七囚人『深淵の蛇』 作:ゲヘナ狂
グギャオオオオオオオオオオオオオオオン!!
「ミサイル来んぞォ!!!」
「ヤツメ先輩の援護に当たれぇ!」
「そこ!弾幕薄いよ!もっと張って!」
死闘。
そう形容せずしてどう形容するのかと言わんばかりの過酷な戦場と化した廃市街では、風紀委員会、バイザーヘルメット団、便利屋68、そしてビナーが入り混じる大激戦が繰り広げられていた。
ビルを優に超える巨体に対して、生徒たちの多くはビルの上から銃撃や砲撃を行う者、地上でも同様に銃撃する者に分かれて迎撃していた。
なお、その”多く”に含まれない者は─
「ハァッハハハハハハハハハハハァ!!!」
キマった笑い声を上げ風紀委員会の持ってきた純正パイルバンカーをミサイル発射口に叩き込むヤツメだったり─
「全員耳塞いでェ!!!」
ドッガァァン!!!
「グゥオオオオ!?」
「ひゃっはははははははは!サプレッサー無しのデモンズロアを生で聞けるなんざ転生した甲斐があるってもんだ!!!」
自重を投げ捨てたカヨコによるデモンズロアの発砲によりビナーをよろめかせたり─
「弾が無いならァ……」
「殴れば良い!!!」
それで愛銃がひしゃげても尚特攻紛いの体当たりをやめないバイザーヘルメット団などの面々だ。
それらは数日前のヤツメとのタイマンの傷が癒えきっていないビナーからしてみればたまったものではない所業である。
適当な廃墟から装甲や武装などの補修に使えそうなものを見繕うはずが、いざ蓋を開けてみればお出しされたのは随分と愉快な遠足だ。
不満でアツィルトの光の三発や四発出してしまうというもの。
「光線くるぞぉ!!!!!」
「ウッキー!!コトシハサルドシィ!!!」
「監査部門は伊達じゃない!!!」
「たかが光線の一つ、押し返して見せるッ!」
「私こそがゲヘナだぁぁぁぁぁ!」
「お前ら大丈夫か!?」
「大丈夫よイオリちゃん、総監部じゃ当たり前のことだから」
「えぇ……」
ヤツメの声に呼応するようにして、ヘルメット団の面々は思い思いの言葉を大声で出力する。
それは風紀委員会に流れた元総監部員も同じことで、さすがに動揺するイオリだったが、一人の先輩がフォローした。イオリは素直に引いた。
とここで。
「ガアアアアアオオオオオオオオオオ!!!!」
「おわぁ!?」
「ッ!」
ビナーの すなつぶて!
連合軍に こうかはばつぐんだ!
……………………真面目な話、ビナーの圧倒的質量により巻き上げられた砂達は小規模な砂嵐となって連合軍を襲ったため、本当に効果は覿面なのだ。
更に忘れてはいけないことがある。
ここはかつて市街地であった所なのだ、つまりどういうことかというと、ビナーが巻き上げたのは砂だけでは無くかつて市街地を構成していた建物の瓦礫や砕けたアスファルトなど、聞いただけで目が痛くなってくるものも巻き上がっているのだ。
「オ”ア”ア”!?目がぁ!」
「そっ総員目を塞げぇグゥ!?」
(…………まずいわね)
この状況で無事な者と言えばスナイパーらしく遠距離にある廃ビルで狙撃していた陸八魔アルを筆頭とする別動隊メンバーだ。
命中精度向上のために持ち出した度の入った眼鏡の奥で、アルは目を細める。
(…どうしましょう………みんな砂嵐をまともに食らってる…)
「ど…どうしましょうアル様…皆さん動きが鈍ってます…」
「…ヤツメ先輩の潰してない方の目にグレネード撃ちこめる?」
「それにはもう少し距離が必要です…」
「むぅ…」
アルはビナーの動きを封じようと考え、その糸口となる一撃をハルカに頼んだが距離が足りないらしい……しかしこの状況でビナーに近づくのは論外、ならばとアルが頭を回し始めた時…
「はっちゃん!これ撃って!」
「うぇぇ!?」
ヘルメット団の少女に肩を叩かれ、驚きつつもアルは一つの銃弾を手渡される。
それは一般的なSR用の弾と大きさは変わらないものの、どこから見ても毒々しい紫色をしている弾丸だった
「こ、これは?というかはっちゃんって…」
「これはね!
「クラスター爆弾!?これがですか!?」
驚きのあまり突っ込むハルカ。
クラスター爆弾とは、一つの容器の中に複数の小型の爆弾が入っている爆弾で、主に航空機や地対地ロケット弾などに搭載される兵器だ。
投下後、空中で破裂することにより内蔵された爆弾が地上に散乱し、各所で爆発を起こす。
それらの爆弾は小型故に破壊力自体は低めだが、単弾頭の航空爆弾より費用対効果の優れる面制圧兵器として重宝される爆弾である。
…そう、
銃で撃つなど論外も論外の兵器なのだ、先ほども書いたが航空機やロケット弾などを介して使用するハズの兵器なのだ。
「チッチッチ!クラスター
ミレニアム驚異のメカニズムは留まるところを知らない。
禁止級の兵器をごく一般的な銃で撃てるサイズにまで小型化したという国際法も真っ青な芸当をやってのけたのだ。
…………もはやここまできたら驚異ではなく脅威だろう。
「それとはっちゃんっていうのはあだ名よ!貴女陸八魔って言うんでしょ?」
「…………もしかして、陸八魔の八から?」
「ご明察よハルカちゃん!」
(ふぇぇ…あだ名なんていつぶりかしら…)
クラスター弾への驚きもそこそこに、急にあだ名をつけられたことに少し感慨を感じていたアルだったが、すぐにキリっとした表情に変わり─
「了解したわ、先輩」
「先輩達の思いが詰まったこの一発、絶対にあのビナーに喰らわせて見せる」
「ア…アル様…!」
「────えぇ……頼んだわ」
その小さな決意をハルカは目を輝かせて崇敬し、ヘルメット団の少女はどこか眩しいものを見るように目を細めた後受け取った。
「さぁ、ハルカ、砂嵐も落ち着いてきたようだしグレネードの準備をしてきなさい」
「は、はい!」
「…………」
身の丈以上もある巨大な銃身を背負った紫髪の後輩を見送った彼女は、廃ビルの屋上、他のメンバーと同じく床に身を伏せ、虎視眈眈とスコープを覗く立派な角を持つ後輩を見た。
(本当………時の流れって奴は…)
Bang!
「グゥ!?オ”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”!?」
「オ”オ…?…狙撃班かぁ!ナイスショットぉ!!!」
「負傷者はこちらに!!!急いで!!」
「急がないと最悪失明だ!速く!」
(…………残酷ね)
少女が時の流れを嘆く間にも、戦線は目まぐるしく流転する。
今の狙撃を他のメンバーに褒められドヤ顔を披露しているかわいい後輩をよそに、空では着々と日が傾き始めており、連合軍は長期戦を強いられ始めていた…………
Q.なんでヤツメはバカみてぇに笑ってるんですか?
A.笑ってる奴が一番強いから
A.ついでに没タイトルを供養しておきます
『YOU CAN'T ESCAPE ME』
Q.な ん で ?