七囚人『深淵の蛇』   作:ゲヘナ狂

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三章配信か…いいね。私も生徒の過去は積極的に深堀するべきだと思うよ。


待ち焦がれた魔物達

 

 

プルルルルルルルルル……

 

 

万魔殿の議長室、メンバーの溜まり場と化しているそこに、一本の電話がかかってきた。

 

「あら?電話よイロハちゃん」

 

「めんどくさいですね……」

 

万魔殿は通常運転。

マコトは読んでいた本を顔にかけ爆睡しているし、イブキはチアキと一緒にお勉強をしている。

つまるところ電話に出られる状態なのはイロハかサツキの二人で、イロハの方が電話から近いため、イロハが受話器を取るに至ったのだ。

 

「もしもし?」

 

『もしもし』

 

「っ……次はなんですか?」

 

『私視点の秩序戦争でも話そうかと思ってねぇ』

 

「……………………………はぁ、電話で聞くなんてめんどくさいですよ、いっそ捕まってくれませんか?」

 

電話の相手は無論ヤツメ。

イロハはこの先輩のことにはどちらかと言えば好意的ではあるが、脱獄犯である以上こんな電話で話すのは遠慮したかった。

 

『それもそうだな。じゃあ風紀委員でも何でも良いからアビドスに送ってくれよ』

 

「………やけに素直ですね」

 

『正直悪いことしたなぁとは思ってるからな』

 

「…ほんとにそうですよ。イブキが見てられない位いたたまれない感じでしたし、今も若干アレです」

 

『……ごめんなぁ』

 

「謝罪の言葉は牢屋で聞きます、ヤツメ先輩。ですから…

 

「待て、イロハ」

 

声をかけたのは万魔殿議長であるマコトである。

いつの間に目覚めていたのか。

イロハは驚きながらも問う。

 

「起きてたんですかマコト先輩。」

 

「つい今しがただ、ヤツメ先輩だろう?」

 

「そうですけど」

 

「変われ」

 

「了解です」

 

イロハは受話器をマコトに渡す。ワイヤレスなので持ち運びも安心なのだ。

当のマコトのヤツメに対する感情は、その事務的な言動から察することはできない。

しかしヤツメの名を聞いた瞬間に起きたというのだから、少なくとも悪い感情は抱いていないのだろう。

 

「代わったぞ、久しぶりだな先輩」

 

『おう、久しぶり、その後どうだい?』

 

「キキッ問題は無いさ、この私がトップに就いたのだからな。」

 

『心強いね』

 

「あぁ、きっと先輩の冤罪も晴らして見せる。だから今は待っててくれ」

 

『…さすがに知ってるか』

 

「勿論、情報戦においてこのマコト様は遅れは取らん」

 

「むしろ、それが不服だったからクーデターを起こした。ヒナと一緒にな」

 

『そうかぁ…できんの?』

 

「ふっ…この私にかかれば容易いことだ。何、少々ヴァルキューレ上層部の弱味を握っているものでね」

 

『えげつねぇ』

 

「キキキッ、先輩にそう言われる日が来るとはな」

 

『でも連邦生徒会はどうするつもりなん?さすがに弱味は…』

 

「握っているとも。ヴァルキューレの弱味を探ったら芋づる式に出てきた。先輩だから言うがカイザーが深く絡んでいる」

 

『うわぁ…』

 

ヤツメは、心の中で(これがホントの余計なお世Wi-Fi(せわいふぁーい))などとふざけたことを考えていた。

超人は超人でもそちらの超人(高羽)ではない。

 

「どういう…ことですか?冤罪って…」

 

「ム?」

 

声を掛けられたマコトが部屋を見渡すと、万魔殿のメンツが戸惑った表情で自分の方を見ていた。

その空気を象徴する筆頭として、イロハがマコトに発したのがさっきの言だ。

 

「あぁ…そういえば話していなかったな、ヤツメ先輩が例の戦争の首謀者だというのは──全くの噓、でっち上げだ」

 

「…え」

 

「えぇ?」

 

「えっ?」

 

「…!」

 

『(転生特典のことは墓場まで持って行かんとな…)』

 

驚き戸惑う万魔殿メンバーの気持ちも知らず、ヤツメは心の中でそう独り言ちた。

 

「じゃ…じゃあ!またヤツメ先輩といっしょに遊べるの…?」

 

これに一番に反応したのは、万魔殿最年少『丹花イブキ』である。

イブキはヤツメにとても懐いており、彼女が逮捕された際には大泣きし、その後万魔殿の議員となった後も塞ぎ込むことが多かった。

 

「あぁ…そうだイブキ」

 

「ほ…ほんとに…?」

 

『期待しててくれよな~』

 

「!…………うん!!!!!!!!!!!!!」

 

