七囚人『深淵の蛇』 作:ゲヘナ狂
こんなに期間空いたことから分かるように難産です。
「おぉ…」
「すご…」
「アビドスにこんなものがあったなんて…」
上から順に先生、セリカ、アヤネの発言である。
現在、マコトを伴ったアビドス高校御一行は、万魔殿所有の石油生産プラント、通称『ルール・ジェヘナ』に赴いていた。
シロコ達先輩勢の言っていた借金返済のアテの一つとは、何と驚きアビドスから湧き出る石油と、その関連製品の売買によって出る利益のことだったのだ!
「石油の源泉を発見したのはうちの生徒*1だ、去年までは奴*2個人で運営していたが…今年に入ってから『ある程度の資金は回収した』と奴*3が
そのプラントの来歴を語るマコトの声音は、心做しか少し複雑そうであった。
最後に小声で何やら呟いたところを見るに、マコトとてこんなにも分かりやすく火種になりそうなものをポンと受け取りたくは無かったのかもしれない*4
「はは…マコトも苦労してるんだね」
「本当にな」
頭痛がすると言わんばかりに頭を抑え、顔を思いっきり顰めながらマコトは先生にそう返した。鬱憤は酷いものらしい。
だが次にはキリッとした表情を作り直し、アビドスの面々に向き直る。
「まぁそれはさておき、ホシノ」
「はぁ〜い」
懐から何やら書類を取り出し、ホシノに手渡す。
どうやら契約書のようだ。
「聞くまでもないと思うが──」
「うん♪これからもアビドスの石油をご贔屓に〜♪」
「世話になる、まぁ折角だし見学でもしていけ」
手渡された契約書をひらひらと振りながら楽しげに発言するホシノを見ると、同じように楽しげな笑みを浮かべプラントの入口を開くマコト。
「あっこちらです皆さん」
「わぁ〜みんな揃っての来場だぁ〜」
同時にプラントに配置されている人員がアビドス一行を迎え入れ、楽しい楽しい社会科見学が始まるのであった……
「はぁ…まさか駆り出されるなんて思いもしなかった」
「ほんとだね〜あんなにあっさり捕まっちゃったのに」
「今後は羽沼マコトも要注意ね…」
「いや社長、今回のはレアケース中のレアケースだからね?マコトが外に出るなんてこと滅多にないよ」
「それはそうなのだけれど…」
所変わって、こちらは便利屋68……
「いきなり議長に出くわすなんてことは万魔殿周辺をうろつかない限り無いですから大丈夫ですよアル先輩」
「しっかし捕まえた筈の便利屋すら頭数に入れて駆り出すとはねぇ……先のヘルメット団の件と言い、委員長にそこまでさせるヤツメ先輩ってどんだけ強いんだ…?」
「タイマンでやるって言うなら最低限ヒナレベルは無いと話にもならない、だからこそ大勢でかかって気を散らせるっていうのが今回の作戦なんだよ。だからイオリ、頑張って引き付けてね」
「鬼方カヨコ……随分と簡単に言うじゃん……」
「私の手の内はよく知られてるから逆に利用されるかもしれないし…ヒナは安易にゲヘナから離れられないし…」
「その…チナツ?先輩じゃなくてせめて社長って呼んで欲しいかなー…なんて…」
「アル先輩、先輩方がゲヘナ生であるかぎり便利屋が企業として認められることは少なくともゲヘナ内に限ればないです」
「そ…そんなー」
「あっはは♪でも似合ってるよ〜アル先輩♪」
だけではなく、なんと便利屋と風紀委員会の合同軍である。
正史においては便利屋を捕まえるため、そしてシャーレの先生に接触するために領土侵犯を敢行した風紀委員会であったが、この世界線においては八岐ヤツメという特記戦力を相手取るために大軍を用意する必要があったため、前々回マコトにドナドナされていった便利屋すらも風紀委員会からの依頼という形で軍に組み込んだのである。
「というか、肝心の八岐ヤツメはどこにいるんだ?」
「それを探すのがハルカ達別働隊の仕事、私たちは先輩に仕掛けるその直前までしっかり英気を養え、というのが委員長殿の指示だったと思うんだけど?」
「うぅむ…直前までって…」
「まぁこればっかりはヒナを信じて…としか言えないね。先輩と戦った回数はヒナが1番多いから…」
「でも、英気を養うと言ってもどうすれば…?」
