
「そうは言っても大半はヤツメちゃんが干してたでしょ?物理的に」
「根性洗い直してやったのぜ、運が良けりゃ華のゲヘナ生になれるチャンスだってくれてやったのぜ」
「むぅ~…そこはうちに欲しかったなぁ~」
「止めたアンタが言うのかい」
「えへへ……心境の変化って奴だよ」
「やな変化だなぁ~」
雑談をしながら、二人はアビドスの空を眺めていた。
謎の模様が覆うキヴォトスの青空は、今日も変わらず快晴である。
プラモの塗装やんなら絶好のロケーションだな、などと益体のないことを考えているヤツメに対し、ユメは不意に問いかけた。
「……ねぇ、あの時何があったの?」
「どの時?」
「ゲヘナで未曾有の混乱が~ってニュースになってたんだけど」
「あぁ…外じゃそんな感じだったのね」
「外?」
「正直私も分からん、急にありとあらゆる電子的なものが使えなくなったからな」
「…電波障害?」
「そう、しかもそのユメちゃんの反応を見るにそうなったのは多分ゲヘナだけだ」
「???」
「
「あぁ……確かに、戦闘が多く繰り返されていたって聞いたことある」
「おうとも、風紀委員も機能停止状態だと気づいた不良共がとにかく暴れ回った」
「うわぁ…」
「私はそんな連中を潰して回ってた、途中でSRTの連中も加勢してくれたよ」
「へぇ~」
「噂の超人様も手助けしてくれたしな」
「あ~それって…あれ?」
「連邦生徒会長殿だよ。…おかしいねぇ、名前は聞いたはずなのにとんと思い出せんな」
そう語るヤツメの顔は、どこか楽しそうだった。
最初こそ困惑していたものの、不良共を伸していく間にどうにでもなるさと事態をぶん投げたらしい。
やはり彼女もゲヘナ生であった。
「で、混乱が収まったら急に逮捕」
「…」
「大方万魔殿と風紀委員の上の連中が手を回したんだろう、これにかこつけて目障りな総監部を解体してしまえってな」
「そ…それって…!」
「哀しきスケープゴートっちゅう訳だ」
「…………!!」
「SRTも生徒会長閣下も色々手を回してくれたらしいが…ま、私一人が生贄になって丸く収まるんなら良いかなぁなんて」
「……私、ゲヘナ嫌いかもしれない」
「おいおい勘弁してくれよ…今のトップはマコトちゃんだぜ?あんなダボハゼ共とは雲泥の差だ」
「それはそう…でも、なんで」
「?」
友人が嵌められたと聞き、怒りに燃えるユメ。
不機嫌さを隠しもせずヤツメに問いかけた
「なんで…大人しく捕まったの…」
「…」
必死に絞り出したその声には、殺しきれなかった憤怒の感情が乗って語尾が震えていた。
ユメは─涙すら流していたのだ。
それを見て(ユメちゃん、泣きながら怒るタイプだったのか…)なんて現実逃避のように考えていたヤツメは、やがて口を開いた。
「…私はよ、百鬼夜行の出なんだ」
「…そうなの?」
「そうだよ。で、私ってヘイローがまんまゲヘナだからな、その辺で色々いじられた」
「…それは…」
「で、時が経って私も華の高校生になる歳だ。」
「そん時に友人連中は百花繚乱…あぁ、まぁ百鬼夜行版風紀委員みたいなもんな…その百花繚乱の次期エースだなんて勝手なことを囃し立てやがる」
「連中、昔散々ヘイローのことで煽った事実なんざ綺麗に忘れてるらしい…」
「だからよ、私はそこで言ってやった訳よ『いやゲヘナに進学するが?』ってな!!」
「そん時の連中の
人目も憚らず大声で哄笑するヤツメに、ユメは少し冷静さを取り戻した。
まぁ、そもそもゲヘナ推しTS転生者であるヤツメに件の煽りが効いていたかどうかは非常に微妙なところだが。
しかし、ヤツメ自身の悪辣な性格は前世からのものであるらしい。
「で、ゲヘナに来た訳だ。」
「なるほど…」
「ま、後は知っての通り、総監部なんてもんを作って…個性的な友人共と出会って…総監部の活動の一環でお前らと出会ったって訳だ」
「私は…百鬼夜行なんぞよりゲヘナが断然好きだね。ある意味分かりやすい連中だからさ」
「百鬼夜行はダメだ、和風トリニティだよ完全に、"トリカス"の多いこと多いこと」
「あ…あはは…」
割と壮絶?な半生を聞いたユメは、すっかり怒りも収まっており、ヤツメの百鬼夜行ディスに曖昧な笑みを返す。
「そもそも成立経緯からしてトリニティなんだよ、私みたいなのには生きづらいことこの上ない」
「………話が逸れたな、まぁそんなゲヘナ大好きっ娘なヤツメちゃんは、ゲヘナの安寧の為なら冗談抜きで命でも何でも掛ける」
「総監部解体、大変結構。それでゲヘナが平穏になるならな。」
「総監部の残党の起こす争乱も結構なことだ。誰かが騒いでないとゲヘナって感じがせん」
「………そっか、そうなんだ」
「まぁ、これがヤツメちゃんのスタンスって訳よ。あーゆーおーけー?」
「いぇあ!」
「Good」
「急に発音良いね!?」
「どや」
完全に普段通りのテンションに戻った二人は、休憩もそこそこにユメの車に向かう。
「まぁ…ヒナちゃん達には結構悪いことしたなぁって…思うよ」
「ならせめて連絡の一つでもしてあげて?それだけでも結構違うと思う」
「……………そう、だな」
便利屋に会った後は素直に捕まるかね─なんて考えながら、ヤツメはユメの車に乗り込んだ。
「……………そういえば、電波障害は結局何が原因だったの?」
「……………………………あ~……………今も…分かって…ない…?」
「ヤツメちゃんでも分からないんだね」
「あ…あぁそうそう、全く以て原因不明なのだよ。一体誰の仕業なんだろうな~」
「そっか、じゃあ出発するね?」
「お…おう!安全運転で頼むぜ!」
「…何か焦ってる?」
「気のせいだよ☆」
「ふーん?」
(い…言えない……転生特典盛大に誤爆しただけなんて口が裂けても言えない……)
たぶん転生特典くん(電子機器を自由自在に操る的な感じ)は大して出番はないと思う。びみょいので
先生へのスタンス
ホシノ『へぇ~助けてくれるんだ…ま、悪い人だったらぶちのめして身ぐるみ剥いで放流するも良し、良い人だったらそのまま助かるから~…一石二鳥!』←ゲヘナ伝染ってない?大丈夫?
ヤツメ『生徒視点で関わるのも新鮮で面白いかもね!………もしタブレットの妖精さんがアロナじゃなくてARONAであることを確認できた場合──…一足先に死んでもらうか。いや、それは手を尽くした後で良い…』←なお後半はほぼ杞憂だった模様。さらに言えばアロナちゃんの確認方法のアテも無い。