『わーお☆すごい元気なおへんじ』

 

イブキの非常に元気な返事を聞いて、ヤツメも電話越しに表情を崩す。

どこぞのお姫様のようなリアクションになっていることには気づいていなかった

 

「よぉし!只今より先輩帰還記念のパーティの手配を始める!」

 

「えっえっ」

 

「イロハァ!私は美食研と温泉に声を掛けてくる!風紀や給食の方は任せた!!」

 

「えっちょっとまって」

 

「広報用の写真も必要ですよね!!!」

 

「ふふ~ん…私も催眠術を使って宣伝しまくるわよ!!」

 

「えっあのっ」

 

「イブキね!みんなでおっきいケーキ食べたい!」

 

「食材の選定!金額の算出!………キキキッ忙しくなるなぁ!」

 

そして唐突に始まるヤツメ帰還記念パーティなるものの準備。

万魔殿はこのような思いつきで変な校則を増やすことも多いため、校則違反者達は反感から万魔殿に興味を持つという謎の循環が始まっていることもある。

ゲヘナ工務部ができるのもそう遠くないかもしれない。

 

 

『切っていいすか』

 

「いいぞ!………では我々はこれよりアビドスに向けて出動する!」

 

「あっそういえば言ってましたね」

 

「うむ!パーティの準備の前にアビドスに赴かねば始まらんからな!」

 

「じゃあホシノ先輩に連絡入れときますか」

 

「そうしてくれ」

 

いそいそと出動の準備を進める万魔殿。

彼女らの待ち焦がれた時は、ゆっくりと、しかし確実に近づいていた──

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぇ?」

 

ブーブーとホシノの携帯が振動し、誰かしらからの着信が来たことを知らせる。

状況は良好、襲ってきたヘルメット団を撃退し、その際に色々とお世話になったシャーレの先生へお礼を言っているところであった。

唯一懸念点を挙げるとすれば、アビドスの抱える借金問題のことに関して口を滑らせてしまったことだろうか。

それを思えば、この状況での着信は粋なタイミングであると言えた。

 

「もしもーし」

 

『すいません、ホシノさん』

 

「アコちゃんじゃ~ん、どしたの?」

 

『バカ…万魔殿からのタレコミで『深淵の蛇』…ヤツメ先輩がアビドスに屯していると情報がありまして』

 

「うへ?情報速いね~」

 

『ホシノさんは何かご存じですか?」

 

「ご存じも何も柴関で一杯やるって約束してるんだよね~」

 

『…マジですか、もしやユメさんが…?』

 

「あっはは、流石に付き合いが長いだけあるね」

 

『…つきましては風紀委員会をそちらに派遣するのでそこんとこご了承ください』

 

「うへ~拒否権が無いよ~」

 

『…正直、事実上はカイザーの土地ですからホシノさんに確認する必要もないんですけども』

 

「……………屋上行こうか、久しぶりにキレちゃったよ」

 

『…えぇ、えぇ、しかし最近の風紀委員はバカ魔殿からの難癖で過酷な訓練を繰り返していますから、ラーメン屋なんて見つけた暁には喜んで飛びつくでしょう……勿論任務は忘れませんが…』

 

「なるほど~……………アコちゃん、お主も悪よのう…」

 

『いえいえ小鳥遊様程では』

 

「ちょっと!?何話してるの先輩!?!?」

 

ホシノとアコの会話の怪しさに耐えかねてツッコミを入れたのは一年『黒見セリカ』

同級生の奥空アヤネも不安げにホシノを見つめており、それと対照的に二年生の砂狼シロコと十六夜ノノミは、電話を切ったホシノと同じような悪い笑みを浮かべていた。

一切の事情が理解できていない先生に向けて、ホシノは説明する。

 

「ふふふ~…先生、いやシャーレってまだまだ活動初めて間もないよね~?」

 

「そうだけど…」

 

「じゃあ決まり!今からみんなで柴関行こーか!」

 

「?」

 

「?」

 

「?」

 

その言葉に首を傾げるのは先生と一年生ズ。

省略された主語が大きすぎて何が何だか分かっていないのだ。

 

「ん、大丈夫、悪いようにはならない」

 

「はい♪正直私も何が何だか分かりませんが………ホシノ先輩が楽しそうなのできっと悪いことじゃないのは分かります!」

 

「「「はぁ…」」」

 

未だ訝し気な様子の三名を尻目に、上級生達は教室を後にする。

そこにはいたずらっ子のような笑みを浮かべ歩くホシノと、付き従うように左右に陣取るノノミにシロコ、そして遅れてやってくる一年と先生という如何にも滑稽な構図があった。

 

 

 




おじさんと『青のすみか』の親和性がヤバいくらいあって闇堕ちしそう。
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