「ふふっ、簡単よそんなの!柴関に行くのよ!」
「柴関ぃ?」
「そりゃあ飲食店に行けばリラックスはできると思いますけど…」
一応は捕縛対象*5である便利屋が加勢しても、風紀委員会の空気は案外いつも通りだった。偏に風紀委員会に吸収された元総監部連中がいい出汁を出しているからでもあるかもしれない。
使えるものは使う、これぞ総監部の伝統である。
「そーそー、柴関はマジで美味い店だからなぁ!休むにはピッタリよ!」
「休む…まぁ、戦士にも休息は必要だしね」
「そうよ!一流のアウトローになるには色々とやらないといけないことが多いけれど……休息も無しになれるなんてことはありえないのよ!」
「千里の道も一歩から、だねぇ」
「まぁ、アウトローに限らず休息は大事で……え?」
違和感
「ん?どうしたの?イオリ」
「いや…何か…今風紀委員じゃない奴がセリフに割り込んで来たような……」
「私は何も言って無いわよ!?」
「私も〜」
「ムツキ先輩でもない…?私は何も言ってないですし…」
違和感
「ちょっここに来て急にホラー路線やめろよ!?」
「こんな広い砂漠ですし…もしかしたら遭難して死んだ人のゆ…幽霊……とか」
「な、な、何ですってー!?私塩なんて持ってないわよ!?!?」
「だだだだ大丈夫だよアルちゃん、いいいざとなったらわわ私のこのカバンで」
「ムツキ!気をしっかり持ちなさい!ムツキィ!」
「誰かムツキ先輩を正気に戻してー!」
「大丈夫かムツキちゃん!ほら!これ見ろ!依頼中にやらかして白目剥いてるアルちゃんの写真!」
「なななんで貴女はそんなもの持ってるのよ〜!?」
「ムツキちゃんは正気に戻ったぁぁぁ!」
「それでいけるのかーい!?」
「「「「「「「………ん?」」」」」」」
違和感
「ん?どした皆」
その生徒は…吸い込まれるような紫色の長髪を後ろで雑に纏め、頭に狐面を被っており……
「もしかしなくても……」
「貴女…いや……お前は!」
にやり
そして、血のように紅い瞳は風紀委員会と便利屋の連合軍を油断なく見据えており……己の存在にやっと気づいた彼女らを前に……その口は三日月のように弧を描いていた。
「……クク…ハッーハッハッハッハッ!!!!」
「やぁっと気づきやがったか!」
深淵の蛇、八岐ヤツメ……強襲!!!
「ッ!」
瞬間、臨戦態勢に入る一同。
イオリとカヨコがいち早くヤツメへ牽制に向かうが──
ボガアアアアン!!
「痛ッ…ぅぅ!?」
「チッ…!?」
それをRPGの弾頭が阻んだ。
そして、弾の向かってきた方に目を向けた2人の視界に入ってきたのは──
「っさしぶりィ!!!カヨコォ!!みんなぁ!!!!」
バイザー付きのヘルメットを被った一団だった。
……いや、正確には『被っていた』というべきだろう。
カヨコ達が彼女らに視線を向けたその途端ヘルメット団は己らの象徴であるバイザー付きヘルメットを投げ捨て、高らかに宣言したのだ。
「再会記念にドカンと一発ヤリあおうじゃないかご友人ンンンンンンン!?!?!」
「……すまんなカヨコ、風紀の皆。久しぶりに会ったら抑えきれなくなったのだ」
「アッハハ!マコトは元気してっかなぁ!」
「見せてもらおう…風紀委員の実力を…!」
「愛新ッ…カクラ!?」
「い…石原カヤノ……いや」
「「監査部門の連中かッ!」」
「ご名答…」
「ハルカちゃん達には悪いが伸びてもらってるぜ」
「私も衰えたもんだ……小隊程度昔なら5分もかからなかったのに…」
「「ちぃ……」」
忌々しげに舌打ちをするカヨコとイオリ。
ほかの風紀委員の面子も少なからず動揺しているようで、動きがぎこちない。
だが、この程度で風紀委員会が弱気になることは無いのだ…何故ならば、彼女らとて元総監部……この程度の想定外は腐るほど経験してきたのだから!
「監査部門、総員突撃だ。自由に暴れ回れ」
「風紀委員、散開。分断して各個撃破を心がけるように」
「「「「「「「「「応ッ!!」」」」」」」」」
ヤツメの指示、或いはカヨコの指示に返答する両者。
その声は奇しくも同時に砂漠に響いた。
うへぇ~TR2の立体化してほし〜なぁ〜財団Bさん~サンライ〇さん~