七囚人『深淵の蛇』 作:ゲヘナ狂
「げぇっ!?総監部だ!」
「に、逃げろみんな!このままだとアタシらペシャンコに…」
「してあげるね」
一際甲高い悲鳴が自治区に木霊する。
今現在、ゲヘナ秩序総監部は部活動の一環として、自治区の秩序維持活動に勤しんでいた。
これは根がゲヘナ推しオタクなヤツメが、風紀委員へ説得と根回しに勤しんだ結果認められた活動である。
「おっヒナちゃんナイス」
「援護は任せてください!」
今回、総監部が相手取っているのは自治区に深く根を張る武装組織『
予てより木っ端の団員や組織は風紀委員に検挙されていたのだが、いざ本拠地に攻めるとなると風紀委員会としても辛かった。
何故なら相手の本拠地はブラックマーケットとゲヘナ自治区の丁度境目の辺りに位置しており、迂闊に手を出すとブラックマーケットとの火種になりかねず、苦渋を舐めさせられていたのだ。
風紀委員会の役割はゲヘナ自治区の治安維持であり、他勢力に戦争を仕掛ける事では無いのだから。
そんな状況に現れたのが総監部だ。
風紀委員会と違い制約が緩く、その上八岐ヤツメを始めとした特記戦力を多く抱えている。
いざ問題を起こしたとしても最悪廃部で責任を取らせれば良いし、その後に炙れた部員はこちらに取り込んでしまえば戦力増強にもなり一石二鳥。
溢れんほどの笑顔と転生者特有のミーハー精神で説得してくるヤツメと、風紀委員会上層部の思惑は見事に絡み合い、事実上風紀委員会の遊撃部隊のような状態となったのだ。
そんな訳で、総監部は早速件のヘルメット団を襲撃していた。
しかしその襲撃に風紀委員会は一切関わっておらず、完全に総監部…もといヤツメの気分による襲撃という如何にもゲヘナらしい状況であることは注釈しておこう。
「アコちゃん、先輩、ありがとう」
「全然問題無いよッ!」
「はい!ヒナさんのおかげでもはや消化試合ですし…」
「食後の運動にしては随分派手だけど、これくらいじゃないとゲヘナらしくないよね!」
「いや…多分そんなこと言えるの先輩だけだと思う…」
「同感です…」
「残念私もいるぞ!キキキキキ!」
「あっはは!マコトちゃんも大概イカレてるねぇ!」
「マコトちゃんは例外よ例外」
「というかどうしたんですかその髪。思いっきりアフロですけど」
「あぁこれか!先ほど先輩と同じようにお手軽パイルバンカーを試してみたんだ」
「そしたら爆発喰らったっていう訳ね」
「見え透いた結果でしょう!?」
「キキッ…人は誰しもロマンに憧れるという訳だ…覚えておくがいい天雨アコ」
「いや~マコトちゃんわかってるぅ!」
「キキキッ先輩こそ!」
「
「…………ヒナさんはああならないでくださいね?」
「…前向きに善処することの検討を加速させるわ」
そうして、ヒナ達は迎えに来ていた総監部の車両に乗り込んだ。
車両から見る自治区の景色は、最近やっと見慣れてきたところで妙な安心感を抱く。
基本的に面倒くさがりだが、ゲヘナ出身とは思えないほどの善性があるために、生まれ育った自治区の和を乱す輩が何となく気に入らなかったので、総監部に所属した。
当初は風紀委員会に所属しようと思っていたのだが、風紀委員はところどころ不自由だと言われそれにまんまと引っかかった…と言うのもあれだが、そんな経緯で総監部で活動している。
自分を誑かした張本人は、心底楽しそうな顔で自治区の敵を一掃していくものだから、追いつけるようにと必死に訓練に打ち込んだものだ。
「……あぁ、そっか」
……!
そうして、輸送車両(ただのロケバン)に揺られるヒナは呟く。
周りでは、ヤツメとマコトが相変わらず色々と騒いでおり、アコや他の部員からツッコミを入れられている。
そんな騒がしい光景を一瞥した後、ヒナは再び車窓からの風景に目を向けた。
「私は……憧れてたんだ…」
……ナ!
車内はこんなにも騒がしいというのに、耐えがたい眠気が襲ってきた。
思考も朧になるなか、半ば無意識にヒナは呟いていた。
「ヤ…メ……つか………あな…みたいに───
「空崎ヒナァァ!!」
「!!…………?」
耳元に響いた爆音で目が覚めた。
どうも随分と深く眠っていたようで、先ほど見ていたものが夢か現かも分からない。
「……マコトちゃん?わたしは…」
「…………ほう、懐かしい呼び方だな」
「わたし…確か……ヘルメット団を…」
「………あ~あ~!風紀委員共ぉ!ヒナ委員長はお疲れのようだ!後の仕事は貴様らだけで対応しろ!!」
「「「えぇ~!?」」」
「…?……?…マコトちゃ…」
「よぉしヒナ!イロハではないが一緒にサボりと行こうじゃないか!キーキッキッキッキ!!」
「んぅ……ZZZZ」
「いや寝るの速すぎるだろ」
ぁ!!!!(尊死)