この子の七つのお祝いに
私が母親になれるとは思っていませんでした。
最初は悪くなっていく体調に苛立ちを覚え、胎内の赤子がいなくならないかばかり考えていました。
刑務作業の最中でもふらついたり、吐きそうになったり、それを見た看守に怒鳴られることもありました。
ただ、不思議なことに自身が妊娠していることを誰かに伝えようとは思いませんでした。
こんな所で産まれてもこの子が幸せになるわけがありません。
お腹が少し膨らんできた頃、私は自分の妊娠を人に伝えました。
私を裏切ったFOX小隊にです。
私には少しずつ大きくなっていくお腹を隠す手段は思いつかず、矯正局から逃げる他ないと確信していました。
自由時間になんとか彼女達と接触し、これまでやってきたことの謝罪をして自分を矯正局から逃がしてくれるよう懇願します。
……不思議なことに、お腹の中の子のことを想うと大義もプライドも小さなものに思えました。
最初は疑われました。
当然です、私はSRT学園が廃校になってからずっと彼女達を騙して利用してきました。
そのことについて謝罪をしても、許されるとは思っていません。
ただお腹の中の子だけでも助けてほしい、私の責任をこの子も負うことだけは避けたい、その一心でした。
FOX小隊のおかげで矯正局から脱獄することはできましたが、身重の指名手配犯が生きれる場所はどこにもありませんでした。
私はお腹の中の子と一緒に死ぬところでした。
私は助けられました。
私を助けた人物はご主人様と名乗り、私のお腹の中の子が立派に成長するまでは面倒を見てくれると言います。
私は、ご主人様のお世話になることにしました。
娘の出産は、ご主人様立ち会いでした。
娘の名前はマヤ、私が決めた名前です。
娘が産まれてから私の体調は少しずつ回復していき、娘がハイハイをしだす頃にはすっかり元気になっていました。
私はマヤと接するとき、できる限り超人であろうとしました。
私は超人ではありませんでした、ですが娘には超人になってほしいと思っていました。幼い頃から超人を見ていれば超人に育つだろうと信じて、私は超人であり続けました。
どんなことにでもすぐに対応して、いつも優しく笑って。昔描いた超人像とは大きく違っていましたが、間違いなく私は超人の姿をしていました。
ですが、超人でない私には超人の真似ですら限界がきました。
マヤが七歳になった日、私は倒れました。
ご主人様の仕事がうまくいっていないことの心労もあり、私は少しずつ衰弱していきました。
私は近く死ぬでしょう、それでもマヤには母親が必要です。
私は七神リンに手紙を書きました。
"娘をよろしくお願いします。"
私はこれ以上母親をできません、でも彼女なら最後までマヤの母親をしてくれるでしょう。
ご主人様には反対されました、
「マヤには、自分には君が必要なんだ」と。
「私はもう少ししか生きれません。私の代わりにマヤの母親になる人は立派な人です、安心してください」そう言って、私は矯正局へ行きました。
家の門の前、マヤが物干し場からこちらを見ています。
もう、あなたの誕生日からずいぶん経ってしまいました。
思えばプレゼントをあげるのはこれが初めてです。
「元気にしててください、マヤ。」
新しいお母さん
これがあなたの七つのお祝いです。
私が母親になっていいとは思っていませんでした。
斎藤澪の「この子の七つのお祝いに」に影響を受けてこの小説を書き始めました。
ぜひ、読んでみてください。